大学の授業にかかわる話題

授業日誌・キャリア・学びのスキルについて

伊藤穰一×波頭亮 (上)

2013年08月23日 10時49分45秒 | キャリア支援
学歴がなくても、世界で活躍する人の真実
伊藤穰一×波頭亮(上)

波頭 亮 :経営コンサルタント
2013年08月17日

なぜ、日本企業や日本人は、
グローバルな舞台で苦戦を強いられるのか。
なぜ、日本からアップルやGoogle、Facebookのような
世界を席巻するベンチャーが生まれないのか。
今回は、この問いについて考えてみたいと思う。

ゲストは、日本におけるインターネットの普及に絶大な影響を及ぼした
伊藤穰一氏(親しみを込めて、Joiと呼ばせていただく)である。
デジタルガレージ、ネオテニー、クリエイティブ・コモンズ等々、
次々と活動の場を広げていったJoiは、
日本という枠組みを超え、インターネットというオープンな文化、
そして世界というフィールドに活躍の場を見いだしている。
そのJoiが、MITメディアラボの所長に就任し、
今再び日本に目を向け始めている。
彼の目から見た日本、日本企業、
日本人はどう映っているのか。
また、自身の経験と照らし合わせて、
グローバルな舞台に出ていくというのはどういうことなのか。
日本の次代を担う若者にぜひ耳を傾けてもらいたい。


写真右がコンサルタントの波頭亮氏、
同左がMITメディアラボ所長の伊藤穰一氏

日本からグローバル企業が出にくい理由

波頭亮(以下、波頭) 
トヨタ、ソニー以降、グローバルな舞台で
市場を席巻するような活躍を見せる日本企業が出て来ていない。
また、既存の企業が不振であるばかりでなく、
世界へ打って出るような、活きのいいベンチャーも出てこない。
それが日本を覆っている閉塞感の1つの原因であると思うのだけれど、
Joiは、そうした日本の現状をどう見ているのか。
忌憚のないところを聞かせてほしい。


伊藤穰一(以下、伊藤) 
当たり前なことから言うと、日本は世界第2位のGDPを成し遂げ、
マーケットが大きくなったから外に出る必要がなかったんだと思います。
そして、そのときにうまく機能していたのが、
「系列」をはじめとする縦割りのやり方だった。
でもその後、世界を取り巻く情勢は大きく変わりました。

特にネットの世界で顕著だけれど、
今は1人の天才が画期的な新製品を生み出すよりも、
いろいろな会社や人がうまく組み合わさって、
自分の得意な分野で協力して製品やサービスを創り上げていく。
それを支援するのがインターネットで、
だからネット上では
さまざまな人が有機的に結びついているんです。
それがグローバルなプロトコル(規定、約束事)になっている。

一方、日本のインダストリーには、
かつて機能していた縦割りのやり方が、
今も残っているようです。
日本のマーケットが大きく、
品質のよい製品を量産する時代はそれでもよかったけれど、
マーケットが縮小し、またグローバルを相手にしなければ
いけなくなると話が違ってきます。
日本のインダストリーのプロトコルを、
現在のグローバルスタンダードのプロトコルに対応させていく必要があります。


波頭 
戦後の日本はすごく特殊な設定でしたしね。
物価が安くて、若い労働力がたくさんあって、
セキュリティは米国に依存してローコストで、
十分に大きな国内市場では日本語が通用する。
しかも、米国というキャッチアップモデルまでありました。
日本が高度経済成長を遂げることができたのは、
こうしたたくさんの要素が組み合わさっていたからです。
しかし、あまりにも恵まれた成功体験をしてしまったがゆえに、
これでいいんだと思い込んでしまい、
変化することに消極的になってしまった。


リスクに報いない、残念な社会

波頭 
ベンチャーについてはどうですか。
日本で成功を収めたベンチャーというと、
楽天やDeNA、GREEなどがありますが、
米国のマイクロソフトやGoogleのように、
突き抜けた成長を遂げるベンチャーが出てきません。


