My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

都市化する世界-私が今年考えたいテーマ(後編1)

2012-04-29 16:03:56 | 4. マクロ経済学

さてさて、先週の「私が今年考えたいテーマ」の続き。なんか長くなりそうな気がするので、後編を二つに分けて後編1と後編2にしようと思います。最初は、私がずっと長いこと興味がある都市化。去年も「GDP世界一の都市・東京」という記事を書いたりしていたが、将来は世界の人口のほとんどが都市に住むようになることを考えると、効率化した、ちゃんとした都市を作っていかないと大変なことになるだろうな・・・という直感があって、都市というものに非常に興味があるのだ。

1. 都市化する世界

水、食料、エネルギーに並んで、世界的に注目されている分野として「都市化」がある。今後数十年の間に、世界の人口がどんどん都市に流入して行き、世界の多くの人が都市で生活するようになるという現象だ。特に、アジアの新興国を中心に人口密度の高い都市が増えていくため、環境問題とか、水やエネルギーが不足する問題が起こりやすくなるだろう。だからそれを防止する策を講じなければ、ということで国連や各国政府が「スマートシティ」などのプロジェクトに積極的に取り組んでいる。

こういう予想に基づいて、国連ではWorld Urbanization Prospectsという報告書を二年に一度出している。
このページから、各国の都市部と田舎(農村部など)に住んでいる人口を出して遊べるようになっている。
この予測に基づくと、2050年までに、世界人口の7割が都市に住むようになる
(注:国連データでは人口50万人以上の都市圏を都市と定義している)

2. 何故「都市化」するのか-中国、インド、アフリカにも「サラリーマン(注)」比率が増加するから(笑)。ちゃんと書くなら第二次、第三次産業にシフトすると人口集積が必要になるから

何故、今後人口が都市に集中するのか?それは今後は新興国を中心に経済成長し、それらの国で重要な産業が第二次、第三次産業へとシフトしていくからだ。工業などの第二次産業や、サービス業などの第三次産業は、資本や労働力が集積することで価値が生まれるため、人口が集積する場所-都市で発達するようになる。今までは農業などの第一次産業が中心で、人々が農村や漁村に住んで経済活動をしていた新興国において、工業やサービス業が経済の主体となることで、人々が都市に流入するようになるのである。これが世界で都市化が進む理由である。

いまいち感覚がわからない人は、日本の歴史を紐解いてみると良いかもしれない。
同じページで、項目にUrbanとRuralの二つを選び、地域で日本を選ぶと、日本が経済の発達に伴ってどのように都市化してきたかがよくわかる。

日本で戦後に工業化が大きく進み始め、池田勇人首相などが「国民所得倍増計画」を掲げていた1950年代、1960年代は都市化が最も進んだ頃であるのがわかる。京浜工業地帯(東京、川崎市など)、阪神工業地帯、中京工業地帯(愛知、三重)などといった四大工業地帯や、その他の工業地域といわれる場所に鉄鋼や化学など重化学工業のプラントや機械、電子などの中小企業が集積し始め、農村部から職を求めてたくさんの人口が流入してきた。その後、1970年代にはサービス業の就業比率も徐々に高くなり、いわゆる「サラリーマン」と呼ばれる人たちが増えて、東京や大阪、名古屋といった都市部に人口が流入し続ける。そして2010年には日本の7割の人口が都市部に集積するに至っている。

これと同じようなことが今後は、中国、ベトナムやインドネシアなどの東南アジア、そして東欧、ブラジル、アルゼンチンなどの南米諸国、そしてインドやバングラデッシュ、アフリカ諸国という順で、次々と起こっていくわけである。現在は農村部に多く人が住んでいるような国々でも、工場労働者、そして「サラリーマン」(注:サービス業の就労者をそのように呼ぶのであれば、ということ。別にサービス業で起業してる人も多いかもしれないが)が増え、多くの人が都市部に住むようになる。このようにして2050年には、世界人口90億人のうち7割もの人口が都市に住むようになるわけだ。

2050年にはインドに「サラリーマン」や「OL」が増えたり、アフリカで「工業労働者」がほとんどになって、みんなが都市に住んでる、というのはまだまだ想像できないかもしれない。でも、実際に中国などではそういうことが起こりつつあるわけだ。都市と農村で戸籍を分けている中国は、農村部から「農工」と呼ばれる、都市の戸籍が無い人々が職を求めて、大量に都市に流入している。この人たちは暫くは労働者として生活しているわけだが、何とか子供を教育にありつけさせ、工業労働するよりも高い給与を保証されるサービス業に勤められるように仕立てる。そうして都市で大企業とかに勤めて、サービス業に従事する人口が増加する。こういったことは、徐々にインドやアフリカ諸国でも起こっていくようになるだろうと考えられる。

