日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

北海道花見の旅 2013Part3

2013-06-01 23:51:58 | 居酒屋
一軒目はザンギで変化球勝負に出たため、次は当然直球勝負を選ぶのが順当というものでしょう。ならば真打ちの炉端焼の登場となるべきところ、あいにく「挽歌」が閉まっており、残る「万年青」も明日に回すと決めています。しばし思案の末、去年の暮れに訪ねた「とん久」の暖簾をくぐりました。
安普請ながらも古びた味わいのある酒場だったこと、訛りのある中年の店主が一人で営んでいたこと、酒が賀茂鶴だったことなどを思い出しつつ扉を引くと、そこにいたのは全く違う二人組でした。やや当惑しつつもカウンターの長椅子に腰を下ろすと、次第に状況が飲み込めてきます。カウンターに立つのは跡取りで、もう一人のおばちゃんはおそらく女将でしょう。壁際には店主の小さな写真が短冊とともに掛けられ、もしかすると店主に何かあったのかと勘ぐらざるを得ません。意を決してたずねると、やはり亡くなったとの返答が。今年の一月ということは、自分が訪ねてから一月経つか経たないかという頃です。あの店主に再会するつもりで暖簾をくぐったところが、このような結果になるとは当然ながら想定していませんでした。
もっとも、急遽店を継いだといいながら、若主人はこの道何年かと思うほど堂に入っています。タコを胡麻油と辣油で和えたお通しは気がきいており、賀茂鶴の小洒落た名入り徳利を深い鍋に沈め、指で燗具合を計りつつ湯煎するところも只者ではありません。煉瓦積みの炉端を置いた機能的で清潔なカウンター、座布団を敷いた長椅子など、店主が残した味わいのある店の造りが、この若主人に受け継がれたことだけは幸いでした。
残念ながら店主との再会はかなわなかったものの、最後の最後に飛び込んだのも何かの縁だったのでしょう。しばれる寒さだった去年の聖夜、店内をとりわけ暖かく感じたことが思い出されます。一期一会を偲びつつ、献杯…

★とん久
釧路市栄町5-2
0154-25-3839
1700PM-200AM(不定休)

賀茂鶴二合
お通し
銀ダラみそ漬け
ホタテのバター焼き
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北海道花見の旅 2013Part3

2013-06-01 23:12:02 | 北海道
釧路に着きました。そこらの地方都市では店の選択肢もほとんどなくなってくる時刻とはいえ、釧路には遅くまで開いている店がいくつもあるので安心です。しかし、遅くまで呑めるといっても、まさに不夜城というべきすすきのとは違い、呑み屋街は実に静か、有り体にいうなら閑散としているのが不思議なところではあります。そんな中から一軒目に訪ねるのは、ザンギ発祥の店「鳥松」です。
ザンギの専門店として「鳥善」と双璧をなす当店ですが、大筋において共通しながら、細部において少しずつ異なるところは、仙台の牛タンなどに似ています。まず共通しているのは、家族経営の小さな店であることと、ザンギと唐揚げを中心にした簡素な品書きでしょう。しかし、親子二人で差配する「鳥善」に対し、ここでは白衣白帽の店主が黙々とザンギを揚げ、ぶっきらぼうな女将が接客をこなし、店主と瓜二つの兄妹か姉弟と思しきおばちゃんが手伝いに回るという顔ぶれになります。ザンギ一本の「鳥善」に対して品数が若干多く、ご飯と味噌汁があるのもここの特徴で、これはたとえていうなら宇都宮の「正嗣」と「みんみん」の違いのようです。
そして明確に違うのが衣です。「鳥善」のザンギが、唐揚げともフライドチキンとも違う白っぽくきめの細かい衣を特徴としていたのに対し、こちらのザンギはよく見慣れた唐揚げのような出で立ちをしており、食感はセイコーマートのフライドチキンの衣に少し似ています。要は独自性に関する限り「鳥善」のザンギに一歩譲るいうことなのですが、タレを付けた骨付き肉の味わいはなかなかのものです。「鳥善」のザンギの場合、タレがなくても十分おいしく、ともすればタレは要らないようにも思えるのに対して、こちらはタレと合わせたときに持ち味が最も生きるように工夫されているのでしょう。
この時間になってもカウンターは地元客でほぼ満席、加えて持ち帰り客が入れ替わり立ち替わり訪れ、一人静かに酒と肴を楽しむ店とは趣を異にします。広島のお好み焼きのごとく、居酒屋であらかた腹を満たした後、最後にザンギで軽く一杯引っかけるのが正しい使い方といえそうです。

