My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

正義が勝つとは限らないことを教えるブロードウェイ・ミュージカル

2012-04-30 10:18:17 | 5. アメリカ経済・文化論

昨日、久しぶりに水谷豊主演のテレビドラマ「相棒」を見て、思い出したことがあったので書いておく。私は普段テレビドラマは余り見ないのだけど、「相棒」だけはプロットも俳優も非常に面白いのでたまに見たりしている。ただ、実際の社会ではこんなに気持ちよく、正義が通るとは限らないよね、と思ったりして、そうすると思い出すのが、アメリカのブロードウェイ・ミュージカルの「WICKED(ウィキッド) 」だ。

WICKEDは、「オズの魔法使い」のパラレルワールドという設定で作られた作品で、オズの魔法使いの中に出てくる「西の悪い魔女(エルファバ)」と「南の善い魔女グリンダ」が実は親友だったという設定で、彼女たちのアメリカらしいキャンパスライフから、その後運命が分かれていくまでを描いている。2003年の初公開以来、世界各国でロングラン公演しているらしい。私は2007年の日本での公開直後にミュージカル好きの友人と見に行ったのだけど、内容が強烈でいまだによく覚えている。

Wicked-poster.jpg(Wikipediaより転載)

(ネタバレ注意)魔女の才能は誰よりも優れ、正義感が強く、優秀で自己主張の強い女性である、エルファバ。彼女は、魔女の国の中で動物たちが人権を失われていく状況に反対し、一人で巨悪と戦おうとしたため、国民の敵である「悪い魔女」のレッテルを貼られて死んでいく。その一方で、ブロンドで美貌の人気者で、人気を得る方法を人一倍わきまえているグリンダは、親友として彼女に手を差し伸べながらも、組織の人として残ることを選び、国民に「南の善い魔女」として称えられる、という内容である。かなり超訳だけど。

日本でも劇団四季が完全翻訳版を演じているので、見に行ったことがある人もいるかもしれないけれど、ブロードウェイではこのミュージカルはティーンの女の子が主に見に行くミュージカルで、女の子に大人気なんだそうだ。たしかに、劇中に出てくるグリンダの美しい衣装や靴、恋愛事情、かっこいい男子が周りにいる大学なんて、アメリカの女の子の憧れのキャンパスライフそのもので、ティーンに人気があるというのはよくわかる。そして、エルファバとグリンダのお互いに全く異なる価値観を受け入れあう女子的友情も、「赤毛のアン」のアンとダイアナ然り、ティーン女子が好きなところだろう。しかし、そのティーンの女の子の憧れのグリンダちゃんが、倫理観や道徳観ではなく、「世の中は、正義が勝つとは限らない。長いものに巻かれ、組織のお作法を守って生きていくほうが、最終的には人々に慕われて社会的には成功するのよ」なんていう真実を教えてしまっていいんだろうか、といつも思うのである。

大学の女子寮で同室になった、美貌で人気者のブロンド女子のグリンダと、賢くて才能があるが肌が緑色のエルファバは、最初はお互いの価値観が合わずにいがみ合う。が、ふとしたことをきっかけに仲良くなり、親友になる。そしてグリンダがエルファバに、どうやったら(自分みたいな)「人気者」になれるのかを教えるという場面がある。グリンダの名ナンバー「POPULAR」だ。

人気者になるためには、どういった格好や身だしなみをしなくてはならないか、どういう仲間と付き合うべきか、男子に話すときはどういう言葉遣いをするべきかというのを細かくエルファバに指導していく、という歌。グリンダのコミカルなソプラノが生きるこのポップなナンバーの最後で、グリンダはこんな内容のことを歌う。(Lilac訳)

著名な国のリーダーや優れたコミュニケーターたち、彼らが頭脳や知識を持っていたですって?笑わせないでよ。
彼らは人気者だったの。ねえ、これは全部人気があるか無いかの問題なのよ
才能じゃないの、あなたが周りにどう見られているかが全てなの
だから、人気者になることはしっかりとやらなきゃならないのよ!私みたいに!

「そんなのくだらないわ」と言って最後まで親友の助言を受け入れなかったエルファバ。彼女は自分を高く評価していた「オズの魔法使い」という名の権力が、自らの権力を維持するために、動物たちから権利を剥奪し、自分の魔力をも利用しようとしていたことを知る。そして、自分の信じる正義のために巨大な権力と戦うことを選び、その結果「悪い魔女」のレッテルを貼られ、国民にも糾弾され、魔女狩りにあい、死を迎える。彼女は、社会的には抹殺されても、愛する男性フィエロに愛されながら、死をいとわず、正義を盾に悪と戦うことを選んだのだ。

ただその結果、国民の記憶には、エルファバは悪の象徴として、グリンダは善の象徴として残る、ということをティーンの女子たちはどのように捕らえるのだろう、と不思議に思う。エルファバのように、権力に逆らって、社会的に抹殺されてしまったとしても、愛する男性の永遠の愛を勝ち得て、自分の信じる正義のために最後まで戦うのを善しとするのだろうか。一方グリンダのように、間違った組織の権力と戦うことが出来ない、美しい靴や衣装が大好きで、周囲からの人気があるだけの普通の女の子が、戦う親友の死を乗り越えて大人になり、最後には社会的に成功し、人々の記憶に「善い魔女」として刻まれるのを善しとするのだろうか(でも彼女には何が残った?) 。ブロードウェイでWICKEDを見てるティーンの女の子たちに一度感想を聞いてみたい。

個人的には、エルファバのような才能と正義感を持った女性が、グリンダのようにうまく生きる術を持ちながら、最後には見事うまいことやって巨悪を滅ぼしてほしいと思うのだけれど、現実の世の中では、そんな簡単に正義が勝ってしまったりしないことを、ティーンに教えるアメリカのミュージカルってすごいなぁと思うのであった。

超解釈過ぎて、ウィキッドが好きな人が読むと「そんなの違う!」と思うかたもいらっしゃるかもしれないので、そのお詫びとして宣伝、というわけではないけれど、興味を持った人は一度見に行ってみるといいかもしれません。ミュージカルとして年齢を超えて誰もが楽しめる内容だと思うので。劇団四季のウィキッドの予告編を発見したので置いておきます。

(追記) ちなみにWICKEDを私のように解釈する人はアメリカ人にも多くいるようで、権力を保持するためにエルファバを悪に仕立てるオズの魔法使いをアメリカの国家に例え、湾岸戦争からイラク戦争にいたるまでの批判に使うひともいるようです。

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クリスマスに贈る世界のフラッシュモブ

2011-12-25 20:42:48 | 5. アメリカ経済・文化論

モスクワではクリスマスを前に大規模な反政府デモが繰り広げられる中、東京の渋谷では平和なデモが行われていたらしい。

「Xmasデートは恥だと思え!」カップルだらけの渋谷で"非モテ"がデモ-ニコニコニュース (2011/12/24)

