第4節 コロイド学の体系とコロイドの分類
4-1 界面状態、変形;分散
A 界面状態
B 変形
C 分散
4-2 コロイドの体系
A 界面系
B 展延系
C 分散系
4-3 コロイドの分類
① 単分散系
② 濃度可変分散系
③ 親媒コロイド
④ 異分散系
⑤ ゾルとゲル ヒドロゾル オルガノゾル エーロゾル 乳濁液 懸濁液 可逆ゾル 等
ゲルとは、粒子が網目状やはちのす状の構造をとったり、あるいは強く溶媒和したりして、たがいに結合し、流動性をもたないコロイド分散系のことである。
コアゲル リヨゲル キセロゲル
4-4 コロイドの分類Ⅱ
A 結合力による分類
B スタウデインガーによる分類
第5節 コロイド分散系の電気的構造
5-1 界面電気現象
5-2 電気的2重層の理論の発展
5-3 電気的2重層の構成
5-4 ゾルの凝結とペプチゼーション(解膠)
5-5 保護作用と増感作用
第6節 結び
コロイド学がどのよにして誕生し、どのようにして成長してきたかということと、コロイド学はどのように体系づけられ、コロイドはどのように分類され、またどのような特異な性質、構造をもっているかについて(ここでは特にゾルの電気的性質、構造について)以上に概略を述べた。
現今、コロイド学で取り扱われている問題の範囲はあまりにも広く、従ってその数もあまりにも多いことは少しくコロイド学の書物を開けば直ちに知られることである。
研究方法も限界顕微鏡がはじめて作られた時から40年のあいだは驚くほどの進歩をした。
そのなかでも特筆されるべきものは、「電子顕微鏡」elestron microscopeの出現であろう。これは電子工学におえkるひとかたならぬ苦心の結実したものであって、1934年にルスカRuskaがはじめてやや完成の域に近づき、1937年にクラウゼKrauseが磁界型レンズを完成し、1939年にはマールMahlが電界型レンズを完成し、さらに同年アルデンネArdenneが磁界、電界のいずれをも使うことのできる万能電子顕微鏡を作り出すに至って、ようやく現今の電子顕微鏡時代がひらかれたといえよう。
(今ではわが国でもとにかく数箇所で製作されるようになった。本書口絵写真を参照)
光学顕微鏡の限度すなわち分解能resolving powerは光の波長と同程度であって、およそ4000Åである。
これに対して電子顕微鏡は100倍も高い分解能を示すのである。
したがって電子顕微鏡を使えば、これまで限界顕微鏡によって「間接に」しか見られなかったコロイド粒子を、「直接に」見ることができるようになった。そしてこれによって粒子の大きさ、形、のみならず、多くのコロイド学的現象をまのあたり見ることができる時代がきた。
それで近年この新しい手段による研究がはなばなしく行われだしたのであるが、それらの結果は、これまでに間接的な推論から得られていた結論の多くを支持していることはまことに心強い、一例を挙げると、保護コロイドの作用は疎水コロイドの表面を親水コロイドが囲んでいるものと考えられていたのであるが、まさしくそのような状態がはっきり写真にとられたのである。
また真コロイドの巨大分子になると分子の形までつかまえられるようになったのであるから、電子顕微鏡こそはコロイド学にとってこの上もなくすばらしい贈り物であるといわねばならない。
ところで電子顕微鏡の出現によって最もめぐまれたもののうちに生物学および医学特に細菌学がある。
そして、電子顕微鏡の分解能から考えてもわかるように、これによって新たに見られるようになった最近はまさにコロイドのデイメンションにあたるのである。
そのようなものの一つが「ヴィールスVirus」である。
これは細菌ろ過器を通過し、普通の光学顕微鏡ではみることがでいないもので、通常の細菌と分子の中間の大きさをもっている。(ろ過性病原体ともいわれる)このものの研究が電子顕微鏡によってどれほどたすけられたかはいうまでもない。
ヴィールスの中で最も古く(1892年)から知られているタバコモザイック病のヴィールスは、電子顕微鏡で、長さ160~300mμ、太さ15mμの細長いものであるであることが知られたが、これ通常のたんぱく質分子よりも小さい大きさである。
ヴィールスは自律的には増殖しないけれども、ある条件の下では(たとえば他の生きた細胞と共存すれば)他律的には増殖する病原体であって、その環境によって変異したり、免疫性を示したりすることなどから考えると、とにかく生物でなければならないのであるが、他方、これが無生物ではないかという事実も知られた、その一つとして、1935年にスタンレーW.N.Stanleyは、タバコ・モザイック・ヴィールスを純化学的な手段で結晶性の分子量の高い核たんぱく質として分離したのであるが、この結晶性たんぱく質はヴイールスの病原体としての性質をそのままもっていて、これをさらに15回連続再結晶してもなおその性質は少しも失われなかったのである。
