未来への扉

人それぞれに生きた証・生き様があり、それは自己・他者へのメッセージとなります。

『一万年の旅路』より(その10)

2012-09-27 23:27:54 | イロコイ族
 『一万年の旅路-ネイティヴ・アメリカンの口承史-』((ポーラ・アンダーウッド(著)、星川淳(訳)、翔泳社刊))より。



 【はじまりの歌】

 (P187)

 さて、こうした学びのかたわら、もう一つのことが起こりはじめた。
 ときおり、<大いなる泳ぎ手>
((注)イルカ)がやってきたのだが、彼らはわれらと同じくらいの大きさか、ときにはもっと大きな体をしていた。得体が知れなかったので、最初のうち、われらは彼らを疎ましく思った。けれども親近感が強まるにつれ、心配はいらないことがわかった。
 むしろ、これらの生き物はわれらと一緒に泳ぐことが大好きらしく、われらも彼らとともに泳ぐことを心がけるようになり、大海
(おおうみ)の性質をいくつか教わった。われらが大海の深みについて、また幼い者たちに泳ぎを教える方法について学んだのは、この生き物からだったのだ。
 彼らとわれらでは体の形がちがうため、彼らそっくりに動いたり泳いだりすることはできなかったが、彼らのすることの多くはわれらにもできた。われらは彼らから、泳ぎのあいだなるべく長く息を止め、少しずつ楽にこの状態をしのぐ方法を学んだ。
 彼らの意思疎通の形式には、どこかわれらを驚嘆させるものがあった。彼らどうしが理解し合うとき、そのやり方がわれらにはよくわからないので、われらは自分たちが彼らにどう映るのかを思いめぐらすようになった。われらの意思疎通は主に空中で行われるのに対して、彼らは水中でそれをする。だが彼らとわれらも、もっと無器用ではあるにせよ、互いに少しは通じ合えるのではなかろうか、とー。
 こうした交流を通じ、われらはそれまで考えられなかったようなやり方で自分たち自身を理解しはじめた。そしてわれらは、これら<大いなる泳ぎ手たち>とわれらが互いを生きる糧として求めるのではなく、仲間として、また学びの道連れとして求めていることに気づいた。
 われらはこれに大きな意味を見いだし、このような学びの大切さを心にとどめようと誓った。「われらは彼らにどう映るだろう」という問いを、つねに問い続けようと。


※「われらは彼らにどう映るだろう」…人間以外の生物からの視点を持つことの大切さを伝えており、「あまり威張れた姿ではない」と著者は結んでいる。



※一つひとつの【エピソード】の中で語られる【教訓(知恵)】を一部ご紹介していますが、エピソードについては割愛させて頂きます。
 エピソードと教訓のセットで一つひとつの物語が成り立っていますので、なぜ教訓が得られたのかを説明するエピソードが無いと片落ち状態です。
 興味のある方は、是非この書籍をご購入して読んで頂きたいと思っています。

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『一万年の旅路』より(その9)

2012-09-22 23:46:24 | イロコイ族
 『一万年の旅路-ネイティヴ・アメリカンの口承史-』((ポーラ・アンダーウッド(著)、星川淳(訳)、翔泳社刊))より。



 【水を渡る民】

 (P168)

 さらにわれらは、自分たちが大きな変化を日常茶判事として受け入れる民になったことを理解した。そして、あらゆる状況から学ぶことが、われらにとって限りない価値をもつようになった。
 そこには知恵が宿っている。なぜなら、われら一族にとってはこれまでも、またいまも、すばやい変化を背景に一定の安定を保つことが生存の種だからだ。




 (P176)

 自分たちの見方からしてどんなにありえないように思えても、情報を拒む者は既成のものの見方に縛られ、学びの可能性を大きく損なわれるということだ。

 

 「一人ひとりの記憶の糸を紡ごう。そうやってまとめた想いを、どんなに離れていても私らをつなげてくれる丈夫な綱に縒(よ)り合せるんだ。一つの場所から別な場所まで長く伸びて、どこにいてもみなの心を触れ合わせてくれるような、とびきりしなやかな綱をつくってみようじゃないか」



※一つひとつの【エピソード】の中で語られる【教訓(知恵)】を一部ご紹介していますが、エピソードについては割愛させて頂きます。
 エピソードと教訓のセットで一つひとつの物語が成り立っていますので、なぜ教訓が得られたのかを説明するエピソードが無いと片落ち状態です。
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『一万年の旅路』より(その8)

