本朝徒然噺

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ラグビー日本選手権

2005年02月12日 | つれづれ
ラグビー日本選手権を観に、秩父宮ラグビー場へ行った。

第一試合のNEC対福岡サニックスの試合を途中から観て、その後、お目当ての早稲田大学対トヨタ自動車の試合を観た。

以前の記事でも書いたが、この日本選手権で学生が社会人に勝ったのは、1988年に早稲田が東芝府中を下して日本一に輝いたのが最後となってしまっている。
社会人選手は体格もいいし力もあるので、学生はなかなか勝てない。
しかし、今年の早稲田はかなり力をつけていたので、「もしかしたら」と期待が集まっていた。

試合開始後、早稲田はペナルティーゴールで先制点を決めたが、なかなかトライを奪えなかった。
ドロップゴールでの得点を狙った場面が何度かあったが、失敗してしまった。
後になって考えてみると、このドロップゴールが成功していれば、ひょっとすると勝てたかもしれない。
ほかにも、せっかく相手ゴール目前まで行っているのにちょっとしたミスや反則でチャンスを逃してしまった場面が何度かあった。それが残念だった。
ラグビーは、ちょっとしたことで一気に形勢が逆転してしまうスポーツであり、それが面白いところでもある。

しかし、体格のいい選手がそろい、外国人選手が何人も入っている社会人チームを相手に、よく守っていたと思う。すばらしいディフェンスだった。
社会人チームが学生相手にあれだけ本気になっていたのも、早稲田にとっては名誉なことだと思う。
途中、トヨタの選手のなかにフェアプレー精神にあるまじき行為があったのが残念だったが、全体的にはとても良い試合だったと思う。

試合後、涙を流しながらグランドを出る早稲田の選手を、トヨタの選手が肩をたたき激励しながら見送る様子が、とても感動的だった。
学生ながら社会人に善戦した早稲田に、トヨタの選手もエールを送ってくれたのだと思う。
これが「ノーサイドの精神」のすばらしいところである。

社会人の壁は厚いかもしれないが、今年の経験をバネにして、また来シーズンもがんばってほしい。
大きな相手に対してひるまず、精一杯ぶつかっていく早稲田の選手に、大きな感動と勇気を与えられた一日だった。
アカクロジャージ、バンザイ!


ちなみに、テレビなどの報道でご存じの方も多いと思うが、この早稲田対トヨタ自動車の試合のテレビ中継に関してすったもんだがあったようだ。
当初、NHKが試合の生中継を予定していたのだが、日本ラグビー協会と協賛企業である朝日新聞の契約で、レフリーやタッチジャッジのジャージに朝日新聞のロゴを入れることになったので、「企業名の過度な露出を避ける」ため、NHKが生中継をとりやめることを発表したのだ。
日本ラグビー協会が事前にNHKの了承を得ないまま事を進めてしまったのもまずかったらしい。結局、直前になって日本ラグビー協会が落ち度を認めたため、予定どおり生中継をすることが決まった。
生中継をすることに落ち着いたのが直前だったため、中継が行われたことを知らなかった人も多かったようだ。

たしかに、日本ラグビー協会の落ち度もあったのかもしれないが、NHKは、民放とちがって「視聴者からの受信料と税金で番組を運営している」放送局である。
だからこそ、最も視聴者のことを考えて番組制作をしなければいけないのではないのか。
「企業名の過度な露出を避ける」などともっともらしい理由をつけている場合ではない。
そりゃあ、民放の場合は、スポンサーのライバル会社の企業名を露出させたら大問題だが、NHKの場合はスポンサーがついていないのだから、企業名が出て来ようがどうしようが関係ないと思うが。

東京にいれば、スポーツの試合でも芸術的なイベントでも、比較的簡単に見ることができる。
しかし、地方にいる人にとっては、テレビでの中継が大きな頼りなのだ。
録画中継で見ることもできるのだろうが、やはり、リアルタイムで見る感動とはちがうと思う。

情報通信網がこれだけ発達した現代、本当にその恩恵を必要としている人たちのことを考えたら、企業同士のつまらないプライドなど、捨てるべきではないのか。


余談だが、NHKには歌舞伎の生中継ももっとやってもらえるといいのに、と思う。
地方にいると、例えば襲名披露興行などは、東京から一年くらい遅れてしまうところもある。
それに、地方の場合、チケットも高くなるし、すぐに売り切れてしまったりして手に入らないことも多い。
もっと生中継をしてくれれば、地方にいる人たちも感動を共有できる場が持てるのに。
それが、日本の文化水準のさらなる向上にもつながるのではないのだろうか。
番組を粗製乱造する前に、メディアの使命とは何なのか、もう一度よく考えてほしい。
私たちの受信料と税金を、むだにしないでください。