我が家では、新聞を3紙とっています。
一紙は主人を中心とする家庭としての新聞、一紙は家族全員のためにとジャパンタイムス、もう一紙は長男のお気に入りのS紙です
これは、息子の浪人中からずっと続いていることで、最近では、3紙の第1面の記事が違ったり、同じトピックスでも、全く違う報道の仕方をしていることが確認できたり・・・と、マスコミとは言えども、個性の違いを実感できて、なかなかおもしろいものです
1週間ほど前、S紙の1面に、大きく「涸沢カール」の紅葉の写真が載っていました。涸沢カールとは、北アルプスの穂高連峰の中にある、すり鉢状の場所の名前です。きっとどんな人も、一度は写真や何かで見たことのあるところでしょう
何とも美しく紅葉したダケカンバやナナカマド・・・穂高連峰をバックに、燃え立つようなすばらしい景観です そろそろ穂高山頂には雪が降り、麓の山小屋も営業を終わるころ・・・
私は小学生の頃に、夏の涸沢には2回、春の涸沢には1回、両親ととも北穂高にいくベースの地として訪れたことがありましたが、それ以降、登山を止めてしまった私には、そこは「写真で見る」だけの地になっていました
しかし、一昨年、夫と一緒に、また夏山を再開した私は、昨年、夫が槍ヶ岳に行っている間、一人で30数年ぶりに涸沢カールまで登りました
むかしは、身が軽かったせいか、スイスイと涸沢まで登ったという記憶しかなく・・・ 楽に涸沢まで行ける気がしていた私は、途中で青息吐息
涸沢は断念して、「優雅な中年登山」の定宿にしている徳沢園に引き返してしまおう、とは思いませんでしたが、年齢よりも体力よりも、自分の体の重さを実感した登山でした
今年の夏は、夫と二人、念願の「涸沢にテントを張る!」を計画をしていましたが、例の沖縄での自転車事故があり、残念ながら、その夫の夢はおあずけとなりました
小学校入試の時期である秋に、私が「優雅に秋を楽しむ」ということは、立場上願ってはいけないこと、ではあるのですが、いつかは、紅葉の涸沢に立ってみたい・・・そう考えています
さてさて。
その日は、私は朝から、新聞の1面で「すばらしい秋」を感じ、とても豊かな気分で家を出ました
吹く風がとても心地よく、紅葉にはまだまだ早い都会ではありますが、やはり「秋」を自然の中に見つけたく、いつもとは違う、見晴らしの良いほうの道を歩きました 駅までのんびりと歩いて10分。最寄りの私鉄の駅は、小高い丘に囲まれた盆地にあります。
その日、私は思い切って、新しいハンドバッグを下ろすことにしたのでした
美しい紅葉の涸沢の写真は、この時期、眠りの浅かった私の心に急速にひろがり、気持ちをとても和ませ、ふわふわ気分にさせてくれたのですねえ・・・
下ろしたバッグは、外出先で思いがけずに出会った理想のバッグでした
黒地のゴブラン織り。大きめのスクエアーのバッグには、大きめのブーケの織り柄があり、ところどころにはビーズやスパンコールがあしらわれてあります。
私は歩きながら、下ろしたてのバッグにチラチラと目を落とし、幸せな気分になっていました
ちょうど私が眼下の駅や、向こう側の丘、反対側の丘の稜線が見える、見晴らしの良いところまで来たとき、前方から坂を登ってこられた老夫婦を見つけました。 お二人は、ゆっくりゆっくり坂を上りながら、小声でお話をなさっているようでした。そのお二人まで、私は愛しく感じたものです
すれ違う時、私は思わず目礼をすると・・・思いがけず、奥様のほうからお声をかけていただきました。
「奥さん、素敵なバッグねえ 坂の下からね、ずっとお日様の光りでビーズがキラキラと光っていてね、きれいでしたよ。本当に素敵。とてもお似合いですよ」
「まあ、ありがとうございます!そう言っていただけて、とてもうれしいです。今日、下ろしたばかりで、私も気になって見ながら歩いていたんです。お恥ずかしいです」と答えました。
「ほんと、お似合いよ。お気を付けてね、いってらっしゃい」
「行ってまいります」
人の心は、絶対にささくれていたらいけませんね・・・
気持ちが優しい思いで満たされている時には、心は豊かで、すべてのことが「素敵」に感じられるものです きっとそんな時には、人は穏やかな表情で時間を過ごしているのでしょう
涸沢の紅葉が見たい・・・確かに、その場で美しい木々の紅を愛でて、冷たいアルプスの空気を感じたい・・・けれど、出来ないことを残念に思い、それをマイナスに感じたところで、なーんにも幸せにはなれません
それよりも、たとえそれが紙面であれ、思いがけずに望みのものを見て、そして空気を想像し、感じられることで、私はとっても幸せになりました
そんな小さな幸せを大事にしたからこそ、次々と幸せがやってきたのだな、と思いました
幸せは、たとえ小さくても、それはやっぱり「幸せ」ですよね。
不幸ばかりを見つけ、憂いていては、きっと小さな幸せさえも感じられない人になってしまう・・・そんな気がしました
