其蜩庵井蛙坊

井戸の底より見たり聞いたり喋ったり

鳩ポッポ

2006-07-30 14:38:24 | 生き物
近くのお寺の和尚様が庇の鳩を追われていました。お寺やお宮の境内にはつきものの鳩も糞の被害では悩ましいようです。糞の中で繁殖するカビがクリプトカス症の原因となり、また乾燥した糞は金属の腐食を促進させるそうです。ドバト(カワラバト)は奈良時代に持ち込まれたもので、万葉集には詠まれていません。
伝書鳩はカワラバトをベルギーで改良したもので、19世紀末に軍用バトとして輸入されました。イギリス軍は第一次世界大戦で約10万羽、第二次世界大戦では50万羽以上も軍用鳩を用いたそうです。
孔子が編集した詩経に
ああ鳩よ
桑の実を食うなかれ
(ああ女よ 男と耽るなかれと続くのですが)
という詩があるそうです。鳩があまり桑の実を食べると、酔っぱらって健康を損ねるの意です。
むかし地方によっては果実酒の原料になったとありますから、熟した実にはいくらか鳩が酔うほどのなにかが含まれていたのかもしれません。逆に桑の実には、動脈硬化や脳梗塞を防ぐ抗酸化作用ポリフェノールが含まれていることが分かりました。
 以前はよく真っ白な鳩を見かけたものですが、近頃は
に見ません。カラスが狙うため保護色として黒ッポクなったのだろうと鳥の本にありました。カラスが鳩を襲うところはしばしば見るところです。猫を脅しているのも見ました。    写真の鳩は白い羽毛を残してはいます。

金魚酒

2006-07-27 16:53:24 | 歴史
金魚酒
暑い日が続いていたせいか金魚の水槽の汚れが酷いので水を替えました。唐突ですが、牛肉の値段の推移を調べてみようと思って、「近代日本食文化史 小菅桂子著」を図書館から借り受けました。本筋は鯨肉の値段との対比が知りたかったのです。斜め読みをしていますと、珍妙なお酒を知りました。
日中戦争が始まった昭和12年に、水8割のお酒が出回ったそうで、金魚を入れても死なないため「金魚酒」と呼ばれました。ちなみに昭和9年~11年のお酒のお値段は、並等酒1円・上等酒1円89銭(小売価格1.8リットル)豆腐1丁6銭となっております。2割のお酒のうち純な酒精はどれほどでしょう、全く長屋の花見のオチャケ同然ですが、皆さんどんなお顔で一杯やられたのでしょうか。
翌13年4月には、警視庁が管下の肉屋300軒を一斉に点検した結果、牛肉に馬肉や兎肉を混ぜたり、挽肉に犬の肉を刻み込むなどの不正を多数発見した、とあります。東京銀座3丁目にホットドックの屋台がこの年お目見えしました。

この年代の記述には、経験ある私たちの苦い思い出が含まれています。しかし、ペット食品の売り場を眺めて何も感じることのない世代が幸せだとは思えません。この本は、労作であり、貴重な資料ででもあります。



フーコーの振り子

2006-07-22 17:40:42 | 科学
江戸時代の随筆ばかりではなんだから、科学を勝利に導いた大実験「フーコーの振り子」を読んでみました。もとより二、三頁捲って歯が立たないようであれば、図書館に返すつもりでした。
地球の自転については、いろいろな悶着があって、しかし私の知るところは、
一、 一五四三年、コペルニクスが「地動説」を発表したこと(種子島に鉄砲伝来)。
二、 一六三三年、ガリレオが宗教裁判にかけられ、地球が自転しているという信念を放棄させられたこと(黒田藩お家騒動)。
三、 一六六六年、ニュートンが万有引力の法則を発見したこと。
くらいのものでした。
地球自転についてはキリスト教会の認知はなかったものの理論としては早くから認められていたようです。
一八五一年二月三日、フーコーは、パリ天文台のメリディアン・ホールで地球が自転する実験を行いました。真鍮の振り子が天井から垂直に吊り下げられていました。大きくて重い振り子がゆっくり左右に揺れ動いて観客の皆は地球の自転を目撃しました。フーコーの「正弦則」という公式を使えば、任意の緯度において、振り子の振動面が一周して元の位置に戻るまでの時間が導けるそうです。
ニュートンその他の科学者達も落下物の実験で地球の自転を証明しようとしました。高い塔から落下させた物体は真下ではなく、地球の自転のため東にそれることは当然だとして、しかし同時に南へのわずかのずれが観測され、結果の信憑性が疑われていたのでした。
 この本(著者アミール・D・アクゼル訳者水谷淳)は、老化した脳味噌にも判読できるいい本です。たまには事変わった読書も必要だと思いました。




