曠野すぐりBLOG 「小説旅日記」

「途中から読んでも内容の分かる連載小説」をいくつか、あと日記を、のんびりと載せていきます。
 

小説・立ち食いそば紀行  小諸の進出(2)

2011年08月07日 | 立ちそば連載小説
 
《主人公の「私」が、各地の立ち食いそば屋を食べ歩く小説です》
 
 
小諸の進出(2)
 
私は武蔵野線に乗り込み、一路南越谷に向かう。くだんの小諸そばは東武線の新越谷駅にあるが、新越谷駅と武蔵野線の南越谷駅はロータリーが一緒で、同じ駅だ。だから南越谷で降りれば事足りる。
小諸そばの埼玉2店舗は図らずも(図っているのかもしれないが)、2つの駅名を持つターミナル駅にそれぞれ進出したことになる。
 
武蔵野線はギャンブル線だ。府中本町から始まり、いくつものギャンブル場の最寄り駅となっている。そのため、郊外を走っている路線にしては立ち食いそば屋を抱える駅が多い。立ち食いそば好きとしては店がたくさんあるのはうれしいが、しかしギャンブル客を当て込んでの店舗ゆえか、どこも狭くて薄汚れているのが残念なところだ。もっとも、これが本来の立ち食いそばの姿なのだが、これだけ都内の立ち食いそばがきれいな店構えだと、時代に取り残された感は否めない。
 
武蔵野線沿線はJR系の立ち食いそばが多いが、そのJR系、そばはまだいいとしてイナリの味が落ちる。イナリというのは、立ち食いそばではサイドメニューの王様と言っても過言ではないので、これの味がイマイチというのは大きなマイナスだ。小諸はイナリを含めたご飯物の味も確かなので、この点でも差を付けられてしまっている。今後もし本格的に小諸が埼玉進出を図って来たとしたらどうなるのだろう。
 
私は武蔵野線の閑散とした車内で、本も読まず携帯電話も開かずじっと立ち食いそばのことを考えていた。
 
(小諸の進出・つづく)