15人の若者男性が、「リア充は爆発しろ!」「クリスマス商業主義に踊らされるな!」「モテないことは悪いことではない!」などとメガホンで主張して、渋谷を練り歩いていたそうだ。

主張がネタとして面白いから、きっと周囲で見ていた人たちはとても楽しかったに違いないし、彼らもそれをわかってネタとしてやっているのだろう。
いや、もしかしたら真面目な抗議だったのかもしれないが、全て含めてネタとしてやっているものと私は思っている。
(ただ人数がもう少し多ければよかったのに)

これとはちょっと違うかもしれないけれど、クリスマス前になると、街頭や空港など人の集まるところで、皆で「常識」や「規則」を覆すことをして、人を喜ばせたり楽しませたりする(そしてたぶん自分も楽しい)イベントが世界中で行われている。その辺にいる「普通」のはずの群集(mob)が、突如(flash)出てきて、何かを行うことから、Flash mobと呼ばれるのだけれど、ちょっと遅いけれど、クリスマスということで、皆様にお届け。

こちらの映像は、米国のミネソタ州のあるショッピングモールのフードコートで、去年のクリスマス前に行われたもの。

最初の40秒ぐらいは、ずっとただの雑踏なのだが、突然女性が歌い始めたのを合図にフードコートで座ってた一部の人たちが、皆突然歌い始める。実は、200名もの歌手がこのフードコートに集って行われたイベントなのだそうだ。周囲の多くの人たちは、普通の人たちなので、皆最初はびっくりしていたが、最後には拍手喝采となる。

 

こちらは、昨年のロサンゼルスの国際空港で、空港の職員が中心になって行われたもの。

アメリカンの職員?とおぼしき女性が、チェックインカウンターの上に突然立ち上がって、マライアのクリスマスの曲に合わせて踊り始める。それにあわせて他の航空会社の職員や、セキュリティの人たち、掃除のおじさんまでみんなで集まって踊り始める。曲が「マカレナ」とか「サタデーナイトフィーバー」など、アメリカ人なら誰でも知ってて踊れる曲なので(日本で言えばピンクレディみたいな感じか)、周りでチェックインを待ってるお客さんとかまで、みんなして踊り始める。最後にはサンタのご登場も。

日本の空港でやったら怒られるだろうなー。

 

大学でも。ミネソタ大学のミュージックスクールの学生たちが、同じ大学のビジネススクールに「攻めこんで」クリスマスプレゼント。まじめで勉強ばっかりして、ユーモアのセンスも乏しい(という印象が強い)ビジネススクールの学生たちを、からかってやろう、って感じなのかもしれないが、曲も踊りも完成度が高い。

 

Flash mobはクリスマスに限ったことではない。

世界で一番有名と思われるフラッシュモブは、2006年頃にNew Yorkの地下鉄で始まった「No Pants Subway Ride」かもしれない。これはズボンやスカートをはかずに、下はパンツ一丁で、みんなでニューヨークの地下鉄に乗るというもの。1月のニューヨークの一番寒い時期に毎年行われている。こちらは2011年のイベントの映像。

男も女もパンツ一丁。あるいは、地下鉄の中で突然ズボンやスカートを脱ぎだしてパンツ一丁になる。最初からパンツ一丁の人は、周囲の人に「どうしたの?」と聞かれたら「今日はズボンをはくのを忘れた」と答えるのが定番となっている。映像を見てると、子供を背負ったトランクス姿のお兄さんアリ、素敵なロングコートを着てるのに何故かパンティ一枚のキャリアウーマンあり、おへそまで出してる女子高生あり、元気にパンツ一枚のおじいさんありと、非常に楽しい。2011年は、ロンドンなど世界の48都市で同時開催がなされ(実は東京でも行われていたらしい)、3500名もの参加者がいたそうだ。

ニューヨークのアーティスト集団、Improv Everywhereが中心となって主催しているフラッシュモブで、彼らはこれ以外にもさまざまなフラッシュモブを仕掛けている。

2012年のNo Pants rideは1月8日。参加者はFacebookのページで募っているので、ご興味がある方は是非・・・→https://www.facebook.com/events/243316812362861/ 
ちなみにこれを始めた2006年には逮捕者が若干名出たようだが、ここのところはそういうことも無い様子・・・が自己責任でお願いします。

 

2009年にマイケル・ジャクソンが亡くなったときには、その追悼の意を込めて、世界中でマイケルの曲を踊るフラッシュモブが行われた。
こちらは、中でも比較的大規模な、ストックホルムで行われたフラッシュモブ。

 

こちらも、2009年に行われたフラッシュモブで、ロンドンのピカデリーで、突然100名の女性が服を脱ぎだし、黒のレオタードとハイヒールだけになって、みんなでビヨンセを踊りだすというもの。

 

こちらはアムステルダムの駅で行われた、サウンド・オブ・ミュージックのフラッシュモブ。T-mobileのCMに使われるために行われたものだったため、関わっているダンサーも非常にクオリティが高く、映像の完成度も高い。でも事前に予告されていなかったため、周囲の人は皆驚いて、喜んで、携帯電話でビデオや写真を撮ったりしている。周囲で見ているだけのはずの群集が、次々にダンスに加わって行き、普通の人たちが「えぇっ」て顔をしているのが面白い。(関係ないけど、世界中で人々が携帯電話で写真を取ってるのを見るたび、「これって日本が生み出した発明なんだよね」とか思う)T-mobileはこのCMが成功して味を占めたのか、その後もヨーロッパの色んな駅でフラッシュモブをやっている。

以上、一人でクリスマスを過ごすとしても、家族で過ごすとしても、見ていてなごむ、そして楽しい世界各地のフラッシュモブをお届けしました!

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米国ではグルーポンの何が問題になってるのか

2011-02-13 12:25:19 | 5. アメリカ経済・文化論

最近日本でも話題のグルーポンであるが、米国では先週のスーパーボウルでやらかしちゃって大変なことになっている。

先週日曜(2/6)のスーパーボウルでグルーポンが出したTVコマーシャルが、チベット騒乱を利用したものだったため、米国中の人々の批判を買っている。
スーパーボウルとはアメフトのファイナル。
日本で言うと、ワールドカップ日本代表が決勝まで勝ち残るレベルの国民的イベント。
その試合中3回に渡って流されたというCMの内容は、こういうものだ。(Lilac 訳)

美しいヒマラヤ・・・、世界で一番美しい場所のひとつだ。
そこに住むチベットの人々は今大変な目にあっており、彼らの美しい文化は失われようとしている。
でも彼らは、驚くほどうまいフィッシュカレーをいまだに食べているんだ!
グルーポンのクーポンを使えば、シカゴのヒマラヤレストランで、このフィッシュカレー、30ドルのところを、なんと15ドルで食べられるよ!
Save the money - Online great deals near town -Groupon.com

