長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

356.『木の鳥グランプリ』の審査員をしました。

2019-01-12 18:06:56 | イベント・ワークショップ
年末年始が慌ただしくて投稿が遅れてしまったが、昨年末12/21~12/23にかけて東京、足立区の千住ミルディスで開催されたバードカーヴィングのコンペティション『2018 木の鳥グランプリ』の審査員として参加してきた。

昨年から新しく始まったこのコンペの趣旨は「この大会は、バードカーヴィング(鳥の彫刻)を愛好する者が一堂に会してその作品を発表し、芸術性を競う場です。この大会を通じ、バードカーヴィングの普及と技術や表現力を高めることを目的とします」と開催要項に書かれている。

バードカーヴィングはアメリカを始めとして英語圏、カナダ、イギリス等の国々で盛んな立体アートの分野で、名前の通り野性鳥類を題材とした木彫刻作品である。特にアメリカでは歴史が古く19世紀の中ごろに発祥した。元々は、狩猟の囮としてのデコイ(カモの形をした木彫の浮き)から始まり、野生生物の保護上から狩猟対象としてではない鳥の写実的な木彫刻として発展してきたようである。つまり剥製の代わりのアート作品として生れたというわけである。1970年代後半以降、日本やアジア圏でも紹介され、制作者も増えつつある。

バードカーヴァーではない僕がこのコンペの審査員として呼ばれた理由は声をかけていただいた主催者の方々の話では「鳥の木彫刻以外の作家の目からみてどう見えるか、どう評価されるか」ということだった。当然、審査委員の中にはプロのカーヴァーも入るのだが、できるだけいろいろな観点から総合評価をしたいということである。
審査委員のメンバーとしては、叶内拓哉(野鳥写真家)・川上和人(鳥類学者)・鈴木勉(バードカーヴァー)・長島充(版画家)・松村しのぶ(造形作家)・松本浩(バードカーヴァー)の6名となっている。

応募部門は、①ステップアップ部門(初心者対象)、②コンペティション部門(上級者対象)、③ウッドスカルプチュア部門(自由な発想の木彫刻)という3部門に分かれていて、それぞれにライフサイズとミニチュアサイズのカテゴリーがある。僕が担当したのは②の上級者対象部門であった。12/21の夕刻には審査前のオープニングセレモニーがあり、このセレモニーと12/22の審査会に出席させていただいた。

22日、審査会当日の午前中、審査にあたっての注意事項の説明があり、昼食を挟んで、整然と多くの出品作の展示される広い会場に移動し審査会となった。各部門3名づつが審査する形式だが、僕が担当したコンペティション部門は他に野鳥写真家の叶内氏とプロカーヴァーの鈴木氏の3人で審査にあたった。鳥の生態、形態に詳しい叶内氏が実際の羽衣や羽の枚数、周囲の環境との整合性等を、僕が作品構成や美術造形物としての完成度を、鈴木氏がプロのカーヴァーとして専門的な技術面を主にチェックし総合的に上位作品を絞り、受賞作品を決定して行った。今回、出品作の合計は100点弱であったが力作、労作が多く、なかなか最終的な判断を決め兼ねる場面もあった。上位5-6名を選出してからの絞込みには時間がかかったが、審査員、スタッフ一同、納得できる作品に入賞を決定できたと語っている。ほぼ差がないところまで絞られ、最後に決め手となるのは結局はちょっとした「運」ということもあるのだなとつくづく感じたのだった。

僕はバードカーヴィングの審査というのは今回が初めてだが、平面作品(版画)とはいえ同じ野鳥をモチーフとして写実的に表現、制作している立場から参加させていただき、たいへん」刺激となり参考となる部分のある体験となった。
まだ日程は調整中だが今月か来月には審査員、スタッフ全員が出席する反省会もあり、次回に向けてのビジョンなども話し合われる予定である。このブログをご覧いただいている方々の中でバードカーヴィング作品をすでに制作されている方、あるいはこれから制作してみたいと思っている方がいらしたら是非、次回の「2019 木の鳥グランプリ」に揮って出品していただきたい。 


画像はトップが審査会場風景。下が向かって左からコンペポスター、審査会場風景、コンペティション部門のライフサイズ、ミニチュアサイズの各グランプリ作品とそのアップ画像、審査委員5名のスナップ(叶内氏は野鳥写真の講演会の最中で写っていない)。