Glenfiddichの見学の後は、約100km近い道のりを、もう一度ネイルンへと戻る。
Nairnのホテルは、MaillaigのB&Bとは違って、ちゃんとホテル内にバーも備わっていて、レストランもある。
スコッチもSpeysideを中心にそれなりのものがそろっている。流石だ。
そして翌朝は早起きして8時半に出発。朝の運転はまた私。
まだ空が暗い。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/84/53738c0ef9f976497da15394a25f7143.jpg)
途中の道で9時過ぎころにようやく日の出を迎える。
緯度が高いって大変だな。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3d/3d/db5e87a0c39b36ffc09d93eb503763bd.jpg)
10時に到着。
ついに愛しのBalvenie蒸留所が見られると思うと、どきどきわくわく。
バルヴェニー蒸留所は、グレンフィディックにて「Connoisseurs' Tour」というツアーを事前予約しないと見られない。
ちなみに一人あたり20ポンド。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/a5/e08d64e25f7314534307e66704360a3e.jpg)
ツアーをガイドしてくれる蒸留所のスタッフに「Balvenieが実は一番好きなウイスキーなんです」とわくわくして話すと、
"That's the word we love to hear the most" (それが一番聞いてうれしい言葉だよ)と言われる。
このツアーがとにかくすごいのは、通常の蒸留所見学では見られない製造工程が見られること。
ウィスキーの製造工程は主に5つに分かれる。
1. Molting(モルティング・発芽):まず麦を発芽させて、麦芽を作る
2. Mashing (マッシング・糖化):麦芽を砕いてお湯に混ぜ、麦芽糖に転化させる
3. Fermentation (アルコール発酵):イースト菌を加えて発酵させる
4. Distiliral (蒸留):ポットスチルで蒸留して、アルコール度数を高める
5. Maturization (熟成):樽に入れて熟成させる
そのうち、通常の蒸留所では、2のマッシング以降しか見られない。
1は現状、ほとんどが専門業者にアウトソースしてしまっているからだ。
この工程を伝統的なやり方で作っているのは、スペイサイド地区ではバルベニーだけだということだ。
オフィスにつくと、まずはコーヒーと、スコットランド名物のショートブレッドが出てくる。
うーん、普通の見学ではありえない、アットホームでゆったりした時間。
ゆっくりしたあと、早速1のモルティングの過程を見に行く。
まず、麦を2-3日間水につけて、十分に水を吸わせるところからはじまる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/76/52be760993a1933f16164c3d848180d1.jpg)
水を吸わせた後は、空気を混ぜながら6日くらい置いて、発芽させる。
麦は、発芽の瞬間、糖度がもっとも上がる。でんぷんを糖へ自分で転化させ、発芽に必要なエネルギーを作るからだ。
その瞬間をうまく捉えて、アルコール発酵に使ってしまおう、という長年の人間の知恵。
発芽の瞬間は空気が足りなくなるのを防ぐため、定期的に混ぜる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/22/025f6ede75683f673a8c97854849bf4b.jpg)
そして、発芽熱を抑えるため、スコップのようなものを使って、麦を飛ばす。見学者にもやらせてくれる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/03/aa469229db770af96b44bcd280001d14.jpg)
左が3日後、右が5日後くらいの麦芽の写真。芽が出てきているのがわかる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/a3/d3cc2d3e0516f17227665d26939cbcfb.jpg)
この状態になったものを、火をたいて乾かす。
乾かすときに使うのが、スコッチに独特のスモーキーな香りを与えるピート(泥炭)だ。
写真はピートを燃やしているところ。この上のほうに麦芽をためる容器があって、乾く仕組み。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/b9/6d1939543dfb0256bf32bc247305359b.jpg)
とはいえ、スペイサイドのウィスキーは、あまりスモーキーじゃないのが特徴なので、ピートを使う割合は40~50%くらいに限られている。
残りは普通の燃料で乾かす。
ここで、ちょっとウィスキー製造工程を離れて、樽を作っているところを見に行く。
ウィスキーの樽は、シェリーやバーボンなどを熟成するのに一度使われた樽をもう一度組みなおして使うのが伝統だ。
そして、こうやって樽を自前で作っているのも、今ではスペイサイドではバルベニーだけだという。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/1b/9f1a0c78804c301e8efbfa956a88f443.jpg)
常時5,6人の樽職人が働いていて、樽を作り続けている。
さて、ウィスキーの製造過程に戻る。
乾かした麦芽を、2.マッシングへ。粉砕してお湯に溶かす。そこでの所要時間は1,2日。
写真は昨日のGlenfiddichを参照。
麦汁を発酵槽に移して、イーストを加える。
どーっと、桶に流れる麦汁を、なめていいよ、とガイドがいうので、試してみる。
ほんのり甘い。
すでにカラメルのような芳香、ピートの香り。この時点でウィスキーの香りの一部があるのだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/3b/dbbd2123a68a33a58198d4bcefd6c4c9.jpg)
3日間発酵させて、アルコール度数を8%程度に高めたものを、ポットスチルに移して蒸留。
Glenfiddichでは、いろんな種類のポットスチルを使って味を調整していたが、Balvenieでは伝統的に一種類のスチルしか使わないそうだ。
モルティングにせよ、蒸留にせよ、頑なに伝統を守るBalvenie。
こんなところが、あの頑なだけど真っ直ぐで、優美でほろ甘いBalvenieの味を作り出しているのね…(←陶酔中)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/68/84/28983bce52e0261e696b685c45b18099.jpg)
貯蔵倉庫も見学。こちらも撮影禁止。
Balvenieでは、伝統的なホワイトオークとシェリー樽。ここでまず12年間はしっかり寝かせるのがバルベニー。
その後、別の樽に移したりすることで、いろんな味を作る。
12年寝かしたものを混ぜ合わせたのが、バルベニー12年。
ホワイトオークにそのまま15年間残したものは、私が大好きな、バルベニー15年シングルバレルへ。
最近になって使い始めたラムカスクやポートワインの樽。
ラムカスクは、最近リリースされた、Balvenie17年ラムカスクへ。
ポートワインカスクは、Balvenie30年に使われる。
最後に試飲。
使われる樽の種類によって、ウィスキーの色が全然違うのがわかる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/c8/df7a81e55be5063f8c77e66605c6c450.jpg)
そして、味や香りも全く違う。
シングルバレルは、一つ一つ違う樽からリリースされる、というのが面白いのだが、2種類試させてくれて、
確かに樽ごとに香りが違うのがわかる。
30年は熟成を経て、ソフトでしっとりとしたエレガントな味わい。
いくつか飲んでみて、それでも私は15年のシングルバレルが好きだなあ、と思う。
自分の好きなウィスキーの故郷を訪れて、再度このウィスキーが好きになった。
ほかのスコットランド旅行記(1)~(13)を読む → ●スコットランド旅行記
←長文を読んでくださってありがとうございます。明日はエジンバラへ行きます。