Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ツイン・ピークス シーズン1 vol.3

2008-02-12 | TVドラマ(海外)
★★★★★ 1989年/アメリカ 監督/デヴィッド・リンチ
<episode5~episode7>

「道化師、リーランド」


ツイン・ピークスの登場人物全員に「裏の顔」がある、という事実が明らかになるvol.3。とりわけ、香港美女ジョシー・パッカードの正体がだんだんわかってきて、パッカード製材所の火災をもって、シーズン1終了。膿を出すだけ出しておいて、さあシーズン2でどう処置する?と期待も高まるのだが、実はシーズン2に入ってもなかなか処置は進まない(笑)。その分、リンチワールドをたっぷり楽しむとしましょう。

vol.3で印象的なのは、ローラの父親、リーランドのキレっぷり。本来、娘を殺された当事者であり、普通の価値観で言えば、娘の仇を取るとか、妻をいたわるとか、父親としての役割があるんだけれども、リンチはこの殺された娘の父親をとことん狂わせていく。リーランドがしがみついた娘の棺が墓穴の中でぎっこんばったんとアップダウンする様子はどう見ても笑うしかなく、以降リーランドは物語のピエロとしての役割を担うことになる。

陽気にステップを踏み、歌を歌う狂ったリーランドと、常にしかめっ面でキラーボブの幻影を見ては叫び声をあげるローラの母セーラ。この夫婦ふたりの対比が実に面白い。娘が殺されたわけだから、面白いという言葉は道徳的には正しくないが、名コンビぶりが見ものと言っても過言ではないほど、ふたりの演技がキレている。セーラの叫ぶ時のあの顔。あれは、誰にも真似できるものではありません。リーランドは躁、セーラは鬱。人が精神的に不安になる局面の表と裏を、リンチはこの夫婦に分担させているのではないだろうか。