旅してマドモアゼル

Heart of Yogaを人生のコンパスに
ときどき旅、いつでも変わらぬジャニーズ愛

舞台「噂の男」

2006-09-12 | 観たものレビュー
乾いた笑い 混沌と猥雑 漂うアイロニー

ケラリーノ・サンドロヴィッチの演出にはクセがある。
私はそのクセが割と好きで、過去にも何度か作品を見ている。
今回は出演者もまた、揃いも揃ってのクセもの揃いで
観る前からどんなストーリーが展開するのか楽しみだった。

シンプルな笑いが随所に盛り込まれながら
人間のドロドロとした醜い部分が次々と
どこか世紀末的な雰囲気を漂わせる舞台上で
まさに化けの皮がはがれるように顕わにされていく。

天上から時折聞こえてくる目に見えない観客たちの爆笑
その足下の下層で繰り広げられる醜い人間同士のエゴ

「笑い」とは不安定な均衡の上にある

なんだろうこの舞台は。
なんだかどうも上手く語れない、まとめられない。

舞台を観終わった後の感想は
「じゅん(←橋本じゅん)、最高だね!ほんと器用だよね」(もう大絶賛)
「堺さんって、ああいうヘタれマネージャー役が似合うよね」(ファンなら承知)
「橋本さとしさんってミュージカルだけじゃないんだね」(当たり前)

帰り道、口からは役者に対する感想しか出てこなかった。

観劇レポを載せるのを遅らせた理由はそこにある。
この舞台をどのように語ればいいのか分からなかったのだ。
日にちを少し置けば、「見えていたけど見えていなかったもの」が
なにか分かるんじゃないかと思っていたのだけれど・・・

思うのは、この「噂の男」という舞台は、5人の個性ある役者を
演出者ケラが、その彼らの分かりやすい“特性”(または特色)を
そのまま舞台上で展開させたものなのだと思う。
ケラさんは、彼らをどう動かすと何が起こるか、連鎖反応を“予測”する。
その予測でもってコマを動かし演出する。
役者同士の接触・非接触で何が噴出すかは役者次第。

そこに特別な演出も演技指導もなかったと感じるのは失礼だろうか。
それはないだろう。なぜならコマの5人は芸達者な人たちだから。
小細工を弄せず、自分がイメージし動かした駒の行方を見守る。

うん、いいんじゃないか。

「小市民ケーン」や「ショムニ2」の脚本を手がけた福島三郎氏の
脚本が舞台通りのものだったのか、ということは唯一気になるけれど。

最後に。
舞台の上の堺さんを見られて、わたくしは満足です♪
そろそろ古典派シェークスピアにもチャレンジしてほしいなあ。
前にもどこかで書いたような記憶があるんだけど
ぜひ、リチャード3世で。