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My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

人は男に生まれるのではない。男になるのだ。

2010-05-24 15:41:34 | 8. 文化論&心理学

って、ボーヴォワールが「第二の性」の中で言ってたフレーズのパクリ。
「人は女に生まれるのではない。女になるのだ。」と彼女は言って、
「女性らしさ」が社会的に作られたプロトコルに過ぎないと主張したのだ。

一方、現代社会では、女性も男性が多い世界で生きていくのに、逆に「男」を演じないとならないことが多々ある。
コミュニケーションのとり方や仕事の仕方・動き方だけではなく、話す内容まで。
男が大半を占めるコミュニティでは、話の内容がグラビア女優のことであっても、
えっ?って顔をして、相手に女性を意識させるようなことが憚られる場合も多々ある。

このような状況に適応していくうち、マンガ「働きマン」の主人公、松方弘子のように
「先輩、それって男目線ですよ」と後輩男子にまで言われるようになる。

しかし、こうやって「男」を演じるのって男性も一緒なんだな、と気が付いたのは、大学生のある時期だった。
男の人だって、もともと男に生まれたんじゃない、男らしさとか、頑張って身につけてきたんだな、と。

私は高校までは女子校だったが、国立大学の理系に入ったので、いきなり男子校に放り込まれた格好となった。
最初のクラスでは50人中、女子が3人。
その後、更なる理系の学科に進学したら、80人中女子が3人となってしまった。
周りの男の子に「女の子として」愛される才能が特に無かった私は、彼等とうまくやってSurviveするため、
「男」を演じるのが必須となった。

例えば、「論理的・客観的に話す」という、男性的とされる話し方の習慣をつけたのも、その一環だった。

多くの人が意外に思うらしいが、私はもともと論理的に物事を考えて、説明する、というタイプの人間ではない。
女子高時代は、そんなもの無くても、私たちは直感や共感で理解しあうことが出来ていたのである。
しかし、そういう思いつきや直感による話し方では、男の子達が誰も私の話を本気で聞いてくれない。
で、周りを観察して、論理立てて、客観的に話すのが鍵だということが分かり、訓練した結果、
誰よりも「論理的な人」に見えるようになり、理系という男性社会?でもそれなりの地位を確保するに至った(笑)

女の子のコミュニティというのは、誰かが可愛いねといったら賛意を示すとか、「共感」がコミュニケーションのベースになっている。
例えば、「そのサングラスがカッコいいね」というとき、女の子のコミュニティなら、ただ「カッコいいね」と言えば、「そうだね」となって終わる。

それが男の子のコミュニティでは、それが何故カッコいいと思うのかを、いちいち論理的に説明しないとならない、というのが私の印象だった。
「その服に似合っていてカッコいい」とか「○○のしてるサングラスに似ていてカッコいい」とか。

ところが、色んな男の子と(お友達として)お付き合いして分かったのは、
別に彼等も生来、論理的に話すわけではないと言うことだった。
男どおしのコミュニティの中で、そういう話し方が評価されるから、だんだん身につけてきたのだ。

小学生のころから、男どおしでは、分析的に、論理的に、客観的に話す奴が評価される。
例えプロ野球の話をするのであっても、ただ「あの選手が良い」というのでなく、その理由を論理的に分析できる奴がすごい、となる。
だから、そういう話が出来るように、いつのまにか訓練する。

話の話題も、男の子達は「みんな」に合わせて頑張って努力してるらしい、ってことがだんだん分かった。
プロ野球の話でも、グラビア女優の話でも、私はどうやって興味を持っていいものか当初はかなり戸惑ったが、
男の子でも、そういう話が好きではない人が結構いるということを知った。
こういう話題は、イギリス人にとっての天気の話と同じで、男の子コミュニティの中での潤滑油に過ぎず、
みんな結構合わせているのだと。

だから、逆に私の方からみんなの共通の話題になるような面白い話を提供すれば、
別に話の内容は、野球やグラビアじゃなくても良いのだということが分かってきた。
もともと話好きな私は、こうやって男の子コミュニティの中での話題提供者になっていった。
(そして今に至る)

お酒は小さいときから好きだったので、全く苦労しなかったが、
男性の中には、余り酒が好きではないのに、周囲に合わせて一生懸命酒を飲んだり、
飲んでないのにハイになってみたりしているひとも結構居ることも分かった。
これが女の子なら「飲めないの」で許されるのに、未だに男だと何となく許されないような雰囲気なこともあって大変だな、と思った。