伊藤 
よくいわれていることだけど、
日本はリスクテイクに対してあまり
リウォード(褒美を与える)しないですよね。
そういう環境ではベンチャーは出にくい。
もっとリスクをとって、それにリウォードするような姿勢を、
特に大企業に期待しています。


波頭 
今うまくいっている企業の多くは、オーナー系企業。
良くも悪くもオーナーの一存でリスクをとって
チャレンジできるからでしょう。
ある程度大きなリスクをとってチャレンジしない限り
成功しない時代になったのに、
日本では社会モデル、あるいは文化モデルとして
それができていないということですね。


伊藤 
日本も米国も同じ資本主義社会だけど、
今ではその捉え方に少し違いがあり、
その違いが両国のベンチャー企業における差として
表れているようです。

資本主義の根底にあるのは人の欲望で、
欲望がある人たちが集まるとマーケットが形成され、
そこでリソースがうまく分配され、
結果的に社会の発展に貢献するわけです。
一方、ネットの世界の人たちは欲望というよりも、
他人とコラボレーションするのが好き、
コミュニケーションするのが好きだからやっている。
ネットの根っこにあるのはボランティア精神、
だからオープンソースでみんなで共有しようという考え方が出てくる。
ベンチャーのファウンダーも基本的には同じです。
やりたいからやっている、好きだからやっている。



波頭 
そうですね。
世の中を変えたいからやっているという起業家が多い。


伊藤 
そうなんです。
米国ではそういう、好きだからやっているベンチャーのファウンダーと、
儲けたいという欲望が
根本にある資本主義がうまくマッチしている。
だから、オープンソースの上にビジネスが乗っかって、
ネット起業家やベンチャー起業家にまで
お金が回るシステムができているんです。

ところが日本では、
こういったネット社会に即した資本主義の循環が
まだ機能していないようで、
個人とお金が乖離している。
そういうところでは、みんなで共有して楽しいことを起こそうとか、
社会に役立つことをしようとかいう
ベンチャー精神は起こってこないんじゃないかな。


波頭 
今のお話は、米国のIT企業の変遷を、
如実に物語っていますね。
かつてIT業界の巨人といえばIBMで、
1990年代になるとマイクロソフトが覇者となりましたが、
どちらもビジネス動機の企業です。
ところが、近年のIT業界の成功企業は、
GoogleにしてもFacebookやTwitterにしても、
ビジネス動機というより、
やりたいことを追求するベンチャー精神が根本にあります。

初めからビジネスモデルをデザインしていたわけではなく、
面白そうだからやってみたら、
誰か商売のうまい人がマネタイズしてくれて
大成功に結びつき、気づいたら莫大な時価総額になっていた、
というパターンが少なくない。

こういうのがあったらいいよね、これ面白いよね、
というところから新たな試みを展開するのが
ネットの世界の人たちの動機づけ。
そういう動機づけで何かをやる人が、
日本では非常に少ないでしょう。
そんななかでも「2ちゃんねる」をつくった
西村博之さんや「はてな」をつくった近藤淳也さんなどは
稀有な例だと思いますが、彼らのような人が1人、2人ではなく、
50人、100人と出てくるようになれば、
ベンチャービジネスだけでなく
日本社会がもっと変わってくると思うのだけれど。


オリジナリティを持った人材をいかに育成するか

社会のなかを変えるような、
あるいは産業構造を一変させるような活力ある、
そしてグローバルで活躍できる
ベンチャーを創出するためには、
個人が優れたオリジナリティを持たなければいけないと
私は考えています。
これまで日本では、いい人材というと、
人とうまく調和できることが重要視されていました。
もちろん、調和能力がなければ
チームワークを築くことはできませんが、
もはやそれは最優先事項ではない。

波頭 
欧米では、自分の意見を持たない人は
価値がないといわれるように、
自分独自の意見を持っていないとグローバルでは通用しません。
あなたの意見は? 
あなたのオリジナリティは? 
それが問われる時代になっているんです。
ところが、日本のベンチャー起業家には、
オリジナリティに対するこだわりを持つ人が少ない。
それが大きな問題だと思っているんです。


