Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

フライト・ゲーム

2020-05-29 | 外国映画(は行)
★★★☆ 2014年/アメリカ 監督/ジャウム・コレット=セラ

気分転換したいとこれをチョイスするあたり、まんまと術中にはまっております。なんつってもジュリアン・ムーアのキャスティングがミソ。存在自体がミスリーディング。ありえへん!ありえへん!を連発しつつ、閉鎖空間パニック、心理スリラー、大アクションの全部盛りを結局堪能。

パラダイス・ナウ

2020-05-27 | 外国映画(は行)
★★★★ 2005年/フランス・ドイツ・オランダ・パレスチナ 監督/ハニ・アブ・アサド

自爆テロに向かうまでの48時間を濃密に描いた力作。道中、2人の青年がはぐれてしまう設定がうまい。体に爆弾を巻きつけたまま、瓦礫の街を彷徨う様子にこちらの心拍数もどんどん上がる。果たして彼はどうなるのか。息を呑んでラストを迎えた。

死を眼の前にした若者の戸惑いや心の揺れにフォーカスしているのでパレスチナ問題に詳しくなくても深く感情移入できる。自爆犯に選ばれて光栄だと言うサイード。目に見えず、体感できずとも、彼の頭の中には彼が思い描くパラダイスがある。周囲の愛情も友情も彼には何の効果ももたらさないのが悲しい。

ジョジョ・ラビット

2020-05-27 | 外国映画(さ行)
★★★ 2019年/アメリカ 監督/タイカ・ワイティティ

ヌルい。敢えてポップな演出にしているという意図はわかった上でヌルい。序盤はポップな突き抜け感がブラックジョークとして成立していたが少年の恋心が芽生えるあたりからどんどん減速。あまりに悲惨なホロコーストの事実と目の前のおとぎ話が自分の中で全く融合しなかった。

中盤に起きる最大の悲劇もジョジョの成長を見せるパーツのように感じられる。イマジナリーフレンドとの決別も凡庸。冒頭ビートルズを例にアイドルとして信奉されたヒトラーを出しておいてその偶像を彼がどう打ち破るのか見せないと回収したことにならないのでは。この設定必要だった?とすら思えた。

モリーズ・ゲーム

2020-05-26 | 外国映画(ま行)
★★★☆ 2017年/アメリカ 監督/アーロン・ソーキン

140分という長尺を飽きさせないアーロン・ソーキンの手腕はさすがだが、稼げる以外にそれほどメリットのないポーカー運営になぜモリーはそこまで取り憑かれたのか。その心理描写が弱い。この手の映画ってハラハラしてナンボでしょ。もっとエモくさせてくれよって感じで消化不良。

波乱万丈の人生をそのまま映像化するとつまらないってことがままある。本作でも父娘の確執は何度も描かれるが、それがどれほどの影を落としているのか、全然見えて来ない。140分もあるなら、そこをもっと見せて欲しかったな。ケビンコスナーだからシュッとしてるけど、まじでクソ親父なんだもん。

ルディ・レイ・ムーア

2020-05-25 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★ 2019年/アメリカ 監督/クレイグ・ブリュワー

ドリームガールズのエディ再びかと前のめりに鑑賞したがやや期待はずれ。歌にエロ漫談とエディの魅力は出ているが何せ演出にメリハリがなく、物語がどこに向かっているのかわからない。伝説の映画(らしいが)「ドールマイト」制作風景もドタバタしているばかりでノレず。

二重生活

2020-05-24 | 外国映画(な行)
★★★★ 2012年/中国・フランス 監督/ロウ・イエ

豪雨のひき逃げ事件。そして武漢の街を俯瞰で映すカメラ。一気に引き込むプロローグ。不倫ものだがベタな演出は皆無。男と妻と愛人。三者の問題に留めず、男の不実を発端に中国社会が抱える問題を浮かび上がらせる。タイトルから想像する単なる愛憎劇と思うなかれ。

顔のクロースアップが多用され、人物の感情に肉薄するも、誰もその真意が見えない。そこが殺人事件ともあいまって、ミステリアスなムードを全編に漂わせる。そして殺人犯に関する意外な顛末。ラストもロングショット。街は重苦しい何かを心に抱える人を呑み込んでいく。

タゴール・ソングス

2020-05-22 | 日本映画(た行)
★★★★ 2019年/日本 監督/佐々木美佳

いいもの教えてもらった!という気持ちでいっぱい。タゴールの歌は初めて聞いたがとりわけ人間の尊厳を歌ったものがすばらしい。街行く人々がタゴールを歌うときのその表情の豊かなこと。人々に生きる勇気を与える詩の凄みをこれほど感じたことはない。

タゴールの詩に導かれ、自立するため模索する若いベンガル人女性を追う後半もいい。そして意外にも舞台は日本へ。歌舞伎町のネオンを見つめる彼女は何を思うのか。帰国後、きっと彼女は自身の人生を力強く歩くに違いない。タゴールの歌を胸に。



タイラーレイク 命の奪還

2020-05-21 | 外国映画(た行)
★★★★ 2020年/アメリカ 監督/サム・ハーグレイブ

車内から車外へ。人物の後方から前方へ。 猛スピードで縦横無尽に動き続けるカメラが圧巻。物語が凡庸なのは玉に瑕だがスタントマンがカメラを持っているのかという程の凄まじい撮影はぜひ体感すべき。 ダッカの猥雑な街をなぎ倒すようなアクションの連続はまるで007。

シューティングゲームのように人が死ぬ映画は正直好みじゃないんですけど、撮影の凄さは堪能しました。しかし原題がExtractionなのに、なんでこういう長くて変な邦題になるんだ。

イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ

2020-05-20 | 外国映画(あ行)
★★★★ 2010年/アメリカ 監督/バンクシー

バンクシーこそ現代のジョーカーでは。何億もつぎ込む投資家、自作を報道するメディア、展覧会に群がるセレブ。全てをどこかで眺めて冷笑している。Mr.ブレインウォッシュ誕生も彼が仕掛けたジョークではないのか。アートとは何かを突きつける刺激的な1本。

落書きと言われたストリートアートが、投資対象の芸術になるまでの変遷を知るのにも最適。何と言っても謎に包まれていたバンクシーの制作シーンは必見。しかし、Mr.ブレインウォッシュよ…。自分では描かず手法はパクリ。いや、あかんやろ、まじで。これでも一躍スターになるアート界とは。全ては需要と供給なんだよね。

37セカンズ

2020-05-18 | 日本映画(さ行)
★★★★ 2019年/日本 監督/HIKARI

世界は矛盾に満ち、時に徹底的に無関心であり、徹底的に好奇心むき出しである。しかし、自分を一人の人間として扱う人に出会えるかどうか。それが鍵だ。そういう人を見極め、積極的に関わっていけば世界は広がる。束縛や搾取から自立する女性の物語として誰しも共感できる力強い作品。

HIKARI監督、本作が長編デビュー作だというのに、脇役陣の使い方が最高にうまい。そして、チョイスがめちゃくちゃツウ好みである。板谷由夏、渡辺真起子、宇野祥平。一瞬しか出ない尾美としのり、渋川清彦もすごくいい。みんな自然体の演技が板についている。

当て書きだという主演の佳山明さんの体当たりの演技の素晴らしさは言わずもがな。これから、どういう活動をされていくのだろう。

見えない目撃者

2020-05-17 | 日本映画(ま行)
★★★★ 2019年/日本 監督/森淳一

セブンや羊たちの沈黙など名作スリラーを引用しつつ、現代社会の闇を背景にアップデートした力作。次々と繰り出される(邦画に絶対的に足りない)容赦のない演出が恐ろしくも爽快。物語の突っ込みどころはあるが熱量で押し切る力がある。なにぶん、韓国映画にありがちな「おい!警察何してる!」な脚本が気にはなるが、ヒロインが圧倒的不利な状況で追い込まれていくハラハラ感が勝る。目が開いた状態で盲目を演じるという難易度の高い演技に吉岡里帆が見事に応えている。

ふたりの人魚

2020-05-16 | 外国映画(は行)
★★★ 2000年/中国・ドイツ・日本 監督/ロウ・イエ

アップリンククラウド

上海、蘇州河沿いのナイトクラブでカメラマンの僕は人魚に恋をする。しかし、彼女は自分の愛した別の女だという男が現れる…。上海を舞台にした幻想恋愛譚。少女と人魚の二役を演じるジョウ・シュンの儚さが心に残る。刹那と永遠。どちらも真実の愛。
すごくファンタジックで余韻の残る作品。フランス映画のような趣き。


ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ

2020-05-14 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★ 2015年/ベルギー・アイルランド 監督/メアリー・マクガキアン

実際の建物や家具がバンバン出てくるので建築好きにはたまらんです。ですが見所はそれだけ。
本作長年コルビジェ作とされていた住居が実はアイリーンの設計だったというスキャンダルがベース。女の才能に嫉妬した若きコルビジェ。このプロットだけでもワクワクしますよねえ。なのに、カメラはやたらとアイリーンのアンニュイな表情ばかり捉えて、実に退屈。また、コルビジェの嫉妬の裏側をきちんと描いていないので、単に嫌な男というだけにしか見えない。せっかく、本物使って撮影しているのに実にもったいない。中途半端に英語とフランス語が混じるのも何なの。フェミニズム映画として最高の材料そろってるのにこんな調理じゃダメでしょ。

午後8時の訪問者

2020-05-13 | 外国映画(か行)
★★★★ 2016年/ベルギー・フランス 監督/ジャン=ピエール・ダルデンヌ リュック・ダルデンヌ

時間外で応対しなかった患者が翌日変死体で見つかる。責任を感じた女医は彼女の身元を割り出すために奔走するが。
地味な社会派に見えがちだけど、ダルデンヌ作品はどれもサスペンスとして凄く優秀。サンドラの週末然り、結末がどうなるかハラハラしつつ最後まで見入ってしまう。

女医のジェニーは自分に誠実であるために行動する。恐ろしい目にも遭うが意思を曲げない。それは取り立てて正義感が強いわけではなく、単純に言うと筋を通す、ごまかさない生き方を選ぶということだが、それがいかに難しいかを私たちは知っている。だから自分ならどうすると問うてしまうのだ。

足取りを追うごとに徐々に露わになる社会の闇。犯人が明らかになる瞬間も全くドラマティックではなく、却ってそれがとてつもなくリアル。そして、意外な人物の証言による悲しいエンディング。社会の陰に隠れた人々を浮き彫りにする、さすがダルデンヌという作品。

フォードvsフェラーリ

2020-05-13 | 外国映画(は行)
★★★★ 2019年/アメリカ 監督/ジェームズ・マンゴールド

スポーツカーの爆走と爆音、最高の気分転換映画。65インチ4Kテレビでの鑑賞を満喫(画面のでかさは正義)。
車と双璧の見どころはクリスチャンベールの顔。この人、顔だけでキャラの性格表現できるのホントすごい。役によって骨格とか筋肉とか変えてる!?と思わざるを得ない。

現場と上層部の対決という触れ込みだったけど、それほどやきもきはせず。結果がわかってるからね。ラリー車を開発するために飛行場に作られた制作現場が壮観!ラリーシーンしかり、お金かかってんなあ!ってのをストレートに感じるのも映画の醍醐味だよなとつくづく思わされる。予算も正義。