其蜩庵井蛙坊

井戸の底より見たり聞いたり喋ったり

オオカミのはなし

2014-03-29 15:40:46 | 生き物
オオカミの謎(桑原康生先生著)という本を借りました。オオカミは雌雄家族の結びつきの強いということを以前読んだことがあります。日本では一九〇五年を奈良県で捕獲されたのを境にオオカミは絶滅したそうです。オオカミという動物は分類学上は
界 :動物界 門:脊索動物門 網:哺乳綱 目:食肉目 科:イヌ科 属:イヌ属 種:ハイイロオオカミ(日本での一般和名タイリクオオカミ)です。著書の写真で見る限りセパードに似ていますし、仔犬は全く同様の可愛い容姿をしています。
日本では野生種のオオカミがいなくなり、そのために鹿や猪などの森林や農作物の被害が甚だしくなったのだそうです。オオカミが恐怖の対象とされたのは一八世紀に外国から狂犬病が侵入したからだということです。今でも定期的に狂犬病予防が注射義務付けられています。
子供のころの経験ですが、野犬狩りの捕獲場面に遭遇したことがありますが、犬が噛みつく性質をある事を忘れさせていません。オオカミのせいではありませんが。
夜の野道で犬の群れに囲まれたことがあります。自宅にも近いのですが、その群れのなかに我が家の飼い犬がいましたが、その時は全く群れに属した犬となりきっていました。オオカミも弱みを狙って襲うらしく、それは家庭内で飼われている犬も家族の序列を知っているかのように行動することからも推測できます。犬ばかりではありません。安芸宮島の鹿が連れていた幼い娘に襲いかかったのに驚きました。遊牧民に先祖のある欧米人に較べて動物との接触には日本人は多少未熟さであるように思えます。

始まりかお終いか

2014-03-27 14:44:05 | 日常雑記
地球の始まりとか宇宙の始まりとかはのんびり暮らしている分には凡そどうでも良いことですが、どうかした拍子に気になることもあります。ブラックホールと聞けば、真っ黒い穴、そうか始まりは暗黒の闇か、ならば光はどうして発生したのか、宇宙に重力も光も吸い込まれてしまうブラックホールがあちらこちらに存在していて宇宙空間が拡がり続けられたのか、拡がり続けているのなら、最初の始まりはどうだったのか神様か仏様がパチンと柏手を打たれた途端この世が始まったと考えて差し支えないのでしょうか。
こんな事は八歳の兼好法師が父上を困らせた賢明な?問いでもあります。「人は何として佛には成り候ふやあらん」「佛の教へによりてなるなり」「教へ候ひける佛をば、なにが教へ候ひける」「それも又、さきの佛の教へによりて成り給ふなり」「その教へ始め給ひ候ひける第一の佛は、如何なる佛にか候ひける」「空よりやふりけん、土よりやわきけん」そうです、世間一統誰にも答えられない問いでしょうね。

鹿狩ノ唄

2014-03-25 12:26:43 | 地域
ご近所の方に声を掛けたところ、鹿の角を戴けることになりました。朝倉山中で見つけられたのだそうです。半ばその気になったのですが、刀掛けにでもなりそうな立派な代物で私には惜しいと思い丁重にお断りしました。
金印発掘の志賀島には志賀海神社があり、その境内に夥しい鹿の角が倉に収納されています。
鹿狩ノ唄(玄海の島々 野間吉夫氏著によります)。
「禰宜一良」山ハ深シ木ノ葉ハ繁ル 山彦ノ声カ鹿ノ声カ存ジ申サヌヤ
「禰宜二良」一ノ禰宜殿、コハ七日七夜ノオ祭ニ御酒ニタベヨイフセッテ候 七頭八頭オグシノ前ヲ通ル鹿ナントナサル
「禰宜一良」ソノ時コソ志賀三社大明神ノ御力ヲモッテ一疋タリトモ逃ガシハセヌ
二月一五日には山誉種蒔漁猟祭、十一月五日には山誉漁猟祭が行われその時に唱われる唄の一部です。
湾内の能古島には藩主のお狩場として鹿を放ち飼にしたそうであり、敗戦後にも進駐軍兵士が鹿狩りをしたとのことです。