さらに興味がある人は、Gapminderなどのツールを使って、産業別人口割合と都市化が密接に相関していることを確認してみると良いかも。

3. 新興国各国はどのような都市化をするのだろうか?-国によって異なる都市の発達形態

そんなわけで、これから経済成長をする新興国各国は、次々に都市化が進むようになる。そうすると、ちゃんと都市計画を考えて、都市を作っていく必要があるのだが、各国がどんな形で都市化を進めていくのかっていうのは結構面白いテーマである。

(余談だけど、日本の大学では「都市開発学科」みたいな学科が大人気だった時期があったけど、最近は大手ゼネコン就職不人気で、人気が落ちているということを聞いたことがある。世界全体では、都市開発がどんどん重要になるんだから、日本人の学生もこういう勉強をして、世界に羽ばたいていけばよいのに、と思う。今後は日本で勉強した後、中国やインドのディベロッパーに就職するというのもひとつの手では無いだろうか?)

例えば、日本とアメリカは同じ先進国だけど、まったく都市化の様相が異なる。以前書いた「GDP世界一の都市・東京」から、国別1位の都市のGDP比率を引用してみる。このときは人口ではなく、GDPを議論の対象にしてたので、GDP比較なのだが、東京都市圏(人口3700万人)が国のGDPの3分の1を占める日本に対し、NY都市圏(人口約2100万人)はアメリカのGDPの10%に過ぎない。中国は上述のようにそもそもまだ農村部の人口やGDP比率が高いということもあるが、最も大きな都市である上海が国全体のGDPに占める割合はたったの4%だ。

では、第一位の都市が低い米国では都市化の割合が低いのかというとそうではない。下の図を見ればわかるように、なんと85%以上の人口が人口50万人以上の都市圏に住んでいる。

つまり日本やイギリス、フランスというのは、少ない数の大都市が経済を牽引しているモデルであるのに対して、米国は、都市は多いものの、小都市が国中に分散しているモデルと考えられる。実際どうなっているかというと、

1. 2100万人のニューヨーク経済圏
2. 1700万人ののロサンゼルス経済圏
3. 1000万人のシカゴ経済圏
4-7. 700万人規模のワシントン経済圏、フィラデルフィア経済圏、ボストン経済圏、サンフランシスコ経済圏
8-10. 600万人規模のダラス経済圏、ヒューストン経済圏、マイアミ経済圏

といったように、東京ほどには大きくないが、数百万人の人口を抱える都市圏(または都市的集積地域:Agglomeration)が、国中にばらばらと広がっているのだ。
(参照:http://www.citypopulation.de/world/Agglomerations.html

更に、ヨーロッパというのは、人口を1000万人を超える都市圏はロンドンとパリ以外に存在しない、というまたまた不思議な都市の発展をしている。例えばドイツ随一の経済都市であるフランクフルトですら都市圏としては200万人程度、ベルリンも400万人程度、と一つ一つがアメリカより更に小さい。こういう小さい都市がたくさんあるのがヨーロッパの多くの国における都市の発達の特徴だろう。

というわけで、先進国をざっと3種類に分けるとこうなる

巨大都市経済圏一極集中型(例:日本、韓国、イギリス) 東京、ソウル、ロンドンなど、人口3000万人とかに達する巨大な都市圏が国内に3-4個、または1個とかしかなく、そこに都市人口のほとんどが集中しているモデル。日本だと東京、大阪、名古屋、福岡の4極。こういうところは、経済の効率性は高い一方、その一極が地震や洪水などの天災に襲われると国全体がかなりのダメージを受ける。

大規模都市経済圏が多数分散型(例:アメリカ) ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、ワシントン・・・といった形で人口が500-1000万人規模の都市圏が大量に国中に分散しているモデル。経済効率性は一極集中型よりも劣るが、地域ごとのさまざまな形の経済発展が可能、という意味では理想的。また地震等の天災リスクにも強い。

小規模都市経済圏が多数分散型(例:ドイツ、イタリアなど多くのヨーロッパ諸国):人口500万人を超える都市圏は無し。それより小さい都市圏が国内に大量に分散しているモデル。経済効率性は非常に劣ってしまうが、地域ごとのさまざまな経済発展が可能だし、天災リスクに強い。

