Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

まともじゃないのは君も一緒

2021-09-30 | 日本映画(ま行)
★★★★ 2021年/日本 監督/前田弘二

女子高生と塾講師のバディムービーというありそでなかった新ジャンル。しかも成田凌がモテない理系男子をこんなにうまく演じるとは。彼の引き出しの多さに感服。一方、小泉孝太郎の中身うっすーい男の安定感よ。最小限登場人物のアンサンブルがとても居心地よかった。

悪い種子

2021-09-30 | 日本映画(あ行)
★★★★☆  1956年/アメリカ 監督/マービン・ルロイ

伝説のトラウマ映画ようやく鑑賞。NHKBSありがとう。 庭師を焼き殺した後、嬉々としてピアノを弾くローダ。その甲高い音色が部屋から聞こえて戦慄。周囲の大人にはウケのいい立ち居振る舞いはサイコパスそのもの。恐怖を緩和させるためのカーテンコールも今見ると不気味極まりない。

何の躊躇もなく人殺しする少女の描写は確かに恐ろしいが、私は母の恐怖に共鳴してしまう。子を産んだ女性なら大なり小なり思うのではないか。「この子がこんなに○○なのは自分のせい」と。もちろん、優性思想は否定されるべきものだが、母子の血の繋がりという点では普遍的な恐怖物語だと思う。

メア・オブ・イーストタウン

2021-09-28 | TVドラマ(海外)
タイトルが宣言している。メアという女性の物語だと。それにケイトウィンスレットが見事に応えた人間ドラマ。電子タバコが手放せないやさぐれ中年刑事。息子の死という喪失を抱え、時に人としての道を外す。その泥臭い姿をさらけ出す演技が貫禄の域。

田舎町の殺人事件、女刑事、そして周辺人物の隠された秘密。偶然にも先日見たばかりの「ブロードチャーチ」とそっくり。すでにこの種の設定がフォーマットになりつつあるとも言えるが本作は何より主人公メアが立っているし、周辺人物が抱える苦悩や三者三様の親子の在り方に引き込まれた。

007スペクター

2021-09-25 | 外国映画(た行)
★★★★ 2015年/アメリカ 監督/サム・メンデス

冒頭アクションが全てな007シリーズ。死者の祭りの大騒ぎ、長回し、大爆発、ヘリコプターの超危険なスタントまでの大迫力で十分満足だが、以降はアクションのために物語が動いている感が拭えない。オーベルハウザーとの幼少期の因縁は必要だったか?盛り込みすぎて消化不足が目立つ。

レアセドゥのボンドガールは今シリーズ最強の存在感。一方、盛り込みすぎの弊害を食らったのはモニカベルッチ。出演シーン少なすぎだし、全く物語に絡まないのはとても不満。クリストフヴァルツは悪の総大将らしさがなく、普通のおじさん。悪役のキャスティングが難しい時代だね。レミマレックに期待。

ブロードチャーチ〜殺意の町〜 S1

2021-09-25 | TVドラマ(海外)
殺人事件など起きない田舎の海岸で少年の遺体が発見される。徐々に明らかになる住民たちの秘密。
ってこれツインピークスじゃん。
犯人が意外な人物ゆえミステリーとしての面白さはあるが、疑わしき人物たちの深堀りがやや足らず。断崖絶壁の風景は印象的だけど。

殺人事件ものって、放送時は犯人は誰かってことで視聴率を稼いでいけるんだろうけど、ビンジウォッチになるとそれより人間ドラマとしての面白さを求めてしまうわけで、やや物足りない。シーズン2を見るか微妙…。

BLUEブルー

2021-09-24 | 日本映画(は行)
★★★☆  2021年/日本 監督/吉田恵輔

吉田恵輔なので、誰がいつダークサイドに落ちるのかと見てたら予想外の王道。タッパのでかい松山ケンイチと東出昌大、両名並ぶと映画が映える。そしてダークホース柄本時生。ずっと負けでもいいじゃないか。本当の強さとは何だ?好きと才能について描く秀作。