まっ白な犬

2014-03-23 11:01:44 | 身辺雑記
お天気がよろしいので、久留米ウス(筑後川防災施設)に出かけました。百年公園あたりは広々とした景観と久留米ウスの川魚展示を眺める場所柄のよさで気が向いたら出かけるところです。筑紫次郎は阿蘇山を水源とし悠々として流れ、筑後川昇開橋を潜り有明海に注いでいます。当市の水道もこの流れの恩恵を受けています。
まだ幾分寒さが残る日和でしたが川原には子供ずれも見られ、若い吉野桜の花が開いていました。久留米ウス館内ではベトナム青年男女の嬉々とした姿が見られました。入口付近で真っ白な大型犬に出遭いました。飼主のご夫婦に尋ねますと、ピレネー犬とのことでした。一日に一キロの肉をとのことでした。相撲取り然とした歩みで川原に降りてゆきました。ずっと以前近所にセントバーナードが飼われていて軽トラックに乗せられ近くの河原でブラシを掛けられているのを見ていました。「世界の犬」によると、ピレネーに住みついたのは五世紀ころ、山の中腹の牧場で狼や盗人から羊や羊飼いの家族を守ってきたそうです。毛色は様々だったのが、一九世紀ころ白色優位の犬となったそうです。

キング・コング

2014-03-20 12:50:59 | 映画
一九三三年制作のキングコングがありました。記憶というものは不思議なもので、すぐにも忘れてしまうものもあれば意味も無く永く覚えているものもあります。さすがアメリカは映画の国文化財として保存には気を遣っているナと思います。DVDのケースの表にはザ・ワールド・マスターピース・ムービーと印刷してあります。
この映画は入場料を払って劇場で見たのではなく、小倉市(現在北九州市)魚町商店街にあったカネヤス百貨店の催し物でした。当然あらかたの内容には記憶がありませんが、エンパイア・ステート・ビルの頂上に登ったキング・コングが襲いかかる数機の複葉機を手掴みにしようと奮闘し、機関銃の乱射で哀れにも地上に転落し終わりを告げることになりました。顛末を云えば、キングコングを麻酔銃で仕留め見世物にするためニューヨークに連れてきたための騒動であります。
去年熊谷守一展のため魚町商店街を通りカネヤス百貨店は既に無くなっていることを知りました。遙けくも来つるものかな!!

奇談雑史

2014-03-19 12:30:11 | 文芸
怪談や奇談にはしばしば心を動かされる質ですが、その通例として近隣周辺に怪物の出現は好みません。シベリヤやアルゼンチンに怪奇現象が現れるのは構いませんが、福岡周囲には遠慮がちに願いたいものです。
「奇談雑史 宮負定雄著」という文庫本がありましたので、覗いてみました。開巻一に「飛び梅の事菅原道真公」で始まります。一六〇話のなかに酒飲みの話も数多いのですが、酒の湧きし清水の事という多少あやかりたい咄があります。下総国酒直村という所の谷間に清水が湧く泉がありました。隣村に貧乏でお酒が買えない男がおりました。彼は夕暮れになると家を出て、帰りには良い気分で帰ってきます。息子があやしく思いそっと跡をつけて様子を覗いました。するとかの泉水を酌んで飲み、「美味い酒だなあ」と嘆息します。そして酔態となって帰ります。息子も飲んでみますが全くの清水です。この清水は親が飲めば酒、息子には只の水となります。
その昔々元正女帝は美濃国多度山の美泉に行幸なされ「禮泉は美泉なり、以て老を養う可し、蓋し水の精なり」として養老元年と改元されました。こちらは親孝行の話が絡んではいますが。

百円の歴史

2014-03-17 13:07:07 | 歴史
ちかごろはDVDに値段の廉いものが出回っています。世界遺産も各種ありますので、蝸牛生活の私など便宜をしております。砂埃にまみれず絹道へも、駱駝に乗らずにピラミッドの偉容を眺めることも出来ます。僅か百円で「20世紀の記録1 」というのがありました。如何なものかと裏を返しますと、イギリス国営BBC放送とフランスPath社の貴重な映像ライブラリーを基にしたとありました。
内容は一九一〇年からイギリス国王エドワード七世逝去から第一次世界大戦終結までの映写五二分ですから推して知るべしでしょうが、なにしろ現代史に半端な知識しかありませんので眼を開かされる映像がありました。辛亥革命ーアムンゼン南極点到達ー豪華船タイタニック号氷山激突ーパナマ運河貫通ーオーストリアの大公夫妻の暗殺第一次世界大戦勃発ーサンフランシスコーニューヨーク間大陸横断電話が開通ートルコのでアルメニア人が大量虐殺ーフランス・ソムスンでの英・独軍が激突ーロシア皇帝ニコライ二世が退位ーアメリカがドイツに宣戦布告ードイツが休戦協定に調印となっていました。
トルコでのアルメニア人が大量虐殺された歴史的な出来事など全く知りませんし、未だにこの問題の結末すら付かされていないそうです。
現在世界が一応平らな状況ですから一国のみの価値観や評価では歴史は語れないようです。
真に百円の歴史は貴重なものでした。


