其蜩庵井蛙坊

井戸の底より見たり聞いたり喋ったり

ものぐさ太郎

2014-02-18 17:49:18 | 文芸
ナマケモノ(樹懶)と言う動物はゆったりした動作からそう呼ばれていますが、泳ぎは達者です。樹上生活ですから遠目には樹皮と見まがうこともあるそうです。更に念がいって苔も生えます。ピューマやジャガーそして猛禽類最大のオウギワシから身を守って生きていくためです。生きていくには無精や怠惰ではならないのがこの世の定めのようです。
ものぐさ太郎は思いは豪壮な邸宅贅を凝らした庭園で暮らしているつもりですが、四本の竹柱に薦をかけ、常住に頓着せず、世にもあらぬ住まいです。情けある人から与えられた転げた餅を拾うことさえせず、たまたま通りがかの地頭に拾わせる始末。
しかしそれほどの無精者でも京都はでよき女房をば連れて戻るとの一念を思い立ます。それからは人が変わったような獅子奮迅な行動です。やっと得たよき知恵者の女房と下女は七日がかりで太郎を湯風呂で磨き上げます。男ぶりもさることながら、連歌にも優れ、公卿殿上人に劣るところはありません。あとは目出度し目出度しであります。
ただこのお話はものぐさの教訓ではないのは残念ですね。