YoutubeではCM映像がほとんど削除されてしまってるが、下のウォールストリートジャーナルのページに保存されている。(発見しました。すぐ削除されるかもですが)

はっきり言ってまったくチベットを持ち出してくる脈絡が無く、何やってんだグルーポン・・・という感じ。
このCM直後、Twitterは@Grouponで炎上した。

Groupon's Super Bowl Ad Quickly Draws Backlash - Wall Street Journal

アメリカではチベット騒乱は現在のエジプト革命のように、何時間もテレビがジャックされ、国民皆が注目する事件だった。
そんなチベット問題を、こんな気軽にCMにしてしまうことに嫌悪感をもつアメリカ人は非常に多かったということ。

グルーポンへの批判が大きくなったのは翌日。
CEOのAndrew Masonが「謝罪しない」態度を見せた上、「そういうつもりでやったんじゃない!むしろ皆が良く受け止めるべきだ」という言い訳をした。
そのため、多くのメディアが「この反応ひどくない?謝れよ」みたいに怒りを示した。
(その後2月10日に最終的にCEOは謝罪を出している。)
記事を読む限り、確かにこのCEOの対応は余りに人々の反応に無頓着と言うか、人が何に嫌悪感を覚えるかに不感であるように思える。(日本のおせちの謝罪もそうだったが・・・)

Groupon Issues a Non-Apology - The Big Fat Marketing Blog
The Real Problem With That Groupon Super Bowl Ad- Forbes
Groupon Pulls Controversial Super Bowl Ads - Huffuingtonpost.com


グルーポンのいったい何が問題なのか

こんなちょっとしたCMで、これだけグルーポンへの不快感が巻き起こるのは、
それ以前から、グルーポンに対する問題意識を持つ人々が多かったからだ。

この「グルーポン」という会社は何をやってるかというと、
レストランなどの店舗に5割引などの大幅割引クーポンを発行させ、
そのクーポンをソーシャルネットワークを活用して沢山の人に知らしめるものだ。
広告費など出すのが大変な中小店舗から見ると、このネットワークが魅力的、ということ。
店側は、グルーポンのクーポンで売り上げが上がった場合、手数料をグルーポンに支払う。

米国でのGroupon問題を整理すると、主に二つの問題に分かれる

1) 違法クーポンの発行など、グルーポン内部でちゃんとチェックすれば起こらなかったはずの問題
2)  チェック機能の問題でなく、グルーポンのビジネスモデルそのものから生じる問題

1)は米国では、州ごとにクーポン券の発行に関する法律が違っていて、有効期間が短いクーポンは違法だったりなどで、グルーポンが民間や州に訴えられてるなど。
カリフォルニア(→記事はこちら)やシカゴなど、係争中のものがいくつかある。

また、今週に米国で起こった「グルーポンのクーポンより、店の割引の方が安かった。グルーポンは差額分を支払え」なんて二重価格問題も、(→記事はこちら)最初からチェックしていれば生じなかった問題だろう。

これらの問題は、グルーポン自体が急激に成長し、組織的にガバナンスが利いていないために起こっている可能性が高い。
開始たった2年でサービスを22カ国170都市に広げ、世界で2000人(2010年8月時点)体制に拡大。
これだけの急成長では、どうしてもチェックが甘くなる、新興ベンチャーにはよくあるケースだ。


本当の問題はグルーポンのビジネスモデルが店と客の長期信頼関係を壊すものだということ

しかし本当に問題なのは2)のビジネスモデルそのものの問題だ。
これは、仮にグルーポンの体制が落ち着いたとしても、起こるのが避けられない。

こちらのサイトに店側から見た問題点が書かれているが、それぞれ客側から見た問題にもつながる。
Top 10 Business Disadvantages To Advertise on Groupon - Daily Deal Site
まとめると次の4点だ。

1. 店にとってコストがかかりすぎる
通常米国のグルーポンは、店に50%オフのクーポンを発行することを求める。
その上、通常売価の2-3割の手数料を求める。
結果として、店は同じ製品・サービスを提供しても、グルーポンなしで販売した場合の25%の収入しか入らない

その結果、店は使う食材の品質を落とし、それが顧客の不評を買う、という悪循環に陥る。
個人ブログなどを読むと、グルーポンのクーポンをレストランに持っていたところ、店にはぞんざいな扱われ方をし、質の悪い食材を使った食事を出されて憤慨した、というケースが多々出てくる。(→ 個人ブログの例
グルーポンより店の問題とも言えるが、マージン2割程度でなりたってる中小店舗から、7割も取るのはやりすぎ。
結局、店も損するし、客も嬉しくない、グルーポンだけ得をするという一得二両損になるのだ。

2. 価格破壊により店のブランドイメージが破壊される
価格を大幅に落とすことで、品質を落とさなくても、そもそも店のイメージは破壊される。
化粧品や薬が半額で売られていたら、効き目を疑うのと同じだ。
なじみの客から見れば、店への信用を失ってしまうだろう。

以上二つは、グルーポンが「50%割引」なんて大げさな割引価格をやめ、
「一品サービス」とか「1割引」くらいのオファーにとどめれば、徐々に解決するだろう。
ただし、そうするとグルーポン自身がその辺のクーポンサービスと差別化がしにくくなるのが次の問題。

3. 間違ったセグメントの顧客を呼び寄せる
そもそも割引クーポンにつられて遠くから来る顧客が、本当に店が望む顧客なのかということ。
グルーポンがターゲットとしてるような中小の店舗は、地元のお客さんに長いことリピーターになってもらうことで成り立つ商売だ。
クーポンにつられて違う町から来た一見客が店を占拠し、地元の客が離れていき、一見客もすぐに来なくなるという逆効果につながりかねない。
地元客から見ても、なじみの店に行きにくくなる。

グルーポンがオンラインネットワークを活用して割引クーポンを配るモデルを続ける限り、この問題は続くだろうから、本質的な問題だ。

4. 短期間にものすごい数の客にジャックされる
これは、グルーポンがソーシャルネットワーク全体に、短期間限定のクーポン情報を一気に投下することで起きる問題だ。
その結果、パパママでやってる地域の小さな美容院から発行されるクーポンが1週間で5000枚とかに達し、予約が殺到する。
一日せいぜい20名程度、一週間で140名程度しかこなせない美容院で5000人はさすがに無理だ。
レストランでも、その一週間やってくる全ての客がグルーポン客などとなりかねない。
収益に大きなダメージを与えるだろう。
そして彼らはクーポン期間が過ぎると、田畑を荒らしたイナゴのように去っていくのだ。
地元客もいったんは寄り付かなくなるだろう。店と客の信頼関係にひびが入るというものだ。

これは個人の居住地区などをより特定してじわじわ配信、クーポン発行枚数の制限、クーポンの割引率とともに期間の長期化を測れば、通常のクーポンと同様、問題はなくなるだろう。
ただし、そうするとグルーポン自身の競合差別化が難しくなる。

