曠野すぐりBLOG 「小説旅日記」

「途中から読んでも内容の分かる連載小説」をいくつか、あと日記を、のんびりと載せていきます。
 

古本屋ツアー・イン・ジャパン・イン・横浜 6軒目

2014年01月04日 | 彷徨う
イセザキモールを抜けて大通りを渡る。「たけうま書房」の看板はその大通りの歩道に、パチンコ屋の派手な出入り口に気圧されるカタチで佇んでいた。その看板に貼り紙があり、1周年記念ですべて1割引だという。これはいいときに来てツイてるなぁと思ったが、すべて古ツアさんが知ったうえでの行程なのだろう。
 
雑居ビルの入口を入り、階段を上がっていく。ホントにこの上に古本屋があるのだろうかというそっけない階段だが、なに、心配はない。踊り場に素朴な手書きの案内が置いてあるのだ。カクンカクンと踊り場で2回曲がって2階に上がると目の前が一面古本の棚。「おー」とも違う、「ざわっ」とも違う、とにかく文字に起こしづらい古本強者たちの野太いざわめきが起こり、皆で棚に張り付く。このツアー、女性はたったの1名なので上がる声は野太いのだ。
 
出発時にドトールで岡崎さんが「古ツアさんの古本屋での立ち居振る舞いを、みんなで観察やなぁ」と言って笑い合ったのだが、いざ出てみるとだれも古書店内で古ツアさんの振る舞いなど見ていなかった。私もそう。餌を目の前にふられた動物の如く、棚に向かってしまう。むしろ古ツアさんのブログを見ると、我々の方こそ観察されていたようだ。
 
たけうまさん、広い店内で寛いだ気分になる。
ヒヨコ舎の、作家の本棚の写真を集めた大判の本を見つけ、目次を見る。おぉ、やはり岡崎さんの名前が。振り向いて岡崎さんに見せると、「あ、これな。なんか本で自分の部屋見るの、妙な気分やなぁ」と笑っていた。階段の端にも一段ごとに本が積み重ねられていて、さすが古本のプロの家という感じだ。しかし岡崎さん、「でもこれ、まだきれいな時やわぁ」と付け加えた。そして一つのページを指さし、「今ここ、本が置かれて奥まで行けんもん」とさらに付け加える。
 
私はここで2冊購入。大栄出版「ルー・リード(ワイルド・サイドを歩け)/ピーター・ドゲット著 奥田祐士訳」、ST.MARTIN`S GRIFFIN「Belle and Sebastian/Paul Whitelaw」。実に満足な買い物だった。
 
古ツアさんがご主人に挨拶し、レジから出てきてこの界隈の古本屋のことなど話し込んでくれる。しかしこれが、ご主人という言葉を使うのが申し訳ないくらいスマートでおしゃれな雰囲気の方なのだ。
 
たけうまさんを出て、店の前の殺風景なスペースで今日の総括。古ツアさんと岡崎さんが短くまとめ、我々は階段を降りていった。
それにしても昼すぎに集まって、ぱたぱたと適度な歩行距離で6軒。これが神保町や中央線沿線、池袋などターミナル駅、というのなら分かるが、なにぶん関内。関内という土地を聞いて真っ先に古本を連想させる人はいないはずだ。そんなところで硬軟取り揃えて充実したツアーを組み立てる古ツアさんはさすがと唸るしかない。
 
そしてこのあと、ツアーの一行は懇親会へと進むのだった。
 
(つづく)
 

古本屋ツアー・イン・ジャパン・イン・横浜 3、4、5軒目

2014年01月03日 | 彷徨う
 
イセザキモール、碑のあるところから関内駅方面へ向かうと賑やかになっていくが、ツアーの一行は寂びれた方へ向かう。
 
懐かしさを感じる商店街だ。銀座通り、などという言葉が思い浮かぶ。こういうところにはくぐもった音の歌が流れているものだが、時節柄バンドエイドの「ドゥー・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス」が繰り返しかかっていた。ボノとジョージマイケルの部分だけがくっきりと聞こえる。
 
