1966 作者未詳 2011-05-21 | 巻十 夏雑歌 詠花 風散 花橘□ 袖受而 為君御跡 思鶴鴨 風に散る 花橘を 袖に受けて 君がみ跡と 偲ひつるかも 花を詠む 「風に散る、タチバナの花を、袖で受け止めて。あなたの形見として、しのんでいます」
1965 作者未詳 2011-05-20 | 巻十 夏雑歌 詠榛 思子之 衣将摺尓 々保比与 嶋之榛原 秋不立友 思ふ子が 衣摺(ころもす)らむに にほひこそ 島の榛原(はりはら) 秋立たずとも 榛を詠む 「(愛しく)思う娘が、衣を染めているので、(染料の)匂いがしているよ。島の原っぱのハンノキ(は色づいていない)。(まだ)立秋になっていないから」
1964 作者未詳 2011-05-19 | 巻十 夏雑歌 詠蝉 黙然毛将有 時母鳴奈武 日晩乃 物念時尓 鳴管本名 黙(もだ)もあらむ 時も鳴かなむ ひぐらしの 物思(ものも)ふ時に 鳴きつつもとな 蝉を詠む 「黙ってくれ。一時でも鳴くな。ヒグラシは、(私が)物思いに(耽る)時に(限って)、(うるさく)鳴き続けるのだ」
1963 作者未詳 2011-05-18 | 巻十 夏雑歌 如是許 雨之零尓 霍公鳥 宇乃花山尓 猶香将鳴 かくばかり 雨の降らくに 霍公鳥 卯の花山に なほか鳴くらむ 「こんなにも、雨が降っているのに、ホトトギスは、 ウツギの花(が咲く)山に、なおも鳴いているのでしょうか」
1962 作者未詳 2011-05-17 | 巻十 夏雑歌 本人 霍公鳥乎八 希将見 今哉汝来 戀乍居者 本(もと)つ人 霍公鳥をや めづらしく 今か汝(な)が来る 恋ひつつ居れば 「かねてより親しい人よ。ホトトギスより、滅多に(会えないけど)、今からあなたが来る。(長く)恋してきたから(願いが叶った)」