自分でつまづき右足を強打
恥ずかしさで家へ一目散
あいにくと言おうか
幸いと言おうか
妻は外出中
数時間の湿布で通常のことが
ほぼ出来るようになったので
妻に話すつもりはなかった
笑われて茶化されるのがオチ
だが仏前での不恰好な姿
それを見せるとなると
話さなければならない
これがむずかしい
爺としてはその転倒は
しかたのないもの
避けられなかったもの
極力そっちの方向で治めたい
色白の受付美人に
ちっょと気分が浮かれてしまって...
などと言おうものなら
妻の強烈なローキック
それで左右の足の痛みの
バランスがとれたとしても
ごめんこうむる
ビルの入り口に段差があり
それはとても危険
多分多くの人が転ぶだろう
そんな事言えば
妻は殴り込んでいくかもしれない
慰謝料狙いで
痛さの程度の表現も微妙
痛くてたまらない
そんな事言えば即強制入院
10年前だっただろうか
大ケガをして爺が初めて入院
その保険金は彼女の指輪に化けた
それ以来妻は虎視眈々
だけど爺は大の病院嫌い
入院なんて真っ平ごめん
爺の不注意で
階段の最後の段をふみはずし
こけてしまった
まだ足を深く曲げると痛むが
すぐ治りそう
そう報告した
これで妻も爺を茶化せない
つい数ヶ月前
家の階段で足を踏み外し
大騒ぎした張本人
それが彼女だから
めでたしめでたし