それから、私は「男らしい決断力」とか「さっぱりした竹を割ったような性格」とか、
「リスクを率先してとる」というものも訓練で身につけた気がする。
男の人が目指してるものを理解して、男性社会で評価されるように。
もともと忘れっぽい性格なので、「さっぱり」の方は特に苦労しなかったが、
決断力については、昔は優柔不断だったのが、大学時代から急に「決断が早い」人になった。
論理的にものを考えて、感情的な部分を切り捨てれば、さっさと決断できることも分かったのだ。

こうして私は、大学に入って「男社会」に生きるようになってから13年間、知らず知らずのうちに「男らしさ」を磨いてきた。
その結果、あらゆるところで男性に「俺達より男らしい」と言われるようになった(笑)(→参考記事
でも私の「男らしさ」というのは、生来のものではなく、男社会に生きながら、訓練で身につけたものなのだ、ということを今ここに告白しておく。
世の男性諸君が「男らしさ」を知らず知らずのうちに身につけてきたように。

この前リーダーシップのクラスで作文して気が付いたのだが、
アメリカに来てからの私の課題は、自分らしさとか、女らしさとか、男らしさという、今まで身につけてきたスキルと価値観を融合し、
素の自分で居ながら、どんな国際社会でもうまくやっていけるしなやかさを身につけるということだった。
この2年間で、そんな都合の良いことが自然と出来るようになっただろうか?
素の自分は以前より出せるようになった気がする。でも自分勝手になっただけ?

「人は生まれながらにリーダーになのではない。リーダーになるのだ」
「人は生まれながらに親なのではない。親になるのだ」
「人は生まれながらに国際人なのではない。国際人になるのだ」
まあ、なんでもそうなのだ。

要は「自分らしさ」も含めて、「らしさ」とは周囲の影響を受けながら、訓練で身につけていくものなのだ、
と今は思う。

働きマン(1) (モーニングKC (999))
安野 モヨコ
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21 Comments(10/1 コメント投稿終了予定)

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参考文献 (sfdx)
2010-07-05 17:17:17
性差が先天的か後天的かの話題なら, 次の本は抑えておくべき文献になると思います.

「ブレンダと呼ばれた少年」
原書: As Nature Made Him: The Boy Who Was Raised as A Girl

Wikipedia 日本語: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%A4%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%9E%E3%83%BC
Wikepadia 英語: http://en.wikipedia.org/wiki/David_Reimer
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ミッドライフクライシス (野田一丁目。)
2010-06-01 21:45:28
せっかくコメント返して頂いたのに放置していて申し訳ないです。
確かにミッドライフクライシスなのかも知れませんね。本当に最近、それも数カ月で今まで興味があったことに全く興味がなくなったし、全てが他人事のように感じてしまいます。
とりあえず価値観が固まるまで半年ほどネットから離れてみます。(まあ1992年から使っているハンドルネームですので、今までも休止期間が半年とか3年とかあったんですが)
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Unknown (sardegna-mare)
2010-05-28 16:32:07
こちらのブログ今日初めて訪問しました。
最初男性が書いているブログだと思って読んでいたんですが、女性だったんですね!

興味あるお話ばかりで、いつの間にか引き込まれてしまいました。
これからもちょくちょくお邪魔します。
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『人』になる (趙秋瑾)
2010-05-27 16:29:30
Lilacさん、おひさしぶり。

敷衍して言えば、「人」は「人」になろうとして「人」になるのだ、とも言えるのでしょう。人の形をしていて、人でない人はずいぶんいますもの。

斉景公問政於孔子、孔子対曰、君君、臣臣、父父、子子。(論語)

父は父らしく、子は子らしく・・・というのが「政治」のあるべき姿だと孔子は言うのですが、男が男らしくというのも広い意味の政(まつりごと)の世界、つまり公の場でのあり方なんでしょうかね。

秋 
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らしさ (Lilac)
2010-05-26 00:55:58
@??さん
>今では自分から男になろうとしなければ、女になろうとしなければ、いわゆる、男らしい人、女らしい人にはなれないのかもしれない

