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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

ルグリ全幕特別プロ「白鳥の湖」第一夜 ③

2007-08-19 10:21:36 | BALLET
第三幕



オディール: ドロテ・ジルベール
ジークフリート王子: マチュー・ガニオ
悪魔ロットバルト: ステファン・ビュヨン
王妃: 加茂律子
道化: マチアス・エイマン
司会者: 野辺誠治
チャルダッシュ(第1ソリスト): 長谷川智佳子、大嶋正樹
(第2ソリスト): 森志織、福田ゆかり、高橋竜太、氷室友
ナポリ(ソリスト): 高村順子、マチアス・エイマン
マズルカ(ソリスト): 田中結子、坂井直子、中島周、横内国弘
花嫁候補たち: 小出領子、西村真由美、乾友子、佐伯知香、高木綾、吉川留衣
スペイン: 井脇幸江、奈良春夏、後藤晴雄、平野玲

ここでも最初からマチアスくんが場を盛り上げます。
花嫁選びの舞踏会。王子マチューはルグリ先生ほどの押し出しはないが、美しく育ちの良い王子。
お約束のディベルティスマン、各国の踊り。
まずはチャルダッシュ。大嶋さんの鋭くキレのある踊りはやはり目を引く、長谷川さんをサポートでくるくる回すのはかなり前のめりに音をとっていて、ちょっとせわしなかったかも。
ナポリでマチアスが高く高くジャンプするのに息を呑む。
大体、この人は見知った踊りの重心を高く引き上げたところで演技をするので、この踊りってこんなだったっけ?と見直してしまう場面多々あり。
東バ一のチャームの持ち主、かわいい役どころならお任せ、のスペシャリスト高村さんと愛らしい微笑を交わしながらの幸せ感一杯の演技。ナポリは基本的にはテクニックを見せる踊りではないので、マチアスには物足りなかったかも・・・。
ピンクのブーツにいつも疑問を持つ(笑)マズルカでは中島さんのラインの美しさをチェック。
花嫁候補の踊りでは美しいが見所はないのが常ですが、主役級の小出さんがきれいな手首を見せてくれて場を引きしめています。
どの女性にも興味が持てないのです、とソフトに、でもキッパリとお断りするマチュー。がっかりして悲嘆にくれる母娘たち。
と、暗転、激しい音楽、怖がる道化。
スペインチームを引き連れてロットバルトの登場。
艶やかなダークグリーンのサテンの長いマントを翻すとオディールが。
ドロテはさすがに華がありますね。
マチュー、ドロテ、ステファンの並びは美しくて華やか。
期待高まる中、まずはスペイン。東バの中でも長身美形のソリストが踊るこのスペインのカッコよさには定評がありますが、この踊りのスペシャリスト井脇さんの切れの良さと柔軟な肢体を活かした反って扇で床を打つ演技も相変わらず冴えていて、ワクワクします。

そしてお待ちかねのパ・ド・トロワ。
マントを翻して、オディールを隠しながらエスコート。王子に歩み寄り、キメポーズで誘惑の視線を送るオディールに目を向けさせる、暗躍のロット。この場面はダンサーの個性や力量で際立つ役や役の意味が大きく変わって来る、演じ手の全てがさらけ出される見所なのですが、今回の3人は・・・。

ドロテは企みの視線をロットと交わしたりの目力はあるのですが、基本的に妖艶さや女性らしさ、というよりは陽性の活き活きとした生命感やキレのあるリズム感が持ち味なので、適役と期待されたほどにはオディールの誘惑に魅力を感じなかったかも・・・。
テクニックの強さを見せる、見せ場の32回フェッテでは、最初は3回に1回はダブルを入れてきたり来るぞ来るぞと思わせておいて、最後息切れしたのか最後の手前で降りてしまいました。土曜日の自分の主演の通しに照準を合わせて、今日は無理をしないことにしたのでしょう。