3軒目は「なぎさ書房」。私はここでもサッと店内へ。すでに日が傾いてぐっと寒くなっていたのだ。入口からすぐの文庫の棚を、じっくりと見ていく。そこから奥へ。ひと通り眺めると店外へ。ラックにあった古い「とれいん」を買おうか迷ったが、そのまま店をあとにした。
ちょっと歩いただけで4軒目の「川崎書店」。ここでもマンガを買おうか迷ったが購入せず。
店の前はシャレたワインバーで、そのとなりはレトロ感たっぷりのアメリカヤというスポーツ店。意味もなく、玉石混合という言葉が頭に湧く。
 
ここで喫茶店に寄ったが、なんともいいタイミングだ。数軒巡ってツアー内の雰囲気も暖まったところだったので、テーブルごとに会話が弾んだ。このツアー、集合は関内駅近くのドトールだったのだが、様子を探るように参加者が一人また一人と入店し、古ツアさんを中心に集まったものの言葉はほとんど交わさない。集合時の雰囲気は傍から見れば異常な感じだったろう。そのうえ古ツアさんの新刊を差し出しサイン会のようにもなっていた。
その状況から見れば、打ち解けたこの喫茶店ではごく普通のオフ会の様相だ。
古強者ならぬ古本強者が集まっているので、話は当然そっちに行く。熱心に話してくださる方が私の正面で、話は面白いのだが、間に観葉植物が立ちふさがっていたのがまいった。お互い片目だけが見える格好での会話となり、話の内容以上にその状況が特殊だった。
 
喫茶店を出て5軒目。ここは店頭の店名の文字が取れていた。残った跡は「立花屋」となっていたが、どうも違う店名のようだ。
通りをはさんで賭けない麻雀のお店があり、店内の一卓が店頭のモニターに映し出されていた。自転車に乗ったおじいちゃんが、それをじっと見ていた。
ここも購入は控え、いよいよ最後の「たけうま書房」に向かっていったのだった。
 
(つづく)
 


古本屋ツアー・イン・ジャパン・イン・横浜 2軒目

2014年01月02日 | 彷徨う
 
皆は箱をチェックしていたが、私は軟弱丸出しで、暖かい店内にスルッと入っていった。私はこのツアー一行の中で、自分が最も古本力が落ちるだろうと自覚していたので抵抗なく入っていけた。
 
1軒目の「中島古書店」のように、ここもまたシャレたレイアウト。ギチギチに本が積まれているという感じではない。徐々にツアーの人たちが入ってきたが、店内は広く、すれ違いに苦労することもない。けっこうな割合で雑貨も置かれている、余裕のある造りなのだ。
自分好みの本が多く、じっくり選んだのちに2冊購入。旺文社文庫「1008年源氏物語の謎/藤本泉」、京都書院アーツコレクション「御所人形/切畑健編」。
店内で暖まったので表に出て棚を見ていると、探していた中公文庫「ヘディン伝/金子民雄」を見つけたので再びレジへ。計3冊の購入となった。飛ばしすぎかな、とちらっと思う。
 
皆さんの購入も済み、店をあとにする。運河沿いは昭和を保存したような佇まい。ジャンバー姿のおじさんが多く、さながら競輪場の雰囲気だ。有馬記念の日でおじさんたちの話に買い目や狙い目が含まれていたので、特にそう感じたのかもしれない。
 
先頭を行く古ツアさんはスマートな体型でいかにも機動力がありそう。だからあれだけの古本屋をまわれ、ブログを書けるのだろう。古ツアさんの「古本屋ツアー・イン・ジャパン」というブログは2008年から始まり、おそろしいことに毎日更新されている。日々どこかしらの古本屋を訪問しているということだ。忙しいはずなのに、ブログの内容は濃く、文字数たっぷりで読み応えのあるもの。もちろん読み応えはあってもかた苦しさはなく、少々コミカルタッチと言ってもいいくらい読みやすい文章。私は好きで、毎日読んでいる。
どんな人が書いているのだろうと気になっていたところに、折りよく『古本屋ツアー・イン・ジャパン・イン・YOKOHAMA』という催し。それで参加した次第だ。
 
運河を渡って信号をいくつかすぎると、伊勢崎町ブルースの碑。そういえば古本ってなんとなくブルースだよなぁと碑を見ながら思う。碑の設置されているイセサキモールという歩行者道では弾き語りなどのイベントをやっていた。
 
(つづく)
 

古本屋ツアー・イン・ジャパン・イン・横浜 1軒目と2軒目の間

2014年01月01日 | 彷徨う
いつも当ブログをお読みいただいている皆さま、明けましておめでとうございます。
今年は昨年より頻繁にアップしていく予定ですので、よろしくお願いいたします。
 
