どんなに「自分らしさ」を写真に出そうとしても、
どうしても「撮らされる」時がある。
一瞬の自然の現象であったり、
名の知れた俳優であったり、
芸術作品であったり…。
脇山さとみさんの器を久しぶりに購入した。
物語を感じられる脇山さとみさんの作品の大ファンで、
折を見ては購入してきた。
今回もDMに載っていた器に一目惚れし、即決した。
器には松鶴堂の和菓子を載せて撮りたいとの思いだけはあったが、
いざ載せてファインダーをのぞいてみると…。
赤、オレンジ、青、黄と、色の名前だけ見ると、
サイケデリックを想像するのに、
実際の器はとてもシックでノスタルジックで
調和が取れている。
じっと眺めていると、色と色がその日の料理を楽しみながら、
会話を弾ませているように思えてきた。
器が物語を紡いでいる。
少しカメラの角度を変えようが、
ピンをずらそうが、
光の位置を変えようが、
どこからどう撮ろうが、
ファインダーの中には、
脇山さとみさんの作品が静かに穏やかにそこにただ、あった。
僕の小さな想像力でどんな工夫をしようにも、
シャッターを押したのは、
器の魅力、
器の独創性、
器のもつ物語だった。
すべて器に撮らされてしまっていた。
「さあ、いつでもどこからでも撮ればいい」と、
大いなる母のように器が微笑んでいるようだった。