旅してマドモアゼル

Heart of Yogaを人生のコンパスに
ときどき旅、いつでも変わらぬジャニーズ愛

短編集「Loving YOU~愛の媚薬をベッドの中で~」

2011-06-12 | 管理人著・短編集(旧・妄想劇場)

 目を覚ました途端、脳みその奥から突き上げるような、ズキンズキンという痛みが私の頭を襲った。
 「イタぁ……」
 思わず額を押さえた私の視界に、ちょっと怒った表情をした彼が入ってきて言う。
 「自業自得やろ」
 「……起きていきなしそれ?」
 「今日はお仕事が休みで良かったですね」
 チクリと皮肉をこめた言葉を放って、彼は視界から消えた。にべもない。二日酔いの頭痛がさらに増しそうだ。
 それにしても、この二日酔いはひどい。相当飲んだのは間違いないのだろうが、記憶の半分以上が飛んでいる。
 ズキズキ痛む頭を、隣で寝ている彼に向けた。
 「私、なんかした?」
 「なんも」
 「ウソ」
 「ウソ言うてもしゃあないやろ。ヒナと比べたら、お行儀のいい酔っぱらいやで」
 「村上君が比較の対象だなんてショック……」
 「どこまで覚えてるん?」
 「うーん……」
 「俺が店に来たんは?」
 「なんとなく。一緒に店を出たのもなんとなく」
 「何話したとか、そうゆうのんは?」
 「タカヒロと話したことは覚えてるんだけど……」
 そう。彼が店に来る前、私はタカヒロ、つまり美奈子と話をしていた。その時の記憶だけは鮮明だ。

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 「なぜ、黙ってたの?」
 琥珀色のグラスが私の前に置かれた。グラスの中の氷がカランと音を立てて揺れる。私はそのグラスを手にして、上目遣いに相手を見て答えた。
 「言わなきゃいけなかったかな?」
 「知ってたわけでしょ。本人からいきなり聞かされた時の私の気持ち、わかる?」
 「偶然なんだから、気にする方がおかしいわよ」
 「そうかもしれないけれど、彼だって、あれ?聞いてないのって顔をしてたわよ」
 一方的に責められるのは好きではない。だいたい責められるようなことじゃないのに。
 「でも私には、あなたはずーっと『タカヒロ」なんだもん。『美奈子』じゃなくて」
 タカヒロ、もとい今の名前は美奈子だが…は、私の前に置いたおつまみの皿にアーモンドを追加しながら、ため息をついた。
 「なるほど。だから気づかなかった、と言いたいわけね」
 「気づかなかったわけじゃないけど、彼と会う前からその名前にしてたわけだし、別に恐縮するようなことじゃないと思うんだけど」
 私はアーモンドを口の中に放り込んで聞いた。
 「彼、何て言ってた?」
 「あのぉ、すみません」彼の口調を真似て言う。「美奈子さんって、僕のお母さんとおんなじ名前なんですよね。最初にお会いした時に聞いてびっくりしましたよ。あいつから聞いてました?」
 美奈子は恨めしそうな表情で私を見た。
 「私、聞いてませんけど、何か?」
 「って言ったの?」
 「そうは言わない。でも、あなたのことだから話した気になってたのかもって言ったわよ。そうしたら『ああ、あいつ、そういう所ありますよね』ですって。あなたったら、大学の時から全然成長してないのね」
 「しょうがないじゃない。あれはもう話したなって思っちゃうんだもん」
 勝手に自己完結しないでよね、と美奈子はカクテルを作り始めた。
 バー『ポワゾン』。美奈子が3年前にオープンした店だ。アルコールを出す店としてどうかと思う名前だが、毒気を含んだセンスはいかにも美奈子らしい。タカヒロだった時から、彼の言葉は私にとって『良薬は口に苦し』を地でいくものだった。
 いつもなら常連で賑わう店内には、今は私たち2人しかいない。後から彼が来るので、気を利かせた美奈子が開店前から『closed』の看板を出してくれたのだ。他人の視線を気にせず、彼と2人で会える貴重な店の一つだ。
 「私、思うんだけど」
 と、私はカクテルを器用に作る美奈子のほっそりした手を見つめた。女性よりも女性らしい手。細い指の先にある爪は、マニキュアをしていなくても桜貝のように綺麗な色をしている。
 「人一倍人見知りなはずの彼が、あなたにはすぐに懐いたじゃない。お母様と同じ名前だからかなって思ってたんだけど、最近、あなたのキャラもあるんじゃないかなって思ってる」
 「どういう意味?」
 「タカ…美奈子って昔っから、お母さんみたいだったもん。私なんて全然頭が上がんなくて」
 「私、そんなに家庭臭を漂わせてる?」
 「そういう意味じゃなくて。一緒にいて安心するっていうのかな」
 「使い古されたプロポーズの言葉みたい」
 「そうだね。タカヒロが本当に女だったら、彼、プロポーズしてるんじゃないかな」
 「あら、残念」
 本気とも嘘とも取れない口調だった。そして、出来たカクテルを私の前にスッと出した。頼んだ覚えはない。私の怪訝そうな顔を見て
 「新作。ブランデーベースに南国の果実をアレンジしてみたの」と説明してくれた。
 オレンジカラーのカクテルは少しとろみがあった。口に近づけた途端、ブランデーの香りと共に立ち上ってきた甘い香りに圧倒されそうになる。
 「これ、マンゴー?」
 「宮崎県産。ブランデーが負けてるでしょ」
 口に含むと甘さをさらに強く感じる。その圧倒的なまでの甘さを、ブランデーが必死で追いかけている。そして微かに喉を通り抜ける爽やかな酸味。これは何だろう。
 「マンゴーとパッションフルーツを使ってるの。どう?」
 「悪酔いしそう」
 「失礼な感想ね」
 「口当たりが良すぎて、飲みすぎちゃいそうってこと。美味しいよ」
 私はさらにひと口飲んだ。「この感じ、クセになるかも」
 「恋愛みたいにね」
 なるほど。甘さと酸いの先にある酔うほどの悦楽。一杯飲み干した頃には、胸の内にモヤモヤと渦巻いていた感情は、いつの間にか薄れていた。その代わり早く彼に会いたかった。
 「もう一杯、もらえる?」