鳥松
0154-22-9761
釧路市栄町3-1
1700PM-030AM(日曜定休)
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北海道花見の旅 2013Part3

2013-06-01 22:23:07 | 北海道
釧路市街に入ったところで給油を済ませます。ここまでの走行距離は2530km, 今日だけで一気に370km走り、前回千歳で入れたガソリンを半分以上消費したことになります。
連休中に弘前で四度目の給油をしてから五度目の函館までは実に三週間、活動日数にしても実質九日かけた上でのことで、その間の走行距離は450kmでした。ところが、函館を出るやいなや、小樽を通って千歳まで、足かけ二日でほぼ同じ距離を一気に走り、今日もそれと比べて遜色ない移動距離です。明日根室まで往復すればざっと300km, 明後日道央まで戻ればそれ以上の距離を走ることになります。普段の活動なら、初日と最終日をを除けば一日の走行距離が300kmを超えることはまずありません。そんな長距離移動が毎日のように繰り返されるのですから、北海道の距離感覚は全くの別物です。
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北海道花見の旅 2013Part3

2013-06-01 21:27:44 | 北海道
延々150km近い一人旅を経て38号線に合流し、十勝と釧路を隔てる峠を越えたところで、毎度おなじみ上厚内駅に立ち寄ります。切妻屋根と三角形のファサード、木の羽目板に漆喰壁という、古きよき北海道の駅舎の造りをそのまま残す建物もさることながら、廃屋だらけの集落、そこから駅舎へ上る砂利道など、駅前の淋しげな雰囲気が秀逸。軒先にある傘をかぶった裸電球に照らされて、ファサードに掲げられた駅名の琺瑯看板がぼんやり浮かび上がるところもたまりません。釧路との間を行き来するなら、多少時間が押しても立ち寄りたい名駅舎です。
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北海道花見の旅 2013Part3

2013-06-01 20:19:56 | 北海道
人家もない山中を延々走って峠を越えると、今度は速度を落とさざるを得ないほどの霧が立ちこめ、ようやく晴れたと思ったところで広尾の市街地にたどり着きました。その間先行車は一切なし。38号線に合流するまで一人旅が続きそうです。
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北海道花見の旅 2013Part3

2013-06-01 19:16:49 | 北海道
浦河市街を後に野塚峠を目指します。先ほどまで曇っていた空が晴れて、西の空に残照が現れてきました。どこかに田圃があるのか、遠くから蛙の合唱が聞こえてきます。やはり、あの霧は局地的な現象だったのでしょうか。今のところ、明日明後日は曇り空との予報が出ているものの、今日の天候からして、天気予報に一喜一憂しても仕方がないでしょう。この空が明日も続いてくれることを願う次第です。
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北海道花見の旅 2013Part3

2013-06-01 18:15:20 | 北海道
浦河に着きました。結局天候は回復せず、それどころか霧なのか霧雨なのか分からないほど濃い霧が立ちこめています。静内までの快晴が一転こうなるのですから、毎度のことながら北海道の自然は偉大です。これで襟裳岬へ行く理由はなくなったため、野塚峠を越えて十勝へ向かいます。今度こそはと思っていただけに残念ですorz
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北海道花見の旅 2013Part3