4.新興国は今後どんな都市の発達をするかを考えるのは、これらを市場にしたい日本企業にも重要

国土が広い中国が、今後どんな発展をするかだが、なんといっても人口が10億人と多いので、1の日本と2のアメリカを掛け合わせたようなモデルになる可能性が高いだろう。つまり、人口が2000万人を超える東京やNYのような都市圏が、上海、広州、北京以外にもバラバラと十箇所くらい生じたりする、というイメージ。そう考えると、今後中国では、東京のような人口密度の高い都市を、国内で10箇所も運営していかなくてはならないということで結構大変である。ゴミや水、電気の問題など、東京やソウルと同様、常に悩まされることになるだろうし、それが10箇所以上も生じるって言うんだから、大変である。相当計画的に都市を作っていくことが求められるだろう。

同時に、アメリカ同様、都市間の物流とかがすごく大きな量になっていくだろう。アメリカにおいて、さまざまな商品の物流費が占める割合は日本とかに比べると圧倒的に大きいのだが、これはアメリカが上記のような都市の発達をした国土の広い国だからだ。都市間の物流網を効率的につくることが重要になるだろう。米国の轍を踏まないよう、鉄道や道路の発達と、省に分けずに国家で投資するメンテナンス体制が重要になると思う。

インターネットとか携帯電話の通信なども、通信網が張り巡らされた日本の形ではなく、米国と似たハブ&スポーク的な進展になるだろう。そうすると技術的にもそういう通信形態を選ぶことになるよね。

それから、都市間の人間の移動は、新幹線などの高速鉄道より、航空機が主流になっていく可能性は高いんじゃないだろうか。国土が狭いし、たくさんの人口が東京とか限られた都市に集中している日本では高速鉄道が効率的だったが、都市どおしが米国のように離れる可能性が高い中国では、飛行機のほうが早いだろう。中国も沿岸部は日本のように都市が切れない感じになるので、高速鉄道も発達するだろうが、今後内陸部がバラバラと発展し米国のような都市の散らばり方をするなら、内陸部に向かっての交通の中心は航空機になるのではないか、と思う。
もっとも、これは中国が国家的に高速鉄道を産業として発達させたいか、航空機を発達させたいかというのにもよるので、一概には言えないが。
(アフリカのような国は航空機のほうが効率的な都市分散をするので、中国がアフリカを狙うのであれば、航空機を発展させる可能性も高いかもしれない・・・?)

ちなみにインドなどもムンバイ、デリーなどだけでなく、チェンマイとかたくさんの都市部が今後わさわさと出現し、中国と似たような経緯をたどるだろうから、同じような問題に悩まされる可能性はある。 

一方で、ホーチミン(サイゴン)とハノイの二極に人口が集中するベトナム、バンコク一極に集中するタイなどは、日本やイギリスと同様、巨大都市経済圏んが少数生じる可能性が高い。こういうところはこういうところで大変だ。国中のほとんどの経済が1つとか、2個の都市に集中してしまうので、地震や洪水のリスクは高い。現に、昨年秋は、バンコクが洪水に襲われて、大変だったばかりだ。

新興国では今後間違えなく都市化が進展する。そのときに、どのように都市が発達していくのかというのを考えることは、その国にどのようなインフラが必要になり、どのような産業を発達させる必要があるか、ということを考えるのに非常に重要になるだろう。これは、新興国を市場として、グローバル化を果たしたい日本企業にとっても重要な思考実験ではないだろうか。

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GDP世界一の都市・東京

2011-02-09 12:58:03 | 4. マクロ経済学

先日、日経産業新聞を読んでいたとき、一面に出ていた世界の都市GDPランキングが目に飛び込んできた。
PWCCが出している試算らしいが、以下のとおり。(リンク先に30位までのランキングがある)

なんと、東京が2008年の試算で、さらには2025年の予測でも世界で一位になってる。
2位がニューヨーク。

国別のGDPでは、去年くらいから中国に抜かれて3位に転落。
さらに先々週は、日本国債も格下げされて、あのスペインより下になっちゃったし。
「あー、もう世界の経済ランキング系では日本はダメだね~。
 こうなったら目指すはナンバーワンよりオンリーワン?(←古い)」
なんて気持ちになっていたが、こんなところに1位が残っていたか!という感慨。

それにしても、次なる疑問は
「何で国別GDPでは米国、中国に次いで世界3位なのに、都市別では東京が1位なの?」
ということじゃないだろうか?