ここに至っては、このヴィールスたんぱく質は果たして生物か、無生物かの限界に縫着したといわざるを得ない。
ちかごろはヴィールスを一つの巨大分子としてそれが示す生物学的現象を量子力学的に解決しょうとすることさえ企てられ、ジョルダンP.JordanやポーリングL.Paulnigらがそれぞれ仮説を出している。
ポーリングはそのまえに抗原と抗体の結合力についても、やはり分子的理論に基づく仮説をたてたのであるが、物理学と生物学とのこうした接触が、このようにコロイドのデイメンションで行われることとなったということは、まえに用いたのとは違った意味で「限界領域の学」としてのコロイド学にとってあるいは必然的な運命であったかも知れない。
自然科学は、一方においては「物質とはなんぞや」を、他方においては「生命とはなんぞや」を命題とするものであると考えられるが、この二つがコロイドの領域で、将来どのように究明され、どのように融合するであろうか。
それはコロイド学においてはもとよりのことであるが、それよりもむしろ広く一般自然科学にとって、さらにまた哲学にとっても、確かに根源的な究極の課題であろう。
そして、このことは、コロイド学がその短い歴史のあいだにいかに発展し、現在、「学」としていかに重要な位置を占めるに至っているかを示すものにほかならないといえよう。
⇒「結論を端的にいえば、私はウィルスを生物であるとは定義しない。
つまり、生命とは自己複製するシステムである、との定義は不十分だと考えるのである。では、生命の特徴を捉えるには他にいかなる条件設定がありえるのか。
生命の律動?そう私は先に書いた。このような言葉が喚起するイメージを、ミクロな解像力を保ったままできるだけ正確に定義ずける方法はありえるのか。それを私は探ってみたいのである。」(「生物と無生物のあいだ!」福岡伸一)
ひとしずく
健康な人の心拍数は「臨界ゆらぎ」、心臓のアクセル役となる交感神経系と、ブレーキ役の副交感神経の綱引き現象が、1/fゆらぎを伴っているとされている。
4-1 界面状態、変形;分散
A 界面状態
B 変形
C 分散
4-2 コロイドの体系
A 界面系
B 展延系
C 分散系
4-3 コロイドの分類
① 単分散系
② 濃度可変分散系
③ 親媒コロイド
④ 異分散系
⑤ ゾルとゲル ヒドロゾル オルガノゾル エーロゾル 乳濁液 懸濁液 可逆ゾル 等
ゲルとは、粒子が網目状やはちのす状の構造をとったり、あるいは強く溶媒和したりして、たがいに結合し、流動性をもたないコロイド分散系のことである。
コアゲル リヨゲル キセロゲル
4-4 コロイドの分類Ⅱ
A 結合力による分類
B スタウデインガーによる分類
第5節 コロイド分散系の電気的構造
5-1 界面電気現象
5-2 電気的2重層の理論の発展
5-3 電気的2重層の構成
5-4 ゾルの凝結とペプチゼーション(解膠)
5-5 保護作用と増感作用
第6節 結び
コロイド学がどのよにして誕生し、どのようにして成長してきたかということと、コロイド学はどのように体系づけられ、コロイドはどのように分類され、またどのような特異な性質、構造をもっているかについて(ここでは特にゾルの電気的性質、構造について)以上に概略を述べた。
現今、コロイド学で取り扱われている問題の範囲はあまりにも広く、従ってその数もあまりにも多いことは少しくコロイド学の書物を開けば直ちに知られることである。
研究方法も限界顕微鏡がはじめて作られた時から40年のあいだは驚くほどの進歩をした。
そのなかでも特筆されるべきものは、「電子顕微鏡」elestron microscopeの出現であろう。これは電子工学におえkるひとかたならぬ苦心の結実したものであって、1934年にルスカRuskaがはじめてやや完成の域に近づき、1937年にクラウゼKrauseが磁界型レンズを完成し、1939年にはマールMahlが電界型レンズを完成し、さらに同年アルデンネArdenneが磁界、電界のいずれをも使うことのできる万能電子顕微鏡を作り出すに至って、ようやく現今の電子顕微鏡時代がひらかれたといえよう。
(今ではわが国でもとにかく数箇所で製作されるようになった。本書口絵写真を参照)
光学顕微鏡の限度すなわち分解能resolving powerは光の波長と同程度であって、およそ4000Åである。
