Ring-A-Ding 日々ロック,R&B,そしてゴスペル〜💋

おばちゃんがココロに浮かぶ由無し事を、気ままにつぶやく。ロックな時間。

血圧

2021-04-12 04:26:00 | その他
40代前半から高血圧と診断されずっと降圧剤を服用して来た。
私の家系は、(おそらく高血圧による)脳血管障害で、亡くなったり、半身不随で長年不自由な要介護生活を送った人が多い。
体質的にも動脈硬化をおこしやすい遺伝的要素があるのだと思う。

近所で内科・小児科で開業医をされていた医院にずっと通っていた。優しい女性の医師で、子供が生まれてから主に小児科でお世話になっていた。

20年くらい前、その頃には比較的丈夫なウチの子供達はもう大きくなって、めったに医者など行かなくなった頃…私はその年、長引く花粉症による睡眠不足と1〜2週間続く頭痛が取れなくてその内科医の先生に訴えた。
「先生、ずっと頭が痛いんです」
「えっ、ほんとっ?じゃ、血圧計っってみよ!」
なんとそのとき最高血圧180下は90いくつだったかと思う。これが運命の分かれ目ってやつね。



私の母は62歳の時に脳内出血を起こし、以来半身不随で以後の38年間を車椅子で過ごした。それまで医者要らずの健康を誇り、「保険証なんて使ったことないわよ」などとよく言っていた。初めて使ったのがこの倒れた時だったとするとなんと皮肉なことね。
その当時、母が少しでも不調を感じ、医者に通って投薬を受けていたら…その僅かな運命の差は余りに大きい。



それまで私は、混んでいる耳鼻科を避けて、この内科医にただ花粉症の抗アレルギー剤をもらいに通っていただけだったのだが、この時以来定期的に降圧剤をもらうため月一で通院することとなったのだ。

脳血管障害で半身麻痺や半身不随になられた方々のアンケートなどを見ると、倒れるまで降圧剤を飲んでいなかった…という人が多い。

若くして高血圧などはなかなか気がつかないことも多いのだと思う。私の場合は、妊娠中も高血圧で妊娠中毒症と言われて入院した事もあるし、以来、妊娠のたび高血圧に要注意!とされて来たから40代そこそこで降圧剤を飲む生活になったのは体質的な事が大きいと思う。父は脳出血で42才で死んでいる。
そういうことから言えば、この先生は命の恩人だ。



その先生が、この三月で医院を閉院した。
考えてみれば息子たちが生まれた頃開業されたこの医院。この先生はおそらく当時50代ではあったろうと思う。大病院が近所に多い中で、身近で気軽な地域医療を支えるため貢献されて来られた。何しろ大病院は待ち時間が長いからね。仕事を抱えて育児をする親や、近所の商店街のお年寄りなどみんな来ていた。
それから30年以上は経つ。
そして、このコロナ禍…。
先生は80代にはなられるだろう。
これから日本でもワクチン接種など始まると小さい医院とはいえ、その対応は大変だろう。
その辺りも踏まえて閉院を決断された…という事もあるだろうと思う。

本当にご苦労様だ。心から感謝し、別れの言葉を交わした時、私は思わず涙ぐんでしまった。
それは新しい医院を探さなくてはならない不安も少しあったからかもしれない。



しかし、その不安は一気に解消された。

桜も真っ盛りとなり、
3月分のお薬が無くなるところだったので、この際、1番近くに出来たばかりの小洒落た雰囲気のクリニックに行ってみた。緑に溢れたコッテージ風…まるでお洒落なカフェ…といった雰囲気である。

出て来たのはなんか…若い男の子みたいな先生で、まるで大学生みたいな印象。
ちょっと不安だったが、これ迄の経緯やら、私の家族の病歴などを語り、先生とやりとりを始めると…なんとこの先生は近くの国立病院の循環器科の医師で、木曜日だけこのクリニックを担当しているという血圧の専門家だった。


思えば当然の事なのだが、まず、先生は「血圧計はお持ちですか?」と問う。なんと、そういえばこの20年近く降圧剤を飲んでいるくせに、血圧計も持っていなかった。先生は、とにかく、血圧計を買って、朝晩1ヶ月ほど測って来てください。と"血圧手帳"なるものを下さった。

初対面のあなた(私)のことは、まるでわかりませんから、それを見てお薬の容量を判断します。そして、あなたの家系的な特徴や、生活習慣、体質などからどの様なお薬が合うのか考えていきましょう…今は、降圧剤と言っても沢山の種類があり、それぞれ効能と副作用もわかれるのですよ…と、仰った。
例えば、高齢者で、他に持病がある場合とか、若い人がコンビニ弁当とスナック菓子ばかり食べていて、塩分の取り過ぎによるもの…とか、それぞれお薬も考えて違えていかなくてはならないのです…と。

なるほど、以前、歯医者で歯肉炎の治療を受けていた時に、医師から「カルシュウム拮抗の降圧剤を服用していると、歯茎が腫れてくることがあるのだよね。私もそうなんだ」と言われた事がある。前の内科医にその話をしても、お薬は変えられることは無かった。そして、ただ月に一度その医院で測る血圧だけを元に高いとか「今日は良いわね」などと判断されていたのである。

目からウロコ…というはこの事だ。
若い先生は、私からこれ迄のかかりつけの医師の話を聞くと
「ん、まぁ、それくらいの年代の先生が処方されるお薬ではあるかもしれませんね。」
と仰って、とりあえず、血圧手帳を見るまでの間飲む薬を処方して下さった。

「今は、血圧の薬といっても沢山の種類があり、その原因から判断して対処する必要もあるのです。どこか他に悪いところが無いか?ぜひ健康診断の結果も次には持ってきて下さい。今までのお薬は、ただ血管を拡張するだけのものですよ。」だって。

この若い男の子みたいな先生の顔を見ながら、私は本当に感心した。考えてみれば、全ておっしゃることは当然の事である。それを省みることもなく、ただ面倒くさい"医者通い"を手っ取り早く済ますために、適当に、無難に、私自身が軽く考えていたことだったのだ。

思い出してみると、以前の老医師の医院はここ数年、いつ行っても待合室はガラガラだった。昔は子供を連れた親たちとかでいっぱいだったのに。
それはそれで待ち時間が無くお薬が貰えて助かる…と思っていたのだが、それには理由があったのだ。

昔は若い医師より老齢の方の方が、経験も豊富で頼りがいかあるように感じた。しかし、今や進歩の速さも違い、情報量も増え、その情報を得るための方法も変わって来ている。
ずいぶんと昔に、以前の医師に「先生、お薬はジェネリックになりますか?」と問うた時、その先生が「ジェネリックって何?」と問い返された時に私も考えて見るべきだったのかもしれない。

私も今年還暦だ。
母の倒れた年に近くなり、ここで健康をきちんと考え直すきっかけがあったのも何かの縁。このたびの若い医師によって考えを正されたことは幸運だった。母や兄…いやいやご先祖様皆んなに守られているのかな。




ツツジも咲き始めました。