風そよぐ奈良の小川のゆふぐれは
みそきそきみのしるしなりける
正三位家隆
たにかぜにとくるこほりのひまことにうちいつるなみやはるのはつはな
きみならでだれらかみせむうめのはな
いろをもかをもしるひとぞしる
わがせこかころものすそをふきかへしうらめつらしきあきのはつかせ
夏衣かたへすすしくなりぬなり夜やふけぬらんゆきあひのそら
前大僧正慈円
うぐひすの鳴く野辺ことに来てみれば
うつろふ花に風そ吹きける 詠み人知らず
花の色は雪にまじりて見えずとも香をだににほー人のしるべく
小野篁朝臣
はるたつといふばかりにやみよしのの
やまもかすみてけさしみゆらん
大中臣頼基
今よりは秋風寒くなりぬべし
いかでかひとり長き夜を寝ん
中納言家持
すがるなく秋のはぎはら朝立ちて
旅行く人をいつとか待たん
よみ人知らず