以上、まとめると米国のグルーポン問題は、次のことに集約される。

グルーポンが他のクーポン業者と差別化を図るために必要な、クーポンの大幅割引や、SNSへの大量投下が、ターゲットである中小店舗にとって最も重要な、店と顧客の長期的な信頼関係を破壊している

グルーポンがそれでも店に活用されるのはなぜか、というと、クーポン客とはいえあれだけ沢山の客が来るという反応が分かりやすく、広告効果を実感できるからだ。
また広告費をキャッシュで出せない中小店舗が、先に上がる収益から払えるというのも魅力だと思う。
それがグルーポンの他のサービスとの大きな差別化要素である。
しかし、それは店と客には結果として不利益となる、諸刃の剣なのだ。

仮に、このような店と客にとって不利益となる要素でしか、グルーポンが競合差別化できないのだとしたら、ビジネスモデルそのものが問題ではなかろうか。
瞬間的に店と客にダメージを与えながら、とにかくレバレッジかけて急成長し、デファクトになるのが鍵だと思っているならもっと問題だ。

SNSを活用してクーポンを配信するとか、アイディアそのものは面白いと思っている。
店と客とグルーポンの三者が得する三方得に持っていける、持続可能なビジネスモデルに柔軟に変更して行って欲しい。
個人的には応援したいのだが。

(追記1) 何か面白いアイディアや提案がある方はコメント欄にどうぞ。
基本的に、クーポン以外の収益源の早期確保が鍵だと思います。
日本のぐるなびやリクルートのように、中小店舗へのコンサルやIT指導に深めていくなんてのもそのひとつですが、人材確保と差別化が困難。

(追記2)Twitterで @gshibayamaさんからGrouponの分析レポートを送っていただきました。
Sharespost Groupon Report

(追記3)フラッシュマーケティングそのものが問題と言うより、個人的には割引率やタイミングの設定主体の問題な気がします。店側が、もっと狭い範囲で主体的に割引率を設定できればもう少し成功するように考えています。

(注)この記事は、米国のグルーポンの状況について、主に米国メディアの情報を元に状況を分析したものです。
日本や各国のグルーポンが出しているサービスやビジネスモデルは異なっている可能性もあります。

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ビル・ゲイツとスティーヴ・バルマーの爆笑ビデオ集

2010-05-05 07:40:40 | 5. アメリカ経済・文化論

今日は日本にお住まいの皆様は、連休最終日でしょうか?
そんな楽しいときに、真面目くさったエントリもなんですから、ちょっと面白いものをご紹介。
Twitterで紹介したら、面白がっていたひとが多かったので、ブログでも紹介しようかな、と。

Bill Gates、といえば子供でも知ってる世界一のお金持ちで、マイクロソフトの創業者、
そしてSteve Ballmerは、創業したてのころからビル・ゲイツを経営面・財務面で支えてきた女房役である。

この二人は、世間で思われてるイメージを一蹴するためなのか、何なのか、けっこうお茶目なビデオを色々作製している。

一つ目は1998年ころに作られたビデオで、かつてはマイクロソフト関連の会議などで良く流されていたというもの。


なんかBill Gatesが可愛い・・。
なんていうか、ほのぼのするわけだが、背景を知ってるとかなり爆笑モノである。

  • Bill Gates と Steve Ballmerがなりきるのは、90年代終わりにアメリカで流行ったコメディ恋愛映画、Night at the Roxburyの主人公二人。これを見ると、映画のテーマ曲のイントロをまねてるのが分かる。


  • 途中に出てくるTestimonyシーンは、1998年、マイクロソフトが反トラスト法で訴えられたときの、サン・マイクロシステムズ創業者Scott McNealyの証言。
  • 要は、マイクロソフトが後発で参入したインターネットブラウザで巻き返すために、自社のInternet Explorerを、ウィンドウズと抱き合わせで販売した件について訴えられたもの
  • で、その裁定の参考人として、ネットスケープだのサンだの、マイクロソフトの競合と思われる企業の取締役が呼ばれたわけだが、このScott McNerlyの証言で一番有名なフレーズ"I believe in winners and losers and especially the freedom to fail" が取り出され、「えっ誰が負け犬?俺?俺?」みたいに茶化されているというわけ。
  • 彼の証言の前後は「I believe in winners and losers and especially the freedom to fail. What we want today is the enforcement of the laws that are already on the books」(私はビジネスでは勝つことも、負けることもあるし、特に、失敗する自由があると信じている。私達が要求したいのは、既に定められている法律(反トラスト法)を執行する、ということだ」というもの。この公聴会全体についてはWashingtonPostの記事が詳しい。

 

  • 最後に車に乗ってるところで、BillがCDを入れてかかってくる「Da Da Da」の歌は、実は自分達のWindows Explorerの最初のCMのオマージュだったりする。二人ともInternet Explorerのことは忘れたいらしい(笑)


あとほのぼのと言えば、これか。
Bill Gatesがハリーポッターのコスプレでしゃべる。


スティーブ・バルマーは、ビル・ゲイツとハーバード大学時代ルームメートであった、という話だが
(しかし、どこかのインタビューで、ルームメートであることは否定していた)
その後、大学を中退してマイクロソフトを起業したビルを尻目に、彼は卒業し、その後スタンフォードのMBAに行っていた。
そこに、ビルが電話をかけてきたのだという。
「何?まだ学生やってるの?もっと面白いことがあるから、ウチにおいでよ」

その電話がきっかけで、スティーブ・バルマーはスタンフォードMBAを退学し、マイクロソフトに入社。

そしてマイクロソフトは1985年にWindows 1.0を発売するのだが、そのときのテレビのCMがこれ。
バルマー大活躍。


その後のバルマーを知ってる人なら驚かないかもしれないが、
「マイクロソフトのCEO」としかとらえてない人から見ると、このハジケ度は驚きでしょう。
MBA行ってもどこ行っても、これくらいしないと、モノは売れないんですよ、と。
そしてモノが売れなければ、いくら起業だのナンだの言っても始まらないわけです。

  • でも良く見ると、MBAでちゃんと習うような定石な売り方もしている。最初に$500とか$1,000とか言って相手の期待値を下げてから、実は$99です!えっ安い!と思わせるとか。
  • Miami Viceはこれまた1980年代にアメリカで流行ってたテレビドラマのことです
  • ネブラスカだけは届かないらしいが、何故なのかは私にも不明・・。

その後、Windows XPが出てから、このCMをぱくったビデオが、バルマー出演で作成されている
しかし、この頃にはスティーブ・バルマーは既に暑苦しいおっさんへと進化を遂げており(失礼)、若干見てると疲れるのだが。


あと私が割りと好きで、何度も見直しているのは、2007年にWSJの企画で行われた、Steve JobsとBill Gatesの対談。
この二人って、実はそんなに仲悪くないんだな、と気づく。
まあ直接の競合じゃないし、若い頃に協業していた関係(Apple IIのソフトを作ってたのがマイクロソフト)
なので、当然なのかもしれないが。