四股六根

2014-03-15 14:26:53 | 文芸
先日イソップ寓話を書いた折キリシタン版エソポ物語(大塚光信校注角川文庫)を持っていたことを思い出しました。やっと探しだしましたので冒頭部分と一話とを書いてみました。
ラチンを和して、日本の口となすものなり。ゼズスのコンパニヤのコレジョ天草において、スベリヨレスの御免許として、これを板に刻むものなり。御出世より一五九三。
総じて人は實もなき戯言には耳を傾け真実の教化をば聞くに退屈するによって耳近きことを集め、この物語を版に刻むこと、樹木を愛するに異ならず。と先ずはこの版の趣旨を述べ、更には日本の言葉稽古ための便宜ともなるであろうとしています。
そのお話は馴染みのあるものばかりではありませんが、「腹と四股六根の事」は岩波本では「胃袋と足」なっています。 眼耳鼻舌と手足各々一味となって「腹という卑しい無道人、その身は何の業もなさないで、我らを下人のように使ひ、己は主君の風情をなしこと、ちかごろ狼藉千万ぢゃ。所詮今より腹に奉公すまじい」と議定した。その時腹が云ふには「各々の仰せはもっともお道理ぢや。されども我幼少より少しの業をしたこともない。ひとへに御免をかうむれ」とわぶれども、各々憤り深うして「二三が日は少しのこともせいで腹を痛めう」との評議に済んで、日数を経るほどに、次第に四股六根は弱り果て、進退ここに窮まった。その時各々仰天して「今こそ思ひ当ったれ。四股六根の働きはひとへに腹の力によってのことぞ。さらば腹に懇望せよ」とて「前々のごとく奉公に油断あるまい」と云うて、少しも怠りなう仕へた。               下心。
総じて下なうて、上もなく、無能な者がなうては、能者の立つこともない。
お話の区切りに下心とあるのは考えるヒントでしょうか?

昭和八九年

2014-03-13 12:43:38 | 身辺雑記
日めくり暦に昭和八九年とありました。私個人の気持ちとしてはこの年号が時の移りゆく感覚として素直になれます。例えば私の年齢をちぐはぐと計算しなくても直ぐ判ります。
昭和三五年(1960)当時の街頭ビラの束が雑本に挟まれて出てきました。五四年前のものです。現在街頭で配られている宣伝ビラは殆ど商業上のもので若手向きのテッシュなど路上には容易に棄てにくい形状です。
当時のビラは政治的な色彩が濃いものでした。時は大牟田三池の騒動また国会付近でのデモなどの激しい状況でした。右や左や宗教まがいの宣伝ビラが福岡市街では惜しげも無く頒布されていました。
けれども全く商売上のビラが無かったかと言えばそうでもありません。ジェイムス・ギャグニーが扮するハルゼー提督・山本提督に扮するは山本元帥の元幕僚後藤武一氏の映画「太平洋紅に染める時」の大洋映画劇場宣伝ビラもあります。更に当地のお方なら笑って頷ける川丈や高級旅館の宿泊休憩料金記入の広告・西鉄ー阪急ナイター御招待との高級紳士服店のチラシもあります。平和台では世界最高の西独ズーベッツ曲芸団の決死的空中ショウ針金一本地獄へ通ずる魔術の御招待券非売品(但し整理費として窓口にて五十円をもうしうけます)が配られていました。どうやらこの日独親善のサーカスはナイターであったようです。
 


お雛様

2014-03-10 11:49:13 | 身辺雑記
杏の花を見ていたら嚔が出て風邪を引きました。正確には分かりませんが、多分三年ぶりではないでしょうか。悪寒がするので葛根湯を飲みました。病慣れしない身体なので朝晩はお粥を戴きました。今朝は本復に戻り得ました。しかし葛根湯は実に効能があります。
四月に入ってお雛様の話は見送ったボールの判定に苦情を述べているようですが、拙宅は四月の末にお供えをして雛を始末する習わしになっております。昨晩お雛様を眺めていましたら、「御堂関白記」と「呪いの都平安京 呪詛・呪術・陰陽師」「かぐや姫の結婚」いずれも繁田信一先生著述を読んでいましたので、いつもは可愛いお顔のご一同が幾分難儀な世渡りをされていたものだと同情申し上げました。
きらびやかな平安の世に呪詛・呪術・陰陽師など呪詛したりされたり、勿論紫式部も清少納言やその他のご一統様にもも無縁では無かったとは、実に難儀なお話ですね。
しかし昨今の世情にも姿形は変れど陰陽師めいたお方が大勢おいでではないか、と密かに思案しております。