余りの驚きで
さすかの温厚な爺も
妻に対して
ついに禁句を口にしてしまった
「バッカじゃないの~」
「こんなの食べるわけないじゃ~ん」
昨年の11月の出来事なのだが
妻に初めて猫缶の買物を依頼
買ってきた十数個の猫缶
だが見慣れぬ緑色
そして驚いた
ツナのほうれん草添え
ツナのトマト添え
そして
前述の禁句がつい出てしまった
禁句とはいえ
何回再現されても
爺は同じことを言う自信がある
その猫缶を
爺の予想通り
モこ助が見向きもしなかったら...
妻の
「だったら自分で買いなさいよ」
...の捨て台詞を
甘受するだけでよかった
ところがなんと言うことでしょうか
食べること食べること
ただでさえ少ない
爺の権威の失墜の瞬間である
妻の勝ち誇った顔
ニンマリした彼女の顔
今でも忘れない
そしてこの事が
今でも影のようにつきまとう
昨年末
妻が転倒して
アゴと胸部を強打した
アゴが腫れて
まるで女アントニオ猪木
ふきだしそうなのをこらえた
2週間ほどで腫れは引いて
痛い痛いの連呼から開放された
そう思いきや
今度は胸の痛みを訴える
「骨が折れてるかも...?」
そう主張する妻に
「折れてたら
そんな痛みではすまない」
と言う爺を無視して
病院へ走った
結果
「レントゲンでは大丈夫」
「2週間ほど様子を見ましょう」
爺と全く同じ先生のご託宣
なのに
レントゲンでも映らない骨折かも?
そう言ってしきりに痛がる妻
「打撲だから
しばらくは痛むが
日にちがたつと治るよ」
そう妻に言っても
納得いかないようす
その妻が
最近胸のことを言わない
「胸は...?」
って聞く爺に
「治った」
とってもシンプルなご返事
そのうえ
それがどうしたの?
...てな言い回しにカチンときた
「あの大騒ぎはどうしたの?」
「全て爺が言ったとおりでしょ」
そう問う爺に
たった一言
「ねこ缶もね」