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ふぅん

闇閃閑閊 ≡ アノニモス ≒ 楓嵐-風

夢を売ってくれた人

2009-09-20 23:34:31 | 日々随想
僕は 宝くじ売り場で 働いていて
様々な人たちに 単調な作業で
絶望という名の 夢を売っていた


毎週 同じ日の 同じ時間に
ロトを買いにくる 女性がいた
彼女は 一口だけ いつも同じ数字を買っていた


ある夜 僕は キャバクラで
その女性を 見かけた
彼女の方は 僕に気付かなかった


彼女が 僕のテーブルに来た
「出身は どこ?」
『当ててみて下さい』


「西の方でしょ?」
『ええ』
「ずばり 九州でしょ?」
『え? なんで分かったんですか?』


「きっと 大分だな」
『凄い! 大当たりです!』
彼女は 目を丸くして 驚いてくれた


本当は 以前 彼女が
大分トリニータの ユニフォームを着て
駅の方へ 歩いていったのを 見かけただけのこと
その日は 浦和と大分の 試合の日だった


彼女の次に テーブルに来た女性に
彼女のことを 少しだけ尋ねた
両親が病気で 必死に お金を貯めてるらしい


ふうん


また いつもの日 いつもの時間に
彼女は 宝くじを 買いに来た
僕は いつもの そのナンバーを控えて
別の店で 同じナンバーの 宝くじを買った


翌週から 僕は宝くじ売り場で
働くのをやめてしまった
恐らく 彼女も もう買いに来ないだろう
きっと キャバクラも やめてしまったことだろう


彼女が選んだナンバーは 
その週の抽選で 見事に当選していた
だから 僕も 金持ちになった


そんな夢を見た