一軒目はザンギで変化球勝負に出たため、次は当然直球勝負を選ぶのが順当というものでしょう。ならば真打ちの炉端焼の登場となるべきところ、あいにく「挽歌」が閉まっており、残る「万年青」も明日に回すと決めています。しばし思案の末、去年の暮れに訪ねた「とん久」の暖簾をくぐりました。
安普請ながらも古びた味わいのある酒場だったこと、訛りのある中年の店主が一人で営んでいたこと、酒が賀茂鶴だったことなどを思い出しつつ扉を引くと、そこにいたのは全く違う二人組でした。やや当惑しつつもカウンターの長椅子に腰を下ろすと、次第に状況が飲み込めてきます。カウンターに立つのは跡取りで、もう一人のおばちゃんはおそらく女将でしょう。壁際には店主の小さな写真が短冊とともに掛けられ、もしかすると店主に何かあったのかと勘ぐらざるを得ません。意を決してたずねると、やはり亡くなったとの返答が。今年の一月ということは、自分が訪ねてから一月経つか経たないかという頃です。あの店主に再会するつもりで暖簾をくぐったところが、このような結果になるとは当然ながら想定していませんでした。
もっとも、急遽店を継いだといいながら、若主人はこの道何年かと思うほど堂に入っています。タコを胡麻油と辣油で和えたお通しは気がきいており、賀茂鶴の小洒落た名入り徳利を深い鍋に沈め、指で燗具合を計りつつ湯煎するところも只者ではありません。煉瓦積みの炉端を置いた機能的で清潔なカウンター、座布団を敷いた長椅子など、店主が残した味わいのある店の造りが、この若主人に受け継がれたことだけは幸いでした。
残念ながら店主との再会はかなわなかったものの、最後の最後に飛び込んだのも何かの縁だったのでしょう。しばれる寒さだった去年の聖夜、店内をとりわけ暖かく感じたことが思い出されます。一期一会を偲びつつ、献杯…
★とん久
釧路市栄町5-2
0154-25-3839
1700PM-200AM(不定休)
賀茂鶴二合
お通し
銀ダラみそ漬け
ホタテのバター焼き
安普請ながらも古びた味わいのある酒場だったこと、訛りのある中年の店主が一人で営んでいたこと、酒が賀茂鶴だったことなどを思い出しつつ扉を引くと、そこにいたのは全く違う二人組でした。やや当惑しつつもカウンターの長椅子に腰を下ろすと、次第に状況が飲み込めてきます。カウンターに立つのは跡取りで、もう一人のおばちゃんはおそらく女将でしょう。壁際には店主の小さな写真が短冊とともに掛けられ、もしかすると店主に何かあったのかと勘ぐらざるを得ません。意を決してたずねると、やはり亡くなったとの返答が。今年の一月ということは、自分が訪ねてから一月経つか経たないかという頃です。あの店主に再会するつもりで暖簾をくぐったところが、このような結果になるとは当然ながら想定していませんでした。
もっとも、急遽店を継いだといいながら、若主人はこの道何年かと思うほど堂に入っています。タコを胡麻油と辣油で和えたお通しは気がきいており、賀茂鶴の小洒落た名入り徳利を深い鍋に沈め、指で燗具合を計りつつ湯煎するところも只者ではありません。煉瓦積みの炉端を置いた機能的で清潔なカウンター、座布団を敷いた長椅子など、店主が残した味わいのある店の造りが、この若主人に受け継がれたことだけは幸いでした。
残念ながら店主との再会はかなわなかったものの、最後の最後に飛び込んだのも何かの縁だったのでしょう。しばれる寒さだった去年の聖夜、店内をとりわけ暖かく感じたことが思い出されます。一期一会を偲びつつ、献杯…
★とん久
釧路市栄町5-2
0154-25-3839
1700PM-200AM(不定休)
賀茂鶴二合
お通し
銀ダラみそ漬け
ホタテのバター焼き