カラス

2006-07-13 11:05:57 | 生き物
烏鷺の争いに執着をもっていますが、営々と築いた城郭が、積み木のお城同然、ガラガラと音を立てて崩れ落ちる悲哀を常に感じております。
それはさておき、今朝ほどは音なしの構えでありますが、近頃カラスの寄り合いが近辺で盛んに催されているようです。カラスは幾分損な身上です。色が黒く声も悪い。いくら拘束なく空を飛びたくとも、黒い翼の鳥は希望しないでしょう。しかし、それにも関わらず意外にも童謡などの処遇は好意的です。
真っ赤な夕焼け空に残した七つ子の安否を気づかって泣きながら帰る親ガラスへの同情、ニワトリが被っている赤い帽子を欲しがる赤ちゃんガラスへの思いやり、旅から旅への悲哀をカラスになずらえる股旅歌謡等々です。
以下が根拠の無い雑言だとの誤解を解くため、出典を示しておきます。杉田昭栄先生の「カラス おもしろい生態とかしこい防ぎ方 農漁村文化協会発行」です。
まずシナントロープという言葉を知りました(ミザントロープという言葉もありますね)。意味は「人の営みによって得られる利益を最大限に利用して種の維持繁栄をはかる、その知恵をみごとに身に付けた野生動物」ということです。野生動物にだけこんな見事な叡智を付けられてたまるか、と思われませんか。
 カラス殿の近時の繁栄条件は、一、人のそばにはエサがある。一、何でも食べられる一、どこでも繁殖できる、一、エサがどんどん増えていることだそうです。
しかも、カラスの利口なことは被害甚大な農家の方が充分ご存知でしょうが、なんとイヌより大きい「脳化指数」の持ち主です。脳は重ければ知能が高いとはならない、それが対カラスに悩む人類の救いでしょうが。そのところ養老孟司先生にお尋ねしないと安心できませんが。
具体的なカラス特技として、人の顔が見分けられる、一度覚えると忘れない、夜目が利く、概念思考もできそうにある等々です。また遊びとしての収集癖があるのはよく話題にもなっています。グリコのオマケに多額の金銭を消費する癖の人間にも居るには居ますが。
とにかく烏合の衆と軽くいなせない相手のようです

お米のこと

2006-07-08 15:01:00 | 日常雑記
ほとんど三度々々ご飯を戴いているわたしの不審は、お米の国内消費量が落ち込んでいると言われることです。わたしの選択肢はスーパーの価格と狭められていますが、別段苦情はありません。
先日の新聞記事によると、多角的貿易交渉で日本は年間約77万トンのコメ輸入が義務づけられ、95年4月から05年10月末までに678万トンが輸入された。輸入米が国産米相場に影響するのを避ける方針が閣議了解されたため、主食用の販売量は絞られ、これまでに一割弱の64万トンにとどまっている。 このため輸入米の在庫保管量は昨年末時点で約170万トン。民間倉庫会社に払う年間約170億円の保管料は国民負担となっている。
コメの平均輸入価格が1キロ当たり40円なのに対し、政府が売り出すエサ用価格が同17円なので、1キロ当たり23円の逆ざやが生じる。30万トン売却で約70億円の損失になる、そうです。
「豊葦原の瑞穂の国」の弥生時代に、江南地方より伝播されて営々美味なるべく努力したお米が、思わぬ冷や飯を食わされ、さぞや肩身が狭かろうと思います。とは言いながら、「唐津市菜畑の遺跡」更には「板付遺跡」近くに住まい、一度も足を運んではいません。近いうち見学に伺いましょう。

山内一豊と片桐且元

2006-07-05 10:42:22 | 江戸随筆より
黒田のお殿様と細川のお殿様とは仲が悪かったそうです。むかしむかしの慶長五年ごろのお話です。事は豊前入封時黒田氏が先納年貢を持ったまま筑前に移ったことによります。
細川氏は黒田氏に先納分を返すよう要求しました。ところが、すぐには返済できぬの回答です。立腹した細川氏は関門海峡を通る筑前船の穀物を軍船で押さえようと門司に番船を置きました。事態が急なるのを見て、両氏と昵懇の山内一豊片桐且元が仲裁に乗り出し、黒田側が「先納五万石のうち、二万石は六、七月に返し、残る三万石は九~十一月に返す」という一札を入れ、とりあえず納まりました。仲裁人両名戦国武士とはいえなかなかの政治家であったようです。
細川のお殿様の憤懣は次の領内禁則にも現れています。「筑前通い仕り候ものは、一類を曲事」と定められ、本人のみならず一族まで累が及んだようです。しかし、やがて、黒田や島津に睨みを利かせる九州枢軸の熊本五十四万石のお殿様ともなれば、長年のお腹立ちも治まったことでしょう。