My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

成功するリーダーに必要な「正しい判断力」とは?

2010-05-13 07:15:01 | 7. その他ビジネス・社会

今週は私のMBA最後の週で、現在ファイナルレポートの提出を次々こなしてるところ。
その内一つが「今学期のあなたのリーダーシップの成長について週に5回エントリを書け」というもので、
夏休みの日記を最終日にまとめて書いてる気分になってきたので、ブログでも書いて気分転換することにした。
(注:良い子の皆様はMBAに来てまでこんなことをしていてはいけません)

さて、上に書いた日記レポートが出たリーダーシップの授業で習ったのだが、
リーダーに必要なのはヴィジョン(志)とか、人を鼓舞してモチベートする力とか、色々大切だが、
アメリカで成功した企業経営者にアンケートをとると、一番大切なのは「Sense-Making」だと答える人が多いのだそうだ。

Sense-Makingとは、日本語に訳すと、「正しい判断が出来る」「正しい方法が選べる」というような意味である。
つまり、状況に応じて正しく判断をしていくことが出来る能力のことだ。
私はこれを「正しい判断力」と読んでいる。

ビジネスリーダーとして、実際に事業を行っていると、頭が良くて正しい戦略を立てられるとか、
朗らかでヴィジョナリーで、人がついていきたいと思う、などなどの能力も当然大事なのだが、
次に何が起こるかわからない世の中で、判断を誤らずに「正しいやり方」で組織を率いていく力が、
リーダーには極めて大切であるとアメリカの企業経営者たちは考えている、というわけだ。

戦略をいくらたてても、実際の情勢が変わると役に立たなくなってしまうことがあり、
その情勢を正しく理解して、どのように戦略を適応していくか、というセンス(判断力)が重要なのだ。

さて。
「判断力」は、極めて広い意味の言葉だ。

「子供が悪いことをしたとき、どのような言葉をかけるべきか」という日常での判断から、
「ここで仕事を辞めて、転職すべきか」「この人と結婚すべきか」という人生の判断、
そして、ビジネスにおいて、想定していなかった事故が起こったときどう対処するかといった、ビジネス判断まで多岐にわたる。

しかしどの場合であっても、「判断力」とは次の三つの能力に分解できる。

1. 今が判断するタイミングだということを認識できる(Judgement call)
2. 正しく状況判断と分析が出来る
3. 2から論理的に正しい結論を出せる

もし、これを読んでる人の中に「私は判断力が無くていつも困ってる」という人がいるとしたら、
必ずこの3つのどれかに問題があるはずだ。

例えば「僕って、いつの間にか友達を失ったり、彼女に嫌われてるんだよね・・・」と言う人は、
1のタイミング認識に問題がある可能性が高い。
そもそも「今が判断すべきタイミング」ということを認識せずに、いつの間にかひどいことを言ってしまったり、やってしまったりしているわけである。

出会い頭事故をよく起こす人もそうだ。
「いま、ここで止まるべきか、進むべきか判断すべき」というタイミングで、そもそも判断しようとしてないのだ。

ビジネスでも、戦略が時勢に合わないのにそのままにしている会社や、変える必要が無いのに「中期計画」を更新する企業があるが、
これは、判断をするタイミングの認識が出来てない、ということになる。

また、判断すべきだ、ということは分かってるのに、判断を間違える人がいるが、
これは多くの場合2に問題がある場合が多い。

人が判断に失敗するのは、大概の場合、判断するのに必要な情報が足りないことがほとんどである。
例えば、妻が機嫌を損ねているときに、間違ったことを言って余計怒らせてしまうのは、
妻が何故機嫌を損ねているのか、自分に何を求めているのか、という情報が足りないからである。
企業が戦略判断に失敗するのも、たいがいはここである。

従って、少ない情報から、正しく判断する洞察力、論理的思考力というのが非常に重要になる。

また普段は洞察力がある人でも、とっさの判断に失敗する人がいる。
何かが起こったときにパニックに陥らずに、論理的にものを考えられる肝っ玉の大きさ、も重要だ。

3で結論を出すことが圧倒的に弱い人もいる。「分かってるのにやめられない」人だ。
例えば、私自身は人生における大きな決断では、判断を間違えたことがないが、日常生活では判断力が割と弱い。
これは明らかに3に問題がある。
こういう人は感情論より論理を優先して決定する、Discipline(意志力)を持つなどが重要だ。