伊藤 
僕もそうだと思います。
グローバルなステージでは、
オリジナリティがあれば少ない人数でも
レバレッジが利くので、
たくさん人がいるから勝てるというモードではありません。
だから、波頭さんがおっしゃるように、
オリジナリティを持った人たちをいかに
育てていくかということが重要になってくる。

僕は、教育の問題が大きいかなと思っているんです。
日本における大学の意味は、
いい企業に就職するためのブランドでしかない。
将来は大企業のお偉いさんになりたい。
そのためには、この一流大学に入りたい。
一流大学に入るためには、この高校、
この中学がいいということで学校を選んでいます。
何を学ぶかではなく、どの学校に入ったほうが有利か。
こんな教育ではオリジナリティなど生まれるはずがありません。
もっと、自分に投資するという
コンセプトで学ぶ人が増えないと。


波頭 
米国は、ある意味で日本以上に学歴社会だけれど、
学歴がなくても突出している人間は
実力で評価するという土壌があります。
あの学歴偏重のゴールドマン・サックスでさえ、
ハーバードでMBAを取っていなくても
実績でエースになれる。


伊藤 
米国では学歴はフィルターなんですよ。
大量の人材をふるい分けるためのツール。
学歴そのものが価値だとは思っていない。


波頭 
マイクロソフトのビル・ゲイツも、
アップルのスティーブ・ジョブズも
大学中退でしょう。
一般学生のカリキュラムなんて
モタモタしていてつまらないと、
すぐに大学を辞めてしまった。
Joiもそうでしょう。
学歴としては、シカゴ大学中退。
それなのに、教授はもちろんのこと、
ほとんどの学生たちもPh.D.であるMITメディアラボの所長に招かれるというのは、
学歴だけが価値ではないことを証明している。


伊藤 
僕が大学を出ていないのにメディアラボの所長になったことは、
むしろメディアラボやMITにとって
自慢のタネになっているんですよ(笑)。
彼らにとっては、学歴がなくても
優秀な人間を見つけてきたのは、
自分たちの見る目が高いことの証明になる。
だから、今いろいろなところから
学位を取らないかという話が来るんですけど、
MITからは「今さら取らないでくれ」と言われています(笑)。


波頭 
私もMBAやPh.D.といった肩書を何一つ持っていません。
一時、取ろうかなと思ったこともあったけれど、
すでにマッキンゼーでMBAを取った人たちにも教えていたしね。
上司に相談したら、
「今さら何のために取るんだ」と言われた。
でも、今になってみるとちょっと
後悔もあるんです。
日本はいまだに肩書だの組織だのといった
権威で判断するからね。
権威的な肩書があれば、
私の発言ももう少し影響力を持ったかな、
なんて考えさせられることもある(笑)。



伊藤穰一(いとう・じょういち)
MITメディアラボ 所長
クリエイティブ・コモンズ会長
1966年京都市生まれ。
日本のインターネット普及・伝承の第一人者であり、
創発民主主義者。
日本のインターネット黎明期から
さまざまなネット関連企業の立ち上げにかかわってきた。
郵政省、警視庁等の情報通信関連委員会委員を歴任するほか、
経済同友会メンバー、国際教育文化交流財団理事等各方面で活躍する。



波頭 亮 (はとう・りょう)
経営コンサルタント
1957年生まれ。
東京大学経済学部経済学科卒業。
82年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。
88年コンサルティング会社XEEDを設立。
幅広い分野における戦略系コンサルティングの第一人者として活躍を続ける。
また、明快で斬新なヴィジョンを提起する
ソシオエコノミストとしても注目されている。
著書に『成熟日本への進路』『プロフェッショナル原論』(いずれもちくま新書)、
『リーダーシップ構造論』『戦略策定概論』『組織設計概論』(いずれも産能大学出版部)、
『日本人の精神と資本主義の倫理』(茂木健一郎氏との共著、幻冬舎新書)、
『プロフェッショナルコンサルティング』(冨山和彦氏との共著、東洋経済新報社)などがある。


http://toyokeizai.net/articles/-/17012より

(下)へ続く

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米大学ランキング

2013年08月23日 00時55分50秒 | キャリア支援
「授業料に見合う利益」で測る
米大学ランキング

2013/8/15 7:00
(2013年7月24日 Forbes.com)

