Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

LIFE!

2021-07-30 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★☆ 2013年/アメリカ 監督/ベン・スティラー

地下の写真室からウォルターは飛び出していく。伝説のカメラマンに会うために。人は思い立てばいつでも冒険の旅に出られる。何度見てもそのメッセージに勇気づけられる。コロナ禍の今見るとなおさら旅の郷愁にかられる。ひと目で世界的冒険家と納得させるショーンペンの佇まいにやられる。

いろんな映画でボウイが使われるけど、本作のSpace Oddityが一番好き。酔っ払いの運転するヘリコプターが今飛び立とうとしている。そこで思いを寄せるシェリルがウォルターの空想の中で歌い出す。Ground Control to  major Tom…。ウォルターがジャンプする。なんてエモーショナルなシーンなんだ。

プロミシング・ヤング・ウーマン

2021-07-30 | 外国映画(は行)
★★★★☆ 2020年/アメリカ 監督/エメラルド・フェネル

夜毎、男たちに復讐?私には自傷行為に見える。胸や局部を毎日触れさせるのだよ、シラフで。来る日も来る日も体目当ての男に己の体で警鐘を鳴らす。次のニーナを生み出さないために。緩やかな自殺行為のようだ。映像と音楽はとびきりポップ。そうじゃないと辛すぎる

キャシーは自身の心と体を犠牲にし、赦しを請う者には赦しを与える。キリストみたいだ。ラストに向けての怒涛の展開。現実はそう簡単じゃない。でも、その憤りを現実に持ち込むんだという叫びを聞いたよう。この脚本は魂削らないと書けない。完敗。

ブラス!

2021-07-28 | 外国映画(は行)
★★★☆ 1996/イギリス 監督/マーク・ハーマン

鉱山閉鎖の危機に直面しながらも、ブラスバンド大会に賭ける男たち描く。リトルダンサー、キンキーブーツなどイギリス炭鉱町物にはハズレがない。ベタな展開ではあるが、バンドが繰り広げる数々の楽曲に心揺さぶられる。そしてなんといっても若いユアンがかわいい。

エイス・グレード

2021-07-26 | 外国映画(あ行)
★★★★ 2018年/アメリカ 監督/ボー・バーナム

無口賞(ひどい賞だ)に選ばれるほどクラスに馴染めないケイラ14歳。カメラは彼女のうつむきがちに歩く丸まった背中を追い続ける。まだまだ子供、でも背伸びをしたい年頃。自分晒しが日常の現代の中高生、そのもどかしく切ない様をリアルに描く秀作。

高校生のお姉さんと友達になれたのに、辛い出来事が起こる。ケイラの性格をわかって漬け込む男の加害性を描くこの監督、信用できる。そして竜そばで「まずは父と対話じゃないのか」と憤慨してたら、まさに本作はそれがターニングポイントとして描かれており、嬉しくて膝を打った。

マスター・オブ・ゼロ シーズン3

2021-07-23 | TVドラマ(海外)
★★★★ Netflix

S2まで見ていた人間からすると、違うドラマ始まった?と思うほどの違いだが、その向こうに広がる豊潤な世界。日常の幸福、恋の哀れ、妊活の厳しい現実。全てがゆったりと、実にゆったりとした時間と共に描かれる。レズビアンカップルの数年に渡る愛と葛藤の物語。

もはや現代の映画では無理かも知れないと思える贅沢な時間の使い方。ひと気のないコインランドリーでただ機械音がするだけのシーン、愛し合う2人が肩を抱き合い牧場を横切るロングショット。体外受精に取り組むアリシアが母に電話をかけるシーンも胸に迫る。心のひだに触れるような繊細な演出が見事。

プラットフォーム

2021-07-22 | 外国映画(は行)
★★★ 2019年/スペイン 監督/ガルダー・ガステル=ウルティア

人間の強欲さがこれでもかと続く、想像以上の地獄絵図ホラーだった。食事量は人数分揃っているはずなのに全員に行き渡らないと言うのは共産主義批判とも受け取れるし、様々な見方が可能。縦構造の牢獄のビジュアルがインパクト大。しかし、こんなに怖いと思わなかったよー。

本当の僕を教えて 

2021-07-20 | 外国映画(は行)
★★★★ 2019年/イギリス 監督/エド・パーキンス

Netflixドキュメンタリー

事故で記憶を失った青年。双子の兄は家族の物語を一から教えた。しかし母の死で築き上げた物語が崩れる… 兄が傷つくとわかっていても執拗に真実を迫る弟。35年の時を経て対峙する兄。あまりに暴力的な自分探し。人はそれほどまで真実を求めるものなのか。

兄の態度を見るに、只ならぬ秘密があるのはすぐに想像できる。この作品は観客自身も「真実が知りたい」欲望と「知らない方が彼のためだろう」という思いの狭間でギュインギュインに揺さぶられる。この感覚、あれだ。「ザ・バニシング 消失」。人間の知りたい欲求は底なし沼だな。

FYRE 夢に終わった史上最高のパーティー

2021-07-20 | TVドラマ(海外)
★★★☆ Netflix

東京オリンピックを前に状況が酷似と話題の作品を鑑賞。リゾートで豪華フェスをぶち上げるも、絶対無理やん、アカンやんのつるべうちに誰もストップかけられず結局開催して地獄の様相。馬鹿騒ぎ一団だが多くの教訓がここにある。

