平成17年3月16日の続き
診察室はカーテンで仕切られていた。看護師さんが、そのカーテンを分けてどうぞというのに従って入っていくと先生は腰掛けたままどうぞと言って私たちに椅子を手で案内した。笙子さんは幾分私より後ろに引く。いつでも笙子さんはそういう姿勢なのだ。「どんな具合ですか」
とY先生はゆっくりとした口調で切り出した。
「最近忘れることが多くなりましたのでM先生のところに相談にい . . . 本文を読む
平成17年3月16日
N病院の受付は混んでいた。
私はKリニックで頂いたメモをカバンから取り出し、紹介患者予約票と保険証を渡す……と口に出して確認した。高いところに吊るされている案内板が5番であることを確かめて書類一式を渡す。
「少々お待ちください」といって受付嬢は私が差し出した書類をうけ取りカルテに書き込むと「水木さーん」と大きな声で呼んだ。目の前にいる私が「はい」と返事をしたのでびっくり . . . 本文を読む