大学のランキングに意味はあるだろうか。
米国4年制大学の授業料が総額で25万ドル(約2,500万円)に迫るなか、
大学ランキングには注視するだけの価値がある。

将来、米高等教育の歴史の研究者が、
大学教育の大きな変化はいつ始まったのか振り返るとき、
まず確実に2013年だというだろう。
従来のリベラルアーツよりも
STEM教科(科学・技術・工学・数学)の重視という
「カリキュラムの変化」と、
キャンパスでの授業からオンライン授業という「授業形態の変化」は、
この年から本格化するからだ。
また、授業料の高騰と教育ローンの負担増、
州からの助成金の削減、入学者の減少、卒業後の就職難も、
この年を特徴づけている。
だがそれ以上に顕著なのは、「アイビーリーグ」と呼ばれる
東部の名門私立大学に属さない、西海岸の大学の台頭だ。

米トップ大学10校
順位 大学名 所在州
1 スタンフォード大学 カリフォルニア
2 ポモナ・カレッジ カリフォルニア
3 プリンストン大学 ニュージャージー
4 イエール大学 コネティカット
5 コロンビア大学 ニューヨーク
6 スワースモア・カレッジ ペンシルベニア
7 陸軍士官学校(ウェストポイント)ニューヨーク
8 ハーバード大学 マサチューセッツ
9 ウィリアムズ・カレッジ マサチューセッツ
10 マサチューセッツ工科大学マサチューセッツ

1位と2位が東部の大学ではなかったのは初めて。
フォーブスの「トップ大学」ランキングは、
フォーブスとCCAPが650校を対象にして調査する。
今回は6回目。

今回、フォーブズ誌の「フォーブス トップ大学」ランキングで初めて、
アイビーリーグ以外の2校が1位と2位を占めた。
1位がスタンフォード大学、2位がポモナ大学だ。
カリフォルニア州にある2つの大学が
1位と2位の座についたのも初めてのことである。
全米で最も質の高い州立大学はカリフォルニア大学バークレー校で、
22位にランクされている。
このランキングの変化がなぜそれほど重要かというと、
東部の名門校が支配する時代が終わり、
質の高い大学が多様化し、学生にとって選択肢が増える時代が到来したからだ。

高等教育の勢力図のこの急速な変化は、
今年の本誌の「トップ大学」最大のテーマである。過去6年間、
本誌はワシントンDCに拠点を置く、
高等教育にまつわる費用や生産性などをテーマにする研究機関の
センター・フォー・カレッジ・アフォーダビリティー・
アンド・プロダクティビティー(CCAP)と
独占契約を結んできた。
650校の単科大学(カレッジ)と総合大学(ユニバーシティー)を対象にした
本誌の評価がほかの大学ランキングと異なるのは、
「インプット(元手)」よりも
「アウトプット(成果)」のほうが大切であると堅く信じる点にある。
本誌は他誌のように、高校での成績や大学進学適性試験(SAT)など、
学生が大学に入れる条件をそれほど重視していない。
本誌が着目しているのはあくまで「投資利益率(ROI)」、
つまり学生が大学から何を得ることができるかという点にある。

本誌は、これから十万ドル単位の授業料を支払うことになる大学に
入学予定の学生(およびその家族)が最も関心を抱いている要素に着目している。
すなわち、授業内容は充実しているか? 
4年で確実に卒業できるか? 
卒業証書を得るために巨額の負債を負うことにならないか? 
大学を卒業したらよい仕事に就けて、自分が選んだ職種でリーダーになれるか? 
――といった要素だ。
無駄な出費に終わるような大学選びの評価基準は一切排除した。

2013年の「トップ大学」で分かった主な変化は以下の通り。

若者よ、西をめざせ


6月に行われたスタンフォード大学の卒業式=Stanford University
画像の拡大
6月に行われたスタンフォード大学の卒業式=Stanford University
 