1. 世界に誇る広大な関東平野にMegacity、東京

ここで1位になっている「Tokyo」とは、いわゆる行政区分の「東京都」のことではない。
東京都を中心とする関東平野全体の経済圏「東京圏」(神奈川、埼玉、千葉を含む)を指す。

都市の周りには、ベッドタウンや工場、オフィス郡が存在する。
実際、東京で働いて給与をもらっている多くの人は、実際には千葉や埼玉に住んでいたり、
郊外のベッドタウンに住む人が、買い物などの経済活動を都内や横浜などでするだろう。
このように、郊外の地区を都心の経済活動と切り離すことが出来ないため、まとめて大きな都市の概念として考えるのだ。
こういう大きな都市の概念を、英語でMegacity、もしくはMegalopolisなどと呼ぶ。

東京圏のMegacityは、昔から非常に面積が広く、人口が大きいことで知られる。
一般的にアジア地域のMegacityは欧米より大きいが、その中でも特に関東平野は、
世界のどの都市を擁する平野より圧倒的に広く、どこまでも「街」が切れない。
新幹線で行っても2時間以上「街並み」が切れないのは世界でも関東平野くらいだろう。
こちらのWikipediaのMegacityランキングを見れば明らかなように、東京圏はどの都市よりも圧倒的に多い、3400万人もの人口を擁している。
(二位は中国の広州地域で、2500万人)

つまり、この広い関東平野は日本の人口の約4分の1もの人口を有し、
加えて、そうは言ってもまだまだ強い日本の経済力に支えられ、東京圏のGDPを世界1位に押し上げているわけである。

2. 稀に見る、首都一極集中構造

そうは言っても、国別GDP1位2位の米国や中国に比べると、圧倒的に東京が国のGDPに占める比率は高いんじゃないか?
ということで、国別に最大の経済都市が国のGDPのどれだけを占めるのかを計算してみた。

米国は、GDPランキングに複数都市がランクインしているのを見れば分かるように、
経済発展がいろんな都市に分散。複数の経済中心がある状況だ。
中国も、まだ発展途上だけど、米国と似た分散構造で発達しそうである。

一方、日本は明らかに東京に一極集中の構造だ。
比較的、首都以外の都市が小さいイギリス(GDP5位)、フランス(GDP6位)と比較しても、その集中度は高い。

今後、日本全国の人口は減っていく中、東京圏の人口は増えると予想されている。
東京への富の一極集中は今後ますます極端になるだろう。

3. 世界でも住みやすい都市、東京

MONOCLEというイギリスの住宅雑誌で、毎年「住みやすい都市世界ランキング25」が行われている。
東京は、2008年まではランク外だったが、2009年にはミュンヘン、コペンハーゲンに次いで3位2010年には4位にランクインしている。
(ちなみに他には福岡と京都が25位以内にランクイン)

ヨーロッパ人だけではない。
アメリカでも西海岸のグルメなベンチャー金持ちの楽しみは、週末に「東京グルメ」を楽しむこと、なんて記事を以前Wall Street Journalで読んだこともある。
西海岸からなら、飛行機で10時間くらいで東京着きますからね。

東京は、物価が高い、英語が必ずしも通じない、など外国人にとっては難点もあるが、
広い公園・庭園も多く、緑も豊か、歴史的事物に加え美術・音楽など文化的にも奥が深い、
結構安全、提供される食事のバラエティと質などが海外で評価される理由だ。

4. こうなったら東京中心に高機能移民を呼び寄せ、巨大グローバル特区になれば?

極論かもしれなですが、この「住みやすい都市」であることを活用して、海外から東京に大量に「高機能移民」を呼び寄せたらどうでしょうね?

「高機能移民」というのは、単なる単純労働移民ではなく、
高い職能や学歴などを持ち、高い一人当たりGDPを生み出せる移民を指す。
(私の造語のつもりだったけど、最近良く使う人を見るから、そうでもないのかも。)
インドからのシステムエンジニア移民、フィリピンからの看護士移民、アングロサクソンのバンカー移民、留学して日本の一流メーカーに就職した中国人留学生などなどを指す。

以前の記事「不景気だからこその移民政策のススメ-My Life After MIT Sloan (2010/7/26)」で書いたように、
例えばシリコンバレーの起業家社会を推進しているのは、移民一世である。
なんと起業家の52%が移民一世であるという統計がある。

少子化で労働人口が減少する日本のGDPを保持したいなら、
起業などで経済を活性化させ、旺盛な消費欲で内需を回復させることができる、高機能移民の積極受け入れしか解は無いというのが私の昔からの持論。

で、東京が「住みやすい都市」であることを活用、加えて学歴や職能が高ければVISA申請簡単、税金も優遇、など高機能移民が更に住みやすい仕組みとし、巨大シンガポール的国際都市を目指したらいいんじゃないか。

もっとも高機能移民を呼び寄せるには、「住みやすい」だけでなく「働きやすい」ことが重要だ。
残念ながら、日本の多くの企業は、文書も話す言葉も日本語、
ビジネスで外国人とやりあうことに慣れていない人が多い、
結果として偉くなるのは日本人ばかり、という「働きやすい」環境とは言いがたい。
これは、日本企業が組織的にグローバル化したいなら、いずれ超えざるを得ない壁だ。

5. 東京一極集中で、世界一の便利な巨大都市を目指し、東京で日本の経済成長を牽引する解はあるか?