一紙は主人を中心とする家庭としての新聞、一紙は家族全員のためにとジャパンタイムス、もう一紙は長男のお気に入りのS紙です
これは、息子の浪人中からずっと続いていることで、最近では、3紙の第1面の記事が違ったり、同じトピックスでも、全く違う報道の仕方をしていることが確認できたり・・・と、マスコミとは言えども、個性の違いを実感できて、なかなかおもしろいものです
1週間ほど前、S紙の1面に、大きく「涸沢カール」の紅葉の写真が載っていました。涸沢カールとは、北アルプスの穂高連峰の中にある、すり鉢状の場所の名前です。きっとどんな人も、一度は写真や何かで見たことのあるところでしょう
何とも美しく紅葉したダケカンバやナナカマド・・・穂高連峰をバックに、燃え立つようなすばらしい景観です そろそろ穂高山頂には雪が降り、麓の山小屋も営業を終わるころ・・・
私は小学生の頃に、夏の涸沢には2回、春の涸沢には1回、両親ととも北穂高にいくベースの地として訪れたことがありましたが、それ以降、登山を止めてしまった私には、そこは「写真で見る」だけの地になっていました
しかし、一昨年、夫と一緒に、また夏山を再開した私は、昨年、夫が槍ヶ岳に行っている間、一人で30数年ぶりに涸沢カールまで登りました
むかしは、身が軽かったせいか、スイスイと涸沢まで登ったという記憶しかなく・・・ 楽に涸沢まで行ける気がしていた私は、途中で青息吐息
涸沢は断念して、「優雅な中年登山」の定宿にしている徳沢園に引き返してしまおう、とは思いませんでしたが、年齢よりも体力よりも、自分の体の重さを実感した登山でした
今年の夏は、夫と二人、念願の「涸沢にテントを張る!」を計画をしていましたが、例の沖縄での自転車事故があり、残念ながら、その夫の夢はおあずけとなりました
小学校入試の時期である秋に、私が「優雅に秋を楽しむ」ということは、立場上願ってはいけないこと、ではあるのですが、いつかは、紅葉の涸沢に立ってみたい・・・そう考えています
さてさて。
その日は、私は朝から、新聞の1面で「すばらしい秋」を感じ、とても豊かな気分で家を出ました
吹く風がとても心地よく、紅葉にはまだまだ早い都会ではありますが、やはり「秋」を自然の中に見つけたく、いつもとは違う、見晴らしの良いほうの道を歩きました 駅までのんびりと歩いて10分。最寄りの私鉄の駅は、小高い丘に囲まれた盆地にあります。
その日、私は思い切って、新しいハンドバッグを下ろすことにしたのでした
美しい紅葉の涸沢の写真は、この時期、眠りの浅かった私の心に急速にひろがり、気持ちをとても和ませ、ふわふわ気分にさせてくれたのですねえ・・・
下ろしたバッグは、外出先で思いがけずに出会った理想のバッグでした
黒地のゴブラン織り。大きめのスクエアーのバッグには、大きめのブーケの織り柄があり、ところどころにはビーズやスパンコールがあしらわれてあります。
私は歩きながら、下ろしたてのバッグにチラチラと目を落とし、幸せな気分になっていました
ちょうど私が眼下の駅や、向こう側の丘、反対側の丘の稜線が見える、見晴らしの良いところまで来たとき、前方から坂を登ってこられた老夫婦を見つけました。 お二人は、ゆっくりゆっくり坂を上りながら、小声でお話をなさっているようでした。そのお二人まで、私は愛しく感じたものです
すれ違う時、私は思わず目礼をすると・・・思いがけず、奥様のほうからお声をかけていただきました。
「奥さん、素敵なバッグねえ 坂の下からね、ずっとお日様の光りでビーズがキラキラと光っていてね、きれいでしたよ。本当に素敵。とてもお似合いですよ」
「まあ、ありがとうございます!そう言っていただけて、とてもうれしいです。今日、下ろしたばかりで、私も気になって見ながら歩いていたんです。お恥ずかしいです」と答えました。
「ほんと、お似合いよ。お気を付けてね、いってらっしゃい」
「行ってまいります」
人の心は、絶対にささくれていたらいけませんね・・・
気持ちが優しい思いで満たされている時には、心は豊かで、すべてのことが「素敵」に感じられるものです きっとそんな時には、人は穏やかな表情で時間を過ごしているのでしょう
涸沢の紅葉が見たい・・・確かに、その場で美しい木々の紅を愛でて、冷たいアルプスの空気を感じたい・・・けれど、出来ないことを残念に思い、それをマイナスに感じたところで、なーんにも幸せにはなれません
それよりも、たとえそれが紙面であれ、思いがけずに望みのものを見て、そして空気を想像し、感じられることで、私はとっても幸せになりました
そんな小さな幸せを大事にしたからこそ、次々と幸せがやってきたのだな、と思いました
幸せは、たとえ小さくても、それはやっぱり「幸せ」ですよね。
不幸ばかりを見つけ、憂いていては、きっと小さな幸せさえも感じられない人になってしまう・・・そんな気がしました