今まで勤めた職場に共通することとして、正月が三が日で終わることと、夏休みがない点が挙げられます。山の日の制定によって生まれた活動機会も、今年は土曜と重なり消滅しました。そうなると、せめてもの埋め合わせに一杯やって帰ろうという考えが頭をもたげてきます。依然として万全の状態とはいいがたいものの、都内がこれだけ空く状況は滅多にありません。久々に訪ねたのは「箱庭」です。
フードスタイリストなる肩書きを持つ店主が「紅緒食堂」の跡地に開いた店であることについては、初めて訪ねた三年前に述べました。しかしその後は一度訪ねただけにとどまり、これが実に二年ぶりの再訪ということになります。それほど無沙汰をしてしまったのは、一杯やって帰る習慣が廃れた近年の傾向に加えて、前回空振り気味に終わってしまい、果たしてここが最善の店なのかが懐疑的になってきたという事情によります。その後店舗が移転して、どのような店になったか未知数だったことも足を遠ざけました。それが今回、「まるしげ」も「創や」もお盆休みという事情によりお鉢が回ってきたわけなのですが、結論からいえば上々でした。
場所は先代店舗から目と鼻の先にあり、すぐ近くには今も世話になっている「露天」があります。古びたビルの一角に間借りするのは先代店舗と同様ながら、路地からさらに奥まった前の店舗と違うのは、二方向に窓が開けた二階の店舗になったことです。その窓際にカウンターがあるというのが、店のfacebookから推し量れる情報でした。
硝子張りになっていた先代店舗と違い、通りや玄関からでは店内の様子を窺うことはできません。一見客が迷い込むような立地でもないだけに、久々に飛び込むにあたってはいささかの躊躇がありました。それでも意を決して扉を開けると、幸いカウンターは先客一人と落ち着いており、ほどよい位置に通されるという経過です。東と南に開けた窓のうち、南側の窓に接する形で件のカウンターが設えられており、それと直交する壁際に厨房ともう一つのカウンターがあって、店内の中央に相席のテーブルが鎮座していました。物件に合わせて全体の配置こそ変わったものの、雰囲気に相通ずるものが感じられるのは、寄せ木のカウンターと、壁面に設えられた白木の食器棚が先代店舗と同じ路線を踏襲しているからでしょう。背の高い椅子と相席のテーブルは、おそらく当時のものを引き継いでおり、10人少々で札止めになるささやかな店内も変わりません。
腹にたまるものより酒肴が多く、たらふく飲み食いするより軽く一杯やるのに適した店です。しかし、もとよりたらふく飲み食いできる状態ではなく、軽く一杯やれれば十分というつもりでした。かような向きには半合から注文できるところが渡りに船で、店主による付かず離れずほどよい間合いの客あしらいも好ましいものがあります。二年以上も無沙汰してしまったのがもったいなく思われた次第です。
余談ながら、その後風の便りで知ったのは、前回カウンターに立っていた青年が、「お燗の魔術師」の異名を持つ、業界でも一目置かれる人物だったということです。他にもいくつかの有名店を渡り歩いた後、今は自ら店を構えているとのことでした。「紅緒食堂」の店主も再起し、当時に近い路線の店を開いたようです。いずれも世田谷とのことであり、わざわざ出向く機会はなさそうですが、何かのついでにかこつけて、一度訪ねてみる手はありそうです。
★箱庭
東京都港区赤坂6-6-5 赤坂ロイヤルビル 2F
03-5544-8577
1800PM-100AM(LO)
土曜及び日曜定休
旭菊・富久長・丹澤山
お通し(桃の冷製スープ)
自家製ドライトマトのジェノバ豆腐
夏野菜とお豆腐のキッシュ風
フードスタイリストなる肩書きを持つ店主が「紅緒食堂」の跡地に開いた店であることについては、初めて訪ねた三年前に述べました。しかしその後は一度訪ねただけにとどまり、これが実に二年ぶりの再訪ということになります。それほど無沙汰をしてしまったのは、一杯やって帰る習慣が廃れた近年の傾向に加えて、前回空振り気味に終わってしまい、果たしてここが最善の店なのかが懐疑的になってきたという事情によります。その後店舗が移転して、どのような店になったか未知数だったことも足を遠ざけました。それが今回、「まるしげ」も「創や」もお盆休みという事情によりお鉢が回ってきたわけなのですが、結論からいえば上々でした。
場所は先代店舗から目と鼻の先にあり、すぐ近くには今も世話になっている「露天」があります。古びたビルの一角に間借りするのは先代店舗と同様ながら、路地からさらに奥まった前の店舗と違うのは、二方向に窓が開けた二階の店舗になったことです。その窓際にカウンターがあるというのが、店のfacebookから推し量れる情報でした。
硝子張りになっていた先代店舗と違い、通りや玄関からでは店内の様子を窺うことはできません。一見客が迷い込むような立地でもないだけに、久々に飛び込むにあたってはいささかの躊躇がありました。それでも意を決して扉を開けると、幸いカウンターは先客一人と落ち着いており、ほどよい位置に通されるという経過です。東と南に開けた窓のうち、南側の窓に接する形で件のカウンターが設えられており、それと直交する壁際に厨房ともう一つのカウンターがあって、店内の中央に相席のテーブルが鎮座していました。物件に合わせて全体の配置こそ変わったものの、雰囲気に相通ずるものが感じられるのは、寄せ木のカウンターと、壁面に設えられた白木の食器棚が先代店舗と同じ路線を踏襲しているからでしょう。背の高い椅子と相席のテーブルは、おそらく当時のものを引き継いでおり、10人少々で札止めになるささやかな店内も変わりません。
腹にたまるものより酒肴が多く、たらふく飲み食いするより軽く一杯やるのに適した店です。しかし、もとよりたらふく飲み食いできる状態ではなく、軽く一杯やれれば十分というつもりでした。かような向きには半合から注文できるところが渡りに船で、店主による付かず離れずほどよい間合いの客あしらいも好ましいものがあります。二年以上も無沙汰してしまったのがもったいなく思われた次第です。
余談ながら、その後風の便りで知ったのは、前回カウンターに立っていた青年が、「お燗の魔術師」の異名を持つ、業界でも一目置かれる人物だったということです。他にもいくつかの有名店を渡り歩いた後、今は自ら店を構えているとのことでした。「紅緒食堂」の店主も再起し、当時に近い路線の店を開いたようです。いずれも世田谷とのことであり、わざわざ出向く機会はなさそうですが、何かのついでにかこつけて、一度訪ねてみる手はありそうです。
★箱庭
東京都港区赤坂6-6-5 赤坂ロイヤルビル 2F
03-5544-8577
1800PM-100AM(LO)
土曜及び日曜定休
旭菊・富久長・丹澤山
お通し(桃の冷製スープ)
自家製ドライトマトのジェノバ豆腐
夏野菜とお豆腐のキッシュ風