更に、この際東京圏のGDP比率が日本の5割を越えてもかまわないので、どうせなら効率よく東京一箇所に投資を集中させ、成長させて、
日本の経済全体を牽引させたらどうか、とか書いたら炎上しそうだなぁ・・・。

イメージとしては、東京圏は今より人口が増え、人種バックグラウンドも多様化している。
羽田のアジアハブ化や高速道路の利便性などに加え、全地域WiFiや電気自動車の充電設備など、「スマートシティ」な都市インフラが今より整備され、世界一便利な都市になっている。
また、保育園や移民のサポート施設など人々が安心して働くための社会インフラ、起業家を支える仕組みなどが今よりも整備され、世界で最も経済活動を行いやすい都市になっている。

その結果、アジア地域はもちろん、世界中の経済活動の中心が東京圏に移行している、という夢。
そのためにはそれなりの投資が必要なので、もう東京圏に一極集中で投資してしまえばいいんじゃないか、という論理である。

実際、日本の今後の経済成長を考えたとき、
アメリカみたいに(あるいは中国が今後そうなっていくと思われるように)複数の都市に経済中心が分散し、それぞれが異なる性質(NYが金融中心、Chicagoの製造業中心など)を持ち、
互いに連携して成長する、というモデルを日本が敷衍する感じが個人的には余りしないのである。

単純に「第二の東京」「第三の東京」が生まれるだけなら、
極論ではあるが東京一箇所に集中投資をして、世界一の都市を目指せばいいのでは、ということ。

というようなことを、世界都市GDPランキングを見ながら妄想していたのでした・・・。
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世界のマクロ経済指標の変化が超わかりやすいアプリ-GapMinder

2010-06-02 14:17:59 | 4. マクロ経済学

これはMITの先生に教えてもらったサイト。
世界の国々のマクロ経済指標の変化がひと目でわかる、という優れものアプリ-GapMinder
http://www.gapminder.org/world/

あらゆる経済学のサイトの中でも、特に優れている、ということで近年注目を浴びているサイトだ。
経済指標の歴史がすぐ分かる視認性の良さだけでなく、見た目にも美しく、さらに遊んで楽しい、素晴らしいサイト。
超オススメ。
あ、でも1度見ると1時間くらい遊んじゃうと思うから、覚悟して望むように(笑)
でもこのサイトで遊んでいるだけで、マクロ経済について色々なことが学べる。
(更にその年に何が起こったかを調べるためのWikipediaがあれば万全)

いろんな種類の指標があるのだが、ここでは一番メジャーな、縦軸に平均寿命を、横軸に一人当たりGDPをとったグラフをご紹介。
平均寿命はその国の国民の健康状況を表していると言えるし、一人当たりGDPは経済状況を表している。
時代の変化によって、その二つがどのように変わってきたかを追っていくことが出来る。
表示したい国はいろいろ選べるんだけど、ここではアメリカと日本を選んでみる。

■ 日本とアメリカの200年の歴史を比べてみる。

黄色がアメリカ、赤が日本だ。
当時、日本人の平均寿命は35歳、アメリカ人は40歳と、どちらも大変低かったことが分かる。
マルの大きさは人口を表していて、実は1800年当時だと、アメリカより日本の人口の方が多いわけだ

薄いマルで書かれてるのは他の国々。
ちなみに赤い大きなマルは中国、青い大きなマルはインドだ。
国とかは右側のバーで選ぶことが出来る。

さてここから、日本開国の1954年まで50年間、時計の針を進ませてみる。

この50年間、日本は経済状況(横軸=一人当たりGDP)も健康状況も何も変わってない。
度重なる飢饉に加え、鎖国のため、経済が完全に煮詰まっていたことが分かる。

一方、アメリカは北部を中心に産業革命を向かえ、劇的に一人当たりGDPを伸ばしている(横に伸びてる)。
平均寿命は40歳のままだ。
当時はまだ新生児の致死率が高く、平均寿命を下げていたのだ。

