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日本の国際収支の状況

2007-05-15 09:47:15 | 経済
COLUMN

2005.11.24
経済金融調査部 亀岡裕次 [profile]
日米の所得収支が示唆すること

日本の所得収支が半期ベースで初めて貿易収支を上回った。2005年度上半期(4~9月)の貿易収支黒字が原油高の影響から前年同期比31%減の4.9兆円となったのに対し、所得収支黒字は同24%増の5.7兆円となった。アジアなどへの対外直接投資の拡大を背景に直接投資収益の受取が増え、また、対外証券投資の拡大に伴い利子収入など証券投資収益の受取が増えたことによる。

「国際収支発展段階説」によれば、一国の経済発展に伴い国際収支は以下に示す6つの段階を循環的に辿るとされている。

貿・サ収支 所得収支 経常収支 資本収支
(1) 未成熟債務国 赤字▲ 赤字▲ 赤字▲▲ 黒字++
(2) 成熟債務国 黒字+ 赤字▲▲ 赤字▲ 黒字+
(3) 債務返済国 黒字++ 赤字▲ 黒字+ 赤字▲
(4) 未成熟債権国 黒字+ 黒字+ 黒字++ 赤字▲▲
(5) 成熟債権国 赤字▲ 黒字++ 黒字+ 赤字▲
(6) 債権取崩し国 赤字▲▲ 黒字+ 赤字▲ 黒字+

現在、日本は(4)の「未成熟債権国」であり、経常収支の黒字と資本収支の赤字が膨らみやすい状況にある。貿易・サービス収支の黒字がたとえ増えなくても、一方で所得収支の黒字が拡大することで、経常収支の黒字は高水準を維持しやすい。経済財政諮問会議の『日本21世紀ビジョン』(2005年4月)は、 2030年には、貿易・サービス収支が赤字に転じる一方で東アジアからの直接投資収益が拡大し、日本は輸出立国から投資立国に変貌するとしている。つまり、(5)の「成熟債権国」となり、経常収支黒字の対GDP比が今より低下することになりそうだが、それはまだかなり先の話である。

一方、米国の所得収支は2005年4-6月期に▲4.5億ドル(季節調整済)となり、3年ぶりに赤字を記録した。民間部門の直接投資収益収支は対GDP比で1%前後の黒字を維持しているものの、財政赤字に伴う利払いで政府部門の所得収支赤字が拡大しているためだ。米国は上記(6)の「債権取り崩し国」にあたるが、経常赤字を背景に対外純債務が積み上がっていけば、所得収支が恒常的に赤字化し、(1)の「未成熟債務国」の国際収支パターンとなる。それは、もし貿易・サービス収支の赤字が減らないと、経常収支赤字がさらに膨らんでしまい、赤字発散の危機につながりかねないことを意味する。

準備通貨のドルを発行している米国だからといって無尽蔵に対外赤字を増やせるわけではなかろう。米国は昨年来、利上げにより実質金利を引き上げてきた。今後、貯蓄率の上昇と投資率の低下により、経常収支赤字が縮小に向かう可能性はある。ただし、米国景気の悪化を伴うリスクもあり、“持続性のある経常赤字縮小”となるかは不透明である。日米の所得収支にみる対照的な動きは、国際収支の不均衡拡大を示唆する注目点と言えるだろう。

磯村秀孝氏の論文を転載
(四)国際収支の赤字を武器に他国を搾取するアメリカの金融帝国主義

 ニュースウィーク誌の一二月二五日号は、「九〇年代を席巻したグローバリズムの甘すぎた幻想が、ついに終ろうとしている」と指摘し、交易を世界中に広めれば、戦争がなくなるといった楽観的な議論はglobaloney(地球規模の妄言)であると指摘している。
 アメリカ式のグローバリゼーションが広まったのは、第二次大戦以後のことだが、国連の九九年人間開発報告は「富める国々は益々裕福になり、貧しい国々は益々貧困の度合を強めている」と指摘している。反グローバリゼーションの人々は、これを根拠にして各地で反対運動を繰り広げているが、コロンビア大のハビエル・サライマルティー教授は「確かに国ごとの貧富の差は拡大しているが、貧しい国々もそれなりにグローバリゼーションの恩恵を受けており、生活水準は飛躍的に向上している」と分析している。グローバリゼーションの反対派は「アメリカ政府と企業は、自分達の利益を守って生き延びるために、世界を支配する必要に迫られている」と主張するが、アメリカの経済学者のマイケル・ビーセスは「マクドナルドという米国企業が世界のファーストフードを支配している訳ではなく、地域の企業家が経営しているのだ」と反論する。
 しかし我々は、このような矮小化された議論に組みしてはなるまい。

