★★★★☆ 1995年/イギリス・アメリカ 監督/アン・リー
「愚かで愛しい女たち」
もしかして、私ジェーン・オースティン好きなのかも-。「つぐない」同様、伝えたいのに伝えられない、じれったい恋愛模様にどっぷりハマってしまいました。
仕事もできない、財産も相続できない。女の一生はまさに結婚相手で決まってしまうという当時のイギリス社会。全てが男次第という環境の中での女たちの立ち居振る舞いは現代女性から見れば、滑稽なことも多々あります。時には愚かに見える女たちですが、この「愚かさ」が彼女たちの謙虚さから生まれるものであるため、彼女たちが実に愛おしく、かわいらしい存在に思われて仕方ありません。
人間の感情とは複雑なもので、日頃男性に対しては「言いたいことはハッキリ言う!」「女だからと甘えない!」と息巻いているワタシなのですが、この時代の女性にはひどく共感してしまう。言いたいことも言えない時代の中で、どこまでも謙虚さを美徳とする彼女たちにもの凄く共鳴してしまうのです。自分でも不思議です。
物語の核となるのは、2つのラブストーリー。長女エリノアとエドワードの純愛と、次女マリアンヌをめぐる中年の大佐と若く逞しい青年の恋のさや当て。いずれもじれったい進行ながら、どうなるのかしらん?といい年して、ドキドキしながら見守ってしまいます。ジェーン・オースティンがハーレクイン物と一線を画するのは、こうしたじれったい恋愛を軸としながらも、彼らを取り巻く人々の人物描写が実に細やかなところにあると感じます。最も顕著なのは、若い女性と好対照に描かれる中年女性、オバサマたちです。
「つぐない」でも娘を何とか嫁がせようとそればかりに注力する母親は、振る舞いが田舎者まるだしで目を覆いたくなる時もありますが、その愛の深さを感じさせます。今回は、何かと世話を焼く後見人のオバサマが出てくるのですが、彼女は一貫しておしゃべりで、噂話が大好き、やかましい存在のように見えるのですが、終盤ふと見せる優しさにほっとさせられます。他にも、終始むすっとしているお婿さんが何気ないひと言で娘たちをいたわるなど、人間の心の奥に大切にしまわれている大事なものをそっと見せられたようで、実に温かい気持ちになるのです。
さて、出演者たちもみなステキです。ダメ男を演じさせれば右に出る者なしのヒュー・グラントですが、本作はダメ男というより「ぼんやり君」とでもいいましょうか。かなりトホホですけど、その度を超えた悪気のなさに完敗。アンタだから、許されるんだからね。不器用で実直な中年大佐のアラン・リックマンも適役。ケイト・ウィンスレットも初々しくてカワイイです。
「愚かで愛しい女たち」
もしかして、私ジェーン・オースティン好きなのかも-。「つぐない」同様、伝えたいのに伝えられない、じれったい恋愛模様にどっぷりハマってしまいました。
仕事もできない、財産も相続できない。女の一生はまさに結婚相手で決まってしまうという当時のイギリス社会。全てが男次第という環境の中での女たちの立ち居振る舞いは現代女性から見れば、滑稽なことも多々あります。時には愚かに見える女たちですが、この「愚かさ」が彼女たちの謙虚さから生まれるものであるため、彼女たちが実に愛おしく、かわいらしい存在に思われて仕方ありません。
人間の感情とは複雑なもので、日頃男性に対しては「言いたいことはハッキリ言う!」「女だからと甘えない!」と息巻いているワタシなのですが、この時代の女性にはひどく共感してしまう。言いたいことも言えない時代の中で、どこまでも謙虚さを美徳とする彼女たちにもの凄く共鳴してしまうのです。自分でも不思議です。
物語の核となるのは、2つのラブストーリー。長女エリノアとエドワードの純愛と、次女マリアンヌをめぐる中年の大佐と若く逞しい青年の恋のさや当て。いずれもじれったい進行ながら、どうなるのかしらん?といい年して、ドキドキしながら見守ってしまいます。ジェーン・オースティンがハーレクイン物と一線を画するのは、こうしたじれったい恋愛を軸としながらも、彼らを取り巻く人々の人物描写が実に細やかなところにあると感じます。最も顕著なのは、若い女性と好対照に描かれる中年女性、オバサマたちです。
「つぐない」でも娘を何とか嫁がせようとそればかりに注力する母親は、振る舞いが田舎者まるだしで目を覆いたくなる時もありますが、その愛の深さを感じさせます。今回は、何かと世話を焼く後見人のオバサマが出てくるのですが、彼女は一貫しておしゃべりで、噂話が大好き、やかましい存在のように見えるのですが、終盤ふと見せる優しさにほっとさせられます。他にも、終始むすっとしているお婿さんが何気ないひと言で娘たちをいたわるなど、人間の心の奥に大切にしまわれている大事なものをそっと見せられたようで、実に温かい気持ちになるのです。
さて、出演者たちもみなステキです。ダメ男を演じさせれば右に出る者なしのヒュー・グラントですが、本作はダメ男というより「ぼんやり君」とでもいいましょうか。かなりトホホですけど、その度を超えた悪気のなさに完敗。アンタだから、許されるんだからね。不器用で実直な中年大佐のアラン・リックマンも適役。ケイト・ウィンスレットも初々しくてカワイイです。