アメリカでずっと一定だった平均寿命は、19世紀後半から劇的に改善。
20年で10歳も平均寿命が延びるまでになる。
(ちなみに一度平均寿命が落ちてるのは1919年、世界大戦の直後である)

もう一つ劇的なのが、開国後の日本の経済成長だ。
1954年まで50年間止まっていた一人当たりGDPが、次の50年で約2倍に。
日露戦争と第一次世界大戦の2度の"勝利"を経て圧倒的に飛躍。
と、同時に平均寿命も改善してきた。

この年、1929年は奇しくもペニシリンが発見されて、世界の平均寿命が延びた年だが、
同時にアメリカを中心に世界恐慌を向かえた年でもあった。

1944年、敗戦に近づいた日本は経済成長が完全に止まり、平均寿命が40歳にまで落ちている。
多くの若者が戦争に行って死んだためである。
一方、同じその頃、アメリカは着実に経済成長し、国力を蓄えている。
平均寿命も65歳からほとんど変わっていない。つまり戦争で余り人が死んでないのだ。

マクロ経済学的に見て、これだけ2国に差があるのを見ると、敗戦した理由が分かる気がする。

そして日本の敗戦。
1945年の日本の一人当たりGDPは1900年頃のレベルにまで落ち、平均寿命も30歳まで落ちている。

それから10年、アメリカと平和条約を結ぶ頃には、日本は圧倒的な回復を果たした。
平均寿命が65歳まで伸びているのは、戦争が全くなくなったのと、医療技術の普及が大きいのだろう。
経済は戦前レベルに回復した程度だが、健康状態(平均寿命)は圧倒的に回復した。

一方、この頃のアメリカは、低成長に苦しんでいる。
朝鮮戦争に40万人を越えるといわれる大量の兵士を送り、国内の産業が停滞していたのだ。

そして1964年。
この10年間で、日本の経済は信じられないほどに伸びている。
イトヘン(繊維)・カネヘン(鉄鋼)景気、戦後に生まれたベビーブーマーが「金の卵」として労働力に寄与。
1960年の「所得倍増計画」通り、
所得(一人当たりGDP)は5年間で倍増、10年で4倍近くに成長した。

一方でアメリカは低成長を続けている。
アメリカの経済を支えていた製造業が、鉄鋼に始まって造船、機械工業に至るまで、
次々と日本企業に押しやられ始めたのはこの頃だ。

そして1970年代。
日本の所得(一人当たりGDP)は倍増を続け、ついにアメリカに追いつくか?というところまで押し上げている。
日本人の平均寿命がアメリカを越えたのもこの頃だ。

アメリカの低成長は続く。
エズラ・ボーゲルが「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を出したのはこの頃だ。
アメリカは、重化学工業にとどまらず、自動車から電機産業に至るまで、日本の新興企業に追いつかれ、追い越されていた。

1980年代に入っても、アメリカがほとんど成長していないのに、日本が成長、と言う状況が続く。
日本はこの頃からバブル景気だった。
平均寿命も、5-6歳ほど高くなった。

こちらが現在だ。
日本は失われた20年と言うけれど、経済成長の面からは、本当に失われたのは2000年代に入ってからのように見える。
特にこの数年は、一人当たりGDPが減少するまでに至っているようだ。

歴史を振り返りながら、Gapminderを見るだけで、2国のかなりのことが分かる。

■ BRICの歴史。

面白いので、同じことをBRICの国々にやってみる。
赤が中国、青がインド、黄色がブラジル、そしてオレンジがロシアだ。

このグラフも1800年から始まってるが、移民のおかげで着実に成長してるブラジルはさておき、
インドと中国の平均寿命が延びるにとどまっている。

ちなみにロシアが上がったり下がったりしてるのは、恐らくロシア革命のせいだ。

これが第二次世界大戦が終わるころ。
ブラジルの着実な経済成長と、圧倒的に平均寿命がのびる中国とインド。

これが近年になると、中国もインドも横に伸びている(=経済成長している)
日本とアメリカは離れた右上の方にいるが、追いつかれるのは時間の問題だ。

昼にTwitterでも話題になっていたが、ソビエト崩壊後のロシアはヒドイ。
平均寿命が縮むだけではなく、国民の経済状況も悪化している。

■Energy consumption
このグラフの横軸と縦軸は変えることが出来る。
縦軸を一人当たりのエネルギー消費量、横軸は一人当たりGDPのままにしてみた。
これで、どの国が「効率が良い」か分かるはずだ。