2012-09-13 00:13:05 | イロコイ族
 『一万年の旅路-ネイティヴ・アメリカンの口承史-』((ポーラ・アンダーウッド(著)、星川淳(訳)、翔泳社刊))より。



 【二人の逞しい兄弟】

 (P126)

 そこで、それまでも理解していたにせよ、一族はいまもっとよく理解できるようになった。若さゆえの好奇心こそ、明日の子どもたちへの本当の贈り物であることを。それはまた、今日の可能性への本当の贈り物でもあることを。




 (P127)

 そしてここから、一族はいま一つ教訓を学んだのだ。何人かの者が大地に望みを抛(なげう)って、みなのために歩み去るには大きな目的意識が必要だが、目的意識も度を越すと、多くの望みでできた論争の岩にぶつかって一族がばらばらになりかねないことを。
 こうして彼らは、継続と目的意識との釣り合いをとらねばならないことを理解したのである。


 

 (P128)

 「大地の上のわれらの輪は動こうとも」

 彼らは互いに歌いかけた。

 「それは同じ輪。踊り手は変わろうとも」

 彼らは歌う。

 「その輪は続いていかなければならぬ。子どもたちの子どもたちの子どもたちのために―」


※輪…エネルギーと継続性についての比喩。北米先住民達は、さまざなな生命の営みを輪(円環)になぞらえた。



※一つひとつの【エピソード】の中で語られる【教訓(知恵)】を一部ご紹介していますが、エピソードについては割愛させて頂きます。
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『一万年の旅路』より(その7)

2012-09-10 22:13:08 | イロコイ族
 『一万年の旅路-ネイティヴ・アメリカンの口承史-』((ポーラ・アンダーウッド(著)、星川淳(訳)、翔泳社刊))より。



 【二人の逞しい兄弟】

 (P123)

 こうして、一族のある者たちは日々変わらぬ暮らしぶりをはじめた。その一部は、あれこれと思い出を語り、耳を傾ける者たちに聞かせた。そのうち、次のようなことがわかってきた。すなわち、一族のある者たちはものごとを想いの中にとどめることを得意とし、またある者たちは物語をありありと聞きとって、足に海辺の滑りやすい岩を感じ、目にはこの<大いなる島>((注)北米大陸)で最初に出会って待ち伏せ方をおぼえた四つ足である<大いなる毛長>((注)バッファローの一種(?))を、生まれてはじめて見るかのように浮かべることができたのだ。
 そこで、一族はその者たちに特別な役目を与えることに決めた。

 「彼らをともに座らせようではないか」

 だれかが言う。

 「そして互いに語り合わせるのだ。一番もの憶えのいい者を最初に語らせよう。それに、人を動かす話し方を心得た者たちが味つけをする。そのうえで、一族全員の前で彼らにすべての歌を歌ってもらい、一人ひとりが言いたいことを言うといい。こうすれば一族全体の記憶を代々、ここにいるだれの記憶より長く保っていくことができるだろう。」

 すると、みながこれらの言葉に知恵を見てとった。そこで、食料がじゅうぶん貯えられ、冬の準備がすむと、一族の多くの者が一族全体のために完全な記憶を組み立てる仕事に打ち込んだ。その喜びの大きさには、<輪>をつくって座った者たちが一族全体で思い出せるたくさんの記憶を教え合うあいだ、それに加わらない多くの者も<輪>の端に座って聞き入るのだった。
 彼らはゆっくりと、はじまりから現在まで世代ごとの歌を組み立てていった。それを互いに歌い合い、だれもが歌い方に満足すると、一族全体に歌って聞かせるのだ。
 しかし、このような大仕事もまだ完全とは言えなかった。歌が歌われるうちに、一人また一人、ほとんど忘れられかけたことを思い出し、前に進み出ると、それも歌に含めるよう求めるのであった。
 こうして、一族全体の記憶が一つの大いなる歌へと組み立てられた。それがいま、あなたと私の歌う歌である。
 耳を傾ける者、本当に耳を傾ける者は、心で歌を歌うから―。




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『一万年の旅路』より(その6)