 現在のアメリカが構築したものは、これまでの国家には例を見ないような巧妙な形で、世界から資金を吸い上げるメカニズムである。九七年のアジア通貨危機の際の韓国やインドネシアのように、債務に喘ぎドル不足に悩む国々に対しては、IMF(国際通貨基金)や世界銀行を通じて、工業化や農業化を阻むような緊急政策を押し付け、極端に切り下げられた通貨の下で、原料の輸出や安価な労働力の提供をする道を歩まされる。他方で、ドルが過剰になっている日本やヨーロッパなどの国際収支黒字国に対しては、国際経済の危機を避けるためという大義名分の下に、余剰のドルでアメリカの国債を買い続け、黒字の蓄積をアメリカに還流するように要求する。

 アメリカが行っているこのような新たな金融帝国主義の特長は、経済的な余剰を吸い取る主体が民間企業ではなく、アメリカの中央銀行であり国家自体であるという点にある。そして、この金融帝国主義を謳歌できるのは、国際通貨であるドルを発行できるアメリカ一国だけであるという事実である。
 しかし注意すべきことは、この型の金融帝国主義は、資本主義に固有のものではないということである。曾ってソヴィエト連邦は、貿易、投資、金融のルールを握る機関に対して支配権を行使していた。貿易価格や支払いシステムを支配していたソ連は、ルーブルが金との交換性がないことを前提に、コメコンの衛星諸国を搾取したのである。

 もしも、莫大な請求権を持っている日本やヨーロッパの国々が、債権国の伝統的な特権に従い、(一九二〇年代のアメリカがイギリスその他の同盟国に対して振舞ったと同じように)アメリカに対して主要な企業や美術館の所蔵品を投げ売りするように迫ったどうであろうか。しかし、日本もほとんどのヨーロッパ諸国も、この債権国としてのカードを使わなかった。逆に日本は、まるで債務国のように振舞い、八〇年代の中ごろ、アメリカの不自然な金利引き下げ要求を、飲んだのである。その結果、日本の財政は借金漬けとなり、株価や地価が暴騰し、バブル時代に突入した。そしてバブルが弾けた後遺症に、我々は現在も悩まされているのである。


(五)世界最大の対外純資産国家日本の予想される陥穽

 日銀の調査月報によると、〇一年末の日本の対外純資産は一七九兆三〇〇〇億円(前年度比三四・七%増)となり、過去最高を記録して、九一年以来一一年連続して世界一の債権国となっている。

 これに対して、米商務省が〇二年六月二八日に発表した〇一年末の国際投資統計によると、外国政府・企業等が保有する米国内の資産(米国の債務)は、二・七%増の九兆一七二〇億ドルであったのに対して、米国が外国に保有する対外資産は、六・六%減の六兆八六二九億ドルに留まった。その結果、米国政府・企業等が外国に保有する〇一年末の「対外純債務残高」は、前年比四五・九%増の二兆三〇九一億ドルと大幅に悪化し、世界最大の債務国アメリカは、ストックとしての負の財産を益々増加させつつあることが解る。

 更に米商務省が〇二年九月一二日に発表した〇二年上期(一~六月)の経常収支の赤字額は、累計で二四二四億一三〇〇万ドル(前年同期比で一七・一%の増加)となり、上半期ベースで、過去最大の赤字額を計上した。フローとしての経常収支においても、アメリカは赤字を益々増加させつつあることが憂慮される。