とりあえず、日本とアメリカ、環境に厳しいことで有名なドイツ、そして中国をと取り上げてみた。

日本は1970年頃までエネルギー消費を増やしつつ、経済成長もしている。
それが、石油ショックからエネルギー消費増加がぴたっとやみ、一時は現象まで至っている。
ドイツは日本とほぼ同等レベルだね。

それにしても2008年の中国の平均エネルギー消費者って、1965年の日本とほぼ一緒なのだね。 
これから、日本と同じレベルの成長を遂げたら・・・世界のエネルギー市場はどうなるのだろうか?
としばし考えつつ。

こんな感じで、色んな指標を学びつつ、ツールを使うと面白いです。

(追記)コメント欄で教えてもらいました。このGapminderの創設者の一人による講演。
Hans Rosling shows the best stats you've ever seen|TED.com
http://www.ted.com/talks/lang/eng/hans_rosling_shows_the_best_stats_you_ve_ever_seen.html

これを見ると、Gapminderの色々な使い方のエッセンスや注意点が分かります。
国連や様々な国際機関やNGOなどが集めてタダで手に入る統計を、集めてアニメーションを加えるだけでこんなにも面白い分析が色々出来るのが素晴らしいと思います。
1960年代の世界では、アジアと南米の貧困がアフリカ以上に問題だったのに、
その後アジアと南米は飛躍的な発展を遂げて、アフリカだけが取り残されていること。
インターネット普及率と豊かさ(一人当たりGDP)には相関があり、見方によってはインターネット普及率が豊かさを引っ張っているように見えること。
だから、One Laptop Per Childのような運動が大切だ、ということなど。
(そしてこの議論はいまだControversyだということも)

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ケインズvsハイエク-新自由主義論争を描いた分かりやすくて笑える映像

2010-03-10 12:33:32 | 4. マクロ経済学

前記事は重い話を書いたので、続きを書こうか迷ったが、ちょっと軽めの記事で口直しをすることにした。

アメリカの経済学関係者では知らない人がいないほど流行ってるらしいYoutubeの映像を教えてもらったのでご紹介。
経済学にちょっとでも興味ある人は、英語の勉強になるし、面白い。
現在のアメリカで論争になってる、ケインジアン流 v.s. 市場自由主義の双方の主張が分かりやすく、面白くまとまってる。

アメリカと言えば、長らく市場原理主義が幅を利かせていた。
が、金融危機後、オバマ政権になってから、Stimulous package初めとし、ケインジアン流の景気刺激策がもてはやされている。
なんでも、オバマが今回金融政策と財政政策に使った額の合計は、アメリカが第二次世界大戦に使った額を超えるらしい。

そんな現代アメリカに突然現れた、ケインズとその論敵のハイエクがラップで持論を展開するというビデオ。

とても簡単に言うと、景気が悪くなったとき、政府が負債を背負ってでも、減税や公共投資をすることで、景気を回復させられる、というのがケインズの立場。
ハイエクは「古典的自由主義」とも呼ばれ、景気の循環の仕組みを詳細に説明した人だ。
景気が循環するのは市場の原理。
市場の情報を全て知るのはどんな知識人でも不可能だから、介入は無意味であり、一部の情報に熟達した人々がいる市場に任せるべきである、とした。
政府の財政投資に対して、真っ向対立した見解を持つ二人は存命当時は宿敵だった。
その後、いくつもの修正理論が現れて、昔のケインズ主義を持ち出す人は今はいないんだけど、まあ細かい話はここでは割愛。

で、その二人は現代アメリカ(場所は恐らくニューヨーク)の経済のカンファレンスに招待されたが、
前の晩に、バーに飲みに行く・・・という設定。
「借金してでも財政投資」のケインズが、リムジンや酒にカネをばら撒きまくり(財政投資のメタファー)、
更に二日酔になってもまだ迎え酒をあおる(効果が出なくて景気がよくならなくても財政投資を続ける)
のが面白い。
そして、その流れに乗れないハイエク。