ホルストン

2021-09-20 | TVドラマ(海外)
ほアメリカ人デザイナー、ホルストンの成功と挫折の物語。主演のユアンが我儘放題の天才デザイナーを熱演。伝説のクラブ、伝説のオフィスなど70-80年代当時のNYの再現ぶりが凄い。いかに天才でも、投資家と資本主義に呑み込まれる。ファッションとビジネスの話でもある。

ユアンマクレガー、本作でエミー賞授賞。確かに熱演なんだけど、芸術家気質のゲイの男性が男とドラッグに溺れて転落するという話はよくあるもので目新しさはない。(彼のこれまでのキャリアから考えるとチャレンジングな役と言えるのかもしれないが)

それでも、ホルストンの邸宅、別荘、パリの名だたるデザイナーたちとベルサイユ宮殿でショー対決。めくるめくゴージャスなセットと舞台は眼福。ここまで上り詰めた彼が落ちぶれて、全国チェーンブランドのデザインをさせられる。湯水のごとく金を使い続けた彼の自業自得なのだが、哀れだ。

見てて思ったのは、ライセンス契約がいかにおいしいかってこと。ただのハンカチやベルトや靴下に名前とロゴが付いているだけで、膨大な利益が生まれる。そりゃそのおこぼれにわんさか人が集まってくるわけだよ。

女は男の未来だ

2021-09-16 | 外国映画(あ行)
★★★★  2004年/韓国 監督/ホン・サンス

女はいつも男を慰め、やらせてくれる。男の無自覚の最低行為がこれほどつまびらかにされる映画が他にあるだろうか。同じ女性と性行為をした男たちの連帯感。価値観の押し付け。勝手な思い込み。普通の男の罪深さはすでにホン・サンスによって2004年に表現されていた。

ホンサンスの飄々とした作風により、彼らの「自分は悪いことしているとはこれっぽっちも思っていない」感が前面に出てくる。クソエピソードの連発だが「清楚で大人しそうなところを好きになったのに、派手なパーマをかけて来たのを見て肩を落とす」という場面が秀逸すぎる。

自由が丘で

2021-09-15 | 外国映画(さ行)
★★★★  2014年/韓国 監督/ホン・サンス

語り口対極の「メッセージ」を彷彿とさせる時間物語。片思いの女性を追いかけソウルへやってきた男。果たして彼女に会えるのか。時間が戻ったり、追いかけたり、入れ替わったり。時の流れという概念に向き合い、かつ夢か現か藪の中というとびきり実験作。なのにこの微笑ましさは何なの。

時間をいじるということでは「メメント」もそうだが、ホン・サンスはそれを謎解きとして利用しない。これほど、時間があっちこっちするのに、イライラせずひたすらニヤニヤ見守れるところが唯一無二。ムン・ソリやユン・ヨジョンなどの人気俳優が自然体でどこにでもいそうな人を楽しげに演じている。

チェルノブイリ

2021-09-14 | 外国映画(た行)
★★★★★

凄まじいの一言。見応えがあるとか、そんな言葉が空虚に感じられる。廃炉になった原発の内部で撮影されたという事故シーンの圧倒的な恐怖。容赦無く描かれる原爆被害。科学者の苦悩。命を賭けた人海戦術。どこかで目にした「全人類見るべき」に賛同。

「1時間ごとに広島原爆の2倍相当の放射線を放つ」。その恐ろしさを最も実感できるのは我々日本人だ。見ていて辛いのは間違いないが、一方で事実を知らなければという強い思いが込み上げる。セットの作り込みも驚異的。5分ごとに語りたくなるエピソードが連続。今まで見たドラマで最も密度が濃いと断言

Wの悲劇

2021-09-10 | 日本映画(た行)
★★★★  1984年/日本 監督/澤井信一郎

先輩女優のスキャンダルの身代わりを引き受ける薬師丸の陶酔した目。役に飢えていた彼女は千載一遇の汚れ役を演じきる。演技したいという欲望が彼女自身を覆い尽くす。演じることはそんなにも底なし沼の魅力があるのか。演技についての映画だ。