この6年間で初めて、フォーブズ誌が作成したリストの1位と2位は、
太平洋岸(西海岸)の大学が占めた。
今年、金メダルを獲得したのはスタンフォード大学で、
銀メダルはポモナ大学が獲得した。
カリフォルニア大学バークレー校は、
他の州立大学を引き離し、22位についた。
この3校はいずれも、最初の1年間で学生が退学しなかった比率が高い
(スタンフォードから順に、98%、99%、96%)。
また、全米の大学と企業で構成する学生の就職支援団体である
ナショナル・アソシエーション・オブ・カレッジ・アンド・
エンプロイヤー(NACE)の統計によれば、
この3校は卒業生の平均初任給も高く、
2012年の新卒者初任給の平均値4万4,259ドルを上回っている
(スタンフォードから順に、5万8,200ドル、4万9,200ドル、5万2,000ドル)。

ハーバードはどうした?


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春には外で講義。イエール大学で=Michael Marsland/Yale University

アイビーリーグをあなどってはいけない。
むしろ善戦している。
8校いずれもがトップ20位以内にランキングされているのだ。
プリンストンとイエール、コロンビア大学がそれぞれ、
3位、4位、5位を占めている。
2012年と2011年、6位につけていたハーバード大学は
今年8位に順位を下げている。
いっぽうペンシルベニア大学は6位順位を上げて11位を占めた。
ブラウン大学は7位上昇して12位に、
ダートマス大学は9位上昇して16位にランキングされた。
だが最も躍進著しいのは、
51位から一挙に19位にランクされたコーネル大学である。

米国人に限らず、数百万の学生にとって、
アイビーリーグは依然として揺るぎない地位と価値を保っている。


躍進する名門パブリックスクール(公立学校)

今年は、軍学校をはじめ9つのパブリックスクールが
上位50位以内にランキングされている。
ミシガン大学アナーバー校は30位につけ、
初めて50位以内のランク入りを果たした。
パブリックスクールはどこも評価を上げ、
上位100位のうち23校が、上位250位のうち51校がランク入りしている。
これはどんな大金を払ってでも
アイビーリーグ卒業の箔をつけようとする風潮への反動だろう。
名門の州立大学では、州内出身者であれば、
私立大学よりはるかに安い授業料で質の高い教育を受けられる。
高額の教育ローンを抱えたくない学生が増えるなか、
パブリックスクールや公立大学は選択肢として魅力を増している。

きっちり4年で卒業

ハバフォード、ポモナ、スワースモアの各大学は、
4年で卒業する学生の比率が91%と傑出している。
この比率が一番低いのがコロラド州のメトロポリタン州立大学(4%)と、
テキサス・サザン大学(5%)だ。
きっちり4年で卒業できれば、それだけ支払う学費が少なく、
家族を含め負担が減る。
マサチューセッツ州ボストンのノースイースタン大学(236位)をはじめとする一部の大学では
4年で卒業する学生の比率が0%だが、留意すべきは、
こうした大学の学生が5年制プランを選び、
企業でインターンとして働く「実地教育」を受けている点だ。

教育ローンの活用

アイビーリーグの各大学は、卒業証書に値打ちがあるだけでなく、
教育ローンを利用する学生の比率が低い。
教育ローンを利用している学生の比率はイエール大学でわずか9%、
プリンストン大学では10%、ハーバードでは11%にすぎない。
いっぽう、ノースカロライナ州のセーラム・カレッジと
イリノイ州のトリニティ・インターナショナル大学では
学生の90%が教育ローンを利用している。
またミシガン州のヒルスデール・カレッジ(196位)と
コネティカット州のUSコーストガード・アカデミー(94位)では
教育ローンを利用する学生が一人もいない。

世界を視野に入れる

ほとんどの大学に留学制度はあるが、
海外留学に積極的に取り組んでいる大学がいくつかある。
たとえばケース・ウエスタン・リザーブ(89位)は、
グローバルE3(エンジニアリング海外交換教育)プログラムを取り入れて、
エンジニアリング専攻の学生が、
授業料は米国内で支払っている金額のまま、
海外の提携大学に留学できるようにしている。
カレッジ・オブ・ウィリアム・アンド・マリー(44位)は
スコットランドのセント・アンドリューズ大学と提携し、
同校でも学位を取得できるようにしている。
またニューヨーク大学(56位)は、
アブダビや上海、シンガポールに総合キャンパスがある。

