大学の試験が終わった後、私にはやることがあった。その日に受けた科目全ての問題をつくるのだ。私達が先輩にもらった過去問をありがたく使ったように、クラブの後輩の為、そして自分の為に。100%正確とは言えないがなかなかの記憶力だったと思う。学年があがるにつれ、一日に受ける科目数も馬鹿にならない。1番きつかったのは4年だったろうか?
しかし過去問作りは結構たのしい時間だ。帰りの電車の中で一生懸命思い出しメモしていく。科目ごとに、当時はワープロで過去問集を作成した。1番嬉しいのは違うクラブの後輩達が、私の作った過去問を持って勉強していることを知った時。過去問には何期生、クラブ名、名前を明記しているから名前だけは知られているのだ。とは言え、優等生タイプじゃないから実物までは知るよしもない。それでいい。
最近めっきり記憶力が衰えてきた。何かを思い出そうとしても出てこない。前は、まだ考えてるの?と呆れられるくらいひつこく何時間も思い出し続けたのに今はすぐに諦めてしまう。これがいけない。頭の中で張り巡らされたシナプスの回路がひとつ、またひとつ、行き止まりになる。思い出せた時のあの爽快感、ふたたび味わってみたい
朝の通勤電車。
わら半紙に手書きで印刷された問題の所々に赤のアンダーラインが引いてある。間違いを訂正して正しい答え、「クロムウェル」と書いてある。誰だったかしら?
今、中学や高校生たちは期末試験の真っ只中。私は地元公立の中高に通っていたから、通学は徒歩か自転車だった。行きの車内で最終確認が出来ないから明け方まで徹夜して試験に臨んでいた。ひとつ断っておくが、夜型の私はスタートが夜の12時である。そして試験勉強の終わる夜明けに朝焼けを見る。キレイな朝焼けは夕方とは違って音もなく、神聖な気分にさせてくれた。
大学の3年までは電車で約1時間ほど。この1時間が実に充実していた!普段は寝ていく時間が試験中だけはまとめた資料を一気に覚えるのだ。始発電車だから必ず座れる。停車駅で乗り込んでくる人の波で私の頭上に倒れこんでくる人がいてもこの時間だけは自分の世界に入っている。
すっかり忘れていた。私にもそんな時代があったんだと
あっ、でも戻りたくはない、あの頃には!