これに対して電子顕微鏡は100倍も高い分解能を示すのである。
したがって電子顕微鏡を使えば、これまで限界顕微鏡によって「間接に」しか見られなかったコロイド粒子を、「直接に」見ることができるようになった。そしてこれによって粒子の大きさ、形、のみならず、多くのコロイド学的現象をまのあたり見ることができる時代がきた。
それで近年この新しい手段による研究がはなばなしく行われだしたのであるが、それらの結果は、これまでに間接的な推論から得られていた結論の多くを支持していることはまことに心強い、一例を挙げると、保護コロイドの作用は疎水コロイドの表面を親水コロイドが囲んでいるものと考えられていたのであるが、まさしくそのような状態がはっきり写真にとられたのである。
また真コロイドの巨大分子になると分子の形までつかまえられるようになったのであるから、電子顕微鏡こそはコロイド学にとってこの上もなくすばらしい贈り物であるといわねばならない。
ところで電子顕微鏡の出現によって最もめぐまれたもののうちに生物学および医学特に細菌学がある。
そして、電子顕微鏡の分解能から考えてもわかるように、これによって新たに見られるようになった最近はまさにコロイドのデイメンションにあたるのである。
そのようなものの一つが「ヴィールスVirus」である。
これは細菌ろ過器を通過し、普通の光学顕微鏡ではみることがでいないもので、通常の細菌と分子の中間の大きさをもっている。(ろ過性病原体ともいわれる)このものの研究が電子顕微鏡によってどれほどたすけられたかはいうまでもない。
ヴィールスの中で最も古く(1892年)から知られているタバコモザイック病のヴィールスは、電子顕微鏡で、長さ160~300mμ、太さ15mμの細長いものであるであることが知られたが、これ通常のたんぱく質分子よりも小さい大きさである。
ヴィールスは自律的には増殖しないけれども、ある条件の下では(たとえば他の生きた細胞と共存すれば)他律的には増殖する病原体であって、その環境によって変異したり、免疫性を示したりすることなどから考えると、とにかく生物でなければならないのであるが、他方、これが無生物ではないかという事実も知られた、その一つとして、1935年にスタンレーW.N.Stanleyは、タバコ・モザイック・ヴィールスを純化学的な手段で結晶性の分子量の高い核たんぱく質として分離したのであるが、この結晶性たんぱく質はヴイールスの病原体としての性質をそのままもっていて、これをさらに15回連続再結晶してもなおその性質は少しも失われなかったのである。
ここに至っては、このヴィールスたんぱく質は果たして生物か、無生物かの限界に縫着したといわざるを得ない。
ちかごろはヴィールスを一つの巨大分子としてそれが示す生物学的現象を量子力学的に解決しょうとすることさえ企てられ、ジョルダンP.JordanやポーリングL.Paulnigらがそれぞれ仮説を出している。
ポーリングはそのまえに抗原と抗体の結合力についても、やはり分子的理論に基づく仮説をたてたのであるが、物理学と生物学とのこうした接触が、このようにコロイドのデイメンションで行われることとなったということは、まえに用いたのとは違った意味で「限界領域の学」としてのコロイド学にとってあるいは必然的な運命であったかも知れない。
自然科学は、一方においては「物質とはなんぞや」を、他方においては「生命とはなんぞや」を命題とするものであると考えられるが、この二つがコロイドの領域で、将来どのように究明され、どのように融合するであろうか。
それはコロイド学においてはもとよりのことであるが、それよりもむしろ広く一般自然科学にとって、さらにまた哲学にとっても、確かに根源的な究極の課題であろう。
そして、このことは、コロイド学がその短い歴史のあいだにいかに発展し、現在、「学」としていかに重要な位置を占めるに至っているかを示すものにほかならないといえよう。
⇒「結論を端的にいえば、私はウィルスを生物であるとは定義しない。
つまり、生命とは自己複製するシステムである、との定義は不十分だと考えるのである。では、生命の特徴を捉えるには他にいかなる条件設定がありえるのか。
生命の律動?そう私は先に書いた。このような言葉が喚起するイメージを、ミクロな解像力を保ったままできるだけ正確に定義ずける方法はありえるのか。それを私は探ってみたいのである。」(「生物と無生物のあいだ!」福岡伸一)
ひとしずく
健康な人の心拍数は「臨界ゆらぎ」、心臓のアクセル役となる交感神経系と、ブレーキ役の副交感神経の綱引き現象が、1/fゆらぎを伴っているとされている。