昨年夏に日本で話題になったアニメ映画「サマーウォーズ」がMITで上映されたので、友人と見に行った。
監督の細田守氏にも会えた。
何でも、MITでアニメやJポップなど現代日本文化研究をしてる教授が、監督をボストンに呼んだのだそうだ。
世界最高峰の科学技術の大学であるMITは、ご多分に漏れず日本のアニメやゲームが好きな人も多い。
そのアニメオタクぶりが嵩じてなのか、本当に研究をやってる人も結構いる。
今回、映画会を主催した文化人類学のコンドリー助教授も、日本アニメの研究もやっており、
最近は「萌え」ブームの中で愛や性はどのような装置で語られてるか、なんてこともやってるらしい。
MITの比較メディア論学科(CMS) には、他にも日本のアニメやゲームを研究対象にしている先生や学生がいる。
映画会を見に来てるのも、ほとんど日本人以外の学生ばかり。
多くが、MITのアニメ研とか、アニメ含む日本文化の研究してるとか、
日本語勉強してるとか、何らかの理由で日本に興味があるガイジンばかりの様子。
日本人は一割未満といったところか。
ちなみに、私は宮崎アニメを見るくらいでそんなアニメファンとかではないのだが、
アニメの世界に興味は持っている。
たぶん理系だったから、周りにコアなアニメオタクの人が割といて、身近に感じてるんだと思う。
先輩が二次元での電子の研究をしてると思ったら、実は本人も二次元の女性も好きだったなんてのもあった。
私がLASIC手術をしてメガネをやめたら、「君はメガネが美しかったのに、何故やめたのか」と言う人がいたり(笑)。
現実世界では男性には全くモテない私だが、アニメ界には私のような極端なキャラがモテるらしく、
アニメオタクな人に、「アニメのヒロインだったら大人気だったと思うよ」というようなことを言われたことが何度かあった。
そんじゃ、次に生まれ変わったらアニメに出てくるかな(笑)
教室ではポップコーン屋さんが来ていた。
こんなのも呼ぶんだね、本格的。
上にトロトロのバターを大量にかけてくれるんだよね。
不健康そうだけど、これがとても美味しいのよ。
そして信じられない大きさのカップのポップコーンを平気で平らげるアメリカ人たち。
(まだ映画開始前)
映画が始まると、「え、ここ笑うところ?」みたいなところで大きな笑いがたくさん起こる。
最初の学校のシーンで、主人公が先輩の女の子にバイトに誘われるところとか、5秒に一回大爆笑だ。
主人公が手を握られて真っ赤になるところとか、笑いがずっと止まらない。
日本人の感覚だと、そんなにおかしいかな?と思うところでものすごく大笑いしている。
それから、字幕が追いついてないのに笑ってる人が半分くらいいて、日本語分かる人がこんなにいるのか、というのはかなり驚いた。
日本語で一回、字幕で一回笑いが起こるのだが、日本語だけで笑う人の数が多いのが分かる。
アニメ好きが嵩じてなのだろうか?こんなに日本語が分かるようになるなんて。
絵がとってもきれいで、特にヒロインのおばあちゃんの家の周りの自然がとてもきれいなのが泣けた。
久しぶりに日本にまた帰りたい気持ちになった。
すっかり廃れてしまったセカンドライフな世界が、現実化してしまった感じなのが面白かった。
結局、ネットの世界が暴走しても、現実世界の絆やネットワークが勝つんですよ、みたいなメッセージ?
