ロドス島の薔薇

Hic Rhodus, hic saltus.

Hier ist die Rose, hier tanze. 

【金曜討論】 「憲法9条」

2013年06月28日 | 憲法論資料


【金曜討論】

「憲法9条」 佐藤正久氏「国防軍を持つことを明記」、小池晃氏「国民合意で9条を完全実施」

2013.6.28 07:51

 日本国憲法の改正論議で数十年にわたり、最大の論点であり続けてきたのが9条と自衛隊の問題だ。憲法に照らして自衛隊は合憲なのか、9条と自衛隊の矛盾をどう解決すべきなのか。自民党参院議員で防衛政務官の佐藤正久氏と、元参院議員で共産党副委員長の小池晃氏に見解を聞いた。(溝上健良)

                  ◇佐藤正久・参議院議員(伴龍二撮影)

 ≪佐藤正久氏≫

 ■前文も含め改正すべきだ

 --9条に照らして自衛隊は合憲か

 「私は合憲の立場だ。国連憲章に基づいて主権国家として日本は自衛権を持っているわけで、その行使の手段として自衛隊があるといえる。ただ自衛隊は警察予備隊が原点であり、憲法上は警察の非常に大きなものが自衛権を行使するような形になっていて、位置づけがあいまいなのが問題だ」

 --9条改正の是非について

 「自民党の憲法草案にあるように、前文も含めて改正すべきだ。基本的な考えとして『日本は侵略戦争はしません』と明確にした上で、自衛権を保持しており、国防軍を持つことを明記する。国防軍の役割についても憲法にきちんと書いておけば『改憲したら海外で戦争を仕掛けることになる』といった懸念も払拭されるだろう」

 --前文の改正も必要とのことだが

 「前文では日本以外はいい国で日本は悪い国という前提で『諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持』することになっている。今の憲法には自分の国や故郷、家族を守る義務と責任が書かれておらず、そのことは前文、そして9条、権利義務の章に盛り込むべきだ。今の憲法はあまりに権利と義務のバランスが悪く、新憲法できちんと整理する必要がある」

 --イラク派遣の際、憲法9条の限界を感じて苦労したことは

 「集団的自衛権は認められないという解釈がされているため、多国籍軍の一員として参加していながら他国の指揮は受けないとか、仮に他国の軍隊が襲われても助けに行けないといった問題があった。また他国の軍隊と違って武器使用にも厳しい制限があって、例えばもし駐屯地の外にいる民間の日本人が襲われたとしても助けに行けないという悩みもあった」

 --自民党が自衛隊を「国防軍」にする憲法草案を発表して、現役隊員の反応はどうか

 「自衛隊のままでいいという隊員もいるが、特に海外勤務経験のある隊員やOBからは軍としてきちんと位置づけてほしいとの声が多い。そもそもあれだけ大きな組織が憲法で明記されていないこと自体が問題だ。(自衛隊の英語名)セルフ・ディフェンス・フォースでは“自警団”といった意味合いがあり、それでは誇りが持てない」

 --国防軍というと「復古的だ」と言い出す人が必ず存在する

 「世界のほとんどの国は国防軍を持っているのが現実だ。どうも日本人は新しく物事を変えるときに雰囲気で論じがちな気がする。例えば防衛庁を防衛省にするときも猛反対があったが、今は当たり前になっていて、一体何が問題だったのかと思わされる。国防軍になっても今とそれほど実態が異なるわけではない。ただ法的にグレーだった部分がかなりクリアになるはずだ」

                  ◇【金曜討論】「憲法9条」 佐藤正久氏「国防軍を持つことを明記」、小池晃氏「国民合意で9条を完全実施」

 ≪小池晃氏≫

 ■必ずしも常備軍いらない

 --9条に照らして自衛隊は合憲か

 「憲法は『陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない』としており、自衛隊は9条2項に明白に違反する戦力、つまり軍隊そのものだ。私たちは対米従属の根源である日米安保条約を廃棄するとともに、自衛隊については、当面軍縮の措置をとり、国民の合意で9条を完全実施する、すなわち自衛隊の解消を目指すことを党綱領にうたっている。アジアの政治・軍事情勢が変わっていくことと『自衛隊をなくして大丈夫』という国民の合意が得られることが前提となる」

 --将来は廃止するとして、当面は自衛隊が必要だということか

 「解消に取り組む過渡的な時期はあるわけで、その間に外国から急迫不正の侵害があれば、必要なあらゆる手段をとって排除することは当然だ」

 --国の自衛権についてどう考える

 「国家には当然、自衛権があるが、必ずしも常備軍が必要だとは考えていない。侵略などがあったときに主権を守っていくのは国家に固有の権利だ。昭和21年の憲法制定議会では吉田茂首相から自衛権を否定するかのような答弁もあったが、それは違うという主張を当時も共産党はしてきた。党としては憲法の中に侵略戦争の禁止を明記することを求めたのであって、国に自衛権があるという見解は当時から現在まで一貫している。ただ、その自衛権も常備軍によらずに行使していこうというのが9条の規定だといえる」

 --常備軍によらない自衛権とはどういうことか、イメージしにくいが

 「中国や北朝鮮の現状をみればすぐに実現は難しいが、他国との争いは軍隊によらず外交交渉で解決する、というのが9条の精神だろう。よく9条を守るというと『平和ボケ』などといわれるが、むしろ外交上の問題が浮上するとすぐ軍事対応だ、となることはよほど『軍事ボケ』ではないか」

 --9条改正の是非について

 「断固として9条を変えてはいけない。海外派兵を可能にし、米国と一緒に武力行使できるようにすることが自民党による9条改正の目的であり、自衛の問題ではなくなっている」

 --昭和21年6月に共産党が発表した「日本人民共和国憲法」草案は今、どのような扱いになっているのか

 「当時、新しい国を白紙からつくろうと議論したもので、すでに時代的役割を終えた歴史的文書だ。前文も含め現行憲法の完全実施を目指すというのが、現在の私たちの立場だ」

 --共産党は「憲法改悪反対」を掲げているが、改正なら賛成なのか

 「各政党・団体の憲法案はまぎれもない改悪案ばかり。今、現実政治の憲法からの乖離(かいり)が問題で、憲法を守り生かしていくことこそが必要。共産党は護憲政党だと考えてもらっていい」

                  ◇

【プロフィル】佐藤正久

 さとう・まさひさ 昭和35年、福島県生まれ。52歳。防衛大学校卒、米陸軍指揮幕僚大学卒。陸上自衛隊で最終階級は1等陸佐。平成19年に退官し、同年から参院議員。近著に「ヒゲの隊長 絆の道」。

                  ◇

【プロフィル】小池晃

 こいけ・あきら 昭和35年、東京都生まれ。53歳。東北大医学部卒。病院勤務医を経て、平成10年から共産党参院議員を2期務める。今年2月から党副委員長。著書に「どうする日本の年金」など。

(c) 2013 The Sankei Shimbun & Sankei Digital

 

 

 

 


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