例えば今私がブログ記事を書こうと判断したことについて。
まず、私はいつの間にかブログを書いてるのではなく、
「このタイミングでブログを書くか、レポートの続きを書くか、ここんとこ寝不足で寝てないから寝るか」
という3つの選択肢があることが分かっているため、1には問題が無い。

また「ここでブログ書くのに1時間くらい使うと、日記レポートが書きあがらないか、質が落ちるか、また寝不足になる」
ということも良く分析できているので、2にも問題が無い。

しかし、「でもこのレポート書くの、つまんないんだもん。ブログかいてるほうが100倍楽しいし」
という快楽に負けて、「ブログを書く」という判断をしているのは、3に問題があるのだ(笑)。

というのは冗談だが、こういう話はビジネス上などでも起こりうる。
判断すべきタイミングで、状況を正しく分析しているにもかかわらず、結論として「動かない」という判断をするリーダーはたくさんいる。
そして、そのリーダーに率いられた企業や国家は、いつの間にか没落してしまったりする。

では、このような判断力をどのようにつけるか、というとこれが難しい。
経験によって、判断力を磨くことは可能であるが、
正しくタイミングを見計らう、少ない情報から状況を正しく理解する、というのは、残念ながら才能による部分も大きいのだ。

「戦争論」で有名なクラウゼヴィッツは、
「机上の戦略を実際の戦争に落とすとき、状況を判断して正しい決断が出来る人」を「戦術的天才」と呼ぶ。
戦争のような状況で、判断するタイミングを見計らい、少ない状況から戦況を予測し、正しい判断に落としていく能力は、天賦の才のようなところもあるのだ。

では、判断力の無い一般人は、
どのようにしたら、ビジネスリーダーとしてそれなりに成功するための、正しい判断力を付けられるのだろうか?

一つは、場数を踏んで、経験によって判断力を身につける、というのはある。
しかし、私は「正しい判断力が出来る人を見つけて、助けてもらう」ということも重要だと思う。

自分はいつも判断を間違える、と自覚することが大事で、
自覚したら、正しい判断をしているひとを探し、その人を味方につけて、助けてもらう。
こういうのも一種の「判断力」であり、人生のあるタイミングで、
「自分の弱い判断力では、地位や役職に必要な判断が十分に出来ないな」ということに気づき、
サポートを得る、というのは重要な判断である。

というわけで「正しい判断力」を持つことが、企業経営で成功するにも、私生活で成功するにも大切である、というお話でした。

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17 Comments

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いいエントリですね (中川信博)
2010-05-13 09:54:47
MBAを履修する(MBAって履修するって表現するのかな?)目的が判断力の醸成ってのは当然でしょう。
>一番大切なのは「Sense-Making」

では判断する根本は何か?何で判断しなければならないのか?それは戦略的に表現すると「脅威の認識」だ。脅威の存在が現状の修正や変更を「判断(決断でもいいかな)」しならければならなくなる理由だ。秀でたリーダーは凡庸なリーダーより、脅威の存在を察知する力がある。だから判断できるといえる。
判断できない人は判断できないのではなく、修正や変更が必要だと結論していない。つまり脅威を察知していないということだ。

ビジネスでは未だにPDCAとかやっているが、最も過酷な判断を常に求められる軍事の世界ではOODAループだ。(オーダループと言う)Observation・Orientation・Decision・Actionという心理リサイクル理論である。しかしいまではPTE(Pawer to the egde)など判断行動するための理論と実践が日進月歩である。

MBAにあつかましいですが参考までに有益と思われる本とサイトを紹介します。
羽生善治「決断力」
「考えてるということは判断に迷ってるってことなんですよ」
コリン・グレイ「戦略の格言」
「もしトゥキディウス、孫子、クラウゼヴィッツが語っていなければ、それはおそらく語る価値がないものだ」
地政学を英国で学ぶ 奥山真司
http://geopoli.exblog.jp/