個人発信でもその執着で巨大イベントになると誰も止められない。この場合、投資家の存在がキーだ。投資と回収。この命題に囚われると後には引けない。オリンピックも然り。開催後に再び感染拡大した時、なぜ止められなかったかと自分を責めるのかと思うとゾッとする。ビリーの周辺にいる奴らは私たちだ

バクラウ 地図から消された村

2021-07-19 | 外国映画(は行)
★★★★ 2019年/ブラジル・フランス 監督/クレベール・メンドンサ・フィリオ ジュリアノ・ドネルス

突然地図から消えた村で惨劇が始まる。攻撃者は誰か…。 まずバクラウという村の不思議な魅力に引き込まれる。土着文化残る風習に大音量のDJ、売春トラック、不思議な薬。ただ者じゃない感が独特。舐めてた相手が実は系なんだけど、まるで正体が読めない面白さ。

アメリカの南米への軍事介入等のメタファーという仕掛けも面白いが、終盤近く、水の枯れたダムが映し出されるため、ブラジル自身が抱える問題も織り込まれていると推測できる。奇天烈モンド映画というベールを纏った痛烈な資本主義批判映画ではないか。しかもそれらを説明しすぎない手際が見事。

スキャンダル

2021-07-19 | 外国映画(さ行)
★★★★ 2019年/イギリス・アメリカ 監督/ジェイ・ローチ

FOXニュースセクハラ事件の映画化。上昇志向のある女性につけ込むのが、卑怯。ジョンリスゴー、損な役回りだがハマってる。最初の告発者がニコールキッドマンでそれに続くのがシャーリーズセロン。2大女優の並びで絵的に盛り上げたい所を敢えて我慢している。抑えた演出がいい。

1年間にわたる用意周到な準備がなければ告発できない。その1年間にどれだけの人が新たなセクハラを受けたとしても、それだけの準備がいるという辛い現実。誰かが、どこかで止めなければならなかったのだ。しかし、どうやって?もし私があの役員室の入口受付に座る秘書だったらと思いを馳せてしまった。

おとぎ話みたい

2021-07-13 | 日本映画(あ行)
★★★★ 2014年/日本 監督/山戸結希

ピナバウシュを知っててメルロ=ポンティをお勧めしてくれる先生に恋する女子高生。中高年の私からしたらもう、むず痒いのなんの。お尻がこそばくなってくる。物語も映像もいろんなものがギリギリの境界線だが、その危うさが魅力。いや、魔力。主演の趣里がすばらしい。

監督と作品を切り離して見られるものもあるが、本作はそうはいかない。撮影は山戸監督が大学在学中とのことで当事者に限りなく近いからこそ、撮れる作品だろう。思春期の女子高生の溢れ出る自意識をここまで、てらいもなく切り取れる人はそういない。



サーヴァント ターナー家の子守

2021-07-10 | TVドラマ(海外)
★★★ AppleTV

あることで子を亡くした女性。傷ついた心を癒すために赤ちゃん人形を世話している。が、彼女はそれを本気で自分の子供だと思うように…。Mナイトシャマラン製作総指揮ということで期待したが、謎ばかり撒き散らしてちっとも回収せず。全く好きになれなかった。

とにかく赤ちゃん人形がリアルで怖い。カメラワークもクールだから映像としての引きも強い。が、全てが思わせぶりで話がつながらないのはいかがなものか。普通気づくだろ、普通止めるだろの連続で見ていても疲れた。S1の謎がS2ではっきりするかと我慢して見たがそれもなし。多分S3は見ないな。

オクトパスの神秘 海の賢者は語る

2021-07-10 | 外国映画(あ行)
★★★☆ 2020年/アメリカ 監督/ピッパ・エアリック ジェームズ・リード

ダイオウイカが大ヒットしたように海洋生物の生態というのは本当に興味深くて、天敵から逃げるタコの映像は実にドラマチック。それは大いに見る価値アリなんですが。心に問題を抱える主人公の再生という点においては、甚だ違和感を覚えて入り込めないのだった。

その理由は彼を撮影する第三者の存在。オレは心に傷を追って海に入るようになった…と言われても彼の背中を追い続けるカメラがあるからね。最初からそういうストーリーでは?という居心地の悪さが終始つきまとう。タコの生態を追った映像は本当にすごいんだけど。


ジュディ 虹の彼方に

2021-07-07 | 外国映画(さ行)
★★★★ 2019年/イギリス 監督/ルパート・グールド

公演初日の「バイマイセルフ」の凄みにやられた。レネーのオスカー文句なし。晩年のロンドン公演を軸に天才シンガーの孤独と苦悩と少女時代の恐るべきエピソードを織り込む構成が見事。業界に、親に、狂わされた一人の天才は最後まで魂を振り絞り、歌いあげる。

長年のファンであるゲイカップルの存在が効いている。あなたは孤独じゃない。あなたの歌によって、生きる希望を得た人はたくさんいる。そんなメッセージはしっかりとジュディに届けられたのだ。

クレイジー・リッチ!

2021-07-05 | 外国映画(か行)
★★★★ 2018年/アメリカ 監督/ジョン・M・チュウ

ゴージャスな生活にめくるめくファッションとゲイのアドバイザー。これSATCじゃん!音楽や映像もSATC印満載でなるほど当たった理由がわかった。 彼の母とのケリのつけ方が中国由来の○○というひねりも面白い。清々しいほどのどんちゃん騒ぎ。こんなの映画でしか体験できない。