ひとり井戸端会議

主に政治・社会・法に関する話題を自分の視点から考察していきます。

ドギーバッグ

2008年11月07日 | 消費、環境、食品問題
広がる?「ドギーバッグ」 海外では当然 食中毒恐れ、日本は消極的(産経新聞記事より一部抜粋)

 飲食店で、食べ残した料理の「持ち帰りサービス」を実施するところが増えてきた。9月には「ドギーバッグ」と呼ばれる専用容器も発売され、食品廃棄物の削減に向けた取り組みとして注目が高まっている。
 広尾にあるイタリア料理店「オステリア ルッカ」。ここでは、スタッフが声をかけ、料理を専用の容器に詰めてくれる無料サービスが女性客らに好評だ。「世界中に飢餓で苦しむ子供がいるのに、食べ残しを捨てるのはもったいない。以前から、店で何かできないかと考えていた」桝谷周一郎シェフは、サービスを開始したいきさつをこう説明する。海外のレストランでは食べ残しを持ち帰る習慣は当たり前。日本ではもったいないと思っても、恥ずかしくて言い出せない人も多い。
 農林水産省によると、日本の食料自給率は40%にとどまる一方、外食産業による食品廃棄物は年間約300万トンに上る。「おいしいふくい食べきり運動」を展開する福井県では、ホテルや飲食店など約50店舗が持ち帰り用容器を提供している。
 ただ、日本では客が持ち帰りを希望しても断る店は少なくない。欧米と違い夏場は高温多湿で、食べ物が腐りやすいという懸念があるからだ。外食チェーンが加盟する日本フードサービス協会では「持ち帰った後でお客さまがいつ、どんな状態で食べるのか、店側は責任が持てない。食中毒などの事故があればチェーン全体の問題になりかねず、積極的に導入するのは難しい」とみる。



 よい試みだと思う。ある友人から私が聞いたところによると、某回転寿司チェーン店では、商品(寿司)を流す制限時間が経過したら、その商品は有無を言わさず処分(廃棄)されるのだという。店員が持ち帰ったり食べることも許されないという。

 確かにここ最近、ヒステリックなほどに「食の安全」が叫ばれているのだから、これも必要悪みたいなもので、致し方ないのかもしれない。しかし、このようなデータもある。すなわち、農林水産省の調査結果によれば、平成18年度において食品産業から発生する食品廃棄物は1135万トンにのぼるという。そして、食べ物を多く廃棄している順は、結婚披露宴、宴会、宿泊施設、食堂・レストランなのだという(同平成18年度調査結果)。このパーセンテージの中には魚の骨や果物の皮なども含まれているとも考えられるが、あまりにも食べ物を粗末にしてはいないか。

 結婚披露宴というのは、私としては思ってもみなかった。盲点であった。しばしば結婚式では鯛のお頭つきの塩焼きなどを持って帰る習慣があったが、実は食べ物の廃棄は他の食品を扱うケースよりも多いとは意外だ。言われてみれば確かに結婚式では手付かずの食べ物が多くあって、もったいないと思ったものだった。

 ということは、記事にあるようなお洒落なレストランでドギーバッグを推進するのよりも、結婚式場や宴会場でドギーバッグを推進したほうが、食べ物を無駄にしないで済むということだ(もちろん、お洒落なレストランでもどしどしやったほうがいい)。

 しかし、日本人は「もったいない」を思う習慣があると同時に、記事にもあるようにTPOを弁え、不用意に食べ物を持って帰ったりするのを「恥ずかしい」「あさましい」「みっともない」と思う習慣も併せてもっている。これがなかなか日本でドギーバッグが流行らない原因の一つにあるのだろう。

 だが、考え方によっては、自国でまともに自国民の腹を満たせるだけの食糧(や食料)を自給できていないにもかかわらず、食べ物を持って帰るのを恥ずかしがるほうが、恥ずかしいとも言える。つまり、飽食の国と自覚していながら、まともに食料も自国でまかなえない。にもかかわらず一丁前に食べ物は捨てる。このことのほうがかえって恥ずかしいのではないか。

 食べ物を持ち帰るのを恥ずかしいと思うならば、飽食の国に生きて、しかしその裏で飢餓に苦しみ死んでいく人々がいるのに、せっかくの食べ物を捨ててしまうほうが、美徳に反し恥ずかしいしみっともないことなのであることを、自覚したいところだ。



 ついでに食べ残しを持って帰ったため、食中毒になったら店側としては責任を負えないという点につき法律論的な話をしてみると、食品事業者がドギーバッグ導入に消極的なのは、やはり食中毒でも起こされて、食品衛生法違反で営業停止などの行政処分を受けるのを危惧しているのと、製造物責任法により食中毒を起こした客から損害賠償請求を起こされること、これらによって企業イメージが失墜するのではないか、ということからだろう。

 確か判例には、鯉のあらいを製造物責任法の言う「加工された動産」に該当するというものもあるから、ドギーバッグに残った食べ物を入れ、客に引き渡したところ、その客が食中毒にでもなろうものなら、ほぼ間違いなく製造物責任が問われることになるだろう。

 しかし、契約には常に契約自由の思想から導き出される自己責任の原則が存在する。ということは、客との間で「ドギーバッグで食べ物を持ち帰る場合には自己責任でお願いします」という約束を取り交わしていれば、たとえ何か問題が起こっても製造物責任は問われることはないだろう。客から店側が同意を得て行ったのであれば、なおのことである(通常そのような場合だろう)。ただ残念ながら、行政から処分を喰らうことは避けられそうにもないが。



 ドギーバッグ導入によって食中毒などの被害を危惧するのであれば、たとえば刺身といったような生ものや、一般的に食中毒を起こしやすいとされるものには対応しない、季節に応じて持ち帰れる食べ物を限定するなど、対策はあるはずだ。食べ物をみすみす処分してしまうよりは、できるだけ食べきるようにする。このことは生産者にとっても喜ばしいことのはずだ。

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