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 ウイスキーボトルから最後の一滴をグラスに落とした時、木製のドアが軋んだ音を立てたのを耳にして、私はゆっくり振り返った。
 恐る恐るといった感じで開いたドアから彼が顔を覗かせて、私を見ると安堵の表情を浮かべて、中に入ってきた。
 「びっくりした。ドアに『closed』ってあったから、俺、日にち間違えたかな思て焦ったわ」
 私の隣に腰掛けて、店内を見回す。
 「貸切やん」
 「前にも、あったよ」
 「前?いつ?」
 いつだっけ?たしか……
 「去年の……秋ぐらい?」
 「えっ!そんな前?」
 「2人でここに来るのは、うん、たぶん、そう」
 「そん時も貸切にしてくれてたんや」
 そこでようやく「あれ?美奈子さんは?」とキョロキョロした。
 「帰った」
 「帰った?」
 「ついさっき。追いかける?」
 酔った勢いで、思わず口をついて出た。私って最低。男を相手にヤキモチを妬くなんて。
 彼は笑って、追いかけへんよ、と言った。
 「でも、そしたら俺らも帰った方がええんちゃう?」
 「なんで?」
 「なんでて、ここは美奈子さんのお店なんやから、俺らが勝手に使ったらアカンやろ」
 「タカヒロ、いいって言ったよ。2人で好きにしていいって」
 あえて「タカヒロ」と彼の本名で言った。そんな自分の姑息さに心の中で自嘲しながら。そして、カウンターの後ろにあるドアを指さした。
 「ベッドも使っていいって。あっでも、ソファーベッドだからエッチするにはちょっと狭いかもぉ」
 反応を見たくて、彼の顔を覗き込んだ私の頬を、彼の手が軽く叩く。
 「おまえ、飲みすぎや」
 「そう?」
 私は、オレンジ色の液体が半分残ったカクテルグラスを彼の前に滑らせた。
 「なに?」
 「新作」
 口をつけた彼は目を丸くした。
 「なんやこれ、ウマいけどめっちゃ甘い」
 「宮崎のマンゴーだって」
 「マンゴーはわかる。あと何?このお酒」
 「ブランデー」
 「うわ、パンチ効きすぎや」
 あのね、と彼の耳元に口を近づけて囁いた。「『愛の媚薬』」
 「これ?」
 「そう」
 「名前。考えたのおまえやろ」
 「うん。なんで分かったん?」
 「美奈子さんやったら、そんなセンス悪い名前つけへんもん。おまえがべろんべろんに酔っぱらったアタマで考えそうなダッサイ名前や」
 「ヒドーい」
 彼の頬をつねろうとして、だけどしっかりブロックされて、手首を掴まれた。
 「おまえ、言うけどな、ホンマ酒臭いで。もうええやろ。うちに帰ろ」
 「やだ」
 「店の鍵は?預かってる?」
 「やあだって言ってるじゃん」
 相当めんどくさい女になってるなと酔った頭でも自覚しながら、私は彼の首に両腕を回した。
 「ここで、して」
 彼は頑として首を横に振った。
 「ここで、したいの」
 粘る私の腕を振り払うように、彼はスツールから降りて、私の手を握った。
 「うちに帰ろ、な」
 ぎゅっと私の手を押さえつける彼の指の感触に、不意に泣き出したくなった。私、いったい何を意固地になってるんだろう。
 その時、「女性」として完璧なタカヒロの、いや、美奈子の顔が脳裏にチラついた。
 ヤダ、と小さな声で主張した。その声が震えていることに、私自身が驚いた。
 「もう、なんやねん」
 なだめるような彼の声がして、気づいた時は彼の胸の鼓動を耳にしていた。私の背にまわされた彼の腕の力強さが、気持ちを静めていく。彼はまるで、駄々っ子をあやすように、私の頭を撫でながら、低い声で諭すように言った。
 「あのな、どんなに美人でも美奈子さんは男や。おまえと比べるわけないやろ」
 そんなことわかってるよ。わかってる。そう。私が本当に気にしている相手は、男の『美奈子』じゃない。
 同じ名前を持つその人は、彼の心の中で、たくさんの思い出の中で、生涯忘れられることはない唯一人の……
 零れ落ちそうな涙を堪えた。ここで泣いても、彼に涙の意味はわからないだろうし、繊細な彼の気持ちを動揺させてしまうだけ。
 そんな私の気持ちを知ってか知らずか、彼が言う。
 「それにな、いっくらストライクゾーンが広い俺でも男はないで。ぜったいない」
 それはたしかに、あまりに当たり前すぎて、私は思わず笑いだした。笑って、彼の背中に腕を回した。
 たとえどんなに強く抱き合っても、互いの気持ちは繋がっていると信じても、それでも、不安と常に背中合わせなのが、恋なのかもしれない。
 帰ろうか、その言葉にようやく素直に頷いた。歩き出そうとすると、足がふらつく。かなり酔ってるんだな、と自覚した時、目に見える景色が急下降した。思わず自分が小さく縮んだのかと錯覚するほどに。
 彼が私の名前を呼びながら、床に崩れ落ちた私の腕を掴んで引き上げようとしているのを、私は朦朧とした頭でぼんやりと見つめていた。