ま、らしくならなくてもいいのかな、という気もします。
ただ、自分らしさ、というものも周りの影響を受けながら自分が規定しているものに過ぎない、と思ってますが。
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Unknown ( )
2010-05-25 10:55:27
社会的な男らしさ、女らしさというものは確かにあるけど、体の構造まではどうにもならんよね。
そして、生まれたときの体の構造によってある程度、その決められた性のスタイルで生きていかなければならないと考えるとやはり、人は生まれながらにして男であり、女なのではないだろうか。
出産が女らしくないと言えば嘘になるし。
とは思う。

だけど、社会の変化からみると男と女で明確な役割分担が昔ほど、なくなったっていうこともあるかもしれない。
だから、昔は社会が自動的に男として、女としての教育をしてくれたものが、今ではそれがない。むしろ、過度な男性的な考え、女性的な考えは排除される方向にある。
だから、今では自分から男になろうとしなければ、女になろうとしなければ、いわゆる、男らしい人、女らしい人にはなれないのかもしれない。
まとまらない文章でごめんなさい。
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Unknown (Lilac)
2010-05-25 07:03:45
@Yumemakuraさん
そうか、やはり女性は男性論をやるべきですかね(笑)
今後は男らしさは女性が規定してやる、と。
ボーヴォワールも本当はそこまでやっちゃえば良かったんでしょうが、あの時代ではそうも行かなかったのかも。

@野田一丁目。さん
いや、そんなにSTの人も嫌いってことはないですよ。
性格の良い御仁はみんな好きです。
たまに本質から離れたところで細かく意地悪な突っ込みをする人に「面倒だな・・」と思うくらいで。

中国では不惑とかいいますけど、40代半ばの男性って、大きく性格が変わるって言いますよね。
ミッドライフクライシスなんて言葉もありますし。
(同じことを女性は三十代半ばで迎えるとも)
MBTIも大きく変わるんだと思います。
でも、きっと50歳になると「知天命」なのではないかと。
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MBTI (野田一丁目。)
2010-05-25 06:19:46
10年ほど前に何かの研修でMBTIを受けた結果、ENFPでした。でも今はISTJっぽくなっていると思うなあ。Lilacさんに嫌われそうだ。(笑)
自分がなりたい自分になるために40代前半までは想定の範囲内で生きてこれましたが、ここ数年は全くの想定外です。半年先の自分が見えない状態です。(苦笑)
返信する
ボーヴォワール 続き (yumemakura)
2010-05-25 05:28:05
ボーヴォワールの「第二の性」を読んだことはあるが、何が書いてあったかは忘れてしまったが、女性による女性論ほど興ざめなものはない。
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ボーヴォワール (yumemakura)
2010-05-25 04:43:09
ボーヴォワールがでてきたのには少しとまどった。私が学生の頃、ボーヴォワールはサルトルの女房として有名だった。実存主義が人気絶頂の時代でしたが今はすっかり人の記憶から消え去った。サルトルの本の面白いタイトルを今でも覚えている。いわく「嘔吐」「出口なし」「壁」「存在と無」などなど。
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みなさま (Lilac)
2010-05-25 03:15:30
@YSJournalさん
そうか、私、男の才能があったんですね。
それはもったいないことをしました。
フランス革命の時代に生まれたらオスカルになれたかもしれないのにっ!(それか)

スポーツは才能-YSさんはあれだけ素晴らしいスコアが取れてしまうのですからゴルフの才能があるのでしょうね。もちろん山も谷もあるかとは思いますが。
タタナノの記事読みました、コメント書く前に考えていたところです。

@HirokiMoriさん
いや別にキモくないですよ。面白いですね。
そういえば最近は厨房に立つパパが多いので、おままごとをやる男のこが増えてきたとか。

私の友人がTwitterでつぶやいてましたが、「そもそもオスとは、単一性による脆弱性を回避するために作られたものなのだから、By definition 性差があって当然なのだ」
生まれつきの性差があるから面白いんだと思いますヨ。
そして、個体差が性差を上回ってしまうことも。

@kirikuzudoさん
何に悩んでらっしゃるか分かりませんが、救われたなら嬉しいです

@Willyさん
Willyさんの記事は、私の好みの理系男性っぽくて好きです。
性別があらわれてるほうが良いです(笑)

もっとも理系男性でも大局観がなくて単に理屈っぽい人(MBTIで言うとST)は、私は極端に苦手ですが。
と、好みを主張してみる。
返信する
Unknown (Willy)
2010-05-25 02:46:18
私は本当は性別を隠したままブログを書きたかったです。
でもそれは無理だなと思って諦めました。
Lilacさんならできそうですね。
返信する
ちょっとだけ救われた (kirikuzudo)
2010-05-25 01:14:32
>人は生まれながらにXなのではない。Xになるのだ。

どういうXになるのか、自分で決めていいんだよな、と教えられた気がします。
ありがとう。
返信する
Unknown (HirokiMori)
2010-05-25 01:07:50
概ね同意なのですが,一点だけ.

