Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

素晴らしい一日

2019-04-18 | 外国映画(さ行)
★★★★☆ 2008年/韓国 監督/イ・ユンギ

もっと早くこの作品に出会いたかった。時間の流れ、空間の移動、現代社会の映し絵のような様々な人々との出会い、恋愛の切なさ…映画の快楽に満ちた素晴らしい1本。何よりロングだよ、ロング!ロングショットがかっこよくてすばらしい。まず、冒頭の長回しからして、これはいい映画だというのがわかるもの。しかも、ゆったりとした時間が流れるような演出なのに、全く退屈しない。
借金の回収のため元カレに会いにいく主人公。手持ちの金があるわけもなく、元カレは自分の知り合いに金を借りに回り、それに付き合わされる1日を描く。日本の小説が原作ということですが、もしかして黒澤明の「素晴らしき日曜日」に着想を得てるのかしら?あちらもお金のないカップルの何気ない日曜日を悲哀たっぷりに描く作品で、とても似ている。元カレの知り合いたちがみな個性的だし、ウィットに富んだやりとりや小気味いい演出、シャレたBGMなどはウディアレン作品を彷彿とさせる。また、心はとってもやさしく人たらしだけど、事業に失敗しているハ・ジョンウがとっても魅力的でダメ男ジャンルムービーとしても秀逸。久しぶりに会った元カレは、思った通りいい奴だった。やり直すか、やり直さないか…で引っ張る終盤の展開も憎い。ようし、これからイ・ユンギ監督の作品見るぞー!

ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦

2019-04-17 | 外国映画(は行)
★★★☆ 2016年/チェコ・イギリス・フランス 監督/ショーン・エリス

ナチス第3の男ラインハルト・ハイドリヒの暗殺を、史実をもとに描いたサスペンス。ハイドリヒを暗殺できたとしても、ナチスはその後とんでもない報復攻撃に出るはず。それが予測できる中で、決死の作戦を遂行するメンバーの苦労と苦悩がひしひしと伝わる秀作でした。史実を知っているので、彼らの未来は予測でき、見ていてとてもつらくなるのだけど、美しいプラハの街を背景に繰り広げられる少数精鋭の役者陣の熱演もあって、固唾をのんでラストまで見守りました。作風は極めて地味ですが、見応えのある1本。最近、イヤな奴を演じることが多いキリアン・マーフィだったけど、久しぶりに骨のある演技を見せてくれました。

バニーレークは行方不明

2019-04-16 | 外国映画(は行)

★★★★ 1966年/アメリカ 監督/オットー・プレミンジャー

保育園に預けたはずの我が子が消えた。しかも、関係者は誰もその子を見ていないという。元ネタバルカン超特急と違うのは、これが母子ということ。「うちの子がいない!」と叫ぶ母の姿は、老女を見たと言い張る娘よりも痛々しい。また、主演のキャロル・リンレーが若々しく、父親についても多くを語らないため、ますますアンはどこかおかしいのでは?と思わされる。真相は途中でうすうす勘づいてしまうのだけど、すべてが明らかになるブランコのシーンは今見てもぞっとする。


奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール

2019-04-15 | 日本映画(あ行)
★★★★☆ 2017年/日本 監督/大根仁

(ネタバレ)
ラストで妻夫木が泣けば秀作という法則がまたしても証明された1本。ポップな大根演出に目が行きがちだけれど、男の思い描くオンナを演じてやっている上で成り立っているイタい恋愛たちを皮肉まじりに描く傑作。特に水原希子演じる天海あかりのラストシーンが秀逸。恋に恋して、仕事よりも理想の女を優先してきたコーロキは3年後に自身が忌み嫌っていたギョーカイ人になるわけだが、あかりは今なお「男が求める女」として生き続けている。その姿に私は思わず「つれえ」とつぶやいてしまうのであった。またラストのあかりはコーロキの見た幻影とも解釈できる。いや、あかりは全編を通して、それぞれの男が思い描く幻影で実在しないという設定は十分成り立つ。現に事件のあと、コーロキのセリフで「天海あかりはいなくなった」と言っているわけだから。ラストシーンから発想を広げるのがこれほど楽しい作品は久しぶりである。それにしても、現代ポップカルチャーを描いて大根監督の右に出る者はいまい。そこがあまりに巧過ぎるのとやたらと多いキスシーンのせいだろうか。公開当時の評判は芳しくなく、本作のテーマが観客に伝わっていないのは大変残念。プールサイドのシーンで「本当のあかりを見せてくれ!」と叫ぶコーロキにあかりは平然と「今見ているのが本当の私だよ」としれっと言う。自分が見たいものしか見えていなかったことに気づいたコーロキは、女性に自分の理想を投影することをやめて大人になったのだ。ひとりの女性に翻弄され別離のつらさを味わった妻夫木が大人の階段を登り、別の彼女と結びつくという展開は名作「ジョゼと虎と魚たち」をも思い出させる。それぞれの男たちの求める女を演じきった水原希子がすばらしかったし、コラムニストを演じる安藤サクラの変人ぶりも最高であった。

