Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

間宮兄弟

2008-02-28 | 日本映画(ま行)
★★★★ 2006年/日本 監督/森田芳光
「空気感の勝利」

モテない仲の良すぎる兄弟物語。ストーリーとしてさしたる起伏があるわけでもないのに楽しめるのは何と言っても森田監督の作り出す空気感に尽きる。日常生活の何でもない、「出来事」と呼ぶことすらはばかれる小さなひとコマに思わず笑ってしまう。些細な描写ではあるが、誰にでも描けるかというとそうではなく、日々の生活や人間の感情に対する森田監督の優れた観察眼があるからできる描写だろう。

また、兄弟の生活感を丹念に描いているが、「リアルな感じ」というのとはチト違う。食べ物や趣味に関する描き込みが非常に徹底しているため、どうしても「リアルな生活感」と表現したいところ。しかし、この作り込みは徹底したフィクションの世界。こんな兄弟いそうだけど、たぶん絶対いない。だからこそ、よくぞここまで、という細かい描写が面白いし、独創的な発想が笑いになる。

例えば、銭湯での入浴シーン。兄弟で湯船に浸かっていて、誰かが湯船から出たことでお湯が揺れてふたりが嫌な顔をする。確かにあれ、イヤだよね。二度目はゆず風呂になってて、ゆずがぶわんぶわんと顔の前で揺れたりして。寝ている時に体がビクンと動くとか、ベランダに出ているお向かいさんが誰かで吉凶を占うとか、日頃ふと気づいた面白いことをメモっておいて、全部この兄弟に当てはめてみました!的な感じ。森田監督って、コント作家になっても結構イケそうな気がする。

で、かなり地味な兄弟物語にあっけらかんとしたエッチな描写をプラスさせてるあたり、何だか若手監督が撮ったかのようなフレッシュさを感じる。バスタオルの下でパンティを付ける沢尻エリカとか太ももアップから引いてくる北川景子の寝姿とか。抜きんでた傑作ってことではないけど、今の時代の空気をしっかり捉えているし、最後まで飽きさせない展開。何だかんだ言って、森田芳光が話題作の監督を頼まれるのがわかるような気がする1本だった。