日本語の字幕が入ってるバーションを発見したので、そちらをご紹介。

英語のスクリプトが、元のページにあるので、そっちも見てみて!
英語の勉強になると思うし。

とりあえず私なりに見所を解説。

    • カンファレンスに到着したケインズを受付嬢が歓喜して出迎える。今のアメリカのケインジアン系の熱狂ぶりを皮肉ってるというわけ
    • ところがハイエクのことを受付嬢は全く知らない。「ハイエクですけど。F.A. ハイエク。どうぞよろしく・・・」とだんだん小声になるハイエクが可哀想すぎて笑える
    • ホテルの部屋に入ると、聖書が入ってるはずの引き出しにケインズの「一般理論」が。すでに聖書扱い。「アメリカのケインズ至上主義もここまで来たか・・・」というふうに嘆くハイエク
    • ケインズがハイエクを誘ったバーの名前がFED(連邦準備委員会)なのが笑える。しかも後で出てくるけど、このバーでケインズにウィスキーを注ぎまくる(金融政策に金を使いまくるメタファー)バーテンダーの名前がBenとTim(爆笑)。Benはもちろんベン・バーナンキ。Timは財務長官ティム・ガイスナーのこと。顔もちょっと似てるし。
    • ロビーで待ち合わせたケインズに、ハイエクが見せた黄色いカードはニューヨークの地下鉄の「メトロカード」。つまりカネがかからない地下鉄で行こう、と提案したわけ。ハイエクは「バブルにならないよう、ちゃんと貯蓄率を上げろ」という主張なのでケチの設定。
    • ところがケインズは何言ってるの?という顔。眺めた先には真っ白なリムジン。そしてリムジンの中には美人の女性たちが・・・。「じゃんじゃん金を使えば景気回復」なケインズ本領発揮。

 

  • C, I, G all together get to Y: 総需要は(閉鎖マクロでは)、消費(C)、投資(I)、政府支出(G)の和に等しい。政府支出を上げれば、国民の支出も喚起されて、消費や投資も盛んになる、というのがケインズの理論
  • Animal spirits(アニマル・スピリッツ)とは、人間が(後先考えずに)「消費したい~!」とか思う欲求のことで、これが消費を刺激する元になっているとされる。またの名をConsumer confidence(和訳は知らん)と呼ばれる。ケインズの理論は、政府が財政支出を増やせば、国民も消費したい!と思うから、政府が支出した以上に総需要が増えるってことなのだ
  • これを別の言葉で「乗数効果」と呼び、ラップの中でも何度も出てくるMultiplierとはこのこと。最近日本でも話題になってたと思うから、知ってる人もいるかも

 

  • 「Bull and bear」は市場が上がったり(bull)下がったり(bear)することです。その不安定さが人々が投資したい、という意欲を下げるって話をしてます。(コメント欄参照:途中で文章が切れて変なところでつながっており、間違ったイミになってました・・・)
  • 景気回復にはFiscal(財政政策)とMonetary(金融政策)の両方が必要だが、金融政策をいくらやっても効果が出ないLiquidity Trap(流動性の罠)にはまった現在は、政府の財政政策だけが頼り。だからじゃんじゃん使え~!というのが面白いところ。
  • ちなみに「流動性の罠」とは、90年代の日本でゼロ金利政策を続けても全く効果がなかったこも説明しているとされ、今のアメリカにも同じことが当てはまる、とはクルッグマンの言
  • Free Lunch:タダ飯のこと。経済学において「タダ飯」-つまり痛みを伴うことなく得が出来る政策-はあるのかというのは長年の論争。「結局財政政策やって、国が守って残るのは国の借金とゾンビ企業」というのはどこかの国みたいですね。
  • そして二日酔になったケインズが、迎え酒をあおる下りが秀逸。財政政策は麻薬のようなもので、続けても続けても効果が出ないと、更に支出が増えかねない、というのが自由主義者の主張なのだ。まさに二日酔に迎え酒。
  • ハイエクの主張は、景気刺激と称して注ぎ込まれたお金が実際に効果が出るのは遅く、景気が回復してからである。そうするとそれはバブル経済をあおるだけなので、意味がないどころか逆効果、というもの。オバマ政権の景気刺激策に反対している自由主義者の総論をまとめている

日本語の字幕無しで楽しみたい、と言う方はこちらをどうぞ。
聞き取れない人も、スクリプトを参照にして何度も見てると、自然と英語が頭に入ってくるようになると思います。

(追記)細かすぎるかな、と思って書かなかったんだけど、ケインズが言う「Broken window(割れ窓)ですら窓屋が儲かる」と言ってるのは、共和党のジュリアーニへの痛烈な皮肉だと思うんだよね。
「割れ窓理論」というのは、ジュリアーニがニューヨーク市長だったとき、
「窓が割られているなどの軽犯罪も見逃さないことで、重罪も減っていく」といった話なんだけど、
ジュリアーニのその発言が「割れ窓を直す」ことにつながり、
それで窓屋が儲かるということで、経済にはプラスの発言だった、と。
「あなた自由主義経済謳ってますけど、あなたの発言も財政効果高めるのに役立ってるんですよ」という皮肉。
まあとにかく、細かいところまで小ネタが仕込まれていて、面白いです。

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