ももママの心のblog

猫が大好き。有料老人ホームで生活相談員をしています。映画が好きだけど、なかなか見られません。

チェ 39歳の別れの手紙

2009-02-19 | 映画 た行な行
カンヌでは1本だった映画を、あまりに長いのでパート1と2に分けた、そのパート2。キューバ革命成功直前で終わった1だが、2はその成功物語からいきなり、ボリビアを目指すチェを描く。この辺りが、予備知識なしでは少々辛いですが・・・

2009年(公開) アメリカ、フランス、スペイン ヒューマンドラマ、伝記
2009年2月18日 ワーナーマイカル・シネマズ新百合ヶ丘
監督 スティーブン・ソダバーグ(シリアナほか)
出演 ベニチオ・デル・トロ(21グラム)
(出演作品などは私が観たものに限る)

1955年、キューバ革命は成功したがゲバラは大臣の地位や市民権さえ放棄してキューバを後にする。ゲバラが急に消えたことで納得しない国民のために、カストロは彼が残した手紙を公表する。ゲバラは自分を必要とする場へ身を投じるのだ。変装してボリビアに入り、キューバの時と同じように山岳ゲリラ作戦を展開する。しかし、ボリビアの共産党は武装闘争を拒否したので、いきなり食料に困ってしまう。肝心の農民の理解を得られず、士気は下がる一方。そして、アメリカに支援されている政府の手にまんまとハマってしまうのだった。

いきなり髭もなく、頭頂のはげた「ラモン」に変装したゲバラが出てきます。ゲバラに扮したデルトロが、更にラモンに扮したゲバラを演じることに・・・?分かりにくい~。頭頂の毛髪を(たぶん)抜いたりし一部髪を染めたりで、観客にも分かりにくい変装でした。その上、何故キューバを後にしたのかの説明もなくて、付いていけない人もかなりいたのでは?

個人的なメモですが、キューバを後にした理由は3つあるとされています。
1.担当大臣として重工業化を推進しようとしたが、失敗したことに責任を強く感じていた
2.指導部に対する影響力を年々強めていたソ連に対する反感
3.ソ連からの援助なしには革命体制を支えられなくなっていたカストロ指導部と相容れなくなった。

そして、変装した姿で家族と食事をした後(子どもも父親とは気がつかなかったみたいで・・・?)、ボリビアに入りますが、なかなかうまく行かないのですね。当時ボリビアは農地改革が終わっていましたが、政権は軍部のクーデターにより独裁的で農民は搾取されていたし、アメリカ寄り。そのため新たに革命が必要だとゲバラは思っていたのです。が・・・肝心の農民の理解が得られません。搾取されているという意識もなかったようで・・・。

政府は共産主義になったら宗教がなくなるなどと、嘘を言います。(これは、共産主義の国によってはまったくの嘘とも言いがたいのですが、少なくともキューバでは熱心なカソリック信者がたくさんいて、弾圧もされていないみたいですね)ボリビア共産党の協力が得られない上に、ゲリラとはいえ、軍隊なのに命令・指揮系統はめちゃくちゃだし、カストロのようなカリスマ指導者はいないし、地形の把握がイマイチだし、農民の解放のために戦っているのに理解されていないどころか、裏切りにあうし・・・。これじゃ、確かに外国人が勝手に国内でテロ行為をしているみたいだわ~。

キューバで成功したノウハウが生かせないまま、ゲリラたちの士気が落ちていきます。ゲバラの持病である喘息も悪化して行き、先細りになるに従い、見ていられない気持ちになりました。
前作同様、淡々と廻っていくカメラ。起伏のない展開は眠気も誘うのですが(最初の頃、何回か意識不明に・・・!)ソダーバーグは、私情を廃して語りたいことがあったと受け取っています。ゲバラは何をしたかったのか?どうすべきだったのか。いや、キューバはともかく、ボリビアは蛇足だったのか?他の国だったら?ゲバラは慢心していた?「ボリビア人」じゃなかったのがいけなかった?「ゲバラ」は国内に居ないという偽情報を政府が流し続け、それでいて「カストロが革命を輸出しようとしている」と流したことが政府側の勝利に結びついた?いずれにせよ、通信機が思うように使えなかったし、情報戦では完全に敗北でしたね。しかし、ゲバラは最後まで前向きです。「この失敗から学んで欲しい」と言い残しています。

中南米の事情にうとい私が語るべきではないのかもしれませんが、ゲバラがやろうとしていたのはイデオロギーによる革命ではなく、今言われている「南北問題」に近いような気がしました。スペインなどの外国が来たことによって分断された中南米諸国を一つにしたい、ということ。また、搾取されている農民たちをもっと豊かにしたい、ということではないかな?

広報活動や教育などに頼らず、いきなり武装闘争というのが、ゲバラのやり方。人の命を救う医師が銃を手にすることの葛藤などは、まったく描かれていませんが、この辺りにとても興味があります。政府軍の兵隊たちも、貧しい農民と根っこは同じなのでしょう?ゲバラが捕まってから、看守(?)と言葉を交わす場面がありました。こういう青年たちと戦っていたのだとゲバラも分かっていたはずです。兵士たちも貧しく、「ひょっとしたら、革命が必要かも?」って思っていたのではないかしら?そういう青年たちに銃を向けたわけで・・・。


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4 コメント

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Unknown (Hiroshi)
2009-02-20 12:29:16
観たい映画でしたが、見逃しました。いずれDVDでと思っています。

『モーターサイクル・ダイアリー』はみられましたか?
http://blue.ap.teacup.com/applet/salsa2001/736/trackback
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こんにちは (たいむ)
2009-02-20 18:02:36
ソ連との確執も出奔の要因でしたか!
どこまでも純粋な人なのだなーと2部作をみてくつくづく思いました。
武力闘争にこだわる理由だけが不可解なままです。
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WOWOWでやっていて・・・ (ももママ)
2009-02-21 09:21:17
>Hiroshiさん
「モーターサイクル~」はWOWOWでやっていたので、録画して見ました。これもあわせて3部作だとおっしゃっている方が多いのも、うなずけます。
重いけれど、見ておきたい1作です。上演劇場が少ないのが残念でしたね。
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基礎知識が必要で (ももママ)
2009-02-21 09:23:21
>たいむさん
おっしゃるとおり、とことん、純粋な人なのですよね。その上、失敗しても「この失敗から学んで欲しい」と崇高な思想は曲げず、最後まで前向きです。
同じく、武装闘争しか方法がないと思ったあたりが、とても残念でした。彼の時代的限界でしょうか?
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