ロットは父親代わりの後見人的な立場なので、ベテランの色気のある男性が勤めるとロットとオディールの間に大人の愛人関係にあるカップルのような秘めた親密さが流れてドラマを盛り上げたり、キャラクテール的なベテランだとヤリ手の宰相のような政治力を発揮したりするのですが、スジェのステファンとプルミエールのドロテは年も近いので、2人の目配せは、女スパイドロテが「守備は上々よ」「了解」と同僚スパイのお仕事のよう。
ステファンはロットのソロもきれいに決めて、凄みを感じさせるにはキレイすぎ、ソフトすぎの風貌ではありますが、押さえた表情で、なかなか悪くないロットでした。

マチューはまんまとだまされる王子・・・でしたが、オディールが誘って王子が近づくといきなり拒絶、という手管を使った後には少し心が高ぶって次にオディールの手をとるときにはちょっと強引な感じで強く引き寄せたり、思いがけない若者の血潮を垣間見せて。
単にサポート下手、という説もありますがxxx。わたくしとしては演技との説を採りたいところ。
マチューのソロは複雑なジャンプアラベスクの連続など難易度の高い演技をきれいにこなしていて流石。ジャンプも高いしアントルシャもきれい。
ただ、マチューってとことん持ち味がソフトで難しいことを大げさにアクセントをつけずに淡々とこなしてしまうので、凄いことをしているのに全く凄く見えない・・・そこがマチューの凄いところ??

誓いを立てたところで高らかに嘲り笑うロット・オディール・スペイン軍団。背後の壁には苦しみ踊るオデットのシルエットが。騙された!
火薬が爆発、白煙が昇り、ロットの一団は姿をくらまします。
「ママ~!」との声が聞こえそうなマチューが王妃の膝にすがり、よろめきながら走り去り、悲嘆にくれる王妃と悲しみ慰める道化、王宮の人々が残されて幕。


ルグリ全幕特別プロ「白鳥の湖」第一夜 ② 

2007-08-19 09:48:55 | BALLET
第二幕



オデット: ミリアム・ウルド=ブラーム
ジークフリート王子: マニュエル・ルグリ
悪魔ロットバルト: ステファン・ビュヨン
四羽の白鳥: 佐伯知香、森志織、福田ゆかり、阪井麻美
三羽の白鳥: 西村真由美、高木綾、奈良春夏

ロットバルト登場。
この幕はパリオペ版。ダークグリーンと黒の衣装がカッコいい。パリオペ版のロットバルトは基本的に色悪の美味しい役どころなのです。スジェのステファンがどこまでその悪の魅力を発揮してくれるかが見所。
それがハッキリするのは3幕ですが。

王子が走って登場・・・って流石ルグリ先生!
走るだけでも王子!醸し出すものが違います。
気品・落ち着き・豪胆さ・思慮深さ全てを兼ね備えた古典の王子オーラがマブシイ・・。
発表会がいきなりホンモノの舞台になった感じが致しました。

ミリアム登場。
ちっちゃい・・・。このところ大きなオデットに目が慣れていたので(ロパートキナ、ポーリーナ、アニエス)ミリアムがとても小さく見えます。
長い手脚のダンサーですとその上腕を緩やかに動かして白鳥らしいムーブメントやエレガンスを醸し出すところ、ミリアムの動きはどことなくせわしなく感じられ(特にマイムは「こんな酷い目にあったのですわ、聞いて下さいませ~」のマシンガントーク!)るものの、気品と愛らしさは充分。
王女が身をやつした白鳥の精、というよりは白鳥のコスプレをしたプリンセス、と言う感じ。
神秘の白鳥、悲劇の主人公・悲しみの女王キャラとはまた異なる、姫な白鳥でこれはこれで魅力的。

パ・ド・ドゥの美しさはホゥ・・・とタメ息をついてみるばかり。
ちなみにこの日は全幕とあって、久し振りにオーケストラ(東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団)が入りました。指揮はバレエ音楽を知り尽くしたアレクサンドル・ソトニコフ氏。彼の姿をオーケストラ・ピットで認めると安心感で心が和みます。
この日はクラシック通のA氏との観劇でしたのでオケがはずしたらどうしようかとヒヤヒヤしていたのですが、いつになく熱のこもった演奏でチャイコフスキーの音楽の素晴らしさを堪能致しました。
ルグリ先生のサポートでミリアムの踊りが伸びやかに見えます。
指先まで美しいライン・・・。オペラグラスで見ると、ルグリ先生はミリアムの回転軸を上げた手で支えるときも、中指と人差し指だけにつかまらせて他の指はきれいに伸ばしたフォルムを保っているのですね。
オデットのソロも気品溢れる姫オーラでテクニック的にもほぼ完璧。
東バの4羽の白鳥の揃い方もパーフェクトで、この幕、バレエ・ブランの世界を心から楽しむことができました。
王子のソロが省略されていたのが唯一不満ですがxxx