2013-06-01 17:26:19 | 北海道
再びセイコーマートで軽食をとってから先へ進みます。野塚峠を通っても、釧路まではざっと250kmといったところでしょうか。いくら北海道の道とはいえ、決して短い距離ではありません。今夜の投宿はかなり遅くなりそうです。
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北海道花見の旅 2013Part3

2013-06-01 17:04:44 | 北海道
静内を出ようとしたところで、突如として空が曇ってしまいました。次第に薄雲が広がってきたというのではなく、清々しいばかりの青空が、ものの十分二十分のうちにどんより曇ってしまったという状況です。突然曇ったことからして逆のことも起こりうるわけで、再び晴れてくれれば予定通り襟裳岬を目指すつもりではあります。しかし、浦河に着いた時点で回復の見込みがなければ、野塚峠に回って距離を縮めることになるかもしれません。
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北海道花見の旅 2013Part3

2013-06-01 16:44:43 | 北海道
静内を後に、浦河方面へ向かって峠を越えます。牧場を見渡す小さな展望台に一本の山桜が。白く大きな花はエゾヤマザクラとも八重桜とも違う見慣れないものです。今までなら目にも留めずに素通りしてしまいそうな名もなき桜とはいえ、今や数少ない見頃の桜と思えば、つい足を止めてしみじみと鑑賞してしまいます。
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北海道花見の旅 2013Part3

2013-06-01 16:03:06 | 北海道
静内に着きました。お約束の二十間道路を訪ねます。三年前に二週続けて訪ねて以来の再訪となるこの桜並木ですが、エゾヤマザクラはすっかり葉桜に変わっていました。前回は同じく道東への行きがけに訪ねて、エゾヤマザクラがあらかた散り、山桜だけが残っているという状況だったのに対して、今回は山桜もあらかた散り終わって、当然ながら見物客の姿は一切ありません。しかし、どこまでもまっすぐ延びた並木道からは、かつて眺めた花盛りの頃の光景が偲ばれるようです。
ちなみに、静内の市街からここまで来る途中に八重咲きの紅梅が。まさか六月に梅が見られるとは思いませんでした。
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北海道花見の旅 2013Part3

2013-06-01 12:54:32 | 北海道
腹ごしらえを済ませたところで、今度は頃よく空が晴れてきました。車窓の右手には太平洋が。何一つ遮るものがない海と、延々続く海岸段丘はまさに北海道です。花見云々はともかく、よい眺めには違いありません。この青空ができる限り長続きしてくれればよいのですが。
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北海道花見の旅 2013Part3

2013-06-01 12:28:52 | B級グルメ
風呂から上がったところで頃よく昼時になりました。沿道にはこれまた頃よくセイコーマートが現れたため、毎度おなじみフライドチキンとフライドポテトを本日のお昼とします。セイコーマート以外に補給手段がないことからして、俄然北海道の旅らしくなってきました。
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北海道花見の旅 2013Part3

2013-06-01 12:11:18 | 温泉
平凡な曇り空で先を急ぐ必然性が乏しくなったため、朝風呂を浴びてから先へ進むことにしました。「とねっこの湯」を三年ぶりに再訪します。紅茶のような褐色をした北海道らしい源泉は健在。建屋の裏手の八重桜で花見もできて一石二鳥です。

門別温泉とねっこの湯
沙流郡日高町字富浜223番地140
01456-3-4126
1000AM-2130PM(最終受付)
第三月曜定休
入浴料500円
泉質 ナトリウム-塩化物泉(低張性アルカリ性低温泉)
泉温 32.2度
pH 8.8
湧出量 480l/min
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北海道花見の旅 2013Part3

2013-06-01 11:01:17 | 旅日記
日高自動車道をまっすぐ走って終点の門別で下りました。東へ進むにつれて初夏の陽気だったのが一変し、霧が出て気温も12度まで下がってきました。改めて最新の情報を確認すると、今日は終日曇りがちという予報に変わっており、到着時の青空はぬか喜びに終わるかもしれません。もっとも、昼から霧が出るというのが北海道らしいところではあります。
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