アジャストメント

2019-04-14 | 外国映画(あ行)
★★★ 2011年/アメリカ 監督/ジョージ・ノルフィ

ディック原作のSFと考えるとなんともぬるい。ぬるいんだけど、マット・デイモンとエミリー・ブラントの主演の2人が魅力的なので、B級とわかった上で見るとそこそこに楽しめた。特にダンサー役のエミリーブラントが美しい。バレエの基礎とかあるのでしょうか。さすがハリウッドの役者ですね。人間の運命を監視している「アジャストメント・ビューロー」ってのが何とも中途半端でちゃちいんだよなあ。漫画みたいなストーリーなんだけど、ハリウッド大作然とした全うで真面目な演出が最後まで貫かれているから、何とか最後まで持ちこたえていると思う。

希望のかなた

2019-04-13 | 外国映画(か行)
★★★☆ 2017年/フィンランド 監督/アキ・カウリスマキ

絵画のような構図で交わされる飄々としたセリフのやりとりに思わずくすっと笑ってしまうが、お話はとってもビターである。アラブ人であるというだけで差別するネオナチも、黙って移民のカリードをかくまう善意あるレストランの人たちも同じフィンランド人だ。なぜ、その差が生まれてしまうのか…。それにしても、メシのまずいレストランの面々がどいつもこいつもいいキャラクター。寿司を出すと商売繁盛するらしいぞってことで、いきなり日本食レストランになるが、まあ寿司のまずそうなことといったら!レストランまわりのエピソードはほとんどコントである。だからこそ、移民問題の闇がコントラストとして浮き上がってくる。カウリスマキらしい悲喜劇を楽しみました。

赤い靴

2019-04-12 | 外国映画(あ行)
★★★★★ 1948年/イギリス 監督/マイケル・パウエル エメリック・プレスバーガー

(NHK-BS)
「名作とは知っていたが何となく自分には合わないと避けており、意を決して見てみたらすげえ傑作だったシリーズ」というのが自分の中であるんですけど。笑。本作がまさにそうでした。いやあもう!中盤の赤い靴の舞踏シーンのすばらしさと言ったら!こんなに幻想的で美しい映像が1948年製作とは信じられません。マーティン・スコセッシが監修のもと、2年間の歳月をかけて修復したということですが、テクニカラーのビビッドな色彩の洪水に酔いしれました。数年前にリバイバル上映もされていたんですね。これは見に行くんだった…。恋か、芸術かで引き裂かれるバレリーナ。現代の視点なら、別にどっちも捨てなきゃいいじゃんと思うんですが、恋に走るバレリーナはもう踊り手としては三流と斬って捨てるレイモンドの気持ちもわからなくはない。強気で表情豊かな主演のモイラ・シアラーも魅力的。「ラ・ラ・ランド」は本作がベースじゃないかしら?と思うのだけど。

グリーンブック

2019-04-10 | 外国映画(か行)
★★★★ 2018年/アメリカ 監督/ピーター・ファレリー

いやあ、いい映画ですよ。うむ。教養あふれる黒人ピアニストとチンピラのイタリア系白人の交流によって、ふたりがそれまで乗り越えられなかった壁を超えていくお話。オスカー獲っても誰も文句言わないでしょう。でもなあ、物語の先が読めてしまってちょっと物足りないのですよね…。主演ふたりの演技はすばらしい。さらりとピアノまで弾いちゃうマハーシャラ・アリのオスカーは納得なんだけど、マフィアの腰巾着を演じるヴィゴもいい。太っちょで大食いでガサツで。いつもシュッとしたコワモテを演じているのに、これはなかなかのギャップ。ふたりの貫禄の演技を堪能する映画と言えましょう。

スパイダーマン スパイダーバース

2019-04-09 | 外国映画(さ行)
★★★★ 2018年/アメリカ 監督/ボブ・ペルシケッティピーター・ラムジーロドニー・ロスマン

アニメーション作品を映画館で見る事は少ないのだが、評判の高さもあって鑑賞。ピクサーアニメとは一線を画したオリジナリティあふれる映像がすばらしかった。2次元カートゥーンのフキダシの多用も心地よく、実際にページをめくりながら見ているかのよう。特にエンドロールがかっこよかった。また、最新ヒップホップを織り交ぜた音楽もいい。ラストのラストに懐かしアニメを入れてくるのも粋じゃないか。世代的にはいちばんこれにホッとしたりもするがw。全編挑戦的な構成で本当にすばらしかった。

