ひとり井戸端会議

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上田知事の発言について

2009年07月01日 | 教育問題関係
「国旗・国歌、嫌いなら辞めよ」=起立しない教員に-上田埼玉知事(時事通信) - goo ニュース

 上田清司埼玉県知事は1日の県議会本会議で、県立学校の式典で君が代斉唱時に起立しない教員がいることについて「式典のルールに従って模範を示さなければならない教員が模範にならないようでは、どうにもならない」と述べた。その上で「そもそも、日本の国旗や国歌が嫌いだというような教員は辞めるしかないのではないか。そんなに嫌だったら辞めたらいい」と強調した。
 君が代斉唱時に起立しない教員がいることへの解決法を民主党県議からただされ、答えた。これに対し、共産党県議団は「思想と良心の自由を定めた憲法19条の規定をないがしろにするもので、700万県民の代表にふさわしくない危険な発言だ」とし、撤回を求める談話を団長名で発表した。 



 私としては、上田知事の発言は理解できる。しかし、いくつか気になったのは、上田知事が言う「教員」には、公務員たる公立学校の教員のことを指すのか、それともこれに加えて私立学校の教員も含めて指すのか、という点だ。

 もし前者の教員のみを指すなら問題ないが、後者の教員も「辞めるしかないのではないか」と考えているのなら、それは公権力による国民生活への介入であり、許されないはずだ。

 私立学校で働いている教員はそもそも公務員でない。そうである以上、私立学校においては学校の式典等では、その私立学校の裁量が優先されるべきである。したがって、私立学校においては式典等で国旗を掲揚し、国歌を斉唱しなくても構わない。それが公的な施設である公立学校で働く公務員たる教員と、私的な法人である私立学校で働く教員との違いである。

 私立学校でも国旗の掲揚、国歌の演奏がなされれば望ましいが、あくまでも私立である以上、その学校各々の教育方針が優先されるべきで、公権力による介入は、学校教育法の遵守等、最低限に留めるべきだ。



 公立学校で働く教員は、一人の人間である前に、国家に仕える公務員であることを忘れてはならない。その国家の方針は、学校の式典等においては国歌を斉唱し、国旗を掲揚することである。そうであるならば、その方針に従い、教育を行うのが公僕たる公務員の義務だ。

 この意味において、上田知事の指摘が意味のあるものになる。一方で、この上田知事の発言に対して共産党は憲法違反と言わんばかりの批判を展開したそうだが、なるほど、確かにそれも頷けないものではない。

 というのは、この上田知事の発言からは、内心における国旗・国歌に対する各教員の価値観(つまり、国旗や国歌をどのように考えているかということ。)までも否定しているように思えたからだ。だが、憲法においては、内心の自由は絶対に(絶対「的」ではないということに注意。)保障されなければならない。

 よって、内心では人は何を考えても、国旗・国歌に対してどのような価値観を持っていようとそれは自由であるが、しかし、その上で公立学校の教員は公務員である以上、国家の方針に従い、生徒や児童の模範として国旗・国歌に敬意を払う行動をしなければならない。

 このことを換言すれば、どんなにその教員が国旗・国歌に対して敵意を持ち嫌悪していようと構わないが、公務員であるのだから、その内心はどうであれ国家の方針に従ってもらう、ということだ。



 内心の自由は絶対に確保されなければならないが、それが行為に現れた場合は別だ、ということである。たとえば、共産主義に影響されて、内心においては革命を起こし、日本を共産主義国家にしたいと考えていても、それが行為になって外面に現れたら、その者は外患誘致ないしは内乱罪、もしくは破防法によって処罰を受ける。

 教員による「不起立」も同じで、内心での国旗・国歌に対する評価が行為に結びつくから処分を受ける。もっとも、上田知事の発言からはこのような理解が感じられない、つまり、内心レベルでの個人の価値観までも否定するような言い方であるので、共産党による批判も一理あると言える。



 しかしながら、このように主張する共産党が上田知事の発言の「撤回を求める談話」を発表したのには、違和感を覚える。何故ならば、たとえ上田知事の発言が不適切であっても、この知事の発言も、教員の内心の自由の保障と同じく、憲法が保障する「表現の自由」によって守られなければならない、とも言えるからだ。

 とは言うものの、これを言いだしたら切りがないのは承知で共産党の揚げ足取りをしてみたが、思うに、上田知事は「卒業式等の式典における『不起立運動』について、教員が公務員である以上、そのような行為をした場合に処分がされるのは当然のことです」とぐらいに抑えておけばよかったのではないか。

 いずれにせよ、私からすれば、上田知事の発言賛成派も反対派も、互いに主張が噛み合わない上に主張が極端であるように思えてならない。これではいつになっても両陣営がいがみ合ったままで、問題の解決に向けて現状が動き出す日は遠いだろう。

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2 コメント

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Unknown (さかな)
2009-08-18 22:30:49
起立しなかった教師を研修所に放り込んで、起立させるような思想を植えつけることは、内心の自由の侵害になりますでしょうか?
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さかなさん (管理人)
2009-08-18 23:53:39
コメントありがとうございます。

結論から言えば、「なる」と言わなければならないのですが、実際問題、とても難しい話だと思います。

というのは、さすがにこういう教員には指導が必要ですが、「思想を植え付ける」ような指導をしてしまうと、さすがにそれは憲法違反だと思います。しかし、何の指導もしないのでは、不起立を行う教員が後を絶ちませんからね。

したがって、指導をするとしても、「公務員なのだから、方針に従うように」ぐらいの指導がせいぜいでしょうね。
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