ひとり井戸端会議

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尖閣諸島における問題について

2010年11月07日 | 外交事情考察
尖閣ビデオ 公開圧力、一気…「正しい情報、民主主義の基本」(産経新聞) - goo ニュース

■政府、拒否姿勢変えず
 中国漁船衝突事件映像のネット流出を受け、野党各党は5日、政府批判を強めた。海上保安庁撮影の本物の映像が流出したとみて、事実関係の確認を求める一方、野党だけでなく与党からもビデオの全面公開を求める声が上がった。政府は全面公開を拒否する姿勢を変えてはいないが、「公開圧力」は一気に高まった。
 自民、公明、みんな、共産、社民、たちあがれ日本、新党改革の野党7党の国対委員長らが5日夕、国会内で急遽(きゅうきょ)会談した。
 野党が問いただそうとしているのは、ネット上に流出した映像が海上保安庁が撮影した本物なのかどうか。本物であるなら、映像が政府内から、どのように流出したのか-の2点。これを政府に求めることで7党は一致した。
 期限は、8日から始まる衆院予算委員会の平成22年度補正予算案審議の直前。週明けまでに、明確な回答をすべきだとした。
 仙谷由人官房長官は8日の衆院予算委員会で調査内容を説明したいとしているが、自民党の石原伸晃幹事長は「直ちに政府にビデオの全面公開を求める。開示されない限り、国益、国家の主権のかかわった問題だから、補正予算案審議だってどうなるか分からない」と態度を硬化させている。
 全面公開に慎重だった公明党も、井上義久幹事長が「事実とすれば公開、非公開の議論自体が意味がない。全面公開すべきだ」と述べた。
 民主、自民などの国会議員が参加する「国家主権と国益を守るために行動する議員連盟」も5日、ビデオの全面的な一般公開を求める要請書をまとめた。
 共同座長の民主党の原口一博前総務相は「流出の真偽を確かめるのが第一だが、オープンに正しい情報を伝えることが民主主義の基本だ」と述べ、全面公開を主張した。同議連は、国境付近の離島の振興策強化も盛り込んだ要請書を近く政府に申し入れる方針だ。
 仙谷氏は同日の記者会見で「考え方は変わっていない」と述べ、ビデオの全面公開を拒否する姿勢を変えなかったが、野党側の追及は激しさを増しそうだ。



 領土問題は、国際法的には領土紛争(territorial dispute)と呼ばれ、領土の帰属をめぐる紛争(狭義の領土紛争)と、国境の画定をめぐる紛争(frontier dispute)とに大別されるとするのが一般的な見解である。現在、わが国が直面している尖閣諸島をめぐる問題は、国際法学者の通説的見解にしたがえば領土紛争であり、上記の分類では狭義の領土紛争に分類されよう。

 国家領域、すなわち領土の取得は、有効な領域権原(territorial title)の創設によって実現される。よって、理論的には領土紛争とは、この有効な領域権原がどちらに帰属するのかをめぐる問題と言うことができる。それでは、領土紛争の解決の規準としては、国際法的にどのようなものがあるのだろうか。



 先述した領域権原は、領土取得の法的根拠としては成立するが、この権原が領土紛争解決の規準になるものではない。以下に挙げる規準が国際法として容認されている。ただし、今回ここで取り上げているのは尖閣諸島における問題であるので、かかる問題に適合的な基準のみを挙げるにとどめる。


Ⅰ 実効性の原則

→この原則は、紛争となっている領土の自国への帰属を主張する国のいずれの国が、当該紛争領域を継続的かつ平和的に統治権を行使してきたかを重視するものである。この原則は、「パルマス島事件」判決以来、「主権の継続的かつ平和的発現」という表現で一貫して重視されてきたものである。

 具体的に「主権の発現」とは、国家の、司法・立法・行政というこれら統治権の行使を意味する。したがって、私人による行為はここには含まれない。「主権の発現」の主観的な意味においては、当該地域の地理的状況、人の居住状況等が考えられる。


Ⅱ 対立する主観的活動の相対的強さ(relative strength of opposing claims)