大統領の陰謀

2019-04-08 | 外国映画(た行)
★★★☆ 1976年/アメリカ 監督/アラン・J・パクラ

すいぶん昔にトライしたのだが人物関係がさっぱりわからず、なんと途中でリタイア。どんなにつまらなくてもだいたい最後まで見る事が常だが、本作はレアケースだった。それが10年ほど前。で。昨年、ペンタゴンペーパーズを見たのを機に、いつか見直そう、見直そうと思っていたので、がんばって再観賞。いやあ、それでもしんどかった。人物関係も事件の背景も全然語られないんだもの。ペンタゴンペーパーズでワシントンポストの記者陣の気骨を注入されていたので、今回はふたりの記者のブンヤ魂に感情移入できた。新聞記者って、ほんと地味な仕事だよね。でも、その積み重ねこそが大事なんだと思わされた。

バグダッド・カフェ

2019-04-07 | 外国映画(は行)
★★★★☆ 1987年/西ドイツ 監督/パーシー・アドロン

公開当時見に行って、久しぶりの再見。すばらしい作品だった。映画って、観客の心に刺さるショットがひとつでもあるかどうかってのがいちばん大事だと思うわけで。そういう意味で本作は刺さるショットの宝庫だと言えると思う。この飄々としたテンポ感はいわゆるオフビートってやつなんだけど、オフビートという言葉以上の豊かさがこの映画にはあるよね。やはり、外せないのはドイツ人女性を演じるマリアンネ・ゼーゲブレヒトの存在感。アメリカの何もない砂漠地帯における彼女の異質感といったら!絵のモデルになってからは不思議な衣装で胸も露にするなど、ことごとく観客をギョッとさせてくれる。このギョッとする感じとハートウォーミングな展開のギャップ感が本作を唯一無二な作品にしているのだろう。見終わったあとに、自分が今いる場所で人生を楽しめればいいじゃないかと前向きにさせてくれる。

スイス・アーミー・マン

2019-04-05 | 外国映画(さ行)
★★★ 2016年/アメリカ 監督/ダニエル・シャイナート ダニエル・クワン

なんという奇作。ハリポタ以降、トンデモな役ばかり演じるダニエルラドクリフが本作では死体を演じる。しかも、オナラするわ、口から水吐くわ、あげくの果てに女性の写真に…。ダニエルの怪演はなかなかの見どころなんだろうけど、おかしな死体の正体は実は●●でした的なオチがあるんだろうと思ってみていたら、そういうこともなくw。一体何を見せられたんだという不思議な感覚。とはいえ、がんばって生きなきゃねと励まされるような気分になる不可思議な作品。しかし、よくもまあこのふたりがんばったな。さすがの役者魂。


ブラック・クランズマン

2019-04-03 | 外国映画(は行)

★★★★☆ 2018年/アメリカ 監督/スパイク・リー

見応え抜群。コメディ演出も多いがスパイク・リーの怒りがスクリーンからはみ出るほどに満ちた力作。実話に基づくと出る割には原作とは年代を変えるなど、あからさまな脚色も多い。ラストのニュース映像含め、それらの過剰な脚色をやり過ぎと感じて醒める人も多いようだけど、私はこのストレートな演出こそスパイクリーの作家性だと思う。これほどまでに黒人差別を強調しなければならないのが現代のアメリカだということ。そのやりきれなさに共感する。70年代のブラックカルチャーがとても魅力的。あのクラブに行きたいなあ。そして、アフロヘアーに丸メガネのローラハリアーがめちゃくちゃかわいい!惜しむらくはユダヤ人のアダムサンドラーの内面描写が物足りないことかなあ。でも、ニュース映像のあとのエンディングがプリンスで再びガツンとやられた。


蘇える金狼

2019-04-02 | 外国映画(や・ら・わ行)

★★ 1972年/日本 監督/村川透

何せ松田優作がカッコいいハードボイルドの傑作というのが巷の評判ではあるが、女の飲み物に薬をもってシャブ中にしておいて「あなたのことが忘れられない」と言わせる脚本が胸くそ悪い。これも時代ということなのだろうか。その後も何も悪い事してない女を殴るシーンがあり、ギブアップ。話も荒唐無稽でマンガか!と突っ込みどころ満載。成田三樹夫や岸田森などの個性派俳優の演技を怪演と呼ぶこともできるかもしれないが、私にはマチズモ礼賛の男目線の都合のいい物語としか思えなかった。勘弁してくれ案件。