2012-09-09 23:49:00 | イロコイ族
 『一万年の旅路-ネイティヴ・アメリカンの口承史-』((ポーラ・アンダーウッド(著)、星川淳(訳)、翔泳社刊))より。



 【さらなる旅】

 (P92)

 「変わろうとすることじたいを大切にするべきではあるまいか。変わろうとしない者たちこそ、われらのうしろでじっと大地に横たわるのではあるまいか」

 

 (P97)

 ものごとの機微にさとい者たちは、知恵と一族への慈愛とをもって語られるとき、わずかな言葉がどんな変化をもたらすかに驚き入ったのであった。



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『一万年の旅路』より(その5)

2012-09-08 00:14:00 | イロコイ族
 『一万年の旅路-ネイティヴ・アメリカンの口承史-』((ポーラ・アンダーウッド(著)、星川淳(訳)、翔泳社刊))より。



 【森なす山々】

 (P84)

 「いざ、守っていこう。」

 彼らは語り合う。

 「われらが道の本質だけでなく、寄り集うことの本質も、互いに話し合うことの本質も、われらが学んだように空中の文様をなぞることの本質も―。いざ、このすべてを守っていこう。子どもたちの子どもたちの子どもたちが二度とふたたび、見知らぬ新しい土地をなんの助けもなしに歩かなくてすむように。われらは学んだ」

 彼らは続けた。

 「あらゆる声に耳を傾けてとことん話し合えば、知恵にたどり着けることを。そして、それぞれの心に浮かんだ文様は、試練を通じて新しく織り直すことができること。さらに、これらニ本の強い足を支えにすれば、一族は一見生きのびられそうもない状況を生きのびることができることを―。だから、いざ」

 彼らは最後に言う。

 「この道の本質をはっきりと心にとどめよう。子どもたちの子どもたちが、われらの歩み方からも語り方からもそれを見逃すことのないように。われらが、これほど苦心して互いから学び合ったものを、彼らにも学んでもらおうではないか」

※文様・・・思考、概念、運動、行動などを文様( pattern )として捉えた

 


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『一万年の旅路』より(その4)

2012-09-02 23:18:24 | イロコイ族
 『一万年の旅路-ネイティヴ・アメリカンの口承史-』((ポーラ・アンダーウッド(著)、星川淳(訳)、翔泳社刊))より。



 【森なす山々】

 (P67)

 「ほら、ごらん。今日しか見えない民より、目的をもった一族の方がもっと多くをなしとげられる。石を数えることしかしない者たちより、目的をもった一族のほうがもっと大地を遠くまで進める。目的のないものがけっして見ることのない谷間へ、目的意識をもった一族ならたどり着ける」

※石を数えることしかしない者たち・・・石を数えるという役割を担った者は、記憶力に優れ、石を使用して現実の世界を見積もり評価し、さまざまな関係(生活の技など)を記録した。
 【石を数えることしかしない者たち】とは、実地の体験に乏しく、その意味で現実離れした人々をさす。



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『一万年の旅路』より(その3)

2012-09-01 19:30:20 | イロコイ族
 『一万年の旅路-ネイティヴ・アメリカンの口承史-』((ポーラ・アンダーウッド(著)、星川淳(訳)、翔泳社刊))より。



 【水のほとり】

 (P39)

 「目的が手の届くところにあって、しかもふたたび予想外の事態に出会ったとき、一族やいかに。大きな悲しみと損失を胸に、めざす渡りの地へやってきて、なおかつ期待が満たされないとき、一族やいかに。強さが勝つか、悲しみがそれをしのぐか。目的意識が保たれるか、絶望がそれを妨げるか」



 (P40)

 「たずさえていくがよい。節度ある目的遂行の習わしを。早朝の歌を決めて行うこと。また、節度ある話し合いの大切さと、兄弟の心の声を聞く注意深い耳を忘れないこと。悲しみによってのみ集うべからず。喜びの時にも共通の目的をもつべし。課題を決め、一族でそれに応えること。気楽さも失ってはいけない。みなの子どもたち、さらにその子どもたちが、わかりやすい道を見つけられるように。見るものすべてと周囲の全員を、彼らがいつも喜びとし、そこから節度ある学び方をできるように―」



※一つひとつの【エピソード】の中で語られる【教訓(知恵)】を一部ご紹介していますが、エピソードについては割愛させて頂きます。
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