こちらが、短縮バージョン。
Bill GatesとSteve Jobsがお互いをどのように見てるのか、というところだけ取り出して、端的にまとめている。


まあ見所は、

  • 最初にBill Gatesが話すときに「最初に言っておくけど、僕はFakesteveじゃないよ」というところ。前に記事でも書いたけど、Fakesteveはこのころ西海岸で大流行
  • Apple IIのソフトをマイクロソフトが作るようになった経緯を教えてくれ、と問われて答えるBill Gatesが余りにも話が下手で、Steve Jobsが「いいよ、俺が話すから」と取り上げるところ
  • とにかくSteve Jobsのジョークが切れまくりで面白い。「コンピュータっていうのは、愛し合う二人の男達から生まれたんだよ」「僕らはどこに行っても一番若い二人だった。今はどこに行っても一番年寄りだけど。だからここに来るのが楽しみだったんだ。(インタビュアーの二人が年上だから)」とか。

そしてこちらがロングバージョンへのリンク。
http://www.youtube.com/watch?v=_5Z7eal4uXI
全部で12個くらいに分かれてますが、Youtube上から伝っていけると思うので、興味のある方は是非。

ある意味、パーソナルコンピュータの世界を作ってきた二人が、若い頃はどのように考えていて、
どのようにこの世界を作ってきたのか、ということがよく見えてくる、非常に面白いビデオだと思う。

せっかくのお休み最終日ですし、こんなの見て楽しんでみてください。

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アメリカ人だって超高速ネットが欲しいっ!-グーグル誘致の熾烈な戦い

2010-04-02 02:25:15 | 5. アメリカ経済・文化論

本日(4月1日@アメリカ時間)、Google.comを訪れた方は、トップページがこんなになっていて驚かれたことと思う。

Googleの公式発表(ブログ)によると

Early last month the mayor of Topeka, Kansas stunned the world by announcing that his city was changing its name to Google. We’ve been wondering ever since how best to honor that moving gesture. Today we are pleased to announce that as of 1AM (Central Daylight Time) April 1st, Google has officially changed our name to Topeka.

先月初め、カンザスのTopeka市長が市名をGoogleに変えたとアナウンスして世界を驚かせました。我々は、この動きにどのように報いるべきか考えていましたが、本日午前1時(中央アメリカ時間)にて、Googleは正式にTopekaと社名を変更することにいたしました。

とのこと。
もちろん、エイプリルフールの冗談なんだけど、何故こんなことになってるか、というと
そこにはちょっとしたストーリーがある。

Googleのハイスピードインターネットを巡る熾烈なる地方都市の戦い

1月末にGoogleが、都市部にハイスピードインターネットサービスを展開する、と発表したニュースを覚えている方は多いと思う。
アメリカのインターネットが遅いことは私も記事にしているが、
記事にも書いた理由でなかなかハイスピードインターネットの普及が進まない。
その状況に一番やきもきしてるのは、サービス提供会社のGoogleである。

「そんなにテレコム・ケーブル各社がやる気ないんだったら、自分たちに出来ることを見せてやる!」
とでも言わんばかりのアナウンス。
更に本気度を見せるために、アメリカの一都市で実際にパイロットケースをやることにしたのだ。

その速度たるや1GBps とのことで、現在の平均のアメリカの高速インターネット速度(10Mbps、
実効速度は5-6Mbps)の約100倍。
しかも無料である。

で、そのパイロットをやる都市候補を募ったところ、全米で1100もの市町村から反応が来た
地方都市もじゃんじゃん来ているが、San Francisco、Palo Alto、San Joseなど、シリコンバレーの中心地の各都市すら応募している。
どの都市も、ハイスピードインターネットを導入したいのだ。

こうして、特に地方都市を中心として2月末頃から、Google誘致合戦が過熱し始めた。
Googleが提供する動画サービスYoutubeを使って、
各都市のMayor(市長)などが具体的な誘致のメリットの提案をしたり。

googlefibermap.png
Washington Postより。現在Gooble Fiberに応募中の市町村。

真っ先に市の名前をGoogleに変えたカンザスの州都トペカ

そんななか、3月2日、カンザスのCapital city(州都)であるトペカの市長が、
「市名を一時的にGoogleに変更する」と発表した
なんとカンザス州の州都が「Google」になっちゃったわけだから世界中をあっと驚かせた。

A CNN photo illustration welcomes travelers to Topeka, which changed its name temporarily to attract a Google project.
写真はCNNより。ちなみにこの写真はApril Foolでなく、ほんとらしい。

ところで、米国において、Kanzasとは田舎者を馬鹿にするときの代名詞となっている。
日本における「さいたま」の用法に近いが、その地位は圧倒的にさいたまより低い。
「カンザス、ああ、あのド田舎ね」みたいな感じ。

「トペカ」というのはインディアンの言葉で「ジャガイモを育てるのに最適な場所」という意味だそうだ。
そして、カンザス人たちは、ジャガイモをそだてることに誇りを持っている!

そんなカンザスの州都トペカが、Googleインターネットの試験サービスに使われるわけがないでしょ、
と誰もが思うからこそ、トペカはこの行動に出たのだろう。

今回のGoogleのエイプリルフールの冗談は、市名までGoogleに変えて本気で誘致しようとしているTopekaに敬意を払って、のことなのだ。
「TopekaのみんながGoogleになるなら、私たちがTopekaになりましょう」っていうギャグ。
Googleとしてもここまでやられて本当にTopekaを選ばなかったら申し訳ないので、
借りを返しておいた、ということでしょう。

他の都市だって黙っちゃいない、Google誘致大合戦。

さて、カンザス州都にこんなことをされて、他の都市だってだまっちゃいない。
こちらは、ミネソタの地方都市であるDuluthの反応。
(最初に出てくるのが本物の市長で、メインはパロディ)

アメリカでもこの辺の英語は訛りが最も少なく、一番聞きやすいので、是非聞いてみるのをオススメ。

ミシガンの大学都市のアナーバーでは、A2 Fiber AnthemというAnthem(市歌)まで作った。
市民も一丸となって、誘致活動に参加しているようだ。

Ann Arbor Courts Google
写真はNew York Timesより

締め切りが近づいた先週には、イリノイ州のPeoria、という都市が、カリフォルニアはMountain Viewの
Google本社のキャンパスの上に、「Google Plays in Peoria」というバナーを張った。

どれもユーモアのセンスがあって、本気で戦ってるようには見えない余裕がナイス(笑)。

 

結局テレコム各社を高速インターネットに投資させるためのブラフ

「GoogleはEvilではない!」と本気で思っている人たちには怒られそうだが、
こうやってどんどん盛り上げているのは、Googleのパフォーマンスに過ぎない、と私は思っている。

実際にはGoogleが全米に渡って、ハイスピードインターネットの提供が可能か、というと、
可能かもしれないが、Google自体がそれを選択しないだろう、と思うからだ。