→尖閣諸島の問題に典型的に見られるように、領土紛争というのは往々にして両国が何かしらの根拠を掲げて争うものである。すなわち、両国が何かしらの主観的な活動をし、その実効性を根拠に領土紛争は争われる。

 かかる場合に国際司法裁判所は、「マンキエ・エクレオ島事件」判決において、この原則を採用し、領土紛争を裁断した。すなわち、主権に関して対立する両国の主張において、どちらの国の主張のほうがより説得力を帯びているかということである。この場合、「優越的な主張」を提示できたほうが勝つことになる。



 さて、それでは上記の原則を踏まえて尖閣諸島における問題を考察する。

 周知のように、尖閣諸島については、わが国が1895年、繰り返し現地調査を行い、他国による領有の形跡がないことから、正式にわが国の領土に編入することを決定した。この際、中国(当時は清)からわが国の領土編入に対し、抗議がなされることはなかった。

 ここで、わが国が尖閣諸島を編入した手法について、国際法的に解説しておきたい。

 これは、いずれの国にも属していない地域の取得形態である原子取得(original acquisition)に該当すると解される。この形式の領土取得には先占(occupation)がこれに当たる。先占による領土取得の要件は以下のとおり。


①占有の主体が国家であること
②対象地が無主の土地(所有者のいない土地)であること
③実効的な占有が伴っていること
④国家に領有意思があること


 ①についてであるが、尖閣諸島の一部は私有地であり(大正島は国有地)、これら私有地を国が所有者から借り上げて(賃貸借契約を締結して)、登記を具備して管理している。この時点で、すでに①の要件は満たしていよう。


 ②については、編入以前に日本政府が繰り返し現地調査を実行し、尖閣諸島が無主の土地であることを確認し、編入していることは既に述べたとおりである。


 ③については、実効的占有とは、先占する国による統治権の現実の行使を指すものとされる。これは国際司法裁判所によっても確認されているところである。わが国は、2005年に尖閣諸島に不法上陸した中国人を、入管法違反で国外退去処分をしていることから、尖閣諸島においてもわが国の統治権は行使されていると言えよう。

 また、これに加え、魚釣島に日本の政治団体が設置した灯台を、2005年2月に正式に政府は認定し、この灯台を海図に記載して国の管理下に置いている。


 ④についてだが、これは上記の実効的な占有が存在すれば領有の意思も当然に推定されると解されるので、上記のように統治権を行使して尖閣諸島を領有しているという現実を鑑みるに、この要件は当然満たしている。


 上記のとおり、わが国の尖閣諸島の領有については何ら批判される点はなく、国際法的に見ても法的な瑕疵はなく取得されている。さらに、尖閣諸島には戦前、日本人が経営する鰹節工場があったのはこれもまた周知のことだが、このようにわが国は継続的かつ平和裏に尖閣諸島を戦前より領有してきたのであり、こうした事実は、尖閣諸島が法的に見てわが国固有の領土であることを意味している。

 そもそもとして、中国は戦勝国であるにもかかわらずアメリカが沖縄諸島を統治し、これら諸島を返還する際、その対象には尖閣諸島が含まれていたのに、何故当時抗議をしなかったのか。中国が言うように尖閣諸島が中国固有の領土であるとすれば、この当時に何ら抗議の意思を示さなかったというのは実に不可思議である。



 ここまで検討してきたが、尖閣諸島について、わが国が国際法的に容認されている領土取得手段である先占に基づき取得し、また実効性の原則である、「主権の継続的かつ平和的発現」によって統治してきたことは明白である。

 加えて、対立する主観的活動の相対的強さについても、これまで挙げてきたわが国の尖閣諸島に対する主権の行使に加え、中国の領有権主張は、国連の調査によって、1971年に同諸島周辺に地下資源埋蔵の可能性が確認されて以降であることから、主観的活動の相対的の面においても、わが国のほうが強いと言える。

 したがって、尖閣諸島は国際法的に照らしてわが国の領土であることは疑いない事実なのである。

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