いろんなハプニングが次々に起こって、最後は良く分からないままに納得させられてしまったが、まあ面白かった。
途中、数学オリンピックとか、映画のMercury Risingのように公開鍵暗号(?)を解いてしまう主人公とか、
何テラフロップスのコンピュータを電気屋のおじさんが運んできて、それを氷で冷やすとか、
MITの学生が大好きそうなネタがたくさん仕込まれていて、
数ある日本のアニメ映画の中から、この映画を選んだのは正解だなあ、と思った。
かなり長い映画だったけど、みんな最後まで楽しんでたみたいで、かなりの人が残っていた。
終わると、スタンディングオベーション(立って拍手すること。最高の賛辞)。
右側が主催のコンドリー先生、左が細田守監督。
この後は質疑応答タイムだったのだが、のっけから素人には全く分からないオタクな質問ばかりでびっくり。
「○○のシーンは、○○のアニメの○○のオマージュなのか?」みたいな質問で、そのアニメを知らないと分からなかったり。
質問をしたい学生がマイクの前に10人以上並んでいて、どれも素人には分からない質問ばかりだったので、この辺りで教室を出ることにした。
■アニメに個人以外の金の流れを作ることで、産業として大きくすることは大切と思う
今回、細田氏の「サマーウォーズ」を見ていて気が付いたのは、映画内広告が多用されてること。
出てくる携帯電話はドコモばかりで、携帯からアクセスして色んな問題を解決する、っていうこと自体、ドコモらしいコンセプトだった。テレビはソニー製ばかり。
任天堂も、ニンテンドーDSに加えて、最後は花札で終わるという。
邪推かもだが、一体どのくらいのお金が企業から流れてるのだろう、と思った。
(追記:
確かにiPhoneは重要なアイテムだったけど、アメリカのiPhoneだからAT&Tのローミングなので結局ドコモなのでは?
すみません。パナソニックも多々登場していたそうです。ソニーのロゴが目立っていたのでそうかと思ってました。
任天堂ってもともと花札作ってた会社だからね。)
私は、こうやってアニメに視聴者以外からの大きなお金が流れることは大切だと思っている。
ちゃんと金儲けが出来る仕組みを作らないと、どんなにコンテンツが良くたって、産業として廃れてしまうだろう、と思うからだ。
だから、このように金の流れを作る試みが行われているのは非常に好感が持てた。
こういう事書くと「ビジネスにすると良いものが出来ない」「金儲けなんか考えるな」と反感買うかもだが、
私は別に金儲けが好きなわけじゃない。
(クライアント企業の金儲けを手伝ってるけれど、個人ではお金儲けには全く興味がない)
でも、良いものがちゃんとお金を儲けられる仕組みを作ることは非常に大切だと思っている。
「儲からなくても世の中の役に立てばいいんです」という人を良く見るけれど、その思想は危険だと思う。
イノベーションのところでも何度も書いてるけど、どんなに良いものを生み出しても、金にならなければ、
その良いものを世の中に普及させるためのお金も出ない。
技術そのものがすごくても、世の中の誰もが使いやすいように作り直すにはお金がかかる。
世の中に宣伝して、教育して、多くの人の手に届くようにするためにも、お金がかかる。
それをやらないと、一部のギークな人たちだけのものになって終わってしまう。
そうしたら、どんなに良いものを作っても、世の中のためにならないだろう。
そして、次の良いものを生み出す開発にも、お金がかかるわけよ。
だから、良いものでちゃんと儲けるのは、良いものを普及させ継続的に生み出すために、重要なことだと思っている。
私はアニメの詳しいことは知らないが、日本のアニメはプロやクリエーターには大きな影響を持っていると聞くだけに、
規模が小さく、ちゃんと金儲けが出来ていないのは残念に思うのだ。
アニメを愛する人たちの善意で支えられていても、その人たちにちゃんとお金が落ちる仕組みを作らないと、産業として長続きしない。
ついでに言うと、個人・消費者からのカネの流れだけで儲けるためには、
ディズニーやDream worksのようにマス・ボリュームゾーン狙いのコンテンツをつくるしかない。
そうすると、「ソフトパワー」と言う割には日本の経済を活性化させるほどの産業になってない、日本のコンテンツ産業も、変わって来ると思う。
久しぶりに日本のアニメを見ながら、そんなことを思っていた。