ほととぎすながなくさとのあまたあれば
なをうとまれぬおもふものから 紀貫之
こころあてにおらばやおらむはつしもの
おきまどはせる白菊のはな
凡河内躬恒
月見れば千々にものこそ悲しけれ
我が身ひとつの秋にはあらねど
大江千里
しらつゆのいろはひとつをいかにして
秋の木の葉を木々に染めらむ
あきのつゆいろことごとにおけばこそ
山のこのはのちぐさなるらめ
詠み人知らず
キリギリスなくや霜夜のさむしろに
衣かたしき独りかもねむ
後京極摂政前太政大臣
我が袖はしほひに見えぬ沖のいしの
人こそしらねかわくまもなし
二条院讃岐
きりぎりすなくや霜夜のさむしろに
衣かたしきひとりかもねむ 後京極摂政太政大臣
苦も晴れてのちもしぐるる柴の戸や
山風はらふ松の下露 藤原隆信朝臣
柴の戸に入日の影はさしながら
いかにしぐるる山べなるらん
清輔朝臣
神無月木々の木の葉は散り果てて
庭にぞ風の音は聞こゆる
前大僧正覚忠
これやこの行くも変えるも別れては
汁も知らぬも逢坂の関
花の色はうつりにけりないたずらに
わが身世にふるながめせしまに
あしびきの山鳥の尾のしだり尾の
ながながし夜をひとりかもねむ