よくGoogleがダークファイバーを買いあさっているとかいうことが話題になるが、
ネットワーク事業で一番大変なのは「足回り」とか「Last one mile」とか言われる、バックボーンから各家庭につなぐところ。
こういう工事を出来る人をたくさん雇って、「Google」と書かれたトラックが街の中を走る。
通信品質に問題があったときは、コールセンターが24時間対応で、
遠隔で帯域をコントロールしたり、パケットを何度も送ったり。

莫大な投資がかかるので、全米に「タダ」でインターネットを提供するのは恐らく不可能に近い。
そして、料金を取るようになると、「ネットワークのつながり具合」が問題になる。

そうすると必要とされる企業文化も違ってくる。
大事なのはGoogleらしく「新しいサービスを開発すること」ではなく「良い品質のネットワークを届けること」。
会社の大部分がそういうカルチャーになっていけば、Googleからイノベーションが生まれにくくなるかもしれない。
いまのところはGoogle自身がそれにはなりたくないだろう。
彼等がネットワーク事業者になるのは、最後の手段だと思う。

従って、これらのパフォーマンスは、みんなが高速インターネットを欲しがっているというのを明らかにし、
特にテレコム各社にとっては儲かっている都市部に無料のインターネットなどをわざと提供することで、
「早く本気でやらないと、一番儲かってるところだけCream skim(美味しいところだけとっちゃう)しちゃうぞ」
っていうブラフだと思っている。
自分たちが動く前に、まずは現状インターネットを提供しているテレコムやケーブル各社に投資を進めさせる方向だろう。
(そう、Google is evil、なのだ(笑))

それでもテレコムが動かなければ、Googleはインターネットの世界を変える

それでももし、テレコム・ケーブル各社が反応しないのであれば、Googleは本当にネットワーク事業者になっていくしかない。
その場合、今までのように「保証された、良い品質」のネットワークとはならないかもしれない、と思っている。

例えばセキュリティなどは、ネットワーク事業者が確保するのではなく、個人などが確保するモデルに変わり、
そのためのソフトやサービスなどが普及するだろう。
接続の問題なども発生するだろうが、そこはGoogleが対処するんじゃなくて、
そういうサービスを提供する会社が現れ、個人などが確保するモデルになるだろう。

今までテレコム会社が提供していた細やかなサービスとか、通話品質とか、安心感といったものがない、
新しいインターネットの時代になっていくだろう。
その代わりに、そういう品質やサービスを提供する周辺ビジネスが盛んになるだろう。

こうなってくると、イギリスや日本が推進している、次世代ネットワークなどは意義が無力化してくる可能性がある。

アメリカのテレコム・ケーブルがGoogleにどう反応するかで、
明日のインターネットの世界が今とは変わってくる可能性がある、と思う。

参考記事
私の過去記事
米国はネットを高速化するつもりがないらしい(その1)-バックボーンはつらいよ-My Life in MIT Sloan
米国はネットを高速化する気が無いらしい(その2)-困るのはGoogleでは?-My Life in MIT Sloan
いまさら3Gのカバレッジが問題になるアメリカ-My Life in MIT Sloan

他のメディアの記事(英語です)
Cities Rush to Woo Google Broadband Before Friday Deadline - Bits
Google fiber winners to be announced by end of year; 1,100 apply - WashingtonPost
Topeka 'renames' itself 'Google, Kansas' - CNN

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「パリスの審判」やってみました。-フランス VS アメリカワイン

2009-12-18 15:42:06 | 5. アメリカ経済・文化論
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アメリカでも別に根回しは大切だし、出る杭は打たれる

2009-10-20 11:00:43 | 5. アメリカ経済・文化論

先週末に書いた「MBAにおける「日本株式会社」の崩壊」の記事の後、MBA関連の知り合いの日本人が何人か、個人的にメッセージを送ってくれた。
曰く、「私も/僕も個人戦でこんな風に戦ってるんですが、結構大変。お互い頑張りましょう。」

メッセージを読んで、あーこの人も頑張ってるんだな、と励まされると同時に思ったこと。
MBAに来て、「個人戦」でいろんな活動をやっていて、一番苦労するのは、語学もあるが、
日本人が思っているアメリカのイメージとは違う、合意の取り方や進め方に戸惑う部分が大きいのではないか。
それから、頑張りすぎて、でしゃばりすぎたら、打たれちゃったとか。

1.根回し
意外かもしれないが、アメリカでも合意形成において根回しは非常に重要。(日本より重要かも)
ただ根回しの仕方がちょっと違う。

根回しとは、基本的には「俺も意思決定者だ」と思っている人に、事前に同意を取っておくことだと思うが、これは別に普通にアメリカでも大事。
MBAで活動していても感じたし、西海岸で夏のインターンをしていてもそうだった。
(私が、MBAのネイティブ中心のクラブでちゃんと根回しせずにやり始めて、計画がぽしゃった例は
こちらのエントリ

違うのは、アメリカでは、意思決定者が明確な場合が多く、根回しする対象がかなり明確で、数は少ない。
例えば、会社なら直属の上司とチームメンバーだけ。
グループ内全員とか、ましてやグループの外にいるステークホルダー全員に根回しに行くなんて、あまりない。
恐らく、アメリカの方が上司の力が強く、逆に上司はリーダーシップを取って決める責任があるからだ。

もちろん、アメリカでも、ロビイストみたいに、ステークホルダーが複雑が絡み合ってるところに同意を取りに行く人は、日本的な根回しが大切らしい。
それから、
ルー・ガースナーの名著「巨像も踊る」を読むと、大企業病に陥っていた以前のIBMで複雑な根回しが描かれてる。
きっと政府機関や、軍や、古い大企業などでは、未だにそういう根回しが大切なのだろう。

2.出る杭
また、打ち方、打ち具合などが日本とは違うが、出ている杭は基本的には打たれる。
もちろん、打っても利益にならない杭は打たないが、目の上のたんこぶとなれば必ず打たれる。

意外に思うかも知れないが、日本がアメリカに2度も「出る杭」として打たれて来た歴史を考えれば、ちょっとは納得感あるんじゃないか。
戦前、欧米諸国の「アジアはこうあるべき」というイメージを破り、貿易や植民地獲得で利害関係が出てきた日本を真っ先に潰しにかかろうとしたこと。
80年代の日米半導体交渉、自動車交渉、スーパー301条・・・

国内でも、黒人やヒスパニックが出すぎて、誰かの既得権益を奪うようなことをすれば、真っ先に潰される。
「英語が不得手」なのにやたら目立つことをしたり、先生のお気に入りだったりすると叩かれたりする。

会社などで、出る杭を叩かずに伸ばすのが当たり前なのは、
アメリカだってコンサルティングなどのプロフェッショナルファームや新興IT企業だけだろう。
(だから就職人気企業になったりするわけだが)
求められるものが大きいから、出来る人を叩いてる暇などなく、活用した方がいいわけである。

