フォン・ノイマンはセルを使ったモデルの証明を、きちんと書いた形では完成しなかった。
1年以上の間、彼は毎日夜明け前に起きて草稿を書いた。
53年の3月にプリンストン大学で一連の講義をする時までに、それについて、ある程度詳しい話ができるようになっていた。
しかし思いのほか問題が込み入っていたため、草稿は長い二つの章が四章になり、もっと伸びる予定になった。
フォン・ノイマンは原子力委員に任命された時、この仕事を棚上げにして、任務が終わった時点で完成しようと考えていた。
彼の健康が思わしくないことが明らかになってくると、後にBASIC言語〔初期のパソコンで多く使われた平易なコンピュータ言語〕を作ることになるジョン・G・ケメニーに、自己複製セルオートマトンについて書かせることにした。
ケメニーの仕事は、五五年に「人間と機械の間に、何ら決定的な違いがないことを証明する」試みとして「サイエンティフィック・アメリカン」誌〔米の一般向け科学月刊誌〕に発表された。
ケメニーを興奮させたのは、フォン・ノイマン型のオートマトンの持つ進化の能力だった。
彼は「機械の尾の部分にはほとんどのセルが集中し、ちょうどChromosome染色体のようだ」と書いており、それに比べて人間の身体がほんの少しの物質で遺伝物質を作れることに驚嘆している。
「こんな機械が、進化をとげるのだろうか」とケメニーは迷った末、フォン・ノイマンと同じように、それはきっと可能だと結論づけた。
彼は複製の過程で、少数のランダムな変化が起きるように、情報の一部でオンをオフにしたりその逆の変化をもたらすよう、移行規則をプログラムすればよいと考えた。
これは突然変異に似ている。
もしくはもっと息をつめて、突然変異〈そのもの〉と言ってもいい。突然変異がそれであるように、この性質も子孫に伝わる。
もしこの変異が機械の適合力を増すなら、自然淘汰の取り決めに従って、大方の機械の遺伝子グループの中で広がっていくだろう。そしてついにはわれわれは、進化の恩恵にあずかるのだ。
しかしこれは、フリーマン・ダイソンやレインの自己複製システム検討チームが抱いたのと同じ疑問を思い起こさせる。
そのような構造物を解き放ったら、いったい何が起こるだろう?
それらから何がうまれるのか?
もちろんそれらがコンピュータのチップ上の中の電荷の組み合わせだけで起こり、文明の行く先を変化させるような巨大な工場のような規模で起こらなければ、あまり恐ることもない。
もしそうでないなら、コンピュータの中にとじ込められただけの出来事を、どれだけ深刻に受け取ったらいいのか、かなりのジレンマだということが分かる。
情報を記号的に操作して、自然をどれほどそれらしくまねできるのか?
人工的な生物を作ることで、生命の過程に対する知識を増すことができるのか?
そのことは自然の複雑な力に対するわれわれのあいまいな理解を深めてくれるのか?
ついにはそうした力を手にして、われわれが知っている生命のような有機体を作れるのか?そして、それらは生きていけるのか?
人工生命という分野は、それらの問いを、漫然とした疑問から本質的なものへと変容させる。
今日はDNA ligaseDNAリガーゼが発見された日。
生体内では主としてDNA複製とDNA修復に寄与している。一方、遺伝子工学で組換えDNAを作るために頻繁に利用されている。⇒俗には「のり」とされ、「ハサミ」とされる制限酵素は1970年。これらとプラスミドDNAから人為的な組み替えDNAが1972頃から始まった。
1年以上の間、彼は毎日夜明け前に起きて草稿を書いた。
53年の3月にプリンストン大学で一連の講義をする時までに、それについて、ある程度詳しい話ができるようになっていた。
しかし思いのほか問題が込み入っていたため、草稿は長い二つの章が四章になり、もっと伸びる予定になった。
フォン・ノイマンは原子力委員に任命された時、この仕事を棚上げにして、任務が終わった時点で完成しようと考えていた。
彼の健康が思わしくないことが明らかになってくると、後にBASIC言語〔初期のパソコンで多く使われた平易なコンピュータ言語〕を作ることになるジョン・G・ケメニーに、自己複製セルオートマトンについて書かせることにした。
ケメニーの仕事は、五五年に「人間と機械の間に、何ら決定的な違いがないことを証明する」試みとして「サイエンティフィック・アメリカン」誌〔米の一般向け科学月刊誌〕に発表された。
ケメニーを興奮させたのは、フォン・ノイマン型のオートマトンの持つ進化の能力だった。
彼は「機械の尾の部分にはほとんどのセルが集中し、ちょうどChromosome染色体のようだ」と書いており、それに比べて人間の身体がほんの少しの物質で遺伝物質を作れることに驚嘆している。
「こんな機械が、進化をとげるのだろうか」とケメニーは迷った末、フォン・ノイマンと同じように、それはきっと可能だと結論づけた。
彼は複製の過程で、少数のランダムな変化が起きるように、情報の一部でオンをオフにしたりその逆の変化をもたらすよう、移行規則をプログラムすればよいと考えた。
これは突然変異に似ている。
もしくはもっと息をつめて、突然変異〈そのもの〉と言ってもいい。突然変異がそれであるように、この性質も子孫に伝わる。
もしこの変異が機械の適合力を増すなら、自然淘汰の取り決めに従って、大方の機械の遺伝子グループの中で広がっていくだろう。そしてついにはわれわれは、進化の恩恵にあずかるのだ。
しかしこれは、フリーマン・ダイソンやレインの自己複製システム検討チームが抱いたのと同じ疑問を思い起こさせる。
そのような構造物を解き放ったら、いったい何が起こるだろう?
それらから何がうまれるのか?
もちろんそれらがコンピュータのチップ上の中の電荷の組み合わせだけで起こり、文明の行く先を変化させるような巨大な工場のような規模で起こらなければ、あまり恐ることもない。
もしそうでないなら、コンピュータの中にとじ込められただけの出来事を、どれだけ深刻に受け取ったらいいのか、かなりのジレンマだということが分かる。
情報を記号的に操作して、自然をどれほどそれらしくまねできるのか?
人工的な生物を作ることで、生命の過程に対する知識を増すことができるのか?
そのことは自然の複雑な力に対するわれわれのあいまいな理解を深めてくれるのか?
ついにはそうした力を手にして、われわれが知っている生命のような有機体を作れるのか?そして、それらは生きていけるのか?
人工生命という分野は、それらの問いを、漫然とした疑問から本質的なものへと変容させる。
今日はDNA ligaseDNAリガーゼが発見された日。
生体内では主としてDNA複製とDNA修復に寄与している。一方、遺伝子工学で組換えDNAを作るために頻繁に利用されている。⇒俗には「のり」とされ、「ハサミ」とされる制限酵素は1970年。これらとプラスミドDNAから人為的な組み替えDNAが1972頃から始まった。