薬師丸ひろ子の魅力を引き出しているのは間違いなく三田佳子。作品内での彼女の挑戦的な態度は、薬師丸ひろ子本人に向けたもののようにも感じられる。アイドル女優が大人の女優として成長することのように、本作は様々なメタ構造を持っている。それも面白さの一つだろう。

POSE

2021-09-08 | TVドラマ(海外)
★★★★

80年代ゲイカルチャーの再現ぶりはすばらしく、「ボール」と呼ばれる週末の対決イベントの煌びやかさは圧巻でアガる。一方、忍び寄るエイズの恐ろしさにも向き合い、互いを支え合うLGBTQの人たちの人間ドラマとしても見応え抜群。

故郷から身一つで出てきた若者を受け入れる「ハウス」と「マザー」の存在。こうした共助の形があることは全く知らず、互いに支え合い、誇りある生き方を模索する人物たちに魅了された。全キャストがトランスジェンダー俳優というのも画期的。特にゴッドマザーを演じるドミニクジャクソンの存在感が凄い

CLIMAX クライマックス

2021-09-04 | 外国映画(か行)
★★★★ 2018年/フランス・ベルギー 監督/ギャスパー・ノエ

誇りを持って世に出すフランス映画、ドーン!もうタイトルで痺れ、冒頭ダンスシーンで5億点。ダンサーたちの驚愕の動きに酔いしれる。バッドトリッパーたちの一夜の鬼畜大宴会。妊婦の腹を蹴るという絶対に許せない不道徳行為をも呑み込む狂乱の宴。背徳的な魅力に抗えない。

ただのバカ騒ぎのように見えて、いろんな伏線が仕込まれている。LSDによって見える幻覚は自身の心の闇によるものゆえ、それぞれのダンサーの奇行は彼らの何を呼び覚ましているのかと想像を巡らせてしまう。嘔吐、肉欲、発火、暴力。混沌の地獄絵図とわかっているのに、リピート鑑賞してしまった。

あの頃。

2021-09-04 | 日本映画(あ行)
★★★★ 2021年/日本 監督/今泉力哉

これは青春ノスタルジック物語というより、“あの頃”は大目に見られていた男たちの集団行動の否定(終焉)を描いた作品ではないのか。男性監督と男性脚本家が真摯に考え表現した内省的な作品と感じられて仕方ない。それらを一番体現していた彼が悲しい末路をたどるという点においても。

もちろん、ノスタルジーにばかり浸るなというクレしんオトナ帝国のテーマも垣間見える。しかしラストに劔が引用する、あるモー娘。メンバーの言葉が象徴的なのだ。2021年の今見ると目を覆いたくなる一連の内輪ノリ・悪ノリ行動。本作をMe tooの流れの中にある1本と見る見方は間違っているのだろうか。

また、恋愛研究会の地下イベントの悪ノリ・悪ふざけは昨今問題になっていた松江監督の一連の騒動を思い出してしまった。好きなもの同士なら何やっても許される感じ、それを観衆と共有し、共犯関係を作ってしまうノリ。

それにしても今泉監督は街の切り取り方がうまい。ロケ地は関東のようだが大阪の下町と言われてもわからない。橋のシーンも南港あたりかと思った。そしてどの俳優も人間らしさが光る。松坂桃李の映画と思っていたら仲野太賀の映画だった。そこも含めて何もかも思っていたのと違う映画だった。いい意味で。

すばらしき映画音楽たち

2021-09-03 | 外国映画(さ行)
★★★☆ 2016年/アメリカ 監督/マット・シュレイダー

おなじみのフレーズを聞いた時の高揚感。音楽の役割は大きいとはわかっているが、その思いがさらに強まる。しかし意外と丸投げなのに驚き。イメージや世界観を共有してあとはよろしく。自由度高いのは面白そうだが大変な仕事だ。そしてハンスジマーがバグルスにいたとは!

「2001年宇宙の旅」でキューブリックができあがった音楽を全部ボツにして、結局クラシックを採用したとか、坂本龍一がベルトリッチにボツにされた曲を「Sweet Revenge」として発表したりとか、映画監督と音楽監督の関係性って面白いネタが多い。映画やドラマにしても面白いよね。