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 「店で俺と話したこととか、ひとっつも覚えてないんか」
 私は彼と何を話したんだろう。彼が店に来た時と、彼に抱えられるようにして店を出た時の記憶はあるのに、店の中で2人きりでいた時の記憶だけが、ゴッソリ抜けている。まるで、不思議の国から戻ってきたアリスが、そこで体験したことを覚えていなかったように。
 「家に帰ってきてからは?自分で風呂入ったことも覚えてないとか?」
 私は首を振った。酔って帰ると、自分でも知らないうちに風呂に入り、パジャマに着替えてベッドで寝ていた、という状況は時々ある。
 「たぶん、体が習慣で覚えてて無意識にやってるんだと思う……家に着いたら風呂入る、それからベッドに入る。誰かさんの教育のおかげだね」
 彼の手が無言で私の頭をトンと軽く叩いた。
 「痛いって」
 痛いのは彼の手じゃなく、二日酔いの自分の頭の方だが。
 「狭すぎなんやな」
 「何が」
 「ベッド。まあソファーベットよりマシやけど」
 いったいどこのソファーベットと比較してるんだろ。
 「だって、これシングルなんだから狭いに決まってるじゃん。一人用ベッドに二人だなんて」
 「そやな」
 もちろん、ダブルベッドに買い換えることを今までに考えなかったわけじゃない。でも、彼がいない夜、そのベッドで一人過ごすのは、とても耐られそうになかった。それは、一人旅で広いダブルベッドを悠々使うのとは訳が違う。
 ふと気づくと、彼が私の髪に触れているのがわかった。
 お互いに仕事が忙しくなってきて、やっと2人で過ごせる貴重な夜だったというのに、私が台無しにしてしまった。今度、彼とこうして会えるのはいつになるんだろう。
 「アホやね、私」
 後悔が自虐の言葉になって口をついて出た。
 「そんなんわかっとるし」
 隣をちらっと見て、さっきのお返しに、彼の頭をトンと小突いてみた。
 彼がため息混じりにつぶやく。
 「やっぱり狭いな。このベッド」


