日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

この季節の楽しみ 2014(43)

2014-07-28 21:59:13 | 野球
北海道から南下してきた高校野球の県別ネタも、これを含めて残り二回のところまで到達しました。本日は東九州の二県を取り上げます。

大分
東九州は自身にとってとりわけなじみの薄い土地です。ただでさえ遠い上に新幹線、高速道路といった高速移動の手段がなく、はるばる足を運ぶに値するほどの見所も、他の地域に比べて特に多いわけではないからです。それはさておき、東九州の影の薄さは高校野球についてもそのまま当てはまります。草創期から公立校が入れ替わり立ち替わり出場した後、昭和末期から私立勢が台頭し、今では完全に立場が逆転したという歴史が、地方部の典型で特徴がないのです。
しかし、宮崎と違うのは、大分には天下に誇るべき古豪が控えているということです。春6回、夏12回の甲子園出場を誇る津久見がそれで、選抜と選手権を両方制覇した九州唯一のチームでもあります。輝かしい戦績も今は昔で、昭和最後の年に春夏連続出場を果たして以来平成の出場はなく、近年では5年前の県4強が目立つ程度。かつては全国大会の常連、今では田舎町にあるごく普通の県立校という点では、岩手の福岡、群馬の桐生、山口の柳井などと並ぶ代表格といってよいかもしれません。しかし、紫紺と深紅の大優勝旗を両方勝ち取った実績はこれらの中でも随一であり、今なおプロを切れ目なく輩出しているのもさすがです。
かくも輝かしい伝統を誇る同校ですが、統廃合によって二年前に新設されたという体裁をとり、形式上一旦消滅していることについては先日申した通りです。甲子園優勝校が統廃合で姿を消した例としては、初代覇者の京都二中改め鳥羽、いずれも選抜無敗の飯田長姫改め飯田OIDE長姫、徳島海南改め海部といったところがあり、同校の記録も当然ながら新設校に引き継がれていました。これに対して記録が引き継がれなかったのは、制度変更により高等教育機関となって消滅した師範学校で、代表的なところとしては長野県勢初の全国大会出場を果たした長野師範があります。

伝統校で注目するのは、県内最古の旧制中学を発祥とする大分上野丘です。創立こそ明治18年と特段早くはないものの、一度とはいえ全国大会の出場経験を有し、五年前には選抜にも初出場、昨年は甲子園まであと一歩に迫るという健闘ぶりは、県都の進学校としては徳島の城南などと並び注目に値するものです。今季も県4強入りを果たしており、来期以降の戦いが注目されます。
この校名からも分かるように、大分は岡山、広島、徳島などと同様に、同じ町の高校を固有名詞で区別するのを基本とします。大分ならば大分上野丘を筆頭に大分鶴崎、大分舞鶴、大分雄城台、大分豊府と続き、別府であれば別府鶴見丘、別府青山、別府羽室台、佐伯では佐伯鶴城、佐伯豊南に佐伯鶴岡といった具合で、「鶴」がやたらに多いのも特徴です。しかるに中津は中津東、中津南、中津北と方角で区別され、大分にも大分東、大分西が例外として存在します。

最後に紹介するのは日田林工です。林業が盛んな土地柄をそのまま表す校名と、林業と工業を組み合わせた物珍しさ、時折甲子園にも出場する戦績、さらには我が国プロ野球史上屈指の珍名「源五郎丸」の出身校という話題性もあり、自身九州の中でもとりわけ注目している職業高校の一つです。

宮崎
今季全国各地で戦われた四千近い試合結果の中で、このblogで紹介したのはごく一部に過ぎません。その中でもとりわけ少なかったのが宮崎大会ではないでしょうか。これも偏に宮崎大会の影が薄いという理由によります。戦前の全国大会出場が一度もなく、決勝に進出したのも去年が初めてです。22校ある歴代出場校の中で、最多の都城でも出場は8回、半数の11校は1回限りの出場にとどまるという状況だけに、熊本工、津久見のようにすぐさま思い浮かぶ強豪もありません。藩校の流れを汲む高鍋、県内最古の旧制中学を発祥とする宮崎大宮を除けばめぼしい伝統校もなく、趣味的見地からは話題に乏しいのです。

しかし、地味に思える宮崎県勢も、改めて調べると思いの外健闘していることに気付きました。まず、昭和20年代以前の全国大会出場こそ1回だけとはいえ、30年代は7回、40年代は8回も出場しているのです。その間大半の期間で沖縄と代表権を争っていたという事情はあるとしても、一県一代表でなかった時代に6度しか出場していない滋賀の例などを考えると、意外なほどの健闘ぶりです。
初戦敗退が少ないのも宮崎県勢の特徴で、昭和末期には七年連続で初戦を突破しており、今世紀に入っても過半の七回で初戦を突破し、通算では14勝13敗と勝ち越しています。全国制覇1回を含む19勝の沖縄には及ばないものの、同じく全国制覇を経験している佐賀でさえ、今世紀の勝利数は13にとどまります。今世紀の勝利数では宮崎が九州一なのです。記録より記憶に残るのが佐賀だと申しましたが、宮崎の高校野球はその対極といえそうです。
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