もし、日本と違うとすれば、今思いつくのは次の3つか。

1) 「同質幻想」が少ないので、全員の同意を取って叩くことが出来ない。
昔のエントリに書いたが、この国の人は、一つのことに対し、皆が同じ意見や利害関係を持っているという期待度は小さい。
したがって、「皆さんこう思いますよね~、ナンなんですかあの人」みたいな叩き方はしない。
近所のおばちゃんどおしとか、小さいHomogenious(同質)なコミュニティならあるだろうけど、公的な場ではありえない。
日本では、ビジネスなどの公的な場でも、実際に意見が違っても、皆が皆に合わせようとして、「出る杭を村八分にする」ということがあるよね。
これはアメリカでは結構違うと思う。「和を乱す」みたいなのは余り感じない。

逆に言えば、叩かれる方も必ずどこかに味方がいたりするので、そこまで縮まずに済む。

2) みんなが叩かれ慣れてるので、縮まずに戦う。
アメリカって、日本以上に個人の競争が激しい世界。
したがって、叩いて叩き合うなんてことは日常茶飯であり、皆も叩かれ慣れてるので、うまい戦い方を知っている。
基本的には、自分を叩くことが、相手にとって不利益になることを強調する。
交渉術と一緒だ。
「それ以上叩いたら、あなたはこれとこれを失うよ」ということを相手にそれとなく、しかも冗談めかして見せる。
実にしなやかだ。(注:下手な人もいるが)

MBAでほぼネイティブの人たちと一緒に仕事して、一番学んだのは、この「うまい戦い方」だった気がする。
実は日本でも役に立つかもしれないね。

3)「こいつは出来る」「お金になる」と思ったら、どんなに変な奴でも絶対に叩かず、守る。
でも、一番違うのはこれだと思う。
アメリカに起業家が多く、エンジェルに守られて成長するのも、その才能がお金になるなら、叩かないで育てた方が有利だからだ。
ボストンのような起業コミュニティにいるから余計思うのかもしれないが、こっちでは、目利き力というか、お金への嗅覚というのが非常に鋭い。
少々変な奴でも、「こいつは才能を持っているから育てて、守れば、金の卵になる」と思えば、叩かない。

この感覚は、日本には余り無いような気がする。
だから、起業家が余り育たないのかもしれないが・・・

いずれにしても、MBAにいてチーム活動やクラブ活動をしていて思うのは、人間が思ったり感じたりすることなどそんなには変わらない、ということ。
ただしそのやり方は文化の違いによって違ったりする、ということ。
それに、MBAに来ている人は、やっぱり人間として出来た人が多いので、挑戦することで友達が増えたり、協力する人も増えてきて、良いことも沢山あること。

所詮、MBAは「社会に出る前の練習場」なので、せっかく来たのだったら、色々挑戦して、自分のバグ出しをしておくのがいいかな、と思ったりする。
そうしてるうちに、自分なりのこの国のしなやかな生き方(戦い方)というのがだんだん分かってくるように思う。
という私は、まだ発展途上だけど。
まだ1年しか経っていないのだから、この国の見えてない部分も沢山あるに違いない。
頑張って「個人戦」やってる日本人留学生の皆様、一緒に頑張りましょう(笑)!

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ポスドクはアメリカでも報われない?

2009-09-29 01:30:23 | 5. アメリカ経済・文化論

明日の指導教官とのミーティングの準備が間に合わなくて、スペイン語の授業休んだりしてるくらいだから、ブログ書いてるところじゃないのだが・・・短い記事を。

昨日書いた「技術者が金儲けして何が悪い?-頭脳流出のススメ」の記事に載せた、
MITを昨年卒業した人の初任給のデータ
このデータは昨日の記事のメッセージを伝えるには余りいいデータじゃなかったんだけど、面白いので思わず載せちゃったんだよね。

それはさておき、これを見ていて思っていたこと。博士卒に限ってみると・・

                                                     Base salary        Bonus  
PhDs Going Into Acad. Post-Docs  $        44,370   $       2,143  
PhDs Going Into Ind Post-Docs       $        89,720   $       6,000  
PhDs Going Into Industry                $      106,469   $     19,622  
PhDs Going Into Academia             $      101,857   $     15,667

同じMITの博士号を取っても、企業に就職すると初任給(ボーナス込み)137,000ドル(100円換算で1370万円)ももらえるのに、
大学にポスドクとして就職すると、平均でたった46,000ドル(460万)なんだ。
これにアメリカの高い健康保険と税金がかかることを考えると(約3割)、手取りで320万円くらいかな。

ちなみにポスドクっていうのは「ポストドクター」の略で、博士号をとった後に、3年などの期間契約で勤める若い研究員のことです。
欧米の大学にはこれがたくさんいて、大学の研究活動を推進していると言われてます。
日本でも、1990年代後半に(悪名高き)「
ポスドク一万人計画」というのが発動されて、たくさん増えました。

ちなみに学振のPD(日本のポスドクの多くはこれ)がいくらもらってるのか、というと・・・
Wikipediaによると月間36.4万だから年間440万円ってところか。
もちろんここから税金と保険を払うから(約2.5割)、やっぱり手取りは330万円くらいってところだろう。

アメリカでも日本でも給与面でポスドクが報われないのは同じなんだね。
もちろん、アカデミアでの研究ってお金のためにやってるわけじゃないわけだけど。
ただポスドクの一番の問題は、給料じゃなくて、その後の進路の選択肢が減ることなんだよね。

一度ポスドクになると、就職が厳しいのはどの国でも事情は同じ。
しかし、日本は特に厳しい。
これは、博士を取りたがらない日本企業の事情もあるが、「ポスドク一万人計画」の影響も大きい。

この計画自体は当時は画期的なもので、
「日本の大学から研究成果が少ないのは、欧米のポスドクのようなものがなく、若手の研究者が少ないからだ!
じゃあ、5年間で1万人増やすぞ!」
といって、ばーんと予算とって若手研究者を増やした。
おかげなのかどうなのか、90年代後半から日本からの研究成果が増えたし、若手研究者の流動性も高まって風通しがよくなったし、良いこともたくさんあった。

でも増やしすぎなんだよ・・・。
欧米のように、徐々に増えてきたんじゃなくて、5年間でいきなり1万人も増やすんだもの。

それに1990年代後半と言えば、ベビーブーマー+就職氷河期にあたり、この計画に大量の人が流れ込んできた、というのも運が悪かった。
学振のポスドクは色々組み合わせても最大で6年くらいしか出来ないから、6年経ってもアカデミアのポストが取れない人は、自動的に「無職」になる。
でも、アカデミアのポストなんて5年間で1万人なんてあるわけがないから、ほとんどの人は別の職を見つけるしかなくなったわけです。
「高学歴ニート」が大量に生まれた一因にもなっている。

