マグロチャンピオンの料理道場

人気バラエティー番組、TVチャンピオンの「マグロ料理人選手権」優勝者が、本格料理を分かりやすく教えるブログ。

魚やすの新メニュー(1)「鯵のなめろう魚やす風」

2012年12月23日 | 魚やす(UO-YASU)の料理)
バンコクは雨季が終わり、本来は11月~2月は気温が下がり過ごしやすくなるのだが、今年は12月も年末に近づいているというのに毎日暑い日が続いている。

やはり地球の温暖化が進んでいるのだろうが、また、バンコクが洪水の被害を受けなければよいと思う。

さて、しばらくブログをお休みしていたが、このブログを見にきてくれた方も多いようで感謝の気持ちでいっぱいだ。

約1か月も掛かってしまったが、うちの店のメニューにタイ語の料理名を加える作業と、幾つかの新商品も作ってみたので、少しづつ紹介して行こうと思う。

下がタイ語の料理名を加えた「お刺身」のページだが、同じように他の料理のページの合計でディナーメニューだけで12ページとなり、ランチメニューも加えると18ページ分の料理をタイ語に翻訳する作業は思った以上のたいへんな作業になってしまった。



日本語の料理名をタイ語に翻訳するというのはなかなかシンドイものだが、今回、改めて思ったのは日本語では魚の数え方が一匹だったり一本だったり一条だったりするし、カニは一杯、ヒラメやカレイは一枚だったりして魚によって数え方が違うが、タイ語ではサンマでもアジでもカニでもヒラメでも「ヌントワ」と数える。

これは英語でも同じで魚によって数え方が違うことはなく、刺身用なら「a slice of」、フィレにした場合には「a fillet of」、また、ブロックのような塊なら「a chop of 」というように切り方によっての区別はあるが、魚の種類によって数え方が違うことはない。

ふと疑問に思ったのは、たとえばサンマやアジやイワシなどは、「一匹」と数えるのがいいのか?または、「一尾」と数えるのがいいのか?

そこで、魚の数え方について調べてみたところ、生きている間は「一匹」と数え、死んでからは「一尾」と数えるのだという。

カニの場合も同じで、生きている間は「一匹」と数え、死んでからは「一杯」と数えるとのことだ。

これを知った時には唖然とする思いだった。

今まで何十年も水産の仕事や料理の仕事をしてきたが、今になって初めて「生きている間と死んでからの魚の数え方が違う」ということが分かったのだ。

でも、なんとなく納得できなくて、「江戸料理」の本や以前にも話をした江戸時代の「豆腐百珍」という豆腐料理のレシピ本を調べてみたところ面白いことが分かった。

それは、江戸時代は魚は「一匹」や「一尾」ではなく「尾匹」(びひき)で数えていたのだ。

また、中国では魚一匹は「一条(イーティアオ)」と呼ぶが、たとえば、サンマやサヨリなどの長い魚は中国の影響を受けて、一条とも呼んでいたようだ。

つまり、生きている間は「一匹」と数え、死んでからは「一尾」と数えるのは大正時代に入ってからで、マスコミが小さい動物を「匹」、大きな動物を「頭」と数えるようになったので、その影響も大きいようだ。

魚一匹(一尾)は正確には「一尾匹」と数えるのだろうが、これからはなるべく生きている魚は「一匹」と数え、死んでからは「一尾」と数えるようにしようと思う。

さて、今回は「アジのなめろう魚やす風」を紹介しようと思う。

アジに限らず、サンマなどでも「なめろう」を作るが、光物の魚などちょっとクセのある魚に味噌や生姜やシソなどを加えて包丁でたたいた簡単なこの料理は、日本酒の肴にはもってこいだろう。

この「なめろう」という語源だが、包丁で叩くことによってなめらなか食感になるので「なめろう」という説や、皿を舐めるくらいに美味しいので「なめろう」と言うなどの説がある。

「魚やす」の「アジのなめろう」は信州みそと八丁味噌と2種類の味噌を使うのと、たくわんを細かく切って加えるのと、ヤリイカを小さく切って加えるのが特徴で、いろいろな食感と味が口の中で広がり、いつ食べても飽きない味だと思う。

それでは早速、作ってみよう。

◆「アジのなめろう魚やす風」の作り方。

<用意するもの>

写真手前の左から「大葉シソの細切り」、「アジ」、「ヤリイカ」(5~7㎜角に切る)。写真中央の左から「万能ネギの小口切り」、「「生姜のみじん切り」。写真奥の左から「たくわん」(5㎜~7㎜角に切る)、「信州みそ」、「八丁味噌」。

<作り方>

①アジを刺身用におろして皮を剥き、小骨を取って小さく切る。


②味噌(2種類)を加えて包丁で叩く(食感が残るようにし、叩きすぎないように注意する。)


③ボウルや器に移し、生姜のみじん切りを加える。


④万能ネギの小口切りを加える。


⑤小さく切ったたくわんを加える。(たくわんは甘くない物を使う)


⑥小さく切ったヤリイカを加える。


⑦スプーンなどでよく混ぜ合わせる。


⑧皿に盛り、大葉シソの千切りを天に盛って完成。

この「アジのなめろう魚やす風」だが、これに少量のゴマ油と炒りゴマを加えてかき混ぜて、熱々のご飯を丼に盛ってから上に乗せて、中央にくぼみを作って卵黄を乗せると「アジのなめろう丼」になる。(お好みですし飯でもOK)

この「アジのなめろう丼」は絶品なので、新鮮なアジが手に入った時に、ぜひ、作って食べてみて欲しい。

さて、次回もアジを使った新メニューの話をしよう。