社会的な適応から「男らしさ」「女らしさ」が強化されるのは
おっしゃる通りだと思いますが,やはり認知的な性差はあるようです.
心理学的な観察としては,まだ社会的な環境にさらされてない
産まれたばかりの新生児が他人の顔を見る頻度が
性別で優位な差があるばかりか,同姓であっても羊水のテストステロンの濃度と相関があったそうです.
他のデータからも,男の子は無生物に興味をもち,女の子は生物的なものからの
知覚情報を選好する場合が多く,
女の子の共感性はそのバイアスが社会的にも強化された結果と見ることができます.

こういうツッコミはキモいですね.
ハイ.すいません.蛇足でした.
返信する
才能 (ysjournal)
2010-05-25 00:51:57
Lilacさん
男の才能の無い人は男になりませんので、潜在的に会ったのだと思います。

素の自分は、常に変化すると思いますが、最後は、人格形成された頃の自分に戻っていく様な気がします。(幼児返り?)

自分勝手には違いないのですが、それがその人ですから、それで良いのです。(バカボンのパパみたいですけど)

直感と論理の関係も同じ様なものでは無いでしょうか?

訓練は必要だけど、才能の多寡で至る高見は決まっている様な気がします。スポーツ等では、これが顕著です。但し、社会生活等では、色々と複雑な要素が絡み合うので、訓練でカバー出来る(もしくは、訓練でしか身に付かない)スキルが多くなると思います。

お酒の件は、先に突っ込まれてしましたが、まだ小さいときの特定がされていないので、気になる所です。

そのうち、片肌脱いだLilacさんと差しで、チンチロリンかコイコイをしてみたいものです。
返信する
コメント有難うございます (Lilac)
2010-05-24 23:19:44
@ツバメさん
ナイス突っ込みですね!

@27tarouさん
そんなことはありません。
もし小さい頃から同一障害で悩んでいる、というわけでなければ、胸に手を置いて考えれば、きっとすぐに結論は出るように思います。

@くまさん
予想乙です。
しかし「世の中にはいろんな国立大や女子高が沢山あることを知っておいて欲しいんデス」(のだめ風)

@Nagasawaさん
そうですね。ただ「好かれる」と「もてる」は違うと思います。
私の友人には女性にとても好かれる男性がいますが、それは彼が女性の気持ちを分かりすぎて同じように振舞えてしまうからであって、
女性は彼のことを友達としか思っていないと思います。
自分がどちらになりたいかを見極めるのは重要かと。

@Icyさん
これはこれは(ブログでは)お久しぶりです。
じゃあ今度貸してください。
返信する
Unknown (icy)
2010-05-24 21:12:13
recommended reading.
エリザベート・バダンテール
「XY - 男とは何か」

男もたいへんなのです。

http://www.amazon.co.jp/XY%E2%80%95%E7%94%B7%E3%81%A8%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%8B-%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%82%B6%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88-%E3%83%90%E3%83%80%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%AB/dp/4480863052/ref=sr_1_2?ie=UTF8&s=books&qid=1274703050&sr=1-2
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Unknown (nagasawa)
2010-05-24 20:51:11
>で、周りを観察して、論理立てて、客観的に話すのが鍵だということが分かり

このようにまず気づくことが重要ですね。
Lilacさんは、上手に男性社会を入っていけるところをみると、すごく器用だなって思ってしまいますが、例えば、男性から好かれる女性の必須要件を気づいた場合、男性から好かれる女性にもなれるんでしょうか?
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Unknown (くま)
2010-05-24 20:35:58
Lilacさん桜蔭→東大理系だと予想してみる。

あとMBAとったらやっぱり起業するんですか?
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Unknown (27tarou)
2010-05-24 18:52:36
なんだか自分が男なのか女なのかよくわからなくなってきた

ジェンダー次第で自分が男なのか女なのかかわってくるのか
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Unknown (ツバメ)
2010-05-24 16:12:10
>お酒は小さいときから好きだったので、全く苦労しなかったが、

おや?どさくさにまぎれておかしなフレーズが。。。
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