ルグリ全幕特別プロ「白鳥の湖」第一夜 ①

2007-08-19 08:17:54 | BALLET
8月16日(木)
ソワレ、18:30から、いつもの(すっかり通いなれた道)五反田簡易保険ホールに。

ルグリガラ、全幕特別プロ、白鳥の湖3連日公演のうち、今回は幕ごとに主役が変わる趣向の16日と、パリでは多分見られないだろうと思われるドロテとルグリ先生が主役の18日をGET.
17日は東バの上野水香ちゃんとマチュー、という若い2人の全幕でしたが、3連日は流石に辛いのと、以前見たときの水香ちゃんの白鳥があまり好みでなかったことと、マチューはこの先何度も観られる機会がありそうだと思ったことなどでパス。
そう思った人が多かったみたいで、瞬殺でSOLD OUTの16、18日に対して17日はギリギリまで会場でもチケットが販売されていたようです。前売り段階でダメでも、直前に主催者に問い合わせると救済策がみつかることも多いので、バレエ公演にご興味があって、でもチケットがとれないから・・とお思いの方は是非トライなさってみて下さい。
ちなみに今回のルグリガラ全体、SOLD OUTで諦めた方も多かったようですが、当日券売り場に立見席が¥6000(だったかしら)で出ていました。20~30枚用意されていた模様。


第一幕



ジークフリート王子: オドリックベザール(左)
王妃: 加茂律子
道化: マチアス・エイマン(左中)
家庭教師: 野辺誠治
パ・ド・トロワ: マチルド・フルステー(中)、シャルリーヌ・ジザンダネ(右中)、アクセル・イボ(右)
ワルツ(ソリスト): 西村真由美、乾友子、高木綾、奈良春夏、田中結子、前川美智子

この幕をさらったのはマチアス!!
ジャンプが高い!超高速フェッテ!そしてなによりもちょっとおカマちゃんっぽいCUTEなキャラクターの役作りで演技が細かい!王子に話しかけたり、気弱な女の子にお花を渡して王妃に捧げるように後押ししたり踊っていないときでも大活躍。
そして圧巻のソロでは180度でしっかりと顔をつけながら加速するフェッテで衆目を集めていましたが、最後のキメで三半規管にキテシマッタのか、流石にとまらなくなってしまった様子で慌てて瀕死の白鳥ポーズで手をパタパタさせて収めていましたが、会場はそれを残念に思うというよりも、「よくここまでやった!」と温かく称えるムード。
この人、SBLでお手本を踊っていたときには隙がなくて(髪型も硬く・笑)どことなくクールで優等生タイプかと思っていたのに、まずAプロ「白の組曲」でアニエスの次の登場でも動じずに見事なテクニックをみせて度胸とテクニックで印象付け、Bプロ「ドリーブ組曲」ではミリアムに対する温かなエスコートでサポートの良さを期待させ、この全幕で演技力と観客を味方につけてしまうチャームを発散し・・・。
いや、全く今後が楽しみな逸材。ルグリ先生彼を連れてきてくださってありがとうございます
衣装は東バの派手派手な赤黄青の3原色を装着。

王子のオドリックは、登場してから最後にソロを踊る前まで、すっかり消えていました。
存在感なし。トロワのマチルドを主にエスコートするのですが、まるでマチルドを見ず、淡々と歩いていたまっすぐな背中が印象に残りました。傍らを行くアクセルくんがエレガントな造形でシャルリーヌを気遣いながらノーブルなマナーの良さを見せていたのは対照的。
最後の王子のソロは高身長を活かしてダイナミックさもありテクニック的には問題なし。
ルグリガラ3回目の成長振りを見せてはくれましたが、貴重な体格の男子に対する周囲の期待に応えていたとはちょっと思えない王子らしさの欠如が彼の課題。コンテは良くても古典の王子はまだ荷が重そうです。