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ラフティングではしゃぐ横山さん、ヨシダソースに感激の嵐の横山さん、舞妓さんの登場にあげぽよ~な横山さん

もうなんでもいい。彼がやることなすことすべてが大好きでたまらない管理人です

さて。今回の短編。
母の入院・手術の合間に、気晴らしにコツコツ書きためていたものです。
書いている間は、現実をちょっと忘れられる。自分が自分の作品に助けられるとは思ってもいませんでした。

今回で2度目の登場となる「美奈子」ですが、初めて登場させた時、読者の方からどんな反応が返ってくるかなあと少々不安に思っていました。
でも、「不謹慎だ」と非難するようなコメントもなく、なんだか自然に受け入れてもらったので、胸をなでおろしていたのですが、一応、言いわけはしておいた方がいいかなと。
オマージュというわけではないのですが、考えた末に、中性的なキャラクターの彼女(彼?)ならと、お名前をお借りしました。
でも、個人的に、昔からこの名前が好きで憧れてたというのもあるんですけどね。名前に「美」ってついてるだけで、なんかちょっと得した気がしませんか?
私の本名って、特に漢字で書くと、全体的に角張っていて、色気も可愛げもない。つい最近まで、本当に嫌いな名前でした。
でも、親が一生懸命考えてつけてくれた名前なので、大切にしたいとは思うのです。
とはいえ、もう少し柔らかい感じを出したくて、最近は名前だけひらがなで書くようにしてます。

さて。サブタイトルのエロさはほとんどない今回の作品ですけども、いつも彼に気をつかってばかりな「私」をちょっと遊ばせてあげました。これくらいの甘えとわがまま、酔った時くらいしたっていいんじゃない?と。

ところで、自分でもいつも書いてて思うんだけど、この短編、いつまで続けるのかなあ?
まあ、彼もいい歳なので、いきなし『熱愛』とか『結婚』が出てきてもおかしくはないわけで。

でも、今はまだまだ続けますよ。
だって書いてるのが楽しいんだもん(笑)


またまたいただきもの

2011-06-12 | お手軽ケータイ日記

本日で2回目のビターオレンジ。
なんとなんと、最前2列目のど真ん中という神席

私、自分ではこんな神席を、しげの舞台では取ったことないんだけど、いつもご一緒させていただく皆様に取っていただいてるんですよね。
「こんなんやってみました。」の時は、EPIさんのおかげで最前列の真ん中で。
「セミナー」の時も、やっぱりEPIさんに取ってもらった席が2列目のど真ん中。
そして今回、茶々丸のおかげで、またまた2列目のど真ん中。
私って、人に恵まれてるんだなと本当にありがたく思う。

ちなみに、今日の1部、慶ちゃんは来てませんでした
てか、あのネタバレを話しちゃダメじゃん、マッスー

間近で見た今日も、「加藤成亮」は美しくってカッコよくってめっちゃ男前で
この人の担当であることを心から誇らしく思うほどに
茶々丸とも話したんだけど、彼が30歳になった時に、ホンマに素敵な男性になってるんだろうなと思うのです。今はね、けっこう完成に近づいてはいるんだけど、でも、まだまだ発展途上。
だけど、あと数年後には、きっと雑誌の「結婚したい芸能人」特集とかで、トップ10には必ず入ってるんじゃないかな。間違いなく。

ああ、なのに、なのに。
なんで私の心は、黒い人に向かっていくんやろなあ・・・

あ、話がタイトルからズレましたけども。

今日、茶々丸から、可愛いプレゼントをいただきました。



ラブリー

っても、誕生日でも記念日でもなんでもないんだけどね(笑)
あ、そーか、最前2列目の記念日か

大切に使わせてもらうね

明日は予定ないし、久しぶりにコーヒー豆でも挽こうかな。