学者なんてリスキーな職業だから、6年で成果が出ないで、別の職を見つけることになる、ってのは仕方ないわけです。
そんなの、どの国でも一緒。
(日本のほうが企業が取ってくれないって意味では厳しいが)
それに、アカデミアのポストが限られてるのはポスドクになる前から分かってるんだから、それでもなったあなたが悪いでしょ、ってきびちー意見も当然ある。

私なんかも、研究室に大量に職が無いポスドクの人があふれているのを見て、
ウチはお金もないし(てか既に私が家計を支えてた)、あれはまずいな、と思って、
と同時に研究者よりやりたいことが見つかったこともあり、博士を退学して就職した、という経緯がある。

でも、ウチがそれなりにお金のある家だったら、とか、たまたま研究がうまく行っていたら、または今勤めてる会社に出会わなかったら、私も今頃まだポスドクだったかもしれない・・・
と思ったりする。
だからヒトゴトじゃないんだよね。

現在大量に解雇されている期間工などに比べたら、期間研究員の就職問題なんて、
規模も程度も小さい問題なのだけど、気になるのはそういう理由でした。

まとめると
・アカデミアが茨の道なのは、アメリカも日本も同じ。就職は厳しいし、特に給与面はよくない。
・特にアメリカでは給与面で比較すると、同じMITに行っても、企業に就職する半分以下しかもらえない
・日本は企業が博士ましてやポスドクなど取らないので、就職状況はより厳しい
・国の一時的な政策に翻弄されずに、ちゃんと自分の将来を考えよう

というとこでしょうか・・・
いかん、結構時間使ってしまった。勉強しよ・・・

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日本と米国の個人金融資産分布

2009-09-08 18:08:12 | 5. アメリカ経済・文化論

日本は若者の持つ富を、老人が奪っている格好になっているっていう話。
そんなの別にアメリカでも同じなんじゃないの?と思っていたのだが、ちゃんと調べてみることにした。
その結果、私が間違ってたことがわかったんだけど、データから言えることが面白かったので、書いてみることに。

★まず日本の話の復習から。
こちらのブログに、2004年→2007年日本の個人金融資産の変化がある。
3年間で60代以上の持つ金融資産が増え(54%→60%)、30代以下のが減ってる(9%→6%)、というのがグラフで示されている。
日本人の金融資産は、このころ1400-1500兆円でほとんど増えてないので、割合が変わったとなると、どこかの層で絶対額が増え、どこかの層では絶対額が減っていることになる。
いくら少子化でも30台以下の資産が、3年間で3分の2に減ってるのは減りすぎで、人口シフトでは説明できない。
そうすると、確かに「30代以下のパイを60代が奪ってる」形になってるよね。

「どう奪ってるか」というのは色々ある。例えば、
・30代以下の人は税金も年金も払ってるわけけど、
・60代以上になると、税金を余り払わなくなり、むしろ年金をもらうようになる。
というのは、30代以下から60代以上にお金が流れるひとつの方法だよね。
もちろん、消費の傾向の違いもあるでしょう。

現在だけ切り取ると、Chikirinさんのブログのグラフのほうが見やすいかな。
60代の人が6割持ち、30代以下は1割に満たないのが良く見える。

日本-2007年末(Chikirinの日記より転載)
f:id:Chikirin:20090321162425j:image

★じゃあ、アメリカはどうなってるか。
ドンピシャのデータが無いので、作ることにしました。
作り方が気になる方はこの記事の一番下を参照。

アメリカ(2007年の個人金融資産・年齢世帯別変化)


1)60代以上の金融資産は4.5割で、日本よりいびつさが少ないとはいえ、高齢者が最も金融資産を持つのは、アメリカでも同じ。
2)また、再生産に金がかかる40歳未満の金融資産が全体の10%未満というのも同じ。

なんだ、高齢者が持ってるじゃん、と思うかもしれないけど、
高齢者が金融資産を持ってること自体は、彼らは収入が無く、切り崩して生活してるんだから、福祉を自分でやらなきゃならない国では、どの国でも当たり前だよね。
(逆にスウェーデンとかでは高齢者が金融資産持ってないかも?)

というわけで、現在だけ切り取ってみても、あんまり意味のあることがいえない。
ちょっとさかのぼるんだけど、1989年というのが作れたんで、比較してみます。
(2007年の価値に割り戻してるんで、インフレは組み込まれてます)

一瞬、40歳未満の割合が減って、50-59歳のベビーブーマーの取り分が増えてるんで、「同じことが!?」とか思うが、絶対値が全然違う。
この18年の間に、2007年換算で、金融資産全体が2.5倍に増えているのだ。
これは人口の変化(2.5億人→3億人)が1.2倍の変化であるのに比べるとずっと大きい。
人口増加を考えても、ひと世帯あたり金融資産が2倍になってるということだ。

3)アメリカは、国全体が人口増以上に成長しているため、高齢者が若者から「富を奪っている」という形にはなっていない。

もうすこし詳しく見るために、一世帯当たりの変化を見てみる。

アメリカの一世帯当たり金融資産

そうすると、若い層は金融資産保有が全く変わらないのだが、50代、60代の資産保有が2倍とかになってる。

少なくても、奪ってるのではなくて、これらの層が20年の間にちゃんと働いて、ちゃんと運用して、富を蓄えているってことだよね。

4)アメリカでは過去20年間、若者の一世帯あたりの金融資産保有量は変化が無く、高齢者が若者の富を奪っている、と言う構造は見られない
5)ただし、50代、60代の金融資産保有量は2倍に増えており、これがアメリカの金融資産保有量の成長のドライバーになっている

GMやクライスラーが若者を解雇して、高齢者に年金と医療費を保証して・・・というところに引っ張られてたんだけど、
確かにアメリカでは、全体では若者はより貧しくなる、ということはなくて、この20年同じなんだね。
(もっとも金融資産が豊か・貧しいの指標になるなら、ってことだけど。あと2008年はひどいことになってるはず。)

やはり出生率2.2で、若い移民もたくさんおり、若者が高齢者を支える仕組みがちゃんと回ってるってことなのだろう。
ふーん、勉強になった。

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試算の前提
まず、[世帯主の年齢別金融資産] = [1) 年齢別世帯数] x [2) 金融資産を持っている世帯の割合] x [3) 持ってる家の平均資産]
1), 2), 3) のそれぞれはあるので、これで試算。
1) 米国国勢調査。あーデータが無くて、1989年は1990年のもの、2007年は2005年で代用しました。
http://www.census.gov/compendia/statab/2008/cats/population/households_and_families.html
2), 3) 連邦準備銀行
http://www.federalreserve.gov/pubs/oss/oss2/2007/2007%20SCF%20Chartbook.pdf

で、更にアメリカのデータは、35歳、45歳、と言う風に、日本のデータ(30代、40代)ときり方が違う。
ここは、[40代の資産] = [35-44歳の資産]/2 + [45-54歳の資産]/2 という形で試算しました。

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