トロワの3人は、スジェのマチルドはやはり踊りが端正。
難しいパも決して端折らずに決めてくるあたりとピケピルエットの高速回転の切れ味など、見ていて気持ちの良い踊り。
コリフェの2人はテクニック的にはまだ不安定な部分多々あれど、醸し出す雰囲気が柔らかくて良い。
シャルリーヌは上体の特に腕の使い方が実に滑らかで可愛らしさもあり、アクセルくんは個性的な面立ちなれど、身体のラインがきれいで何ともいえないロマンチックなムードを持っている。
この持ち味は強みでしょう。
トロワといえばエマニュエル・ティボ-くんの目の覚めるような演技を昨年のパリオペ引越し公演で見た記憶が新しいので、比べてしまうと・・・ですが。
成長期にある若手を見守るルグリガラならではの配役ですね


ルグリガラ Bプロ カーテンコール

2007-08-18 05:47:44 | BALLET
イレールとルグリに惜しみなく贈られる満場の拍手。
何度でも繰り返したいカーテンコールが、威風堂々の音楽で断ち切られ、グランフィナーレ。

幕が開くと若手から走り出てくる。
マチアスとミリアムに大きな拍手。マチアスが嬉しそう。
ドロテとマチューも華やかに登場。
ペッシェが意外と(?)観客に受けていました。

最後に走り出てきたのは、輝ける3人。
ルディエールさまを中心に、向かって左にイレール右にルグリ!

もう・・・この3人の並び、というだけで感動で胸がいっぱい。
何度も何度も観客の拍手に応えて幕が開き、
そして、舞台後方の上から、金のコンフェッティと赤・白・青の無数のリボンが降りてきて・・・
大きなボードにはルグリ直筆のフランス語のメッセージを拡大印刷したものに日本語の訳が添えられて。
「熱いご声援を感謝します。またお会いしましょう。マニュエル・ルグリ」

ダンサー全員、女性だけ、男性だけ、と前に進み出ての後、いつものように一度だけルグリが座長として前に進み、喝采を受ける。

何度かのカーテンコールのあと、イレールがモニクの前を横切って(後だっかかな?)ルグリをもう一度一人で閉まるカーテンを超えて観客の前に行くように勧めたり(「さぁ、観客の君への賞賛に応えくてはね」、というような温かい感じでとても良かったのです)、その後、これが最後の舞台となるモニクにルグリが同様に一人のレヴェランスを勧めて前に行くように促したり・・・。

きらきらのコンフェッティはダンサーたちも嬉しかったみたいで、モニクが金色のコンフェッティをカーテンが下りている間に拾い集めたのか、カーテンがあいたときにルグリの頭に振りまいたり、幕が下りている間に、天井から降り注ぐ金色の滝に子供のようにはしゃいで打たれているドロテが幕が開いたのに一瞬気づかず、慌てて列に戻ってきたり・・・・。

幕の前に、登場時のカップルごとに出てきて挨拶をするときに、舞台袖前で控えていたファンの方が花束を手渡ししに駆け寄られていましたが、イレールに女性ファンが3人来たときには「流石、殿」と思わずニヤリ。(あぁわたくしも2階席でなければお渡ししたかった!)
そのとき、ルディエールさまにもお一人いらしていたので安心しましたが

今回、舞台で花束をお渡しするファンは、心得ていらっしゃる方が多く、その日の演目のダンサーの衣装を考慮した色合いにまとめた、持ち易く、持ったときに映える形状のブーケを用意されているケースがほとんどで、日本のバレエファンのますますの洗練された心遣いを嬉しく感じたことでした。

いつまでも続くかと思われたカーテンコールでしたが、お見送りも終わった・・・と舞台に背を向けると、幕の内側から歓声が!
なにやらシャンパンらしきものを抜く音がした、という話も舞台近くのお席だった友人からは聞きました。


全幕「白鳥の湖」が木・金・土の3日間予定されていますが、そのメンバー以外はこの日が最終日。
お疲れ様でした。
ルディエールさま、イレールには楽屋口で感謝を申し述べさせていただきました。
土曜日、ルグリ先生の相手役を務める予定のドロテには励ましを・・・




ルグリガラ Bプロ ④

2007-08-17 02:52:18 | BALLET
最後は・・・
来てしまった、この時が!