オンライン教室

MOOCを通じて講義中(ペンシルベニア大学で)。
「単位」は「単位時間」と言われるようになり、


オンライン教育は従来の学校教育に風穴を開けている=AP
画像の拡大
MOOCを通じて講義中(ペンシルベニア大学で)。
「単位」は「単位時間」と言われるようになり、
オンライン教育は従来の学校教育に風穴を開けている=AP

授業内容のデジタル化にともない、
進取の精神に富んだ大学では授業をオンライン化するだけでなく、
学位もオンラインで取得できるようにして、
この時代の流れを取り入れている。
オンライン教育に積極的な主だった大学としては、
ペンシルベニア州立大学(93位)、
マサチューセッツ大学のアマースト校、ボストン校、
ダートマス校、ローウェル校、
マサチューセッツ大学医学校が共同で進めているUMassオンライン、
アリゾナ州立大学(226位)などがある。
2013年の春、これらの大学には
8,000人以上のオンライン学生が入学した。

急増するMOOC

ウェブ上で無料参加できる大規模講義(MOOC)でよく知られているものは
いずれも本誌の大学ランキングの上位校で生まれている。
エデックス(edX)はハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(9位)が発祥の地だし、
コーセラ(Coursera)とウダシティー(Udacity)は
スタンフォード大学で生まれた。
現在では、数多くの大学がMOOCを取り入れている。
シカゴ大学(14位)とニューヨーク州立大学のシステムはさきごろ、
コーセラを導入している。
またサンノゼ大学(272位)はウダシティーに参加しているが、
成果は成功例もあれば失敗例もある。
エデックスはウェスレー大学(23位)と
ライス大学(33位)で導入されている。

ランクを上げた大学、下げた大学

長らく1位もしくは2位の座を占めてきたプリンストン大学が、
僅差ではあるが、初めて3位に転落した。
2008年以降、リベラルアーツのトップ校として君臨し、
2010年と2011年には1位にランクされたウィリアムズ・カレッジが
今年は9位に転落した。
順位を最も上げたのが、米国で唯一、学生全員が黒人男子の大学として
知られてきたモアハウス・カレッジで、
235位アップして285位にランクされた。
2012年には369位だったニューヨーク市立大学シティカレッジは、
今年137位までランクを上げた。

いっぽう、去年216位だったウィスコンシン・ルセラン・カレッジは537位に、
111位だったトマス・アクィナス・カレッジは415位に転落している。
宗教団体が運営する大学でランクを上げたところはいくつかあるが、
とりわけ末日聖徒イエス・キリスト教会が運営するブリガム・ヤング大学は
93位から75位にランクアップしている。
2012年に109位だったチャーチズ・オブ・クライストが運営する
ペパーダイン大学は、現在100位にランクされている。

新時代の米国のリーダー

大学卒業後に社会的成功を果たした人びとを決める基準は、
本誌が以前項目立てていた「紳士録(Who’s Who)」ではもはやなく、
むしろ新規につくった「米国を率いるリーダー」にあることを実感する。
これが今回のランキングの変化をうながした本当の要因だ。
この人々のリストは、「パワーウーマン」「30アンダー30」
「ミダス・リスト」など、フォーブズ誌の数あるランキング特集シリーズに基づき、
さらに芸術や科学の分野で賞を受賞した実績などの情報を総合して作成された。
その結果、以前ほど排他的ではなく民主的で大きな影響力を持つ人々と
一流大学のリストが出来上がった。

失望させた大学

今年、フォーブズ誌では、ランキングの評価基準となった、
米国教育省に提出するデータを改ざんした大学に新たなペナルティーを科した。
過去2年間に、バックネル大学、
クレアモント・マッケンナ・カレッジ、エモリー大学、
アイオナ・カレッジの4つの大学が虚偽のデータを提出したことを認めている。
この4校は、2年間、本誌のランキングから抹消される。

By Caroline Howard, Forbes Staff

(c) 2013 Forbes.com LLC All rights reserved.


http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0901B_Z00C13A8000000/より


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