レポートの完成を祈る!
連続失敬!たとえばワイン選びで (中川信博)
2010-05-13 13:14:09
>サポートを得る、というのは重要な判断である。

によるとソムリエを呼ぶことになるのかな。しかしソムリエでも料理に合うワインの判断はできても、ユーザーの好みのワインを判断するのは難しい。僕の場合はポムロールが好きだから、ポムロールで○○円くらいとか注文する。

昔ワインを売ってるときお客様に「肉類にはフランスの赤ワインでこのような」とすすめたら、「あら、わたくし肉でもドイツの白のカビネットがすきだわ!」とおっしゃるので「ドイツの白は甘口なのでドイツの白であればアルザスかバーデンのすっきりした…」とか説明したところ「私はラインのカビネットが好きなの!」とややムッとされたので、「お客様がお好みのワインが一番でございます」と平謝り。セールスって難しい!
人生だけは (rei)
2010-05-13 22:56:11
感情(第六感?)が判断を左右することがあるかもしれませんねw。
企業を一つの有機体としてみると、人生の進路を決めるときってまるで何かの企業の今後の成長と同じようなシチュエーションな気もしますが、Iが主体の時は、3が難しくなると感じました。
コメント有難うございます (Lilac)
2010-05-14 00:40:37
レポート頑張ります。

>Iが主体の時は、3が難しくなると感じました。

全く同感です・・
突っ込みどころ (ysjournal)
2010-05-14 02:05:17
良いエントリーですが、内容そっちのけで、私の最大興味は,やはりこの一文です。

>私自身は人生における大きな決断では、判断を間違えたことがないが、日常生活では判断力が割と弱い。

以前のエントリーで、コンピュターの買い方が男前(差別用語か?)だったので日常の判断力が割と弱いというのは、あわない様な。

「人生における大きな決断」を具体的に聞いてみたいと思うLilacファンは私だけではないと思います。

失礼致しました。
Unknown (家庭教師)
2010-05-15 17:30:22
非常に良い記事ですね。

>正しく状況判断と分析が出来る
>感情論より論理を優先して決定する
この2点に集約されているような気がしました。

また伺います。有難うございました。
なんか、よく分からない。 (KKMM)
2010-05-15 20:23:22
リーダーに判断力が必要だなんて考えたこともなかった。
私の周囲では、判断力なんてなくても年齢でリーダーになっている連中がたくさんいる。
というより、そういう連中だけだ。
年功序列の会社では、歳取れば、リーダーにしてくれるので正しいどころか、判断力自体が必要ありません。
で、リーダーは当てにならないので、下の連中は自分たちで考えて仕事をする。
その下の連中の内、運のよい人が出世して、また判断しない人になる。
そして、会社は回っていく。
そんなものです。
というわけで、判断力なんて要らないと思います。
Unknown (Lilac)
2010-05-16 01:33:57
@中川さん
そういうときは、自分の好みもハッキリわかっていて判断も出来る人と結婚すればいいんですよ(笑)

@YSJournalさん
確かに買い物の判断は非常に早いですね。
時間の使い方に関する判断を間違えます。

「人生における決断」というと、長渕剛の乾杯を思い出しますね(笑)

@KKMMさん
これって日本社会に対する皮肉ってやつですかね?
Lilacさんに質問です (マルモ)
2010-05-16 17:15:00
最終学歴が
大学院の場合
2年間の成績が合格率に左右しますか?
判断力を支える環境 (taktak0088)
2010-05-17 22:25:35
判断力を遂行するためのCapabilityとしての3点、全く、その通りですね。

同時に、それを適切に実行するための環境を築くことが、Capabilityと同じくらい重要と思います。その環境とは、
 1.Staffing
 2.孤独に耐える力
の2つがありますね。

Staffingは、自分の考えをぶつけ思考の整理する、異なる視点や意見に触れるなど、に必要です。これには、自分のPartnerや友達なども入ります。

2番目は、その判断がもたらすプラスとマイナス(Pros&Cons)を考え、他人の意見に左右されすに、自己の責任で判断することです。これは、場合によっては独善的に見えるでしょうが、そういう周囲の目や批判に惑わされずに、結果責任を取る気構えで決めることにつながります。

そして、この1と2のバランスを保つことが、適切な判断力の実行に役立つと思います。

残り少ないMBA生活、楽しんでください。応援しています。

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