 
ぞろぞろと、古ツアさんを先頭に列が進む。大通りを渡って京浜東北線(根岸線)をくぐり、大岡川を渡るとちょうど都橋商店街。呑み助には知られた、新宿ゴールデン街の一角を切り取って持ってきたような呑み屋の連なる建物だ。私もテレビでは観たことがあり、一度実物を見てみたいと思っていた。
これは意外な収穫だ。正直なところ、このツアーに参加するかどうかはかなり迷ったところだった。私の住んでいるのは東京北西部で横浜とはかなりの距離がある。そこへ持ってきて何かと忙しい12月。しかしそんなこと言ってたら、家からまったく出ないで年が終わってしまうことになる。それでエイヤッと参加に踏み切ったのだが、やはりこうやって一歩踏み出せばいろいろ面白いことに遭遇できるのだ。
 
都橋商店街は2階建てだが、ゴールデン街と違って一軒ずつに階段は付いてなく、運河側に渡り廊下があるカタチだ。廊下には、建物の両側にある階段を上がっていく。
昼なのでどこも閉まっていたが、ちょうど掃除で開け放していた店があったので覗いてみた。やはり想像通り5、6人でいっぱいという規模だった。なんだか、じっくり選んで購入した古本の一冊、それも文庫や新書でない一冊を持ち込んで、カウンターでひっそり呑みながらページをめくってみたいものだ。運河沿いにある、時代が止まってしまったような呑み屋街の小さな店で。きっと擦り切れてボロボロになった一冊の中に書かれた言葉が、より引き立つのではないか。
でもきっと、そんなふうに事は運ばないだろう。常連のおやっさんに話しかけられたり、音程の外れたカラオケを横で歌われたり、とてもゆっくり読めないに違いない。
 
運河沿いの道を進んでいくと、高架下に古本の入った箱が並べられてあった。ここがツアー2軒目の『黄金町アートブックバザール』なのだった。
 
(つづく)
 
 

古本屋ツアー・イン・ジャパン・イン・横浜 1軒目のその2

2013年12月26日 | 彷徨う
 
写真やメモなど、思い思いの行動がひとまず落ち着き、どういうわけか皆で顔を見合わせる。店は2階で店内が見えないので、どうも踏み出しづらい。皆の視線が古ツアさんに注がれ、先陣を切ることを促す。古ツアさんは笑顔でそれを受け止め、階段を上がっていく。数々の古本屋を訪ね歩いた経験から、足を踏み出しづらいというイチゲンの気持ちはよく存じているのだろう。
店というものはたくさんの種類があるが、なかで古本屋というものは、店頭で躊躇し、そのまま引き返してしまう率の極めて高い業種ではないだろうか。たとえば牛丼屋であれば、行こうと思って向かった者が店頭まで行って引き返すということは皆無と言ってよい。売られている物、店員、金額などすべてが把握でき、「どうしようかなぁ」などと躊躇することなく入っていける。しかし古本屋、ことに内部の見えない個人店では、イチゲン客にとって足を重くさせる気配がある。中島古書店にも、正直その気配があった。おそらくこの階段下で上を覗き込み、また今度にするかと踵を返した者もいるにちがいない。
しかしこの日の我々には心強い案内人、古ツアさんと古本のプロ、岡崎武志さんがいた。なので階段の途中に設置されている棚などに余裕をもって目を向けながら、鼻歌まじりに店に踏み込むことができた。
 
店内にはクラシックがかかっていて、西荻窪の音羽館を連想させた。店の方も若く、ずり落ちた眼鏡越しにジロッと睨みつけるふうでもない。私は心地好さを感じながら棚を眺めた。
中央に小物の販売台があり、パンフレットなども置かれている。こういう遊びのスペースがあると、客の心にも余裕が生まれる。そんな雰囲気もあってか、ツアーの一軒目ではあるが多数が本を購入していた。
 
「では、そろそろ行きますか」という岡崎さんの声で一同退店。私は買わなかったが、お店の方があいさつしてくれてうれしい。また来たくなる瞬間だ。
上るときには気付かなかった階段、帰りは頭を低くしてぶつけないようにしないといけない。頭上注意というところも音羽館に似ている。
 
全員が降りきり、もう一度皆で入口を見て、次の店へと向かっていった。
 
(つづく)