患者さんには説明できない東洋医学用語

Q.なんとなくわかっているけれど、人には説明できないIT用語を教えてくださいというネット上のアンケートがありました。
IT業界は次々と新しいものがでてきてついていけないところがあってなんとなくどころか意味のわからない用語がほとんどです。
そういう意味では東洋医学用語は新語が出ることもないので問題ないと言いたいところですが説明となるといつも難儀してます。
一番説明困難な語が“気”です。
患者さんに説明を求められることは少ないですが、東洋医学に矯味があるお医者さんが、「“経絡”は目に見えるのか？」ということを尋ねられたことがあります。
経絡とは体の中を巡行する“気”の経路です。
たぶん経絡流注の図をご覧になったのではないかと思います。
そこで神経経路とは違うことを説明するために足三里の刺激で消化器系の病機を治すことを言うと、やってみてくれと言われるのです。
突然そういうことを言われても悪くもないところに刺激を与えても体感できないので疑いが残るだけではないかと思ったのですが、そのときは口より先に手のほうがすでに動いていました。
仰向けの状態で足三里をぐっと圧してしばらくすると、「足の前を上って胃のほうに響いてきたと言われるのです。さらに胃が熱くなってきたと言われました。結局、消化器系の病気があったようです。

学生のころ鍼を先生にしていたら「気が漏れているじゃないか！」と叱責されたので思わず鍼をしているところを手で囲みました。
今　考えれば先生もよく笑わずに指導してくださったと思います。

しかし"気"は見えるという鍼灸師がおられるみたいで、鍼を抜いた瞬間青白い気体が出てきて天気のよい日はそれがよく見えるというのです。
そういうのを実しやかに言われると自分自身がまだ未熟じゃないのかと落ち込んでしまいます。
とはいっても鍼灸師同士の会話は"気”を補って...。」とか「肝気が鬱渋して..、肝が炎上して...」とさも実体があるように扱われているので一般人から見たら“気”が見えるというのと同様、滑稽に映るのではないかと思います。

漢方を本気で学ぼうとされているお医者さんが東洋醫學の基本である“陰陽”でひっかかるみたいで、質問されても明確に応えることができません。いろいろな場面で出てくるので漢方を学ぶ前には頭の中から現代医学を一旦　消去する必要があると思います。そういう意味では東洋医学を学ぶにあたり現代医学の知識も“０”からだったので、医療知識がある人よりらくだったのかなとも思います。


またよく尋ねられるのが「五臓六腑」です。
これらの臓腑名は応えられますが、六臓あるのになぜ六臓六腑でないかというのはわかりません。

東洋医学に矯味のある医療従事者から「三焦」のことを尋ねられたことがあります。
副腎という説もありますが五臓六腑の中で唯一　実体がないので返答に困ります。

「鍼は薬もついてないのになぜ効くのですか？」という質問はたまに出ますがこっちとしては長引く症例では「なんで効かないのだろう？」と思うのでギャップはありますね。

東洋医学というのはわからないものだらけですが、"99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方"竹内 薫　著には飛行機がなぜ飛ぶのかというのも未だにわかってないということが書かれてます。結局、世の中わからないことだらけです。
しかし　わからないというのが人間の探求心を旺盛にし向上するのだと思います。

中年風府になぜこの人と結婚したんだろうと言われる方がおられます。
好きだったからだと思うのですが、なぜ好きになったのかというと説明に困られます。
相手のことがわからないから矯味を持ち好きになるのだということを言われる評論家がおられますが、これは卓見だと思います。
相手のことがすべてわかってしまうと矯味もわかないし、そうなるとつまんなくなってしまいますね。


妻は関東の人間ですが広島在住の関東人の転勤族の主婦と話しをしたときに、
「よく広島に嫁いだね、悩まなかったの？」と聞かれたみたいで、
返答に困っていたらその主婦が
「考えたら来てないよね」
と言って、妻も「そうよね」と納得しているのです。
わからないから来たということでしょうが、どう理解していいのか...。

話は元に戻りますが東洋医学というのはやる方も仮説でしか説明できないし治療も定型的ではないという奥の深さが治るという期待に繋がるのではないかと思います。


ちなみに、「なんとなくわかっているけれど、人には説明できないIT用語」のアンケート結果は、
1位. Wi-Fi(ワイファイ)
2位.　プラチナバンド
3位.　3G、4G
4位.　インタフェース
5位.　モデム
という結果になってました。