 アメリカは、政府も企業も個人も、能力以上にカネを使い、豊かな生活をしていることになる。アメリカ経済の本質は、商品を輸入により海外から供給させ、赤字国債を海外政府に消化させることにより、資金を海外から供給させる構造に他ならない。冷戦終結後も、アメリカは湾岸戦争で多国籍軍の中核となり、コソボ紛争でもNATO軍の主力として参戦した。現在もイラク戦に供えて、大量の軍事力をイラク周辺に集結させている。膨大な軍事支出を賄うために、アメリカは赤字国債に依存せざるを得ないが、赤字国債のかなりの部分は、アメリカ人の貯蓄ではなく、日本を初めとする諸外国の資金によって消化しているのが現状である。

 国の対外債務が増加していくと、その借金に対する利子の支払いが増え、受取り利子よりも支払い利子の方が大きくなることは必至である。アメリカの場合、投資収益収支がマイナスに転じたのは九八年からである。〇〇年においては、海外投資からの受取りが三五二八億ドルであるのに対して、外国への支払いは三六七五億ドルとなった。

 ※ 諸外国の対米直接投資の収益性が二・四八%に対して、アメリカの対外直  接投資の収益性は六・〇五%と、約二・四倍の高収益率を誇っている。しか  し、それにもかかわらず、投資収益収支がマイナスに転じている点に、注目  しなければなるまい。

 しかしアメリカといえども、際限なく借金を累積し続けることは不可能であろう。お金の流れと経済の実態とは、いずれ調整されなければならない筈である。その調整の代表的なシナリオを予想してみることは、日本のような最大の対外純資産国にとって、極めて大切なことと思われる。

 第一のシナリオは「債務返済の拒否」である。アメリカは一九世紀に、イギリスに対して鉄道債の支払いを拒否したことがある。もしも、対外債務の支払いをアメリカが拒否すれば、ドル・レートが暴落して大不況を招き、世界金融は大混乱を引き起こすことになろう。

 第二のシナリオは、インフレーションである。アメリカ経済の健全性を損なうことを覚悟の上で、経済をインフレに誘導し、ドルの価値を暴落させ、アメリカ政府の実質的な債務を軽減する方法である。日本などの債権国が大きな損失を被ることは必定である。

 第三のシナリオは、急激なドルの切り下げを断行する方法もある。アメリカ国債はドル建て債券であるから、ドル・レートの大幅で急激な切り下げは、日本とヨーロッパのドル建て債券の保有国に、もっとも大きな打撃を与えることになろう。最大の対外資産を保有する日本は、そのほとんどがドル建てであるから、ドル切り下げは日本に甚大な損害を与えることになり、日本の富みは一瞬にして収奪されてしまうだろう。
 
 第四のシナリオは、アメリカの国内需要の抑制である。しかし消費を喚起することで国内景気の浮上を図ってきたアメリカが、このようにIMF(国際通貨基金)の緊急対策のような政策を上手に実施できるかどうかは、甚だ疑問である。

 第五のシナリオは、何も手を打たずに放置することである。つまり現状の問題を放置しても、今まで通り外国から資金が大量にアメリカに還流するというシナリオである。このシナリオは、ドルという基軸通貨が喪失してしまう危機を回避するために、債権国がアメリカにやむを得ず融資を継続する方が好ましいという債権国の合意によってのみ可能となる。そしてこのシナリオは、ドルに変わる基軸通貨が永久に登場しないという前提に立っている。
 しかし現実には〇二年一月から、欧州連合の加盟国のうち、経済通貨統合に参加している一二ヶ国で、ユーロ貨幣が共同通貨として流通し始めたので、将来は世界各国の外貨準備高に占めるユーロの割合は、ドルと同じくらいになることが期待されている。また円の地位は、ドル、ユーロに比べて相対的に低いと言われているが、日本はアジア諸国などに対して、円・ドル・ユーロなどを組み合せた「通貨バスケット」方式の為替制度を導入することを提案している。これらの動きは、基軸通貨としてのドルの地盤沈下を前提にした動きとも考えられる。いずれにしても、金との交換が保証されない一国の通貨が、基軸通貨として信用を保ち続けることは不可能であるから、将来はドル、ユーロ、円などの複数の通貨が、競争原理を介在させながら、基軸通貨の役割を分担することになろう。


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