「さすらう若者の歌」 Le Chant du Compagnon Errant

マーラー作詞作曲のロマン主義の香り溢れる歌曲に20世紀最大のコレオグラファー、ベジャールによる振付。

ローラン・イレール(様)とマニュエル・ルグリによる珠玉のパフォーマンスは、前回のルグリガラで話題沸騰。
そしてこの2月にオペラ座エトワールとして定年を迎えたイレールの最後の舞台での最終演目としてこの眼に焼き付けたこの演目。
もう一度、東京で観たい。日本の純粋なバレエファンが固唾を呑んで見守る舞台でお見送りしたい・・・と叶うわけもない望みとして空しく切望していた願いが、故障者続出というハプニングにより、思いがけず実現・・・。
神様ありがとうございます。

という過剰な思いを眼に込めて、2日連続で、Bプロ2日目、3日目(千秋楽)を観て参りました。
2日目は前方7列目センターのお席ゆえ、裸眼でルグリ先生とのアンサンブルを堪能。
3日目は2F席3列目センターでしたので、オペラグラスを片時も離さず、ローランの表情を追い続け・・・。
それぞれに味わい深いものがございました。
この演目に関しては、過剰な思い入れがあるので、ファンモード注意!です。
他のレポとは違って客観性のかけらもありませんので・・・
(情緒的なものがお嫌いな方は飛ばしてくださって結構です)

2日目は、イレールにとっては今回日本では2日目の舞台。
もう、半月以上も日本で公演をこなしていて身体の出来上がっているルグリと比べるとイレールにお疲れが・・・?と不安に思う場面もありましたが、パッと開き、ゆっくりと降ろす指先まで沁み透った美しさは健在。
今回初めてオペグラなしで最初から最後まで観たのですが(いつもついついローラン・メインで観てしまうので・・・)厳しく堂々とした存在の赤の衣装のルグリと、どこかいつも心を彼方に漂わせているセンシティブなイレールの水色の衣装の若者の対比が見事。
隣の叔母様が「あら、この衣装、グレーじゃなかったのね・・」とつぶやいたのをすかさず「シッ」と押さえ込んだのはわたくしです(^^;)。

3日目・・・。
ルグリ先生を犠牲にして、今夜はローランに集中することにしました。
2F席にとっては美味しい演目。伸ばした手、視線の先が2Fセンターなのですから・・・

指先の動きがハッとするほど美しい。腕の動きも科を作っているわけでもないのに一つ一つが華麗で、青春の喜びを歌う場面などでは指先から蝶がヒラヒラと飛び立ち、花々が零れ落ちんとする様が見えるほど。

左肩を向いて片膝を立てて膝まづき、右手を左肩に添える仕草が振りの中で何度か繰り返されるが、その度にこの人の美しい肩甲骨の窪みと目元の陰りにセンチメンタルな気分にさせられてしまいます。

ローランとマニュエルが手に手を取って互いの腕を握り合い、微笑を交わす。青春。友情。
途中からドンドンとその関係が変容していく。対立。
互いに相手を威嚇するようなジャンプ。
その瞬間、ルグリの顔は鬼神のように激しく、百獣の王ライオンの威厳を湛えている。
ローランは目だけにバチッと炎のキラメキを見せるのですが、表情にはむしろ深い憂愁の色を漂わせて・・・。
ルグリが手を引き、いざなおうとする先は魔界か・・・。
その中にも、何度か、希望と憧れ、生命と光に満ちた世界を希求する表情を浮かべては闇に沈む青年。
雄弁に語る身体。そしてそれ以上に、一瞬ごとに変化する表情に人生の春夏秋冬を、そして彼の輝かしかったバレエダンサーとしてのキャリア、名舞台の数々を想うファンも多かったのではないでしょうか。

客席を向きながらも、ルグリに手を引かれてゆく彼の顔が闇に完全に消えたその瞬間、大きく沸き起こった拍手の中に、涙を埋めながら出来るだけの拍手を送って見送ったわたくしです。
・・・この舞台は、忘れません。