ひとり井戸端会議

主に政治・社会・法に関する話題を自分の視点から考察していきます。

見せかけの「公開」

2010年06月13日 | 教育問題関係
高校無償化制度を意識 朝鮮学校が授業公開(日テレニュース24)

 東京の朝鮮学校が、13日に開いている文化祭の中で、例年にはない「授業の公開」を行った。適用が見送られている高校無償化制度を意識しての公開。
 授業が公開されたのは、東京・北区にある東京朝鮮中高級学校の高校3年の6クラス。文化祭に訪れた人たちは、午前中に行われた数学や漢文の授業と、日本の講師を招いた授業を熱心に見学していた。
 朝鮮学校への高校無償化の適用については、世論や一部閣僚の反対もあって見送られていて、文科省が立ち上げた専門家会議が8月中に結論を出す予定。
 学校側は「思想教育や偏った歴史教育が行われているわけではないことを見てもらいたい」と話している。



 あからさまな「ウワベだけの公開」である。今回の「公開」をもって朝鮮学校がまともな授業をしていると決定することはまったくもってできない。

 まず、公開している科目に注目したい。ここで公開しているのは、数学と漢文の授業である。ここでどうして公開した授業の科目に注目したかというと、これら科目では、北朝鮮の思想偏向教育が本当に行われているか、正確に見定めることができないからである。

 共産主義化のソ連における数学教育についての描写があるマーシャ・ガッセン『完全なる証明』によれば、当時のソ連では「数学は社会主義に奉仕すべし!」というスローガンの下、数学を共産主義イデオロギーの支配下に置くことが画策されていた。しかし、「数学はプロパガンダには使えない」として、数学をイデオロギーの下に置くことはできなかった。

 つまり、数学というのは、その学問の性質上、イデオロギーとは無縁の存在なのである。したがって、数学の授業を公開したところで、そこから北朝鮮のプロパガンダ教育を垣間見ることはできない。よって、この公開は無意味である。



 次に、しばしば朝鮮学校を無償化しないことは、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)」の13条に違反しているとか、「児童の権利条約」や「人種差別撤廃条約」に違反しているという批判を見かける。

 しかしながらまず、日本はA規約13条2(b)および(c)をについては留保をしており、したがって、日本は13条の法的拘束を受けることはない。よって、13条を根拠に朝鮮学校無償化を主張することはできない。

 そもそもとして、それでは日本は今まで高等教育を無償化してこなかったわけだが、その事実は上記のこれら条約に違反していたというのであろうか。そのような主張ができないのは決まっているのである。

 というのは、憲法と条約とでは憲法のほうが法的に上位なのであり(通説。憲法自身もその98条において、憲法を「国の最高法規」と規定していることらも明らかである。)憲法26条2項において、「義務教育は、これを無償とする。」と規定しているからである。なお、ここで言う「無償」とは授業の対価としての授業料を徴収しないという意味である(最高裁昭和39年2月26日判決)。

 憲法26条2項を「中学校までの教育しか無償にしてはならない」という意味で理解してはならないだろうが、国の最高法規である憲法が、明文をもって無償の範囲について言及している以上、本来ならばこの問題は、憲法との関係にまで立ち入った検証がなされなければならないものなのである。



 また、だいたい日本人を拉致して未だに嘘をついて一向に拉致被害者を帰そうともしないような国に、どうして我々国民が税金を払ってやらなければいけないのかという、心情的な問題も決して無視できない。朝鮮人の子弟といえども、朝鮮学校に通うことが義務とされているわけではないのだから、なおのことである。

 くわえて、国交がない国である以上、そのような(しかも超独裁国家である)国である北朝鮮にカネを配っても、これがきちんと子供の教育に行きわたっているのか、検証する術もない状態で、見切り発車的に無償化することは非常に危険なことである。



 最後に、普段はしきりに「教育への政府の介入をやめろ」と主張している人たちが、今回は無償化賛成に回っているのが不思議で仕方ない。

 普通に考えて、国家が義務教育以外の教育である高等教育にまで税金をつぎ込み、これを無償化するとなれば、「国民からの税金で教育を施している以上、高等学校といえども政府が教育内容等について監視できる」という国家からの主張を許すきっかけになりはしないのか。つまり、「カネを出してるのだからこちらの言うことに従え」という理屈を無視できなくなる「危険性」がありはしないか。

 朝鮮学校はこうしたことを政府が言ってきたら、どう言い逃れするのだろうか。



 そもそもとして、朝鮮学校を除外するか否か以前に、高校無償化というこんなカネのムダは即刻にやめるべきなのは言うまでもない。

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